COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2008.12.01
池澤春菜さん特別寄稿!第二弾『指輪物語』
前回勝手に続き物にしてしまって、ごめんなさい。だって書ききれなかったんですもの!!改めまして、池澤春菜です。「ナルニアも物語」に続き、今回は「指輪物語」のお話を。原題のThe Lord of the Ringsを「指輪物語」と訳してしまう、この直球にして豪快なセンス!!原作には、この翻訳マジックがいかんなく発揮されています。トールキン自身が「翻訳はその国の言葉で」と言っているのもあり、地名やあだ名がしっくりと私たちにも馴染むものに。ちょっと余談にはなりますが、こと翻訳物において、翻訳者の力量、翻訳者のカラーというものがどんだけ大事か!!今まで数々の作品を読みながら感じてきた微妙な思い。「……このしっくり来ない感じは、きっと原作にはないに違いない」とため息をついていた私としては、ここんとこは声を大にして言わせていただきたい!!ギブスンのサイバーパンク三部作は、黒丸尚さんじゃなきゃダメだったんです。タニス・リーの平たい地球は、誰がなんと言おうと浅羽莢子さんなんです。「ナルニア国物語」と「指輪物語」。瀬田貞二さんがいなかったら、私の人生に光なし。今回の「指輪物語」→映画版ロード・オブ・ザ・リングにも、数々の翻訳の苦労があったようで……。原作を読んできた人、まだ読んだことがない人、日本語の語感と、英語のとして正しさ、いろんなものを全部成立させるのは、至難の業ですよねぇ。確かに、ヴィゴ・モーテンセンに向かって「馳夫さん!!」と呼びかけるには、相当な勇気がいる気がします。でも、サルマンとサルーマンとサウロンには未だに混乱中。アイゼンガルドとイセンガルドも混乱中。伸ばす棒があるかないか、単語の始まりの音の雰囲気、細かいところでけっこう違うもんなんですね。でも、そんな原作フリークの些細な戸惑いすら吹っ飛ばすほど、映像化された指輪物語は素晴らしうございました。私が最初に指輪物語を読んだのは、小学生の時。六巻というボリュームにしびれ。活字のつまり方にしびれ。補足にしびれ。面白くて、しかも量もたっぷり、何度読んでも夢中になれる奥深さ。つまり、活字中毒の求める夢がそこには全部詰まっていたわけです。全世界にいる無数の指輪物語フリークを差し置いて、この私がのうのうと語れることではないと思うけど……でも、やっぱり、指輪物語は最高に面白い。壮大な物語と言えばオデュッセイアもイリアスも、三国志も、マビノギオンも、古事記もそうですが、それに比肩するここまで大きな世界を、個人で創造したのは、歴史的に見てもかなり希有なことでは? 気候や風俗は言うに及ばず、言葉まで作り上げてしまったトールキンの緻密な構成力。さすが古英語の教授!!奥深い歴史と広大な中つ国を背景に活躍する、生き生きとした登場人物達。その中でも、やっぱり私は馳夫さんことアラゴルンが一番のお気に入りでした。とはいえ、ファーストインプレッションは惨憺たるもの。旅の途中、宿屋の食堂で出会った馳夫さんは「変わった様子」「履き古し、泥のついたブーツ」「半白のもしゃもしゃ頭」とあからさまに怪しい風体。暗い隅っこで目深にフード、ひっそり座って、フロド達の話に聞き耳を立てています。うん、これは、怖い。小心者のフロドなんてさっそく、「きっと、ごろつきにお金を巻き上げられるんだ(泣)」と早合点。でもアラゴルンは、本当はとても凄い人。王の血筋に生まれ、ゆくゆくは二つの王国を統べる上級王に。人間とエルフの希望をつなぐ者としてエステル(希望)、星の鷲を意味するソロンギル、エルフの石を意味するエレッサール……とてもたくさんの名前を持っている、日本で言ったら寿限無みたいな人(ちょっと違う)。でも、フロド一行と会うまで実に70年(!!)近く荒野を彷徨っていたので、そりゃもう惨憺たる見た目に。暗くて、疑り深くて、割と陰湿。神経質で、秘密主義。でも、誇りと孤独の重さを、存分に知っている。どうもこの「孤高の」という存在に弱い私は、この時点でイチコロです。映画の方では、ちゃんとカッコイイ登場の仕方になっておりますので、ご安心を。原作のアラゴルンに馴染んでいる身としては、ちょっと二枚目過ぎる気もしますが……ま、逆のパターンに比べたら。優しくて温かくてユーモラス、でも強大な力と、力の持つ怖さをも存分に知っているガンダルフも、おひげが似合うイアン・マッケランがピッタリ(正直、X-MENのマグニートーはどうかと思ったけど)。原作で憧れていた、ガンダルフの愛馬飛蔭も、神々しい姿を見せてくれています。読んだ人それぞれの頭の中にある像を、誰も違和感を覚えることなく映像化するなんて絶対に無理だとは思うけれど、この映画はその最大公約数に限りなく近いんじゃないかなぁ。まだ原作を読んでいない方は、これを機に、じっくりたっぷり、指輪物語の世界に浸ってみて下さい。小さなところから興味を引かれ始め、どんどんと深みにはまり、読む度毎に新しい発見がある。私にとって指輪物語は、生涯に渡って飽きることなく、繰り返し読める魔法の本です。と、いうことで、次回はとうとう「ゲド戦記」!!■ 『ロード・オブ・ザ・リング』©MM?New Line Productions, Inc.All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.11.28
ミュージック・シネマ第3弾は『フェノミナン』ついにあの名曲が登場!
日本だけなのか、あるいは知らないだけで実は世界中に氾濫しているのかよくわからないもののひとつに「世界三大」ナンタラ・・・というのがあります。ホラ、よく言いますよね。たとえば世界三大映画祭はカンヌ、ベルリンの二つはデーンと腰掛けているものの、もうひとつの席には歴史の長いヴェネツィアが入ったり、規模の大きさでトロントが入ったりと、ものすごく曖昧。一般的に認知されている映画祭でさえ、こんな風なのですからほかの「世界三大」は言わずもがなですよ。こんなことなら、世界三大「最古」映画祭とか、世界三大(来場者)映画祭にしちゃえばいいのにとまで思ってしまいます。しかし!とかく怪しい「世界三大」シリーズにおいても、揺るぎない、いや揺らいではならないものが2つだけあるのです。ひとつは当チャンネルが12月に総力を挙げてお送りする「世界三大ファンタジー」。これはもう、説明するまでもなく『ナルニア国物語』と『ロード・オブ・ザ・リング』そして『ゲド戦記』に決まっております!え? 誰がきめたって?それは厳正なる審査の上、当チャンネルが決めたのです。テヘヘ。(きっとこういう風に、他の「世界三大」シリーズも決まっていったんでしょう・・・) ※編成部注:いやいやライターさん、これは世の中的にホントにあるんだってば!ウチが勝手に捏造したんじゃありませんから。そしてもうひとつが、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、エリック・クラプトンの三人からなる世界三大ギタリストなのです。10月より当チャンネルで始まった新企画「ミュージック・シネマ」が『ボディ・ガード』、『スペース・ジャム』に続き、満を持してお送りするのが、この三大ギタリストの一人、クラプトンの名曲と切っても切れない『フェノミナン』です。エリック・クラプトン。口にしただけで、ある人は遠い目をしながら「クリームの頃のあいつはさ・・・」と語りだし、ある人は「ベ?ル・ボト?ム・ブルース??」と歌い始めてしまう、まさにリヴィングレジェンド。これまでクラプトンの影響で家に連れてこられ、押し入れにつっこまれたギターは世の中にいった何本あるのでしょう・・・。そんなクラプトンが映画『フェノミナン』に提供したのが90年代を代表する名曲中の名曲「Change the World」なのです。当時のクラプトンはすでにライヴアルバム「アンプラグド」や「Tears in Heaven」をリリースした後。音楽ファンでなくとも十分すぎるほど知られた名前でしたが、その敷居をさらに下げたのがこの曲でしょう。映画は観たことなくとも、曲は知ってるという人も多いはず。なんつってもうちの母親でも知ってるぐらいですから。さて、そんな名曲を生むきっかけとなった映画『フェノミナン』は農家とディスコが似合うただ一人の男、ジョン・トラボルタ演じるジョージがある日、不思議な光を浴びて、スゴイ能力を手にしてしまうという物語。つまり突然すごい力を手に入れたために、彼自身が「Change the world」してしまうわけです。(←ベタ)光を浴びて以降、ジョージは突如発明や読書に目覚め、すごい勢いで知識を身につけていきます。最初はその能力を発揮して、周囲に歓迎と驚きをもって迎えられるジョージ。しかし、あまりに普通とかけ離れた能力に、いつしか人は彼を怖がり、近づかなくなってしまうのです。そうして、ある日ジョージに思いも寄らぬ来訪者が・・・というお話。当企画で放送するぐらいですから、『フェノミナン』には、数多くの名曲が効果的に使用されていますが、今回はとくに注目して欲しい見所を二つご紹介しましょう。まず一つ目はジョージが自分の能力に初めて気づくシーン。ペンを取ろうとすると、なんとペンがするすると近づいてくるんです。ええっ!! マジで?! さわってないけどペン動いてる!!と驚いた表情でペンを見つめるジョージ。ここに最高のタイミングでピーター・ガブリエルの「I Have The Touch」が流れてくる。「アイ・ハヴ・ザ・タッチ!」・・・・・・そのままっつうか、何というか。まあ、言いたいことは何となくわかりますけどね。そしてもうひとつは、ジョージが思いを寄せる女性、レイスが彼の家を訪れるシーン。このときのジョージはすでに、人から避けられて憔悴状態。ここでレイスは傷つき、疲れ果てているジョージの髪を洗い、ヒゲを剃ってあげるという、女神のような優しさをみせます。この場面は作品の中でもとりわけ美しいシーンなのですが、アマノジャクな僕としては、ここに至るまでの説明が少なく、「アレ!ちょっと唐突じゃない?!」って思ったりしたのです。というのもそれまでレイスはジョージと距離を置いて、お友達としてしか付き合っていなかったから。でも、そんなアマノジャク体質の僕でさえ、アーロン・ネヴィルによる甘〜いラヴソング「Crazy Love」がきこえた途端あぁっ! もうそんなのどうでもイイ!言葉や説明がなくても愛は伝わるんだぜ、クレージーラブだぜ。溢れる感情を抑えきれなくなったんだね、レイス・・・。とあっさり納得し、ささいなことはどうでも良くなってしまうのです。音楽が良い映画ってのは得だなあとつくづく思いますね。優れたミュージック・シネマに、余計な言葉はいらないのです!さて、こんな具合に名曲が至る所に散りばめられた『フェノミナン』ですが、サントラも充実しております。エグゼクティブ・サウンド・プロデューサーは「ザ・バンド」のロビー・ローバートソン。彼はクラプトンに勝るとも劣らないロック界の大物だけに、錚々たるメンバーの楽曲がずらりと並びます。と言っても、ここでポイントなのは、「知っている人には大物だけど、ふだん洋楽を聴かない人にはまったくキャッチーじゃない」セレクトなのがポイント。ブライアン・フェリーとか、ジュエルあたりはまだヨシとしよう。でもタジ・マハールとか、知ってます?絶対、インドの「タージ・マハル」を想像する人のほうが多いはず。しかも大ヒットしたサントラの宿命なのでしょうか、昨今の中古CDショップでは大抵「100円均一」コーナーに並んでたりします。映画ファン、音楽ファンとしては嬉しいような、悲しいような気分です。それと『フェノミナン』にはシェリル・クロウの「Everyday Is A Winding Road」も使用されているのですが、シェリル・クロウと言えば一時、クラプトンと付き合っていた美人ロッカー。それだけにクラプトン「ロビー、オレいま狙ってる美人ロッカーがいるんだけどさ、その子の曲も映画に使ってみてよ」ロビー・ロバートソン「エリック、おれたちゃいい歳なんだから、そろそろ、そういうことはさ・・・」クラプトン「いやー、そこを何とか」みたいな経緯を経て、映画に使われたのカモと想像するのも醍醐味かもしれません。(2人の名誉のために補足すると、この時点でシェリル・クロウはすでに大スター)ま、それはさておき映画の後には恒例のミュージック・クリップが愉しめますので、そちらもお見逃しなく。今回は言うまでもなく「Change the World」です。■ (奥田高大) © Touchstone Pictures. All rights reserved
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COLUMN/コラム2008.11.28
今さら人に聞けない『LotR』の基礎知識
っていうか『LotR』って何よ!? という人、そんな人のために、このブログを書いてますんでご安心を。まぁ、ただ単に『ロード・オブ・ザ・リング』の頭文字ってだけの話なんですけどね。そう略すのがナウいらしいんすわ。この12月、当チャンネルでは、世界三大ファンタジーを大特集するってことは既報のとおりであります。世界三大ファンタジー(文学)とは、『ナルニア国物語』、『指輪物語』、『ゲド戦記』のこと。それぞれ映画化もされてます。それを放送するってワケです。あ、ちなみに『ゲド戦記』って言っても、いろんな意味で話題になった例の宮さんの息子のアニメ版じゃありません。実写です。なんと実写あったんですねぇー。知らなかった…。 でも、ここではあくまで『指輪』限定で話します。あ、ちなみに『指輪物語』の映画版が『LotR』ですから。なんで『LotR』だけ特別扱いでブログに書くかって言いますと、『ナルニア』と『ゲド』って、ハッキリ言って、見りゃ分かる映画なんですわ。『LotR』も、いちおう見りゃ分かると言えば分かります。そのこと自体、実はスゴい!奇跡と言ってもいい!!と言うのも、原作『指輪』って、詰め込まれてる情報量がハンパじゃないんですよね。固有名詞多すぎ!イコール設定がすさまじく緻密ってことでもあるんですけどね。その情報の多さ・緻密さに、オタクな人々はイ・チ・コ・ロの模様(いや、自分自身を含めて)。それこそが『指輪物語』最大のウリであり、だからこそマニアうけするんですな、この作品は。あと、時間的な壮大さも魅力のひとつ。『指輪』世界の長大な時系列の一時点を切り取ったストーリーが『指輪物語』なんで、この物語以前にも物語があって、この物語以後にも物語があり、その断片情報が『指輪』の中にもチョイチョイ顔をのぞかせてくる。なので、今、自分が読んでいる『指輪』は氷山の一角で、その下にはさらに巨大な物語群、関連作なり関連情報なりが埋ずもれている。それも知りてー!というマニア願望をくすぐるようにできてるんです。まぁ、こういう『スター・ウォーズ』とか『ガンダム(宇宙世紀系の)』とかとも相通ずる(さすがにちょい強引か)ディープな魅力を持ったオタク向けの作品(の元祖的存在)なんで、ハマろうと思えばどこまでもズブズブとハマってける底なしの奥深さがあり、そこに首までドップリつかってるのがキモチいいんだ!っていうマニアな方たちのウケはすこぶる良いんですわ。でも、ズブズブが快感なんて理解不能!という一般大衆の皆様方には、手に余る作品なんじゃないかとも思うんです。それほど厄介な原作を、マニアも納得の奥深さを残しつつ、シロウトさんでも、いちおう見りゃ分かる、予備知識なしでも話についてけるレベルに映像化してみせ、最終的には誰が見ても楽しめる映画に仕上げたピージャック監督の手腕は、ほんと、神がかってるとしか言えませんわ。スゴい!奇跡だ!! というのは、そういうワケです。でも、「いちおう」見りゃ分かると書いてる通り、「いちおう」なんですな。たとえば見終わった後、マニアだけでなく一般大衆のほとんどの人もこの映画を「面白かった!」と感じるとは思うんです。エンターテインメント映画としても不世出の作品ですから。でも、じゃあどんなストーリーだったか思い出しながら説明してみてくれ、と言われて語れる人って、少ないんじゃないでしょうか?たとえば『ナルニア』なら、ふつう見た直後なら誰でもスラスラ言えちゃいますわ。良い意味で単純なお話なので。『LotR』だと、そうスラスラは言えないはずです。たぶん「結局、話的にはどういう話だったんだっけ!?」となる人が多いと思います。それぐらい複雑な話です。スラスラ言えなくたっていいんだよ講釈師じゃないんだから。ストーリー展開が頭に残らなくたって、見てる最中だけ楽しければ映画なんてそれでいいじゃん。というのは、もちろん正しい考え方です。でも、スラスラ言えちゃうぐらい内容をしっかり把握しつつ見ていくと、『LotR』はもっともっと面白く感じられるようになる、ってのもまた事実。掘り下げる気がなくても「いちおう」は楽しめるけど、掘り下げる気になれば、楽しさが質的に飛躍的に向上するハズなんですわ。そもそもが掘り下げて楽しむという楽しみ方ができるよう、奥深く作られてる作品なんですから。なんといっても大ヒット作ですから、ウチのチャンネルでやる前にどっかで三部作とっくに見てるよ、という人も大勢いらっしゃるかと思います。でも、その時は深く掘り下げるほどのモチベーションがなかったので、「いちおう」は楽しめた、でも所詮「いちおう」だった、という人、実際問題かなり多いんじゃありません?今回、年末のウチの放送は、その時よりもちょっと掘り下げたレベルで見てみませんか?そのお手伝いをする目的で、お節介を承知でこのブログを書くことにしました!もちろん、ヒット作ながら今まで見逃していたという人、今回が初見だという人。そういう人のこともケアしたい。映画本編を見て「複雑なストーリー展開だなー、2、3と見続けても話についていけるかなー」と気力が萎えかけても、大丈夫!後でこのブログの補足説明とかフォローとかを読んでいただければ、きっと、ついてけるハズです!これから、『1』、『2』、『3』各回のザックリとしたストーリー展開をここのブログに書き込んでいきますんで、それで大づかみで流れを把握しちゃってください。もっとも、文中には致命的ネタバレ情報も含まれますんで、必ず映画本編を見た後にしてください!『1』本編を見た後で『1』のブログを読み、理解を深めた上で、それから『2』本編を見る、というのが一番望ましいです。昔いちど『LotR』見てる、という人は、ネタバレも何もないので、本編前に予習的に読んでしまってもいいかと思います。その上でもう1度本編を見てみると、「これはこういうことだったのか!」と話がつながってくる部分も出てくるかと思います。とにかくですねえ、上辺だけサーッと見て、それだけでも楽しいは楽しい作品なんですが、それじゃもったいないワケですよ。やっぱ、最終的にはアカデミー賞とってますから!しかも史上最多部門とってますから!極論すれば、映画史上最高の作品(極論です!)とも言えるのかもしれません。さすがにこれは、できるかぎり深いレベルで堪能しといて惜しくはない作品でしょう。ということで、今さらながら感は若干残しつつも、当チャンネルで手厚く紹介しとくべきだよなーと思い、これから3回に分けて、三部作各話について書いてきますんで、おつきあいのほど、よろしくお願いいたします。■©MMI New Line Productions, Inc.All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.11.28
池澤春菜さん特別寄稿!『ナルニア国物語』
みなさん、こんにちは。池澤春菜と申します。12月の特集「世界三大ファンタジー」のナビゲーター役を務めさせていただきました。自分でも大好きなこの三作品、これを機に少しでも多くの皆様にお届けできたら!!でも、スペシャル番組は15分、とても作品の魅力を語りきれるわけがない……と、いうことで、こちらに場を借りて、トコトンコッテリ語らせていただきます!!まずは、言わずと知れた「ナルニア国物語」。C.S.ルイスの手による、七作品からなるナルニア国にまつわる物語。時々名前がC.W.ニコルとごっちゃになるのは、ナイショ。第六巻の「魔術師のおい」でナルニアの創造を、そして第七巻の「さいごの戦い」でナルニアの終焉と再生を描く、不世出の児童文学です。子供に対する優しい目線。世界には善も悪もあるが、最後は必ず善が勝つ、という明確な観念。物言う獣と、フォーン、ユニコーンといったファンタジー世界の生き物たち。そして、圧倒的な存在感のアスラン。読めば読むほど、心に明るく温かいものが満ちてくる、そんなお話。あぁ、ナルニアのある世界に生まれてきて良かった!!!!!子供の頃、寝る前にナルニアを読んでは、夢の中でナルニアに行くのが一日の一番の楽しみでした。「ライオンと魔女」は正に目の前でナルニアの扉が開かれるような、入門編にはピッタリの一冊。初対面の人とはお茶、どんな緊急事態でもお茶、イギリスの方にとって(ビーバーにとっても)お茶がどんなに大切かが良くわかる一冊でもあります。お茶がなくては夜も明けぬ。「カスピアン王子のつのぶえ」は「ライオンと魔女」のなんと1000年後。あのビーバーご夫妻も、タムナスさんも、もはやチリも残っておりませぬ……むごい。でも、新登場のカスピアンは、素敵に頑張る少年です。なんとシリーズ最多の四作品に登場!!「朝びらき丸 東の海へ」は、そのカスピアンが少し成長して、東の海へ探求の旅に出る物語。「銀のいす」は作品中では、どちらかというと地味目の印象。だって荒野に、巨人の国に、地底国。そして、三人いる主要登場人物の一人の名前が「泥足にがえもん」。でも、このにがえもんさんのキャラ、ジワジワ来る中毒性アリ。「馬と少年」は唯一、ナルニアのお隣カロールメンの子供が主人公。異国的な雰囲気溢れる、作品中でも少し色彩の変わった一作です。自惚れ屋さんのものいう馬ブレーが最高。「魔術師のおい」は、ナルニア創世編。大人になっても駄目な人はダメ、との印象を幼い私に植え付けた一作でもあり。善良な馬車屋さんと、彼の馬イチゴの伏線には、仰天です。「さいごの戦い」で、ナルニアは一度終焉を迎えます。でもなくなってしまうわけではなく、箱庭のように展開されていたナルニアの世界の蓋が一度閉じられるような終わり方。そしてまたいつの日か、箱を開ければ、そこにはちゃんとナルニアはあるはずです。七作品どれも捨てがたいけれど、一番のお気に入りは「朝びらき丸 東の海へ」。もうあの、異国情緒溢れる青い表紙を見ただけで、今でもわき上がるパブロフの犬的なトキメキ。どちらかというと、ていうか完璧にイヤな子のユースチス(子供心になんて言いにくい名前かと)が、見事にギャフンと言わされて改心する様にもスッとしますし。各島の特徴ある魅力、船の生活。ちょっと大人になったカスピアン王子の「つのぶえ」時代とは打って変わった統率力。「お前、あんなに初々しかったのに……」と、その成長っぷりに一抹の淋しさを覚えたものです。リーピチープは微笑ましくも、凛々しいし。そうして最後にたどりついた、海の果て……ここの描写が圧巻!! 西の人は「東」にこんなにも憧れを持っているんですねぇ。現在映画は「カスピアン王子のつのぶえ」まで公開されているので、この「朝びらき丸」がもう、楽しみで楽しみで。リーピチープはやっぱり、ふるCGなのでしょうか……?ちなみに。余談ではありますが、C.S.ルイス、お友達でもあった「指輪物語」の作者、トールキンに第一巻を朗読して聞かせたところ、「サンタクロースが出てくるなんて変だよ!!」と言われ、しばらく凹んで続きがかけなかったそうです。あ、危ないところでした……トールキンったら余計なこと言って!! 私にとっての善きもの、明るいもの、幸せなものが何もかも詰まっているナルニア。文中で箱庭と例えましたが、正にそんな感じ。蓋を開ければ、そこはナルニアの箱庭。のぞき込んでいると、外界の憂さなんて綺麗サッパリ忘れて、この世界にひたすら没頭できちゃいます。原作を読んだことのある方は、また違った描き方をされている映画を楽しんでみてください。まだ原作を読んだことのない方は、ぜひこの機会に原作も読んでみて下さいね。で、以下「指輪物語」「ゲド戦記」と書き進めていこうと思ったのですが……とても字数が足りない!!以下次号……でも、良いですかね?良いって事に勝手にして……待て、以下次号!!!■ 『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』© Disney Enterprises. All rights reserved
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COLUMN/コラム2008.11.07
セクシー映画?ツンデレ萌え映画?さて、その正体は?
唐突ですが、「情婦」と聞くと世間一般の人はいったい何を思い浮かべるんでしょうね?僕は「情婦」っていうと、「婦」つながりで、ついつい「娼婦」とか「裸婦」といった、なまめかしいというか、ヤラシイというか、ヒワイというか、ともかくそんな言葉を連想してしまいました。こんな思考回路なので、『情婦』にも、古くはシャロン・ストーンの悩殺足組ポーズで一世を風靡した『氷の微笑』に代表されるR18級の妖艶な映画を期待したわけです。しかし、ご存じの方もいるかもしれませんが、ビリー・ワイルダー監督の『情婦』は、まったくもってそういう映画じゃないのです。そもそも製作されたのが1957年ですから、『氷の微笑』的セクシーシーンが出てくるわけない。モノクロだし!さらに追い打ちをかけるように、冒頭シーンは法廷。メインで出てくる男は、劇中で他のキャストからも指摘されるように、正真正銘の古ダヌキ的ジジイ。(演じたチャールズ・ロートンはこの作品でアカデミー賞にノミネートされました。)絶対に違う! セクシー映画なワケない! セクシーどころか、正義を貫くおカタイ法廷モノかよ?(←まだ勘違いしている)諦めが早い僕の性格も手伝って、当初抱いていたヒワイな期待は冒頭であっさり覆されました。ですが僕は途中で見るのをやめるわけでもなく、なかば羽を失った鳥のように絶望の淵に立ち、さも期待せずに、虚ろな目で『情婦』を見始めたワケです。もしまだこの時点でセクシーシーンを期待している輩がいるとしたら、相当にあきらめが悪いか根性のある人です、間違いなく。ところが、期待を裏切られた作品(←勝手に思い込んだだけ)にもかかわらず、この『情婦』相当に面白いです。ストーリーを簡単に説明すると、僕の期待を打ち砕いた古ダヌキってのは、病み上がりの重鎮弁護士。そこに退院早々、依頼人がやってくるわけです。話を聞いてみると、ふとしたきっかけで仲良くなった未亡人がある日殺されていて、疑いをかけられていると言う。依頼人はチョイ軽い感じのプレイボーイ風。でも話を聞いてみると、割とイイヒト。嘘をついている様子はないし、話も筋が通ってる。最初は乗り気じゃなかった古ダヌキも、依頼人を包むイイヒトパワーに負け、結局ヨッシャ!ワイに任せとけ!(←なぜか関西弁)と弁護を引き受けることに。で、ここからが面白い。古ダヌキは早速、依頼人のアリバイを立証しようと奥さんに話を聞くことにします。依頼人によると、夫婦仲はサイコー。しかし夫婦仲サイコーの場合、法廷で奥さんの証言は有力な証拠にはならない・・・。夫を愛していれば、彼を守ろうと奥さんがウソをつく可能性も高いですからね。でもとにかく話を聞いてみなくては。古ダヌキは考えます。そうして奥さん登場。「主人は殺してません!彼がそんなことするはずないわ!!」トーゼン、そんな台詞を期待(予想)する古ダヌキ+視聴者。ところが!奥さんチョー冷たい!エリカ様も真っ青の「別に・・・」的コメントが続きます。おいおい! 夫婦仲サイアクですよ。苦しい生活から救いだしてくれたはずの夫に、ぜんっぜん助けブネを出さない。もしやこれって、最近よく聞くツンデレ?! アカの他人(ここでは古ダヌキです)の前では素っ気ない態度で、まわりに人がいなくなった途端、カレシに甘えるタイプ?!夫が犯罪者になるかもしれないってときにツンデレてる場合じゃないですよ、奥さん。ところが奥さん、ツンデレでもない。というのも古ダヌキの前はおろか、法廷でも夫に不利な証言ばっかりしちゃうんですよ。しかも場外ホームラン級の決定打を何発も。おい! ツンデレじゃなくて、ただの冷たい女かよ! 殺人の容疑で逮捕されたうえに、最愛の妻にまで裏切られ、なんて哀れな依頼人。挙げ句の果てには、生前、遺産が依頼人へ相続されるように、被害者が遺言状を書き換えていたのが判明するわ、被害者宅で働いていたメイドが出てきて、自分が貰うはずだった遺産を横取りされた腹いせに、テキトーな証言をするわで、依頼人はさらに窮地に。財産目当てっていう動機も見つかったし、奥さんとメイドの証言もあるし。アリバイは立証できないし。もうダメ依頼人! 容疑確定!!しかしさすがは腕利き弁護士。哀れな依頼人の無実を立証しようと、古ダヌキはさらに頑張ります。そこへ依頼人を窮地から救う、思いがけない有力な情報が・・・。今作で哀れな依頼人を演じたのはタイロン・パワー。当時の二枚目スターなんですが、ほんと、その姿が同情を誘うんですよ。古ダヌキが彼を助けたくなる気持ち、痛いほど分かります。『がんばれ!ベアーズ』※もとい、頑張れ古ダヌキ! 「依頼人を助けてあげてくれ!」きっと誰もが、こう願うはずです。そうして物語はエンディングへと流れ込み、ラストには映画史上に残るどんでん返し!が待っています。うーん。参りました。しかもですね、このどんでん返しがひとつじゃないんですよ。僕もまんまとひっかかりました。見終わった後、気になったので「情婦」を調べると、「内縁関係にある女性」って意味を持つようです。つまり愛人のことですね。あ、常識?当初、僕はヒワイな言葉を連想しただけでなく、「情婦」が情け深い女性、一途な女性のことを意味する言葉だと思い込んでいたので、途中までツンデレ奥さんのことを「ぜんぜん、情婦じゃないぞ!」と勝手に憤ってました。でも映画を最後の最後まで見ると、タイトルが持つ意味もわかります。蛇足ですが僕が映画を観てとくに気になったのは裁判風景。検事とか、弁護士とかがみんなバッハみたいなカツラをかぶってるんです。気になったので調べてみると、イギリスの法廷ではカツラを着用するのが義務づけられており、驚くべきことにそれは今も続いているとのこと。しかしここ数年、イギリスでは伝統衣装というか、制服というか、このカツラを含む法廷での服装について議論しており、ついに昨年から民事裁判ではバッハ風カツラも廃止されることになったそうです。民事裁判では?つまり刑事裁判では引き続き今も、バッハな出で立ちで弁護したり、立証したりするわけですね。うーん面白い・・・すごく変だけど。 ちなみにこのカツラ、結構お高いそうですが、支給されるらしいです。日本では弁護士や検事にバッジが支給されますが、それと同じようなものなんでしょう。と、ここまでイギリスの裁判事情を知ると、他のバッハ風法廷シーンが観たくなりますよね!もしご存じの方は、このサイトの「ご意見・ご要望」のところからでもお知らせ下さい!それにしても近頃、ミステリー小説の旗手、東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズが相次いで映像化されたり、『このミス』大賞を受賞した『チーム・バチスタの栄光』が映画に続いてドラマになったりと、にわかに盛り上がりを見せるミステリー界ですが、この『情婦』も負けてませんよ。さすがはアガサ・クリスティ原作です。そんなわけでツンデレ女性好きだけでなく、イギリスのヘンテコな裁判風景も楽しめる『情婦』。でも、その正体は最高のミステリー映画なのです。■ (奥田高大)
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COLUMN/コラム2008.09.30
新企画『ミュージック・シネマ』開始!
ほんと突然ですがクイズです。 問題:次の映画の主題歌は誰が歌っていたでしょうか?1『フェノミナン』2『ボディガード』3『スペース・ジャム』※答えはこのブログ最後に書いてあります。簡単だったかなあ?答えがわかったひとも多いのではないでしょうか?映画からの大ヒット曲も過去から沢山あると思いますが、プロモーション・ビデオの隆盛で映画と音楽が、世間一般により直結しやすくなったのって80年代以降ですよね。早いものでかれこれ30年近くなります。月並みな言い方ですけど、それほど映画と音楽って密接な関係にいるわけですよ。映画はスベッたけれども、曲だけ一人歩きしたものも多いですし、逆もまたしかり。ある映画を見ていて挿入曲が気に入ってエンドロールで曲名控えたり、サウンドトラック買いにCD屋さんに買いに行ったりしたことのある貴方!そんな映画好き、音楽好きの貴方に朗報です。映画の主題歌プロモーション・ビデオを映画本編終了後に併せて放送する新企画『ミュージック・シネマ』が10月よりスタートいたします!月1作品、映画とともに大ヒットした選りすぐりの名曲を映画とあわせてお楽しみください。 記念すべき企画第1弾は前述したクイズの問5、ホイットニー・ヒューストンが歌った『ボディガード』の主題歌『I will always love you』をお送りします。決してこの映画、音楽だけがよかっただけじゃあございません。90年代を代表するラブ・ストーリーでもある本作は映画主題歌とともに大ヒットしましたよね。▼あらすじワガママ大物スターのホイットニーが何者かの脅迫を受けているんだけれど、現状の彼女への警備体制は穴だらけ。シークレットサービス出身のプロ中のプロ、ケヴィン・コスナーが、そんな彼女のボディガードを引き受けた。厳しい彼の存在を嫌がるホイットニー。しかしある事件がきっかけで頼りにするようになって、次第に惹かれ合うようになっていく?。この当時のケヴィン・コスナーも格好いいのなんのって。『ウォーターワールド』、『ワイアット・アープ』で世間からのダブルパンチを受けるまでの彼は無敵です。で、こういう映画を見てしまうとサウンド・トラックが欲しくなるのが、人の心理と言うもの。プロモーション・ビデオ以外の映画挿入曲もどれも秀逸で、CDもブックオフとか行けば簡単に手に入ります。見つけたら即買いですよ。チャカ・カーンのカヴァーとか今聞いても鳥肌ものですよ。オリジナルより好きです、僕。とにかくこの企画、非常にバラエティに富んだ選曲で、音楽系のチャンネルでもが中々見ることが出来ない曲も今後予定しています。お楽しみに。まずは今月『ボディガード』で涙してください!■(しじみ)※問題の答え1、エリック・クラプトン"Change The World"(12月放送)2、ホイットニー・ヒューストン"I will always Love You"(10月放送)3、R.ケリー”I Believe I Can Fly”(11月放送)他SEAL等も可
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NEWS/ニュース2008.09.29
08年アメコミヒーロー映画フィーバー、いよいよ真打『アイアンマン』登場!
いやいやーアメコミヒーロー映画の公開、夏の間じゅう立て続きましたなぁ。『インクレディブル・ハルク』、『ダークナイト』、『ハンコック』(アメコミじゃないけど、それ風のスーパーヒーロー映画ではある)ときて、さぁ、いよいよ、『アイアンマン』ですよ! 特に『ダークナイト』と『アイアンマン』の2作って、本国で興収ウン億ドルを記録したとか、それが歴代興収ナン位とか、数字で語られちゃうぐらいの物凄いヒットの仕方だったらしいですな。数字が嫌いなワタクシ的には、何億で何位とか、まるっきし興味ないのですが、とにかく、面白いということだけはこの目で確かめたんで分かった!(と言いながらマイベストは『ハンコック』だったりしますが) で、その『アイアンマン』なんですが、これも、個人的にはいたく気に入りましたねぇ。いや、スーパーヒーローものなので、クライマックスはセオリー通りの硬いラスボスが出てきて、そいつと我らがヒーロー・アイアンマンがガチな死闘を演じるワケですが、そこに至るまでの中盤ですよ、僕がいたく気に入ったのは! アイアンマンの正体は、軍事企業の社長のオッサンです。しかも、一昔前に流行った“ちょいワルおやじ”系な。商才あってリッチでメカに明るくて頭良いけど、軽薄でスケベでニキータな女をお持ち帰りしてはコマす(誰なんだよニキータってのは)、っていうような輩です。あ、ちなみにこの写真はおやじランニング姿ですが、普段はちょいワルルックでキメてて、ギラギラした感じがジローラモ級にかっこよいです。このオッサンが冒頭、新兵器のデモンストレーションのためアフガンに飛びます。軍産複合体の一翼を担う大企業の社長とあって、現地米軍の方でも、下にも置かない接待っぷりです。しかし、米軍のHMMWV(と書いて「ハンビー」と読む)に乗っけてもらって悪ノリしながら移動中に、案の定、テロリストが仕掛けたIEDが炸裂!同乗してた護衛の米兵たちは銃撃してきたテロリストどもに殺され、社長だけが拉致られ、アジトに連行されます。で、テロリストのボス(これ中ボス)から、大量破壊兵器を製造するよう脅迫されるのです。アジトには彼の会社の兵器のパーツが山積みで、社長は技術畑の人なんで、これだけ材料がありゃ作ろうと思えば何でも作れちゃうんですな。そこで社長は、テロリストどもの目をごまかしながら、大量破壊兵器じゃない、別の物を作っちゃうのです。それがアイアンマンのパワードスーツ(の言うなりゃ零号機)。で、テロリストにバレる寸前にこれを完成させ、蒸着!ここからです、いたく気に入ったのは!いやー気持ちいいのなんのって!! テロリストをやっつけるやっつける!それも超一方的に!! 連中がAK(と書いて「アーカー」と読む)とかでパラパラ撃ってきても、屁のツッパリにもならない。で、手製火炎放射器で倍返し!痛快だわーこれ!!連中のアジトを完膚なきまでにブッ潰し(はぁースカっとした)、無事、アメリカに生還。そこで、自分のビジネスが世界を平和にするどころかますます危険にしてると遅まきながら悟り(早く悟れよアメリカ人)、アイアンマン・スーツの改良を重ね、初号機、弐号機とバージョンアップさせていきます。 で、いよいよテロとの戦いを個人で開催。満を持して弐号機、赤射!今度はわざわざ好きこのんで紛争地帯まで飛び(空飛べます)、武装勢力を徹底的にブチのめし(またワンサイドゲーム)、避難民を助けます。このように、ラスボスが出てくるまでは、常にアイアンマンのワンサイドゲームなのです。『ロボコップ』でラスボスED-209が出てくるまでの、ロボコップが町にはびこる犯罪者どもを片っ端から退治しまくった中盤、あの痛快感と相通ずるものがありますな。我が心の師・セガール親爺が、その高邁なる作品群を通じて教えてくださったことのひとつに、敵キャラが強い必要はない、正義のヒーローだけが強けりゃいい、敵キャラは、ヒーローが繰り出すセガール拳でただ叩きのめされてりゃそれでいいんだ、という映画の真理があります。そういう構造を持った映画って、たしかに、見ててムっチャクチャ気持ちいいんですよね!しかも本作の悪党(ラスボス以外)というのは、あの、人質のクビ切ってビデオで流しちゃうような鬼畜テロ集団。情状酌量の余地もない絶対悪ですからね。21世紀の現代を生きる人なら誰もが許せないと思ってる連中が、バッタバッタと斃されるワケですから、見てて血沸き肉踊るのですよ。ということで、映画見ててこんなに痛快感を覚えたのは、かなり久しぶり。個人的にはいたく気に入りましたねー。さてさて。主役のちょいワルCEOを演じたロバート・ダウニーJr.が、公開を前に来日しましたんで、先に本編をマスコミ試写で見て興奮冷めやらぬワタクシ、彼の会見の取材にもノコノコ行ってきました。ここからはその模様をお伝えしましょう。 ロバート・ダウニーJr.、『チャーリー』以来、実に15年ぶりの来日なんですなぁ。まず、15年ぶりの日本の感想を求められ、「…別に。前回と変わらない」と、エリカ様ばりのコメント。しかし、目が笑ってるのでシャレと分かり、報道陣もひと安心。『アイアンマン』大ヒットの秘訣について聞かれると、「こんな映画なのに女性にもウケたってのが勝因だな。いやホント、これがオレの回りの女どもにウケてるんだって。なんだっけ、SATCだっけ?あれにも男客が入ってるみたいだけど、あの男どもは、ただ女に引っぱり出されたきただけだろ」と、のっけから飛ばしまくり(そういやあんた、むかしSJPと付き合ってなかったか!?)。もう止まりませんぞこのオッサンは!エリカ様も、こういうブラックユーモアを学ばないとね。でも、こういう人、どっかで見たことあるな…「いゃー、最近のオレってノッてるよね。25年この商売やってて今が一番いい。これまで、つまんねー映画ばっか出てたからなー。ここ数年はなんか冴えてるよ。ま、冴えてたこと自体が25年間で初なんだけどな」などとますます舌も滑らかに自虐トークをかまし、ここらへんからは報道陣も大ウケ!たしかにアンタにゃこれまでいろいろありましたよねぇ…。ちょいワルどころか大ワルおやじ、どころか服役してましたよねぇ…深くは書きませんけど。にしても、ますます見たことあるぞ、こういうキャラのオッサンを。オッサンと言えば、アイアンマンってのも、普段はスーツ着たただのオッサンです。で、そのスーツ(背広)脱いで、パワードスーツ(メカ)を装着すると、一個の戦闘兵器と化し、マッハで空飛んで、アメリカ様がウチの国の自衛隊には売ってくれないF-22ラプター(しかも2機)とも互角に渡り合えちゃうし、旧東側の兵器で固めたテロリストどももギッタンギッタンのバッタンバッタンにのせちゃえる。パワードスーツ脱いだら、なんの超能力も無いただの中年なんですけどね。「そこらへんの設定に男も燃えるのさ。クモに噛まれてスーパーパワーとか、そんなもんありえないだろ。こちとらテクノロジーなんだよ、テ・ク・ノ・ロ・ジ・ー!」確かにスーパーパワーをゲットする過程がアメコミにしてはリアルなので、オトナの男性客も自己投影とか感情移入をしやすいですし、男だけでなく女性にウケたってのも、男子感ただよう突拍子もない変身方法じゃなかった点が大きいのかも。「最後に最近元気ない日本のオッサンにエールを送ってくれってか?…40歳なんてまだまだ人生半分。これからだよ、これから!昔の映画とかだと、オッサンのスターが自分の半分ぐらいの年頃の娘と恋に落ちたりとか、普通にあったぐらいだし。もっとも今あれやったら完璧ペドだけどな。まぁ、とりあえず頑張れや」あーなんか思い出してきたぞ…この人、日本で言うと陣内孝則なんだ!あの人も軽口でドラマの会見とか完全にさらっていきますね。「どうせ脇役の私のコメントはあまり載らないでしょうから、こうなったら好きなことを適当に喋ります!」って公言して会見をワンマントークショーにしたりとか。ハンパな若手芸人が同席しててもそっちより全然トークが面白い!あの人も報道陣ウケはいいですな(で、肝心の主役の人のコメントが少なくて、後で大いに困ったりする)。決定! 今後、ロバート・ダウニーJr.は「ハリウッドの陣内孝則」ということで。報道関係者はまた来日してくれるのを楽しみに待ってますぞ。15年も間を空けずにチョイチョイ来て下さい。■ © 2008 MVLFFLLC. TM & © 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.08.29
これぞ正しいアイドル映画、『リジー・マグワイア・ムービー』
「イヤねぇー、最近のアメリカのアイドルって下卑たスキャンダルにまみれまくりで」 「そこがいいんじゃない!」 と、みうらじゅん風に始めてみました。ドラッグ、アルコール、セックス、奇行、逮捕などなどのスキャンダル渦巻くアメリカのショウビズ界において、とうに絶滅したはずの太古の種の生き残り、オゴポゴやモケーレ・ムベンベ等とならぶUMAの一種とされる、「清純派アイドル」。 スキャンダルなど無縁。エロい話題はご法度。清く正しく美しい萌えな、品行方正の美少女。オナラもしなきゃトイレにも行かない、という特異な生理を持つとの学説もある、謎の超自然生命体「清純派アイドル」でありますが、その実在がアメリカでついに確認されたのは、21世紀初頭のことでした。それが、ヒラリー・ダフ。略して“ヒラダフ”なのであります! ブリトニー・スピアーズの下、いま現地で大ブレイク中のマイリー・サイラス(日本で言えば平成生まれ)の上の世代。リンジー・ローハンとは同世代のライバル関係で、まさに、ゼロ年代を代表するアイドルです。上で名前をあげたみなさんは、スキャンダルにまみれておいでの、自由奔放なちょっと困ったチャンたちなんですが、唯一ヒラダフ嬢だけ、これまでスキャンダルらしいスキャンダルも無く、純潔のイメージを守り抜いてきたのですな。最近の彼女は、ディズニー・モバイルのCMで日本のお茶の間でもすっかりおなじみですね。っていうか彼女もふくめ、上記のスキャンダラスなみなさんも全員が、実は某ディズニー・チャンネルから出た人たちなのです!すごいぞ某ディズニー・チャンネル!!ここ10年の某ディズニー・チャンネルって、トップアイドル輩出機関的な役割をはたしてて、そっち方面が好きな御仁は要チェックなのです。日本で言えば、70年代の『スタ誕』か、80年代の『ミスマガジン』か、90年代の『ボクたちのドラマシリーズ』&『月曜ドラマ・イン』状態。そのヒラダフ嬢がローティーンのころに出演し、ブレイクするきっかけとなったのが、連続ドラマ『リジー&Lizzie』。中学生のリジーを中心に、彼女の学校生活や家族模様なんかをコミカルに描いた、ティーン向けのドラマです。で、今回ウチで放送する『リジー・マグワイア・ムービー』とは、何を隠そう、その『リジー&Lizzie』の映画版なのです(あー回りくどい!)。 この映画で、冒頭リジーは中学校(あの、ファンにとっても思い出深い)を卒業。いつもの仲間たちと一緒に、卒業旅行ならぬ高校の入学旅行でローマに行きます。そこで、イタリアのイケメンとのロマンスが待っている、という、豪華映画版なのです。学校行事の旅行ながら、おなじみのマグワイアファミリーももちろん登場します。 もう、これぞまさしく、正統派アイドルムービー!ってかんじですな。かなりムチャな話の運びやマンガチックな展開が目立つティーン向け映画ですが、そこはまぁ、あげ足とらんと、相好くずしっぱなしでヒラダフ嬢のかわいさを愛でる、というのが、オトナゲある鑑賞態度でしょう。 ちなみに、連ドラの方を一度も見たことなくても楽しめる作りになってますが、補足説明しときたいところが一ヶ所だけ。冒頭、慣れない卒業式用衣装を着たリジーとゴード(っていう仲良しの男子)の、 「ゴード、私の見た目、OK?」 「リジー、僕は君の男の親友だ。その手のことならミランダに聞いた方が確かだよ」 「あの子、今、メキシコ・シティよ」 「あぁ、そうだったっけ」 といったようなやりとりがありますが、「ミランダ」なる人物、“不在”の理由がこの短いセリフで説明されただけで、それっきり、この映画には出てきませんし、二度と触れられもしません。 連ドラでは、ドジっ娘(萌え)白人のリジーと、ユダヤ系お利口男子のゴード、そして、そのミランダってヒスパニック系のおきゃんな女の子が、仲良し3人組でワンセットなのです。リジーにはほんとは、異性の親友と同性の親友がいたんですねぇ。 連ドラ版ファンにとって、この栄えある映画版(連ドラ版の完結編でもある)にミランダが出ないなんて、まったくもって、けしくりからん事態!たとえるなら、『ドラえもん』最終回劇場版に、なぜかスネ夫だけ「家族でおフランスでバカンス中」とか、ジャイアンだけ「カアちゃんにお使いたのまれた」とかのしょうもない理由で、1シーンも出番が無い、というのに匹敵する、断じてあってはならん、ファン置き去りの許しがたい事態なのです!! でも、連ドラを見たことない人にとっては、そんなのどうでもいい話。そこで引っかからない分、連ドラからのファンよりこの映画を素直に楽しめちゃうかもしれません。 ところで、そのミランダも出るけど、ミランダの妹が主役(それがなんと『ウェイバリー通りのウィザードたち』のセレーナ・ゴメスなんだとか)、っていうファン垂涎の『リジー&Lizzie』スピンオフ・ドラマが、アメリカで作られたとか作られてないとか、作られたけども放送のメドが立ってないとか…。ってそれ絶対都市伝説だろ!ぐらいあやふやで不確かな話が、米本国ではここ数年ささやかれてる模様。それ、見れるもんなら激しく見たい!某ディズニー・チャンネル様、おがみます!!で、最後は、例によって吹き替えの話。もとが連ドラなので、それを見てたファンはもちろん字幕よりも吹き替えの方に耳が馴染んじゃってるワケです。そこは吹き替え尊重チャンネルザ・シネマ、抜かりありません。字幕版とあわせて吹き替え版も、当たり前にお届けいたします!(9月字幕、10月吹き替え) ただ、「いゃー、吹き替えって、本っ当にいいもんですね!それではまたザ・シネマでお会いしましょう」が口癖の僕ではありますが、なんでもかんでも吹き替えが良いと思ってるワケでもないんです。この『リジー』は吹き替えもいいのですが(っていうかそっちに耳が慣れてるのですが)、あわせて字幕でも見たい作品なのです。 なぜなら、ヒラダフって子は、声がかわいらしいから。向こうの女優さんにはめずらしい、日本人好みのアニメ声といいますか。歌手としての彼女の歌も、曲の良し悪しより声質のかわいさで聴けてしまいます(ワタクシだけ?)。こういう女優は、本人の声も聞きたい! ついでに言うと、ヒラダフが清純派アイドルとしたら“ヨゴれアイドル”(いゃ、良い意味で)なイメージがすっかり定着してしまったお騒がせセレブ、ハスキーキュートなズベ公ボイスのリンジー・ローハンとか、あの迫力ボディとはあまりにチグハグな舌ったらずで甘ったるい声のJ.Loなんかも、ぜひとも本人の声で聞きたい女優さんです(またもワタクシだけ?)。にしても、なぜか歌手兼業な人ばっかですな。 ワタクシだとどうしても野郎目線になってしまいますが、女性のみなさん的にも「この俳優の重低音ボイスはシビレるわ」みたいなこだわりがある人って、けっこういるのではないでしょうか。 まさに、字幕がいいか吹き替えがいいかはケース・バイ・ケースってことでしょう。■ ©Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.08.26
【ロック・スター】祝!ジューダス・プリースト来日記念 ヘヴィ・メタルを愛する全ての人に
1980年代末から5年間程買っていた『ミュージック・ライフ』誌が出てきてパラパラ懐かしく捲っていた時のこと。 思えば、90年とかってガンズ・アンド・ローゼス、MR.BIG、モトリー・クルーとかが表紙を飾っていたんですよね。91-92年頃になると、なんか暗い雰囲気を持つ人達がネルシャツきて(むしろこの手の音楽の方が僕は主食だったりしますが)、汚いジーパン履いて紙面を賑わせていました。アソコを極端に誇張した革パン、鋲を打ったジャケットを羽織った人の比率は極端に減っていきました。いきなり過去の音楽として葬り去られてしまった感じで、臭いものには蓋をするような音楽シーンの変動は、当時中学生だった僕にとても衝撃的でした。今、読み返してみて、政治に対する怒りとか、偽善的平和を願って歌に託してみたりだとか、そんなものは微塵も感じさせず、酒だ、女だ、パーティーだ、と声高らかに歌っているこんなバカ・ロックは、極めて健康的だと僕は感じます。前置きが長くなりましたが、そんなハード・ロック/ヘヴィ・メタル賛歌を掲げる映画『ロック・スター』が、ザ・シネマに登場します。『あの頃ペニーレインと』に近いのかな。記者からの視点からだったペニーレインに対し、こっちの方はバンド・メンバー自身の映画ですけれど。あらすじは簡単。スティール・ドラゴンっていうアメリカ屈指のHMバンドがありました。彼らの人気はアリーナクラスの会場でも超満員。トリビュート・バンドをするほど崇拝しているマーク・ウォールバーグ君がひょんな事からそのバンドのヴォーカリストになりアメリカン・ドリームを叶えるのだけれど、まあスターともなると、色々ごたごたもあるわけで、っていうお話。ストーリー的にはそんなに大したことはないのですが、何しろ『BURRN!』誌を読んで成長した人達にはたまらない面子がてんこ盛り登場なのです。なんたって、架空のHMバンド、スティール・ドラゴンのメンバーがGuitar/ザック・ワイルド(ご存知元オジーのG)初代Vocal/ジェフ・スコット・ソート(イングヴェイ、タリスマンのVo)Drums/ジェイソン・ボーナム(ツェッペリンのボンゾの息子で当然Dr)Bass/ジェフ・ピルソン(ドッケンのB) なんです。こんなロックな人達が普通に演技しています(笑) 酒、女、ドラッグ、パーティーとバックステージではハチャメチャです。バイクでホテルの中乗り回したり、見ていてニヤニヤできます。加入したてのウォールバーグ君に 「お前の役目はファンの夢を生きる事だ」 って!21世紀には中々お目にかかれない名言です。 挿入歌もデフ・レパード、KISS、モトリー・クルー他80年代のヒット曲満載でお送りいたしております。是非ご覧になっていただいて、大いに興奮して下さい。余談ですが、バンドの音はB級メタルバンド、スティールハートに似ていると思ったのは僕だけでしょうか?映画にもちらりと出てくるし、曲も彼らが作っているのかなぁ。『BURRN!』誌読者だったR40世代の熱いご感想おまちしております。 9月下旬にはジューダス・プリーストも来日しますし、9月はメタル三昧ですね。■ (編成部 しじみ)
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NEWS/ニュース2008.08.05
08年アメコミ夏の陣、トップバッターは『インクレディブル・ハルク』
みなさん暑いですねぇ、『インクレディブル・ハルク』、もう見ました? この夏から秋にかけて、アメコミ・ヒーロー映画が波状攻撃的にやっくるワケですが、その最初を飾るのがこの『インクレディブル・ハルク』なのです。映画史的に見て、「2008年ってのはアメコミ・ヒーロー映画大豊作の年だったね」と言われること、もはや確実な情勢(今後も続々と公開されますが、それについては近日また書きます)。将来、「あの夏、私はその熱きムーヴメントの真っ只中にいて、すべてを体験し、目撃したのだ」と、遠くを見るまなざしで子孫に語り継ぐイカした年寄りになるためには、まずこの『インクレディブル・ハルク』を見なきゃ始まりませんよ。 今回ワタクシ、この映画に出演したエドワード・ノートンとリヴ・タイラーの2人にインタビューする栄光に浴しました。その模様のダイジェスト版がすでに当チャンネルでは流れておりますが、例によって、ここでは文字起こしして全文を掲載しましょう。 せっかちにも早速インタビューを始めようとするワタクシ。その、常人には計り知れないハイセンスな横山やすし師匠か『ケープ・フィアー』のデニーロ風なファッションを見たリヴ・タイラーから、「あなたの服キュートね。ベリー・スタイリッシュよ。私もメイン州に住んでた小さい頃、そんなような靴(デッキ・シューズ)履いてよく遊んだわ」との、み、み、み言葉が! Let’s 小躍り!夕星(ゆうづつ)姫アルウェン様にキュートって言われちった!! 嗚呼、かたじけなやもったいなや。前の夜、『魅せられて』DVDを見てギンギンにモチベーション高めてのぞんだ甲斐があったというもんだ。 …と、浮かれてばかりもいられません。限られた取材時間が惜しくて、リヴがせっかく気を使ってくれた“場なごませコメント”をあえて拾いには行かずに、いきなり本題に入る僕。しかもリヴを無視してまず主演のエドワード・ノートン相手に(リヴ・タイラーさんごめんなさい、そしてアイラブユー)。 で、早速ですがノートンさん。あなたは演技派、実力派、スゴい役者、というイメージが日本では定着してて、アメコミ・アクションの娯楽映画に出るって聞いた時はちょっと意外だったんですけど。 「だろうね。っていうか自分がいちばん意外。でもこのテの映画に出るってことは、自分的にかつてない経験なので、いつもと違うことができて良かったと思ってるよ。それに、ガキの頃にハマってた話に出られたのは、役者としてハッピーなことだしね」 (エドワード・ノートンでも子供の頃はハルクにハマってたんだ…) でも、あの天下のエドワード・ノートン主演ときたら、普通のアメコミ・アクションじゃないんでしょ? ハルクっていったら過去に何度も映像化されてるけど、やっぱり今作はちゃんとノートン印になってんでしょ? 「そりゃそうさ。ただのアメコミ映画じゃない。いろんな人に楽しんでもらえる作品に仕上がったと思うよ。それと、あれだね、言ってみりゃこれってシェイクスピアみたいなもんでさ、むかしっから何度となく再演されてるけど、そのつど何らか新しい要素が加わって生まれ変わり、次の時代に伝えられていく。ハルクの物語もそうやって伝えていきたいと思ってね。それに、世間でよく知られた作品をまた新たな創造世界に導くってことも、これまた役者としてはハッピーなことだしね」 なるほど。まさに、この人をして言わしめる、ってトコですな。 さて、お待たせしてすいませんリヴ・タイラーさん。どうも貴女が演じたベティって役のおかげで、今回のこの『インクレディブル・ハルク』はずいぶんとLOVEの要素が濃くなってると聞いてますが。 「そうね。たとえばTVシリーズのハルクって、根は優しいんだけど、すっごく孤独な存在で、独りぼっちで闘っているキャラだったでしょ?社会と関わっていきたいのに、自分がモンスターになってしまうって引け目があって、ジレンマを抱え込んでた。でもこの映画では、ベティの愛・ベティへの愛によって、そんなハルクが変わっていくの」 そうそう、肝心のストーリーを書き忘れてました。ブルース(エドワード・ノートン)は科学者で、アメリカ軍ロス将軍が指揮する人体強化薬の極秘開発プロジェクトにたずさわってたんだけど、自分自身に人体実験したその薬をオーバードーズしてしまい、モンスター化(このモンスターがハルクと呼ばれる)。緑の巨人に変身してバーサークし、秘密研究所をぶっ壊したあげくのはてに、同僚で恋人で将軍の娘でもあるベティ(リヴ・タイラー)にもケガを負わせた上、脱走してしまう。 一定時間たつと変身は解けて元のブルースに戻れるんですけど、体質的には永久に変わってしまって、以降、心拍数が特定値をこえるとハルク化する体になっちゃったんですねぇ。とくに、怒るのが一番よくない。心拍数が上がってヤバい事態になる。 そこでブラジルに渡って、怒りをコントロールするためヒクソン・グレイシーに呼吸法を習う、というかなり飛躍した思いつきを実行に移し、400戦無敗の男に横っツラを張られながらも必死に怒りをこらえる、というお笑いウルトラクイズすれすれな特訓をつうじて精神修養を積みます。 ただ研究プロジェクトをつぶされたロス将軍も黙ってません(娘をモノにした男ということで必要以上にブルースを目のカタキにしている模様)。ブルース=ハルクを生け捕ろうと特殊部隊をブラジルに送り込み、ブルースはその追っ手から逃げ回りながら「早く人間になりたーい」とばかりにキレイな体に戻るための科学的方法を研究しつづけ、ついに、結局はアメリカの大学で教鞭をとってるベティと再会することになるんですねぇ。 ブルースとベティ、焼けボックイについた火はメラメラと燃えあがり、一方でロス将軍の執拗な追跡は2人を着実に追い詰め、そのうえ将軍の部下の特殊部隊隊長が「おら、ハルクより強くなりてぇ。おらは宇宙いち強くなりてぇ」とドラゴンボール(しかもZ)的嫉妬にかられて暴走しだす。と、いよいよもって物語はドラマチックかつジェットコースターのような展開を見せていくのであります!さて、リヴ・タイラーのコメントを再開しますと、 「原作では、ベティとブルースを結婚させようって試みも何度かあったらしいの。それは悲恋に終わったんだけど、今回の映画では、そんな悲しいカップルをなんとか一緒にして、美しい物語に作ってあげたい、という気持ちがこめられていると思うわ」 そんなLOVE要素、そして、たたみかけるがごときアクション要素、そのうえ、クスっと笑わせるコメディ要素も案外ふんだんに盛り込まれていて、笑って、泣けて、手に汗握る、ありとあらゆる娯楽の要素をテンコ盛りにした、これぞエンターテインメント幕の内弁当状態なのですな、この映画は。 まさに、“2008年アメコミ・ヒーロー映画の夏”の口火を切るのにふさわしいトップ・バッター『インクレディブル・ハルク』。みなさん、ぜひ劇場に足を運びましょう!■