7・8月と2カ月連続企画としてお届けする「ザ・シネマ、That’s ハリウッド」キャンペーン。ザ・シネマはヨーロッパのアートフィルムやクラシックの名画なども放送しておりますが、何といってもメインはハリウッド!大作志向とスター主義、ハリウッド・リスペクトを公言して憚らないチャンネルであることを、この夏は改めて宣言します!!
さて、「ハリウッド」をテーマに、7月はアメコミ特集、8月はトム・クルーズ特集と2つの特集を柱に様々なハリウッド映画をお届けしていきますが、あわせて「特番:That’s ハリウッド」を制作。7月のPart1 「アメコミ・ヒーロー編」、8月のPart2 「トップ・スター トム・クルーズ編」と2ヶ月にわたってお届けします。

番組ナビゲーターに迎えたのは、アーティストでありミュージシャンの、あの石井竜也氏!

石井氏といえば大の映画好きとしても有名で、ご本人によると「LDは7000枚、DVDは5000枚持っています」(!)とのことですから、半端ではありません。それだけにとどまらず、90年代には『河童』、『ACRI』と自ら2作品を撮った映画監督でもあります。というわけで石井氏にナビゲーター役をお願いしました。その番組はぜひオンエアをチェックしていただくとして、ここでは、番組収録後に行われた取材会での石井氏のコメントをご紹介します。


Q : 本日の収録を終えられた感想を教えてください。

A: ハリウッド全般について話すことは難しい部分もありましたが、意外なことを知ることができて自分自身の勉強にもなりました。例えば7月放送の『300<スリーハンドレッド>』がアメコミ原作だということを知りませんでした。映画になるアメコミというのはヒーローものばかりだと思っていましたから、まだ知らないことがあるな、と学ばせて頂きました。
 
 それから、1人の役者さんの育ち方の変遷についても発見する事がありました。例えばジョン・ウェインの様な昔の役者さんは、日本で言う「寅さん」の様な感じで絶対的な立ち位置というものがあって、その位置から絶対に出ないようにしていた様に思えます。
 
 でも、今の役者さんは近未来作品にも出れば、悪役にもなるという様に、色んなジャンルに出演する。自分を変幻自在にすることで飽きられないようにしている。今と昔どちらが大変かと考えてみると、どちらも大変だと思いますが、やはり今の様な時代を生き残っていくというのは、すごく大変だろうな、と思いましたね。 
 
 
Q : 映画をたくさん観てこられたとのことですが、映画から学んだものがあれば教えてください。
 
A : 今回の放送作品で言うと『ハルク』からいろいろと気づかされることがありましたね。「スーパーモデルになってみたい」とか「変わりたい」という願望は誰もが持っていると思うんです。変身をテーマにした映画というのも、たくさんあります。『ハルク』もそうですよね。
ただ、日本だと、どこか「正義感を持った少年が正義のヒーローに変わる」といった様に、“変身”そのものがどこか順当に描かれることが多いと思うんです。でも、アメコミではスパイダーマンみたいに、いじめられっ子が正義のヒーローに変身しますし、“逆”の方向へ持っていくストーリー展開が多くて、それが面白いところだと思います。
私も米米CLUBに入って人生が変わりました。昔は母親の後ろに隠れる様な子供で、ステージの上に立つなんてとてもじゃないけれど考えられなかった。だから絵を描いていたわけで、鬱憤は絵でしか晴らせなかった。喧嘩も出来なかったし。けれど、今こうなっているのですから、どうなるか分からないですよね。
皆さんもそうだと思うんです、最初に会社に入ったときは何も分からなかったけれど、やっていくうちに職業に特化していけますよね。人間ってそうやって長い時間をかけて変貌していくものだと思うんです。
でも、映画っていうのはその変貌を数分で飛び越えるし、人生が変わる様なことが数分で起こる。そんなこと人生ではあり得ないけれど、それが映画では可能なわけで、それが映画の面白さですよね。
 

Q : 石井さんなりの映画の楽しみ方はありますか?
 
A : 映画は必ず3回観ます。どうしてそんなに同じ映画を何度も見るの?と家族やスタッフにも聞かれたりしますが、見方を変えてみているんです。例えば主人公が泣いているときに横で笑っている人がいるとか、それって1回見ただけでは見えないですから。最初は、主役中心の視点で見ていますが、2回目以降は主役以外の脇役や、ライティングや撮影方法、衣装等に注目して見るようにしています。やはり、“作る”ということに興味があるので、そういう点も気になってしまうんです。
 
 
Q : 今回の番組について聞かせてください。番組では、どんなお話をされているのですか?
 
A : 今回、ものすごくたくさんの映画を紹介するので、その全てを1つ1つ解説するわけにも行きませんから、「ハリウッド」という場所の持つ特殊性や「ハリウッド・スタイル」と呼ばれる、ハリウッド映画を作る上での特殊な分業制、という点からもお話させて頂いています。
ハリウッドは、夢を紡ぐにはとても大変な思いをする場所ですよね。僕自身『ACRI』という映画をオーストラリアで撮影していますから、ハリウッド映画の撮り方というものについて分かるのですが、アクション映画なんて、どれだけ大変なんだろう、と思いますね。映画監督の仕事を通して、現地の雰囲気というものが分かるので、そんな話もさせて頂いたりしています。幅広く話をするのは、ある意味難しかったですけれど、とても楽しくやらせてもらいました。
 
 
Q : 浅野忠信さんが出演される『マイティ・ソー』も放送されますが、ハリウッドでの日本人の活躍については、どう思われますか?
 
A : これからもっと多くなるのではないでしょうか。震災後、「日本人を見直そう」という潮流がヨーロッパで広がっていますし、アジアの中でも日本は「侍魂」を持った国として見直されていると感じます。すごく嬉しく思います。今の若い人は英語も学んでいますから、これからどんどん、若い日本人が世界に行ってくれれば良いなと思います。監督が世界に行くのはなかなか難しいけれど、役者さんはそれを飛び越えて世界に行けますから、日本人の役者さんにはどんどん外国のスクリーンに出ていって欲しいです。 
 
 
Q : 具体的に海外進出をしてほしい俳優さんはいらっしゃいますか。
 
A : 才能のある方という意味で、宮沢りえさんに出て欲しいですね。女優としての素晴らしいキャリアも積んでいらっしゃいますし、日本人らしい情緒と海外の血が混じっているだけの大胆な演技ができるのではないかと思います。
 
 
Q : ところで、好きなアメコミはありますか?
 
A : 50代のヒーローものといえばスーパーマンとかバットマンになりますよね。最近のバットマンはまるで悪者というか、ダークヒーローの様に描かれていますよね。今のアメリカの風潮やアメリカのヒーロー像が変わってきているのかなと感じます。映画というのはその時代を映す鏡の様な存在でもありますから、今のアメリカの“暗”の部分を反映しているのかな、と感じますし、時代の変遷も感じますね。
 
 
Q : 今回のアメコミ特集の中ですと一番好きな作品は何ですか?
 


A : 『300<スリーハンドレッド>』です。本当に大好きな作品で、何かにぶつかるとあの作品を見ます。
日本人は少数派が大勢に立ち向かうものや、弱い者が頭を使って強い者を倒すような物語が好きなのだと思います。ただ力技で戦うのではなくて、頭を使って技や五感や下手したら第六感まで使って戦う。何かのために命をかけることや、特攻隊のような物語は、日本人に受け入れられるのだと思いますね。
自分も空手をやっていて高校時代に2段を取ってすごく自信があったんですよ。ある時、県大会で160cmくらいの相手と戦うことになって「冗談かよ」と思って余裕でいたら、試合開始の次の瞬間に医務室で目が覚めた経験があります(笑)。小さい人は小さい人なりの攻撃法を考えているわけで、人を見下げちゃいけないな、とあの時学びましたね。だから、『300<スリーハンドレッド>』の、小さい人間たちが大きい人を相手に戦うようなストーリーに惹かれます。日本のそういった精神も、世界を動かしていけるんじゃないかなと思いますね。
 

Q : 8月にはトム・クルーズ特集が組まれますが、トム・クルーズについてはどう思われますか?


A : トム・クルーズとは同世代なんです。『トップガン』を見ていた頃は、女性に人気のアイドルといったイメージがありましたが、『コラテラル』『マイノリティ・リポート』の頃からはダークな彼が見えてきました。どんどん俳優としての迫力が出てきたなぁと感じます。
最近の彼の面立ちは、なんというか「作っていない」感じがするんですよね。だらしない父親を演じればそんな顔になりますし、演じている感じがしない。彼自身が、“トム・クルーズ”を演じることを辞めて、一人のアーティストとして、映画人として独り立ちしたのではないかな、と思います。
彼にはアメリカ人の持っている根性というものを感じますね。ヒットすると、周囲から求められるものが増えてきますけど、そんな中でも、それを振り払って自分らしく演じている彼は人格者だと思いますよ。

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この取材会でも映画愛あふれる楽しいお話をしていただきましたが、実は番組内でも、アドリブが炸裂。ミュージシャン・映画監督、石井竜也氏ならではの見地と体験談が制作サイドの思惑をこえてたっぷりと盛り込まれた番組となりました。
さらに、石井氏といえば芸術家としても有名。メディアを通じて氏の独特のアート作品をご存知の方も多いかと思いますが、今回のスタジオ・セットに使われたオブジェ、実は石井氏の作品です。そこにも注目して、「特番:That’s ハリウッド」、7月のPart1 「アメコミ・ヒーロー編」、8月のPart2 「トップ・スター トム・クルーズ編」を、ぜひご覧ください!
 
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