検索結果
-
PROGRAM/放送作品
リストマニア
[R15相当]“ピアノの魔術師”リストに材をとりながら超お下品!ケン・ラッセル印ロック・ミュージカル
鬼才ケン・ラッセル監督は幾つかの伝記映画とミュージカル映画をものしたが、その中でもリストを主人公にした本作は、ロックな反骨精神が炸裂!シュールにして意味不明+エロねたつるべ打ちの、フザけきった1本だ。
-
COLUMN/コラム2016.11.07
【未DVD化】天才ピアニストのリストがロケットに乗ってナチスと戦う! ケン・ラッセル屈指の珍作『リストマニア』は伝記映画が否か?
いくら真剣に話しても「そんなわけないでしょう」と一笑に付される映画がある。そんな代表例がケン・ラッセルの1975年作『リストマニア』だ。詳細に説明すればするほどにウソくさく、じゃあ実際に観てみてくれよと懇願しても、日本では劇場未公開でVHSビデオがリリースされたきり。ほとんど視聴する方法がなかったのだ。そんなカルト中のカルト映画がザ・シネマにお目見えするというから、いくら感謝しても足りないくらいである。 「リストマニア」とは19世紀の音楽家フランス・リストの熱狂的ファンを指す言葉。長身のイケメンで超絶技巧の天才ピアニストだったリストのコンサートでは、詰めかけた女性客が失神し(時にはリスト自身も失神し)、リストマニアたちがわれ先にステージに突進して贈り物を投げ与え、リストが使った後の風呂の湯を飲もうとした不届き者までいたという。言うなればリストは19世紀のロックスターで、世界初のアイドルでもあった。ビートルズ全盛期のファンの狂騒を「ビートルマニア」と呼ぶのも「リストマニア」から派生したバリエーションである。 そんなリストの生涯を鬼才ケン・ラッセルが映画化――と言うは易いが、完成した作品は伝記映画のカテゴリーに入れるにはあまりにもブッ飛び過ぎている。主演はラッセルの前作でもあるロックオペラ『トミー』(1975)に主演したザ・フーのボーカリスト、ロジャー・ダルトリー。音楽はプログレバンド、イエスのキーボーディストだったリック・ウェイクマンが担当。この時点で正統派のクラシック音楽に寄せる気がなかったのは明白だろう(ただし劇中曲の大半はリストやワーグナーの楽曲のアレンジ)。 舞台は19世紀のヨーロッパ。人気絶頂のピアニスト・リストは伯爵夫人マリー(フィオナ・ルイス)の間男になり伯爵に殺されかけるが、マリーと一緒に出奔して3人の子供に恵まれる。やがて倦怠期が訪れ、ロシア貴族のカロライン(サラ・ケッスルマン)に鞍替えするも、ローマ教皇(リンゴ・スター)に結婚を阻まれてしまう。一方リストの舎弟だったワーグナー(ポール・ニコラス)はリストの娘コジマ(ヴェロニカ・キリガン)を略奪婚して新興宗教の教祖に成り上がる。カギ十字マークの武装軍団を結成して世界征服に乗り出したワーグナーとコジマをリストは“愛の力”で止めることができるのか? 文字にすると本当にバカげている。でもふざけているわけでも盛っているわけでもないのだ。本当にこれが『リストマニア』のストーリーなのだ。もうちょっと簡潔にすると「セックス三昧のモテモテ音楽家リストが、悪の権化ワーグナーに戦いを挑む壮大なコント」ということになるだろうか。 もちろんナチスの台頭は20世紀なのでリストともワーグナーとも直接の繋がりはない。ただしヒトラーがワーグナーの音楽に心酔し、ワーグナーの遺族を援助したことは事実なので、ワーグナーとヒトラーを同一視したトンデモ描写を歴史への皮肉と解釈することはできる。しかしチョビ髭を付けたワーグナーがエレキギター型マシンガンで暴れまくるクライマックスを観て歴史の教訓を読み取ることは常人には至難の業だろう。 ケン・ラッセルのやりたい放題はまだまだある。ラッセルは『恋人たちの曲/悲愴』(1970)や『マーラー』(1974)でも音楽家の生涯を独自のスキャンダラスな解釈で描いているが、『リストマニア』では冒頭からメトロノームに合わせて伯爵夫人マリーのおっぱいを吸う下ネタギャグで幕を開ける。突然チャップリンの無声映画を完コピしたり、新興宗教の制服がスーパーマンのコスチュームだったり、ワーグナーが狼男とドラキュラとフランケンシュタインになってみたり、ジャンルの壁を飛び越えまくるアバンギャルド精神が尋常じゃない。 前作『トミー』では原作者であるピート・タウンゼントがラッセルの過剰な演出に不満を唱えていたと聞くが、自ら脚本も書いた『リストマニア』は『トミー』なんて目じゃないほどにイカレている。猥雑でデタラメでぶっ壊れていて、ある意味では作家主義の行きつく果てを教えてくれる啓示のような作品なのだ。 と、いかに『リストマニア』がムチャクチャかについて書いてみたが、リストの生涯や19世紀の音楽シーンを知るうちにデタラメな中にもラッセルなりの裏付けがあることがわかってきた。例えば映画の序盤に文化人でごった返すパリのサロンが登場する。そこにはなぜか男声で吹き替えられているSMの女王がいて、Mっ気のある男がすがりついている。この2人は誰あろう。天才音楽家フレデリック・ショパンと、ショパンの恋人で女性作家のジョルジュ・サンドなのだ。 ジョルジュ・サンドは男装で社交界に出入りしたゴリゴリのフェミニストとして知られ、ショパンは初めて彼女に会った時の印象を「男のような女」と書き残している。そういった史実をラッセルのけばけばしいフィルターを通すと、前述のようなSMカップルができあがるのだ。 また同じサロンのシーンで、ワーグナーがメンデルスゾーンのことを「金で音楽を作る男」と揶揄するセリフにも根拠がある。ワーグナーはユダヤ系のメンデルスゾーンを嫌っており、「音楽におけるユダヤ性」という論文で名指しで攻撃したことさえあるのだ。ヨーロッパにはユダヤ人を守銭奴扱いする伝統があり、その傾向が最も過剰な形を取ったのがナチスドイツによるホロコーストだったわけだが、この何気ないセリフの背景にはワーグナーからヒトラーへと繋がっていく反ユダヤ思想が横たわっているのである。 リストの伝記映画としても実はポイントポイントをちゃんと押さえている。リストが最初に不倫する伯爵夫人はパリの社交界の華だったマリー・ダグーで、リストとの間に3人の子供が生まれ、コジマ以外の2人が早世したのも史実の通りだし、カロラインとの結婚がバチカンに認められずに破局したのも現実そのまま。娘のコジマがリストの弟子で指揮者のハンス・フォン・ビューローと結婚していたのにワーグナーに奔ったドラマティックなエピソードはクラシック通以外にもよく知られた話だ。 ケン・ラッセルは前述したようにリスト、マーラー、チャイコフスキー、エドワード・エルガーと19世紀に活躍した音楽家の伝記ものを多く手がけており、当時の音楽事情にもっとも通じている映画監督だったろう。19世紀はブルジョワ階級が台頭し、サロン文化が花開いた。新しい価値観が現れて旧来の常識が良くも悪くも覆されていく。そんな世相や時代の空気を最もケン・ラッセル色を強めて映像化してみせたのが『リストマニア』ではなかったか。 本人が生きていれば深読みのし過ぎだと笑い飛ばすかも知れない。大好きな不謹慎ネタで歴史を混ぜっ返したかっただけかも知れない。しかしながら長らく底抜けのバカ映画だと信じてきた『リストマニア』が、実はアカデミックな教養と理解に裏打ちされた、もっと多角的に掘り下げられるべき作品であることは大きな発見だった。とにもかくにもこの貴重な機会を逃す手はない。未見の方には「こんな珍奇な映画には人生でも滅多に出会えない」という一点においてだけでも、ザ・シネマでの放送を目撃していただきたい。■ TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
-
PROGRAM/放送作品
三文オペラ
The Whoのロジャー・ダルトリーら豪華キャストが歌い踊る正統派ミュージカル映画!
ドイツが生んだ不朽の名作音楽劇『三文オペラ』を、『デルタ・フォース』のメナハム・ゴーラン監督が映画化。ラウル・ジュリアやリチャード・ハリス、ロジャー・ダルトリーら豪華キャストで贈るミュージカル大作。
-
COLUMN/コラム2017.01.25
男たちのシネマ愛Z①
飯森:ご無沙汰しています。なかざわさんとは久しぶりの対談となりますね。楽しみにしてましたよ。 なかざわ:こちらこそ、ご無沙汰しています。またまた飯森さんと熱い映画トークが出来るのは本当に嬉しいです。 飯森:一昨年末の第1回対談ですでに「愛すべき、未DVD・ブルーレイ化作品」というお題でトークしましたけど、あれがこの企画のプロトタイプなんですよ。で第5回の対談では「ザ・シネマSTAFFがもう一度どうしても観たかった激レア映画を買い付けてきました」という特集を取り上げましたが、そこで特集名称が固まって、今ではその「激レア映画、買い付けてきました」というのを準レギュラー特集として不定期にお届けするようにまでなってるんです。今回はそのシリーズ第4弾。全作品なかざわさんに選んで頂いたわけですけど、まずはその経緯の話からトークを始めましょうか。去年、連載対談をやっていた最後の方の頃で、なかざわさんにリストをお見せしたのが始まりですよね? なかざわ:はい、パラマウント映画の膨大な作品リストを見せてもらいまして、その中から自分なりの基準でチョイスさせて頂きました。 飯森:確か当初は6作品をご提案頂いたんですよね。ただ、諸般事情で買えない作品があり、結果的に残ったのが今回放送する4作品だったわけです。これは、どのような基準で選ばれたのですか? なかざわ:第一前提としてはソフト化されていない、もしくは過去に1度くらいソフト化されたかもしれないけれど、現在は見る術が殆どない作品ということです。 飯森:それはまさにうちの企画趣旨とドンピシャです! なかざわ:やはり、せっかく選んで放送して頂くのであれば、他では見る機会の少ない映画がいいと思いますからね。あともう一つの重要な基準は、世間の一般的な評価の良し悪しとは全く関係なく、あくまでも自分自身の個人的な思い入れや愛情のある作品ということ。 飯森:極私的チョイスですね。それもうちの企画趣旨どおりです。 なかざわ:なので、私の主観では面白いと思うけれど、誰が見ても面白いとは限りませんよと(笑)。 飯森:構わないんですよ。映画ってそういうものだから。それに、うちのチャンネルでもマトモな時間帯には、例えばこの春は『ハリー・ポッター』シリーズを全作品やりますとか、いわゆる売れ線の、誰が見ても面白い王道映画を当然放送してもいるわけです。でも、ド深夜くらいは「オレ色に染まれ!」じゃないですけれど、僕なりライターさんや評論家、あるいはリクエストを寄せてくださるマニアな一般視聴者の方が、極めて個人的に、異常な熱量でおススメする映画、しかも他では見れないような激レア映画をやっててもいいんじゃない?と思いますし、そういう映画チャンネルが1つくらいなくちゃダメだと考えています。なので、ウチとなかざわさんの考えが見事に合致したというわけですね。 なかざわ:それに、これだけマニアックなラインナップでも、ザ・シネマさんなら嫌な顔はしないだろうと思っていましたし(笑)。 飯森:不可抗力とはいえ、むしろ4本では物足りないぐらいですよ。今後もどんどんやっていきたい。しかも今回、日本では全作品DVDになっていない。そもそもVHS含めソフト化されていないものさえある。素晴らしい! なかざわ:ただ、海外だと『三文オペラ』以外は確か全部DVD化されています。 飯森:海外でも出てないと逆に問題がある。DVDが出てるかどうかは僕にとって、ひいては視聴者の皆さんにとっても影響大でして、DVDさえ出ていれば、DVD時代にマスターテープが作られたということですから、そのテープはSD画質だとしてもアナログではなく経年劣化のないデジタルテープで、DVDとして売れるような綺麗さで、そしてノートリミング(注1)のワイド画面で収録されているんだろうと期待できるわけで、ウチとしてはそれを取り寄せて字幕翻訳をし、上から字幕を焼き込んで日本語字幕完パケを作ればいい。 注1:かつてはブラウン管TVの画面が4:3だったため、ワイドの映画でもTV放映時には画面左右を切り落とし、4:3画面にぴったり合わせていた。これを「トリミング」と言う。HD以降、TVもワイド画面が主流になり、今では映画も切り落とさず(ノートリミング)ワイドのままで放送できるようになった。 一方、海外でもDVD化されてないとなると、これはマスターテープからしてVHSマスターしか存在しない可能性が高いので、トリミングもされてるだろうし画質も旧VHS時代のボケボケで経年劣化もしてるだろう、と察しがつくわけです。で、今回の『三文オペラ』がどうかと言うと…それは後ほどお話しすることにしましょう。もっとも、DVDが出ていても、4:3トリミング画角で収録されていたり猛烈に汚い画質で売られていたりする地雷ソフトも稀にありますんで、必ずしも安心はできませんけどね。 次ページ >> 『誘惑』
-
PROGRAM/放送作品
Tommy/トミー
ザ・フーの大ヒットアルバムが映画に!人気ミュージシャンたちの歌と演技で織りなす刺激的なロックオペラ
ロック・オペラの傑作として名高いザ・フーの同名アルバムを、カルト監督ケン・ラッセルが映画化。台詞がすべて歌で構成され、エルトン・ジョンやエリック・クラプトンら大物アーティストがパフォーマンスを魅せる。
-
COLUMN/コラム2017.01.25
男たちのシネマ愛Z③三文オペラ
飯森:では、第2週の『三文オペラ』の話へと移りましょうか。 なかざわ:これはご存知の方も多いかとは思いますが、ベルトルト・ブレヒトとクルト・ワイルが作ったドイツの歌劇が原作ですね(注11)。マック・ザ・ナイフという男前のギャングを主人公に、19世紀末ロンドン下町の乞食や泥棒、娼婦たちの巻き起こす荒唐無稽な騒動を軸として、資本主義社会の矛盾や不条理をユーモラスに風刺した作品です。そんな古典的名作をですね、あろうことかキャノン・フィルム総裁だったメナハム・ゴーランが映画化したわけですよ。 注11:岩波文庫のピンク表紙版はコチラ 飯森:彼は『アップル』というミュージカル映画も監督したことがあるそうですね。 なかざわ:はい。ちょうどオリヴィア・ニュートン=ジョンの『ザナドゥ』に影響を受けたようなミュージカルですね。かなり前に見たので内容はうろ覚えですけれど、悪い映画ではなかったです。 飯森:それはカルト的人気があるようですね。いずれにせよ、ミュージカルの演出経験はあったわけだ。それも納得というか、だってこの『三文オペラ』、普通に上手いですもん。 なかざわ:そこですよ。私がこの映画を選んだ理由は。メナハム・ゴーランはプロデューサーとして才能があることは勿論ですが、監督としても必要以上に過小評価されているんじゃないかと常々思っているんです。 飯森:いや、僕もメナハム・ゴーランは世代的に好きですよ。監督作の『デルタ・フォース』とか『オーバー・ザ・トップ』とか、フランコ・ネロの『燃えよNINJA』も。でも、バカでB級でいいよね、懐かしいしね、って感じで好きなだけで、高く評価されるべき監督ですかね?具体的にいうと? なかざわ:例えば『ハンナ・セネッシュ』。これは第二次世界大戦中に対ナチのパルチザンとして戦った実在のユダヤ人女性を描いた作品なんですが、反ファシズム映画として非常に良く出来ているんです。 飯森:去年の対談でも、買い付けてこいと激推しされてましたよね?『デルタ・フォース』みたいなイスラエルのプロパガンダ色の強い、偏った娯楽アクションではないんですか? なかざわ:いや、正統派の真っ当なパルチザン映画ですよ。 飯森:ほう、それは見てみたい!この『三文オペラ』も実に真っ当で正統派の映画ですし、なんだよ、意外とまともな映画も撮れんじゃん!って思いましたね。 なかざわ:さらに感心したのは、彼はドストエフスキーの『罪と罰』も映画化しているんですよ。しかも、ソ連邦崩壊後のロシアで。ちょうど90年代前半のロシア経済がどん底だった時期ですよ。これがなかなかの力作でね。 飯森:時代設定は原作の当時なんですか? なかざわ:それが現代なんですよ。90年代の荒廃しきったロシアが舞台。ドンピシャじゃないですか。ちょうど撮影当時のロシアの世相と原作の世界観が見事なくらいマッチしているんですよ。 飯森:100年経ったらぐるっと回ってタイムリーになっちゃったというわけか! なかざわ:しかも、主人公ロスコルニコフにクリスピン・グローヴァ―。他にもヴァネッサ・レッドグレーヴやジョン・ハート、マーゴット・キダ―、ジョン・ネヴィルなど錚々たる顔ぶれの役者がそろっています。ただ不幸だったのは、権利関係などの諸問題で劇場公開時期が大幅に遅れてしまった。撮影されたのが1993年で、封切られたのはロシアが経済成長を遂げた後の2002年。世に出すべきタイミングを逸してしまったんです。 飯森:どうしても『デルタ・フォース』なんかの印象が強くて、なにかと色眼鏡で見てしまいがちですけれど、実は職人監督として優れた人だったということなんですね。 なかざわ:それは個人的に声を大にして言いたいですね。メナハム・ゴーランを舐めんなよと(笑)。 飯森:ただ、今回どうしても視聴者の皆様にお詫びせねばならないことがあるんですよ。これはまさに僕本人が痛恨の極みなんですけれど、残念ながら今回放送する『三文オペラ』、画が汚いんです。画面サイズも4:3で、画質から察するに恐らくVHSマスターでしょう。これしかマスターテープが存在しないと言われたので、我々としても仕方がなかった。確かに本来であればHD画質で、画面サイズもワイドスクリーンで放送したいところですし、そうするに値する作品じゃないですか。これが例えば、どこかの国でDVD化されたことがあり、21世紀になってからリマスターされて作られたDVDマスターテープが世界のどこかにはある、ということであれば、それを借り受けて字幕を付けることも可能だったんですけれど、恐らくDVDは存在しないんじゃないかな。 なかざわ:僕ももう一度ちゃんとした画質で見たいと思って、世界中のサイトでDVDをずっと探してきたんですけれど、どうもやはりVHSしか出ていないようですね。 飯森:ただね、映画なんだからフィルムはネガなりポジなり元のフィルムが必ず残っているわけでしょ?そうなると、お前がそこからテレシネ(注12)すればいいじゃないか!という話になるかもしれませんが、それはご勘弁下さいなんですよね(笑)。 注12:フィルムをビデオ映像に変換すること。これによりフィルムで撮られた映画をテレビで放送したりVHS・DVD等に収録したりできるようになる。かつてはフィルムからアナログテープにテレシネされ、その際、当時主流だったブラウン管TVに合わせるため左右をトリミングされて4:3の画角で収録された。21世紀に入った頃からはデジタルテープにテレシネされるようになり、TVもワイド画面が主流になったのでトリミングされなくなった。したがって、21世紀に入って以降にDVDを発売するなどでテレシネされたニューマスターがあれば、ワイド画面で、かつHDではないとしても綺麗で経年劣化のないクオリティのTV用素材が存在するだろうと推測できる。 というのも、我々は合計で何回放送しますからこの値段で、という条件で放送権利を買っているわけです。だいたい5回とか10回くらいなんですけれど、それでテレシネなんてしようものなら一体どれだけのお金がかかるか。ずっとうちの資産として残るわけじゃないですから。たった何回かの回数を使いきったら放送はもう出来なくなって、僕らの予算から大枚はたいて作ったそのテレシネのニューマスター・テープは、権利元の映画会社に差し出さなきゃいけない。僕らの持ち物になるわけじゃないんです。設備投資じゃないんですよね。だから、作品の持ち主である配給元にやって貰うしかない。我々のようなチャンネル側にそれは難しい話なんですよ。 そうなると選択肢は2つ。1つは汚い画質でも放送しないよりは放送した方がマシという判断。もう1つは、こんな汚い画質では今どき放送が憚られるから放送しないという判断。民放さんとかだとまずそう判断されるんじゃないのかな?で、放送するかしないかなら、オレはする方を選ぶ!というのがこの「シネマ解放区」という企画の心意気なのですけれど、ぶっちゃけ、どう思います?これは確実に批判もある判断だと覚悟はしてます。 なかざわ:やはり映画ファンとしては、たとえ画質が悪くても見れないよりマシだろうと思うし、そういう方も少なくないと思いますよ。 飯森:そう言っていただけると救われますけどね。怒る方もそれは当然いると思いますよ。知らねーよ!テレシネとかそんなのお前の都合だろ!金払ってんだからちゃんとしたもん見せやがれ!と言われたら全面的に仰る通りなんですが。あえてDVD化されてないレアな作品を狙っていくと、必然的にどうしてもこういう問題も出てきてしまうんですよね。 まあ言い訳ですけど。 なかざわ:特にこの『三文オペラ』のようにマニアックな作品の場合は仕方がないですよね。 飯森:でも、なんでこれがマニアックと言われレア作品になってしまったんでしょうね。だって、内容的には全然マニアックではない。原作も世界的に有名な古典ですし。それをすごくオーソドックスに映像化していて、なおかつゴージャス感すら漂っている。王道ミュージカルですよ。ネットでこの作品を検索すると、「失笑モノ!」みたいなネガティヴ意見がありますけれど、でも実際に見てみると全然そんなことはない。なにが気に入らないんだよ!と思いますね。 なかざわ:そう!バカにしている人たちって、ちゃんと見ているの!?って言いたくなりますよね。 飯森:風格のあるミュージカル大作ですよね。なのに、なんでこんな不当な扱いを受けなくてはならないのか。 なかざわ:タイミングが悪かったということはあるでしょうね。これは1989年の映画ですけれど、80年代当時ってミュージカル映画は完全に下火だったじゃないですか。僅かに『アニー』とか『コーラス・ライン』があったくらいで、古典的なミュージカルは不毛の時代だった。なにしろMTV全盛期ですから。そんな中で、まさしく正統派ミュージカルである本作は分が悪かったようにも思います。 飯森:ゼロ年代の『シカゴ』くらいまでは、確かにミュージカル映画って地味な存在だったかもしれませんね。本来は派手さが売りのジャンルなのに! なかざわ:既にミュージカルは時代遅れだったんですよ。それに輪をかけて、この作品は『オリバー!』とか『屋根の上のバイオリン弾き』のような、当時からさらに一昔前にさかのぼった往年のミュージカル映画の雰囲気がある。そこが難点だったんじゃないのかなって思います。 飯森:つまりは正統派なんですよ。ただ、映像の質感や発色は80~90年代のコンテンポラリーな雰囲気がある。見る上で多少のハードルはあるクラシック映画とは明らかに異なる今のルックで、「ああ、最近作られた映画を見てるな」って見た目ですよね。そういう意味でも普通に見やすい。僕的には『レミゼ』や『スウィーニー・トッド』と比べても遜色ないと思いますよ。今回のウチでの放映を機に再評価が高まって、いつかリマスター版のソフトが出たらいいな、と思います。そのきっかけにしたいですね。 なかざわ:ちなみに、この作品はハンガリーのブダペストで撮影しているんですよね。で、19世紀末のロンドンの街並みを再現した巨大セットには相当なお金がかかっている。なので、その後メナハム・ゴーランは、このセットを再利用しています。ロバート・イングランド主演の『オペラ座の怪人』で(笑)。 飯森:なるほど!でもあれって監督メナハム・ゴーランでしたっけ? なかざわ:いえ、ドワイト・H・リトルです。ゴーランはプロデュースですね。そういえば、『キャノンフィルムズ爆走風雲録』ってご覧になりました? 飯森:あのドキュメンタリーちょっと前に凄く話題になりましたよね。恥ずかしながらまだ見れていないんですよ。 なかざわ:あれを見ると、メナハム・ゴーランが根っからの映画バカだったことがよーく分かりますよ。映画が大好きで大好きでしょうがない。だから、あまり採算のことなどは考えなかったみたいです。ソロバン勘定は相棒である従兄弟のヨーラム・グローバスに任せっきりだったらしく、ひたすら自分が見たい映画を撮ったり作らせたりしていたみたいですね。 飯森:なかなかに愛すべき、良き映画人じゃないですか。 なかざわ:そうでなければ、ドゥシャン・マカヴェイエフやジャン=リュック・ゴダール(注13)に映画を撮らせたりなんかしませんよ。絶対に儲からないもん(笑)。 注13:ゴダールは説明不要。マカヴェイエフは旧ユーゴの映画監督で、『WR:オルガニズムの神秘』(1971)や『モンテネグロ』(1981)、『コカコーラ・キッド』(1985)で知られる前衛映画作家。ここでいうメナハム・ゴーランが撮らせた作品とは、『ゴダールのリア王』(1987)とマカヴェイエフの『マニフェスト』(1988)のこと。 飯森:あと、この映画はキャストにも触れないわけにはいきませんね。 なかざわ:そうですね。ラウル・ジュリアにリチャード・ハリス、ジュリー・ウォルターズにロジャー・ダルトリー。超豪華キャストですよ。 飯森:実はロジャー・ダルトリーと言えば、前回の買い付け企画第3弾で『リストマニア』を放送したばっかりなんですよ。あとはビル・ナイも出ていますね。 なかざわ:実は彼、先ほど言った『オペラ座の怪人』にも出ている。まだ若いんですよね。 飯森:まだお爺ちゃんじゃない(笑)。今は枯れ専の女性に人気らしいですけれど、まだこの当時は枯れていませんね。 なかざわ:まあ、いずれにしてもメナハム・ゴーランは映画ファンからもっと支持されて然るべき映画人だと思いますよ。 次ページ >> 『肉体のすきま風』 『誘惑』COPYRIGHT (c) 2017 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 『三文オペラ』TM & Copyright (c) 2004 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. 『肉体のすきま風』TM, (r) & (c) 2017 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. 『ハーロー』TM, (r) & (c) 2017 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. CHARLIE BUBBLES (c) 1967 Universal City Studios, Inc. Copyright Renewed. All Rights Reserved. GETTIN' SQUARE (c) 2003 Universal Pictures. All Rights Reserved. THE GIRL FROM PETROVKA (c) 1974 by Universal Pictures. All Rights Reserved.