5月、まず字幕版を放送します。続いて6月、吹き替え版をお届けします。これはおそらく金曜ロードショー放送版です。シュワルツェネッガーといえば玄田哲章がフィックス声優ですが、本作はちびまる子ちゃんの父ヒロシ役で有名な屋良有作がアテてます。ヒロインのソニア役ブリジット・ニールセンは戸田恵子です。

 公開時の邦題はなんとビックリ『アーノルド・シュワルツネッガーのキング・オブ・アマゾネス』!!

 確かにシュワちゃん(死語)ことアーニー加州知事の出演作ではありますが、あくまで主人公は赤毛の女戦士ソニアでして、この邦題、本編内容と著しくかけ離れておりました(アマゾネス出てこないし、そもそもアマゾネスは女だけの部族だからキングいないし)。

 アーニー知事はいてもいなくてもいい役なので、以下、一切この駄文中では知事閣下には触れないことを、前もってお断りしておきます。悪しからずご了承ください。

 さて、あらすじを簡潔に申しますと、ヒロインのソニアが、女王ゲドレンを倒そうと仲間たちと共に冒険の旅に出る、というモロにRPGな物語です。

 なぜ倒そうとするのか。吹き替え版ですと、女王ゲドレンがソニアのことを「侍女にしようと考えた」、しかしソニアは「それに剥き出しの憎悪で応え」(なんで?)、ヘビメタ調のトゲが生えた女王の王笏をかっさらって突然暴れ出し、あろうことか女王様のご尊顔を傷モノにしてしまった。

 舞台は古代ですから、そんなことしたら家族に累が及び、当然、一族郎党皆殺しにされてしまうワケですが、騒動の張本人ソニア独りオメオメと生き残ってしまい、そういうワケで彼女は女王ゲドレン逆恨み復讐の旅に出るのであります。

 侍女に取り立ててくれようって人に対し突如キレて殴りかかるのはいかがなものかとワタクシ思うのでありますが、しかし原語で見てみると、女王様、実は百合族なんです。どうもレズ相手としてソニアを狙ったということのようです。

 吹き替え版では、そういう性的なハラスメントがあったという超重要情報が欠落しているため、ソニアがただのキレやすい若者みたくなってしまってます。

 ただ女王様、その後もソニアとの百合プレイをあきらめきれず、「身体に傷をつけず連れて来い」などと手下に命じてますし、レズの相手役みたいな年若い美女をいつも連れて歩いてますし…。一応、オトナが見れば女王様はそっちのケがある人だって分かる作りにはなってますね。

 にしても、女王様はどう見てもタチなキャラ。マッチョなソニアもどっちかと言ったらそっちでしょう。それで女王様は満足できるんでしょうか?連れ回してる年若い美女というのはネコ系なんですが…。女王陛下、いったいどんなプレイを想定しておられたのでしょうか?

 で、そのネコなキャラの美女というチョイ役を演じているのが、ララ・ナツィンスキーというブルネットの女優。実はこの映画の女性キャストの中で一番かわいいんじゃないか、と思うのは僕だけでしょうか。『怒霊界エニグマ』なる、イジメられっ娘の生霊が無数のカタツムリを操り人間にたからせて窒息死させるという物凄い映画で主役を張っていますので、気になる人はチェックしてみてください。ザ・シネマでは放送しませんが。

 話を戻しますと、レズという重要情報を封印してしまっているので、吹き替え版ではソニアが女王様を拒む意味が分からない。そこで金曜ロードショー、なんと勝手にオープニング作っちゃいました。

「遥か昔、伝説の王国アトランティスが滅び、天下は麻のごとく乱れ、世はまさに世紀末の様相を呈していた」とかなんとかいうオリジナルには無い北斗の拳ばりのナレーションが、いきなり、石田太郎住職のジーン・ハックマン風こもり声で入ります。キリスト生誕前なので世紀末という概念は無いかと思うのですが…。

 続けて、「悪の女王ゲドレンは、悪行の限りを尽くしていた」とナレーションで断言しちゃってるので、これだけでもう、ヘビメタ調トゲつき王笏で女王をしばく十分な理由を、ソニアは手に入れちゃってるワケです。

 無茶するなぁ金曜ロードショー…。でもこの臨機応変な感じ、いいねー! 昔のテレビ洋画劇場ってこれだから面白い!

 あと、昔のテレビ洋画劇場の見どころと言えば、日本語訳の妙(≒日本語訳が妙)。

 女王様の腰巾着みたいな佞臣で、アイコルというキャラが出てきます。クライマックス・シーンで、このアイコルがコソコソ逃げ出そうとしてる現場に出くわした、ソニアたちパーティーの一員のヤンチャ王子。果敢に勝負を挑もうと王子が叫ぶのが、ヒロイック・ファンタジー全開のこんなセリフ。

「アイコル!このゲドレンの黒い蜘蛛めが!!」

 これが吹き替え版だと、

「待てッ!ゲドレンの手先のブラック・スパイダー将軍だなっ!!」 に。

 …やっすい名前だなー、ブラック・スパイダー将軍って。東映特撮か!

 レズ情報封印といい、このブラック・スパイダー将軍といい、もはや、オリジナルとは微妙に別物の、似て非なる映画になっちゃってるんですけど…。

 …いゃーそれにしても、昔のテレビ洋画劇場って、本っ当にいいもんですね!

 とまぁ、強引に話をまとめにかかりましたけど、字幕版と吹き替え版、見比べてみると面白い発見がいろいろとあるもんです。

 5月と6月、視聴者の皆々様に2ヶ月連続でどちらもお楽しみいただけたら、編成冥利に尽きるというものです、ハイ。■

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