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PROGRAM/放送作品
ビッグ・バウンス
担いだつもりが担がれて…?南国ハワイで繰り広げられる、だまし合いのだまし合い
『ゲット・ショーティ』『ジャッキー・ブラウン』『アウト・オブ・サイト』などの原作で知られる、憎めないアウトサイダーを描く小説家エルモア・レナードの初期小説を、ハリウッド随一の個性派キャストで映画化。
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COLUMN/コラム2017.01.24
トランプさんの演説が『ダークナイト ライジング』のベインのアジ演説と激似の件について
ここ数日来、この件でネット上がちょっとザワザワしていますね。今なら以下の各ニュースサイトのリンクがまだ生きているはず。 http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1768238.html https://www.businessinsider.jp/post-458 http://news.livedoor.com/article/detail/12572697/ https://www.buzzfeed.com/bfjapannews/people-cant-get-over-how-much-trump-sounded-like?utm_term=.ewGQwJa1l#.wjRM1O0rx でもこういうリンクはすぐに切れちゃうものなんで、経緯を簡単にワタクシの方でも記しときましょう。 去る2017年1月20日の大統領就任式で、トランプさんは15分という短尺の就任演説をブったのですが、この中で、 “we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another - but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.” 「(前略)我々は、ある政権から別の政権へ、またはある政党から別の党へ、ただ権力の移行をしているのではない。我々は、権力をワシントンD.C.から移譲させ、お前たち人民に取り戻してやるのである!」 とおっしゃられました。この “and giving it back to you, the people.” の部分が、『ダークナイト ライジング』劇中におけるベインのアジ演説のワンフレーズ “and we give it back to you... the people.” というくだりを丸パクリしたんじゃないの!?との疑惑が出てネット界隈がザワついてるのです。 ここ、全文ですと、 “We take Gotham from the corrupt! The rich! The oppressors of generations who have kept you down with myths of opportunity, and we give it back to you... the people. Gotham is yours.” 「我々が腐敗からゴッサムを奪い返すのだ!金持ちの手から!迫害者どもはチャンスという言葉をチラつかせ、長らく我々を搾取してきた。ゴッサムを奪い返すのだ、市民の手に。街は市民のものだ」 と言ってるんですな。ベインがゴッサム市庁舎の前でブつ大演説からの一節であります。 ワンフレーズだけ見ると確かにほとんど100%同じですが、こうして前後の文脈ごと読み比べてみると、全体としては当然、2人はまるで違うことを言ってる。でも、実はベインもトランプさんも、ある決定的に同じことを“口実”にすることによって、一部の層から人気を博して権力を握ったので、やっぱり最も根本的な根っこの部分ではこの2人、モロにやってることとキャラがかぶっているのです(2人とも、あくまでそれは“口実”にしてるにすぎないところまで同じ)。 それは何かと言うと、格差社会批判です。 当チャンネルの土日メイン作品枠「プラチナ・シネマ」でも、昨年末から立て続けに『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『パワー・ゲーム』、来月も『アップサイドダウン』をお送りしますが、まさに、今の時代に映画が描き、糾弾している、現代最大の社会悪こそが“格差”ではないでしょうか? ■ ■ ■ ベインはゴッサム版ウォール街のような証券取引所を襲い、ゴッサム市民の前にはじめてその姿を現します。後に革命軍みたいな連中を率いて「我々は解放者だ!」と叫びながらゴッサムのアリーナに現れ、さらに先の市庁舎前演説では、 「刑務所にいる抑圧された者たちを解放する」「今より市民軍を結成する。志願する者は前に出ろ」「金持ちの権力者どもを豪華な住まいから引きずり出せ」「今まで我々が味わってきた冷酷な世界に放り出すのだ」「我々の手で裁きを下す」「贅沢は皆で分け合え」 などともアジ演説をブち続けます。言っとることはまさしく「革命」ですな。 『ダークナイト ライジング』の『ライジング』とは「立ち上がる」、「蜂起する」、「蹶起する」といった意味。つまりは「革命」です。この映画、革命のイメージに満ち溢れておりまして、 ①ベイン革命軍は真っ赤なスカーフを巻いており、まるで文革の時の紅衛兵みたい。 ②人民法廷に資本家や旧体制の官憲が引き出され、上訴なしの即決裁判で死刑判決を受けるシーンがあるが、あの絵ヅラは世界史の教科書で見覚えがある。フランス革命のルイ16世の裁判↓か、 もしくは、「球戯場の誓い」のページに載っていた挿絵↓にソックリ。被告席の椅子もなんだかとってもヴェルサイユ風だし。 ちなみに「球戯場の誓い」とは、フランス革命の直接原因となった事件。税金を払わされている圧倒的多数の平民が「一握りの特権階級が税金を免除されているのはおかしい!」、「三部会で特権階級の主張ばかりが通るのはおかしい!」と訴え、自分たちこそが国民の真の代表なんだと立ち上がった出来事。 さらにこのシーン、判事席(裁判官はスケアクロウ!)は、机や椅子などを雑然とうず高く積み上げたもので、『レミゼ』の六月暴動やパリコミューンにおける「バリケード」を連想させる。「バリケード」はかつて革命市民軍にとって基本戦術だった(普通選挙が広まると、革命勢力は選挙による政権奪取を目指すようになり、エンゲルスが亡き同志マルクス著『フランスにおける階級闘争』1895年版に寄せた序文で「あの旧式な反乱、つまり1848年までどこでも最後の勝敗をきめたバリケードによる市街戦は、はなはだしく時代おくれとなっていた。」と批判し、バリケード戦術は廃れていった…かと思いきや日本では昭和40年代の大学紛争においてもまだまだバリバリ現役だったけど)。 ③その革命裁判で死刑を宣告されると凍った川を渡らされ、途中で氷が割れて死んでしまう。これは原作コミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』の中ですでに描かれているイメージだが、この映画ではさらに、ロシア革命の時に赤軍に追われた人々が凍結したバイカル湖を渡ろうとして沈んだ歴史的悲劇“バイカル湖の悲劇”をも想起させる。 ④ベイン率いる革命軍とバットマン率いる警官隊が衝突するシーンでは、バットマンは珍しくなぜだか日中に戦う。そのシーン、晴れた日で粉雪が舞っている昼間なのだが、ここはロシア革命の導火線となった「血の日曜日事件」の光景を彷彿させる。雪の積もる晴れた日の出来事だった。 こうした革命のイメージの数々に、さらに9.11のNYのイメージや(ベインがテロを仕掛けるシーンではグラウンドゼロをわかりやすく空撮してます)、そしてコミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』のイメージを掛け合わせ、見てると心臓に若干のプレッッシャーすら覚えるような、凄まじいまでに圧迫感のあるリアリズムを漂わせながら、このまま理不尽な格差社会が是正されないと遠からず現実になるかもしれない革命と混乱の様相を『ダークナイト ライジング』という映画は生々しく描出しているのです。 ■ ■ ■ つい数年前の“ウォール街を占拠せよ”運動というのをご記憶でしょう。正確には2011年の出来事です。この『ダークナイト ライジング』のまさに撮影中に全米を揺るがしていた社会運動で、特にウォール街があるためロケ地ニューヨークがかなり騒然としていた様を、ワタクシもニュースで連夜見ていた記憶があります。 アメリカは、上位1%の富裕層がケタちがいの富を独占している格差社会とよく言われます。しかもその1%が2008年リーマンショックを起こして世界を経済危機に陥れ、99%の中からは失業する人もおおぜい出たのに、1%は税金で救済され、挙げ句の果てにその公的資金を自分たちのボーナスに回したということで、99%側の人たちの間で「フザけんじゃねえ!」という機運が高まり、”We are the 99%”をスローガンにデモを行ったのが“ウォール街を占拠せよ”運動でした。 この運動とちょうど同時期に撮影・公開されたため、当時から『ダークナイト ライジング』はこれと結び付けられて論じられるケースが多くて、実際、ベインと彼の革命軍の姿と“ウォール街を占拠せよ”運動の様子はものすごくオーバーラップします。一時は実際のデモの模様をノーラン隊が撮影し、劇中にそのフッテージを使うのではという噂まで流れていたぐらい。 ノーラン監督自身は「この映画に政治的な意図はない」、「モデルはフランス革命だ」と語っており、他の制作陣も「ベインと“ウォール街を占拠せよ”運動が似ているのは単なる偶然」と言ってはいますけれど、その言葉を鵜呑みにはできません。たまたま似ちゃったのか、炎上沙汰にならないようしらばっくれているのか定かではありませんが、しかし、意図してやってはいないとしても、時代が感じとっている理不尽感をこの映画が生々しく撮らえていることは間違いありません。 そして今、2017年、格差社会を徹底的に攻撃し、貧しき人びとの“味方”を自称して大統領選を勝ち抜いてきたトランプさん就任に際して、再びこの『ダークナイト ライジング』と時事・世相がシンクロしたのです。 映画史に残る文句なしの傑作『ダークナイト』と、ヒース・レジャーが命をかけて演じたジョーカーは、誰もが、全員が全員、高く評価するところでしょう。それに比べて毀誉褒貶あることは否めない『ダークナイト ライジング』ですけれども、ジョーカーというヴィランが「正義とは何か」という普遍的かつ哲学的な問題提起をしてくるのに対し、ベインの主張は逆に、きわめてタイムリーかつアクチュアル。トランプさんと同じ、“ウォール街を占拠せよ”運動とも同じ、格差社会批判です。 格差社会、暴走するマネー資本主義。こんなのおかしい!こんなの理不尽だ!という至極ごもっともな鬱積した怒りが、昨年2016年には、数年前なら想像すらできなかったような“極端な政治的選択肢”に世界中の人々を飛びつかせてしまいました。 文革やフランス革命、ロシア革命は、やがては反対派を弾圧・粛清しまくる恐怖政治になっていきました。ベインの革命も、ちょっと良いことを言ってるようでいて、歴史を知っているとその恐ろしさとオーバーラップして見えてきます。 “極端な政治的選択肢”に飛びつきたい気になったら「まずは落ち着け」と、ひとまず深呼吸して見るべき映画、それこそが『ダークナイト ライジング』!このような時代になってしまった2017年、この作品の重要性は今こそ相対的に高まっているように思えるのであります。 ちょっと良いことを言ってる人、「権力を大衆の手に取り戻すのだ!」とか胴間声でアジってる人、実はこいつベインじゃねえのか!? ということを慎重に見極めないといけない時代に、なんか、なっちゃいましたなぁ…。寒い時代だとは思わんか…。 © Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary Pictures Funding, LLC© 2012 Universal Pictures. All Rights Reserved. 保存保存
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PROGRAM/放送作品
セブン
[R15相当]ブラッド・ピット&モーガン・フリーマンの刑事コンビが猟奇殺人に挑むサイコ・サスペンス
サスペンスとカルト・ホラーの混ざり合う独特の世界を、類まれな映像センスで描いた本作はデヴィッド・フィンチャー監督の出世作だ。重々しい緊張感のもと、主演コンビの名演とともに一気に衝撃の結末へ導かれる!
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COLUMN/コラム2018.05.21
『LUCY』 6/16(土)字幕、17(日)吹き替え
まず、あらすじ。 台湾に留学中の女性ルーシーは、元カレから謎の荷物の運び屋仕事を強引に押し付けられる。不安的中、中身は麻薬で、しかも届け先で韓国系ヤクザに拉致され昏睡させられ外科手術までされ、体内に麻薬のビニールを詰められる。飛行機で某所に密輸しろというのだ。挙げ句、暴行され腹部を蹴られた衝撃で体内で袋が破裂してしまう。人間の脳は通常10%しか使われていないが、その結果、彼女の脳の不活性領域は活性化し、彼女は超人化していく。 その超人化がほとんど超サイヤ人レベル。ザ・シネマがこのところ大量にお届けしている“最強オヤジ”ことセガールだが、彼の偉大なる発見は、ヒーローがひたすら一方的に強い映画は見ていて気持ちが良い、という映画の禁じ手に気づいてしまったことである(コマンドーの発展的解釈)。絶対ピンチに陥らない。一度はボロ負けし雪辱のため歯を食いしばり鍛え直し逆転という、ロッキー的なドラマ性も無い。そういうスリルや感動は無いかもしれないが、とにかく最初から最後まで一方的にヒーローが悪者をブチのめし続けていけば、見ている側としてはこの上もなく快感なのだ。本作『LUCY』はそれにも通じる、脳の快楽中枢を直接刺激してくるようなドーパミンがドバドバの痛快さがあり、そのため見ているこっちの脳の不活性領域までもが活性化しそうになってくる。 まず、体内でビニール袋が破れ麻薬を超オーバードースしてしまった直後、映画開始25分頃、浮く!早くも物理法則を無視できる能力をルーシーは身につけてフォースの覚醒。ここで第2幕の幕が上がる。2幕目では覚醒のプロセスが描かれていく。 34分頃にはお母さんに電話し、「地球の自転を感じる」とか「重力を感じる」とか、“嗚呼、時が見える”系の禅問答発言を連発。ニュータイプの覚醒だ。そして“時が見える”は、冗談ではなくて本当に終盤のキーワードになってくる。つまり本作、ここらへんから、哲学SFの趣きになっていく。 …のだが、この先の展開を記すと若干のネタバレに踏み込まざるをえなくなっていくので、まずは、キャスト・スタッフの話から先に済ませておこう。 主演のスカヨハと言えば『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウが超最高だが、実は『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』に『her/世界でひとつの彼女』に本作と、他のSFに出る場合はSFアクション系よりも哲学SF系への出演が目立っているように思う。『アイランド』と『ゴースト・イン・ザ・シェル』にも、アクション要素も多いものの哲学SFのムードだって色濃い。ヒロインが持つ豊満な肉体美×物語が持つ深い思索性、というミスマッチが互いに引き立て合うから?とにかく、スイカに塩のごとく相性が良い。なお、本作で吹き替えを担当するのは『プロメテウス[ザ・シネマ新録吹き替え版]』でお馴染み、我らが佐古真弓だ。 さらに個人的な感想を述べると、本作はスカヨハの衣装も良い。チープで逆に良い。ベッソン組オリヴィエ・ベリオ氏のグッジョブだ。豹柄フェイクファーのライダースジャケット、その中もド派手プリントのボディコンで、大阪のオバチャンもかくやという凶悪なセンス。マニキュアはムラに剥げ、雑にブロンドに染めた髪はプリンでパサパサと、登場時からただごとならぬチープ感を全身にみなぎらせているのだが、逆にムラッとくるお水的な魅力がある。拉致られ強制外科手術された後の、トロロ昆布状態まで生地と襟ぐりがクタって黒ブラが透けている白T×激安レーヨン混ジーンズの上下姿もまた、大いに結構!良い女、良い体、グラマラス、というLUX的オーラで普段は巧みに目をくらまされているが、実は、田舎のヤンキーっぽさはスカヨハの身上だと個人的には信じている。本作は珍しく、そんな天性のDQN美を隠すことなく全身から発散してくれており、実に眼福である。 一方、モーガン・フリーマンが、Eテレの教養番組シリーズ『モーガン・フリーマン 時空を超えて』まんまの役で出演している。脳科学について講義する博士の役で、いなくても物語上まったく問題ない役なのだが、Eテレのお堅い教養番組的な知的風格をこの映画が醸し出す上で効果的に機能している。『時空を超えて』は米本国で2010年にスタートし17年まで毎年作られており、『LUCY』が2014年製作なので、どう考えてもモーフリの本作への起用は『時空を超えて』でのイメージを踏まえた上でのことだろう。吹き替えは、Eテレの菅生隆之ではなく本作では坂口芳貞が担当しているが、坂口モーフリにはやはり安定のFIX感があり、こっちはこっちで実に鼓膜が気持ち良い。 そしてチェ・ミンシクが、韓国麻薬ヤクザ役で、韓国暴力映画から抜け出してきたような役どころを演じており(下のスチール↓は決して『悪いやつら』の宣材ではありません。お間違いなく)、しかも英語なりを一切しゃべらず韓国語だけで押し通す(なので吹き替え版でも本人セリフ原音ママイキ)という力押しで国際デビューを果たしている。韓国ヤクザのセリフは字幕も無く、ヤクザ同士のドスのきいた会話の内容は観客にもさっぱり分からなくて逆に猛烈に怖いのだが(「パリパリ」というのが「急げ」という意味なんだろうとは推測できた)、とにかく、チェ・ミンシク大兄の世界デビューは、人ごとながら、韓国人ほどではないかもしれないが、日本の映画ファンとしても、これはかなり嬉しい!『シュリ』以来20年ぐらい日本の映画ファンもずっと注目し続けてきた俳優なので、そんな彼の国際的な活躍は、半分我が事のように嬉しい。「世界よ、気づくの遅かったね」って感じだ。まして私こと筆者は英語弱者なので、「母国語だけでも力押しでどうにかなるんだ!」と、(間違った)希望を抱かせてくれて、心強い。 監督は、ご存知リュック・ベッソン。90分前後のサクッとお気軽に楽しめる英語の娯楽アクション作品を大量生産しているフランスの映画会社ヨーロッパ・コープの首領(ドン)でもあり、最近ザ・シネマではそこの映画をよく流しているが、近頃ではベッソンはプロデュースと脚本に回って、メガホンは子分の中堅どころの職人監督に委ねるケースが多い。自身が監督も務めた作品としては、最近だと『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』という、『アバター』のような『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のような原色キラキラのサイケSFで、「歴史修正主義、ダメ。ゼッタイ。」もしくは「歴史修正主義やめますか?それとも人間やめますか?」という、意外にも高潔なメッセージが込められた映画があったばかりだが、やはり、何と言っても最高傑作が『レオン』であることは論を待たないだろう(絶賛放送中)。ちょっと作品ごとに毀誉褒貶いちじるしいクリエイターではあるものの、『LUCY』は個人的には彼の近年のベストワークだと評価している。この痛快さ、とにかく堪らない! ヨーロッパ・コープ社のトレードマークと言えば無茶苦茶なカーアクション。ハリウッド映画を軽く凌駕しているのだが、本作でもそれは健在で後半に凄い見せ場が用意されており、「TAXi」シリーズや「トランスポーター」シリーズ(こちらは絶賛放送中)で蓄積されたノウハウが惜しげもなく投入されているのだろう。 そもそも『TAXi』第1作(1997)製作時、15年間お世話になった世界最古のフランスの映画会社ゴーモンと揉めたことが、ベッソンが01年にヨーロッパ・コープ社を立ち上げたきっかけだ。ベッソン側の主張によると、ゴーモン社は『TAXi』で彼がプロデュースに回り監督を人任せにすることが不満だったという。 ベッソンという漢は現場叩き上げだ。高校を中退しゴーモンの門を叩き映画業界に飛び込んでまずアシスタントから始め、後に渡米して武者修行。帰仏してまたゴーモン社のご厄介になり、監督デビュー後、『サブウェイ』(1985)以降の作品をずっと撮ってきたのだが、そのすったもんだで袂を分かった。 なお、『LUCY』の大詰めの銃撃戦で、ソルボンヌ大学の研究所にある坐像が銃弾の雨あられで木っ端微塵にされるシーンがあるが、それは創設者ソルボンさんの像。ベッソンはこのクライマックスシーンについて「高校中退の俺が、“知”についての映画を撮るために“知”の象徴ソルボンヌをブッ壊してやったぜガーッハッハ!!」と豪語しており、たいへん好感が持てる人柄である。 ただ、ここで残念なお知らせがひとつ。「人間の脳は普段は最大でも10%しか使われていない」という、この映画の大前提となる、そして我々もどこかで聞いたことのある説が、実は、良く言ってもトンデモ系疑似科学、悪く言えば単なる都市伝説であることが、こんにちでは科学的に証明されているのである! 10%しか使っていないのであれば、残りの90%の部分に外傷的ダメージや脳梗塞で損傷を受けても支障は一切無い、それまで通り普通に生活できるということになり、「そんな訳ないだろ!」とは素人でも少し考えれば考えつく。私ごとき素人の言うことなんか信用できないって?ならば以下をご参照あれ。 ・脳の10パーセント神話(Wiki)→ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E3%81%AE10%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E7%A5%9E%E8%A9%B1 ・あなたは脳の何%を使ってる?(TED動画)→ https://www.youtube.com/watch?v=5NubJ2ThK_U&feature=youtu.be 話の出発点からしてそもそも根本的に間違っていたということで、いやはやベッソン、なんともオチャメな、憎みきれないウッカリ屋さんである。もはや好感しか持ちようがない人柄だ。 さて、そろそろ、あらすじ紹介を再開しよう。 【この先ネタバレが含まれます。】 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 映画開始から55分後頃に脳の50%が活性化。またここで物語の位相が変わってクライマックスである3幕目に突入する。活性化率はまだ半分なのだが、この時点でもはや凄いことになっており、救世主ネオの域に達し、さらにDr.マンハッタン、イデの発動、アルティメットまどか路線を突き進んでいく。もちろん、とっくに韓国ヤクザごときが束になっても敵う相手ではなくなっており、もはや、人か!?神か!?という存在になっていくのである。 そして最後にはスターゲート・コリドーが彼女を待っているのだ。かの映画で(どの映画だ!)ボーマン船長は宇宙の成り立ちを高次の存在に垣間見せられ新人類への進化を許されたが、本作では、脳が進化しすぎたスカヨハが勝手にスターゲート・コリドー幻視までたどり着き、ついに最初の人類である原始猿人ルーシーと“時空を超えて”めぐりあい、宇宙の始まりを見て(これぞまさしく、めぐりあい宇宙!)、スカヨハ自身が高次の存在へと自力で進化を遂げるのである。ちなみに、最初の人類とされる300万年前のアウストラロピテクス化石が「ルーシー」と名付けられているのだ。 と、こういう映画である。公開時にはオチだけを見て日本では「『攻殻』に似てる!」という感想ばかり聞こえてきたが、その他の様々な和洋のSF作品とも豊かにリンクしているのだ。ここまで、『攻殻』以外はあえてタイトルを伏せてきたが、元ネタ探しに興じはじめたら、この作品は何度でも楽しく見返していただけること請け合いだ。■ © 2014 EUROPACORP-TF1 FILMS PRODUCTION - GRIVE PRODUCTIONS. All Rights Reserved. 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存
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PROGRAM/放送作品
ハイ・クライムズ
愛する人が突然容疑者に!戸惑いつつも無実を信じる女性弁護士が巻き込まれていく法廷サスペンス
夫のために闘う女性弁護士を力強く演じるのはアシュレイ・ジャッド。型破りな弁護士役のモーガン・フリーマンと息の合った演技で軍隊組織の陰謀を暴いていくスリリングな法廷サスペンス!
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COLUMN/コラム2014.12.01
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年12月】キャロル
南アフリカ共和国の人種融和を図るネルソン・マンデラ大統領が、黒人・白人混成のラグビー代表チームに祖国団結を託した実話を名匠クリント・イーストウッドが映像化。本人からマンデラ役を熱望されたというモーガン・フリーマンの醸し出す絶対的な安心感とマット・デイモンの絶妙な清涼感が、重厚なテーマの本作にすがすがしい空気を送り込んでいる。また、監督イーストウッドのなせる技なのだろうが、押しつけがましい感動演出がなく静かに物語が進行していくので、観終わった後の重苦しさは全くない。なかなか触手が伸びにくいジャンルだが、実際に見てみると案外重くないので、未見の方はこれを機会に一度ご覧頂きたい一品。 © Warner Bros. Entertainment Inc. and Spyglass
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PROGRAM/放送作品
フラッド
圧倒的スケールの水上&水中アクションに息を呑むパニック+クライム・アクション大作
大洪水で沈みかけた町で、強盗グループと警備員が激しい攻防を繰り広げるパニック・アクション。『アビス』、『バックドラフト』の撮影監督ミカエル・サロモンならではの迫力の水上・水中アクションは見もの。
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COLUMN/コラム2014.01.26
2014年2月のシネマ・ソムリエ
■2月1日『チェイシング・エイミー』 B・アフレックが恋にオクテな漫画家を演じたラブ・コメディ。レズビアンの女性にひと目惚れし、親友を巻き込んで奇妙な三角関係に陥っていく主人公の奮闘を綴る。 恋愛、友情、セックスというテーマを、赤裸々なストーリー展開と実感のこもったセリフで描出。米国インディーズの人気監督K・スミスの脚本が冴え渡っている。 開放的にセックスを語るエイミー役のJ・L・アダムスが魅力的。ヒロインと親友の板挟みになって苦悶する主人公が、最後に提案するまさかの解決策には誰もが仰天! ■2月8日『ゴーン・ベイビー・ゴーン』 『アルゴ』でアカデミー作品賞に輝いたB・アフレックの監督デビュー作。『ミスティック・リバー』などで知られるデニス・ルヘインの探偵小説に基づくミステリー劇だ。ボストンの住宅街で4歳の少女が失踪し、若き私立探偵とその恋人が捜索を開始。貧困や育児放棄などの社会問題を絡め、主人公が突きとめる意外な真相を描き出す。 渋い実力派キャストのアンサンブル、善と悪の境界が曖昧なテーマを観る者に問う骨太なドラマは見応え十分。日本で劇場未公開に終わったのが不思議なほどの秀作だ。 ■2月15日『パンズ・ラビリンス』 パシフィック・リム』も記憶に新しいG・デル・トロ監督によるダーク・ファンタジー。スペイン内戦後の1944年を背景に、空想力豊かな少女がたどる過酷な運命を描く。 残忍な将軍の養父に脅えるオフェリアが、迷宮の守り神パンと出会う。パンから3つの試練を課された彼女は、魔法の国に旅立つためにありったけの勇気を奮い起こす。 ギリシャ神話に登場する牧羊神パンの悪魔のごとき不気味さなど、クリーチャーの造形が圧巻。戦争の悲劇と少女の空想力の純真さを対比させたドラマも見事である。 ■2月22日『クラッシュ』 第78回アカデミー賞で下馬評を覆し、作品賞に輝いた社会派サスペンス。『ミリオンダラー・ベイビー』などの脚本家ポール・ハギスの鮮烈な監督デビュー作でもある。 白人の警官、黒人の強盗犯、ヒスパニック系の鍵屋など、さまざまな人種の人々の人生が交錯する2日間の物語。緻密で劇的なストーリー構成にぐいぐい引き込まれる。 ロサンゼルスを舞台にした群像劇に9.11以降の世相を反映させ、現代人の人間不信を鋭く描出。そこからあぶり出される“衝突”と“繋がり”というテーマが胸に響く。 『チェイシング・エイミー』©1996 Too Askew Productions, Inc. and Miramax 『ゴーン・ベイビー・ゴーン』©Miramax 『パンズ・ラビリンス』©2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ 『クラッシュ』©2004 ApolloProScreen GmbH & Co. Filmproduktion KG. All rights reserved.
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PROGRAM/放送作品
ドライビング Miss デイジー
心が温かな気持に包まれる、白人の老婦人と黒人の運転手との間に育まれた25年に及ぶ友情の物語
『ショーシャンクの空に』のモーガン・フリーマンと本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシカ・タンディの2人が、白人の老婦人と黒人の運転手との間の25年に及ぶ心の交流を見事に演じた心温まる友情の物語。
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NEWS/ニュース2012.07.09
アクションスター列伝【逃避行対決】結果発表!
『チェーン・リアクション(1996)』(キアヌ・リーヴス)正体不明の凄腕暗殺者ジャッカルに扮するブルース・ウィリス。追われながらもターゲットを追い詰める。 VS 『ジャッカル』(ブルース・ウィリス)正体不明の凄腕暗殺者ジャッカルに扮するブルース・ウィリス。追われながらもターゲットを追い詰める。 追われながらも果敢にミッションを遂行するのはどっちだ!?いざ、対決! キアヌ・リーブスとブルース・ウィリス。かたやアクロバティックにのけぞるマトリックス戦士、かたや不死身のダイハード刑事として、日本でもファンの多いスター同士である。そんな彼らが、ここでは“追われる男”として激突。『チェーン・リアクション』のキアヌも、『ジャッカル』のブルースも、彼らのイメージとはやや異なるキャラクターにふんしているが、軍配はどちらに? 石油に変わるエネルギーを水から生み出すという、画期的なクリーン・エネルギー装置を開発したものの、何者かに命を狙われたあげく、いわれのない殺人容疑をかけられた若き研究者。『チェーン・リアクション』でキアヌがふんするのは、そんなキャラクターだ。頭脳派という点だけで彼には珍しい役(?)だが体型もいつもよりズングリしていて、いかにも科学オタク風。運動能力に乏しそうな人物だけに、迫りくる危険から逃げるストーリーには大いにハラハラさせられる。研究所の大爆破によって迫る爆風からバイクで必死に逃亡し、市街地を走っては逃げ、氷上を滑っては逃げる。もちろん、その過程で陰謀の画策者を探り出すという、これまた難儀なミッションに奔走するワケで、スリリングなことこのうえない。■ 一方、1970年代の社会派サスペンス・アクションの傑作『ジャッカルの日』を大胆に改編した『ジャッカル』でブルース演じるのは、米国要人を暗殺する任務を負った正体不明の殺し屋、通称ジャッカル。追いかける側はリチャード・ギアが演じる、FBIに協力を要請された元IRAテロリストで、彼にとってジャッカルは因縁の宿敵でもある。どちらも諜報活動のプロだから、追いつ追われつの攻防は、やはり緊張感たっぷりだ。ジャッカルは身を隠し、逃げ回りながらもテロ暗殺計画を進めるわけで、彼がどのようにして標的に近づき、その標的が誰なのかというミステリーもドキドキ感をあおる。さてジャッジだが、ブルース演じるジャッカルは名前も国籍さえもわからない、ミステアリスな存在で、それは簡単には敵につかまらないことの表われでもある。変装術も巧みで、ロン毛や金髪、ヒゲ面はもちろんメタボ体型にもなるのだから凄いと言えば凄いのだが、スター・オーラの強い役者が演じているため、一歩引いてみると“どう見てもブルース・ウィリスだよ!”というツッコミも入れたくなる。その点、キアヌは役の上のフツーっぽさもあって、ぜい肉多めの姿で奮闘する姿は、見ていて感情移入しやすい。“追われる者の奮闘”という基準から見て、必死さが伝わってくる後者を勝者としたい。 以上のように、【逃避行対決】を制したのは、「チェーン・リアクション(1996)」のキアヌ・リーヴス! 明日7/10(火)のアクションスター列伝は【ヴァンパイア対決】!こちらもお見逃しなく!■ © 1996 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.© TOHO-TOWA