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PROGRAM/放送作品
スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団
まるでゲームのようなバトル!英国コメディの雄E・ライト監督がオルタナ系のカナダのコミックを映画化
『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ホット・ファズ』、『ワールズ・エンド』でコメディファンを唸らせるエドガー・ライト監督が、日本のマンガ、ゲーム等に多大な影響を受けているカナダの有名コミックを映画化。
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COLUMN/コラム2016.12.13
人間同士の相互不理解がもたらすカオス!パラノイアの暴走する先はほとんどホラー⁉〜『トランストリップ』〜
日本人にとって南米の映画といえば、例えばメキシコやブラジル、アルゼンチン辺りならパッと思いつく監督や作品も少なくないだろうが、しかしチリの映画となると馴染みが薄いのではないだろうか。それもそのはず、かの国では政情不安定な時期が長く、サイレント映画以降はなかなか映画産業が発展しなかった。’60年代にはニューシネマ運動の盛り上がりも僅かにあったようだが、それも’73年の軍事クーデターで誕生したピノチェト大統領の独裁政権下で潰えてしまう。同国出身のアレハンドロ・ホドロフスキーが、母国ではなくメキシコを活動拠点に選んだのも無理はなかろう。本格的にチリ映画界が産業として成長するようになったのは、ここ20年ほどのことなのだ。 最近はアカデミー外国語映画賞候補になったパブロ・ラライン監督の『NO』(’12)や、ベルリン国際映画祭の女優賞に輝いたセバスティアン・レリオ監督の『グロリアの青春』(’13)など、世界の主だった映画祭や映画賞でチリ映画が高く評価されることも増えてきた。そんな中、現在最も国際的な注目を集めているチリの若手映像作家の1人がセバスティアン・シルバだ。 カナダでアニメーション制作を学んだ後、イラストレーター兼ロックミュージシャンとして活躍した経歴のあるシルバ監督。特にイラストレーターとしてはニューヨークで個展を開き、実を結ばなかったもののハリウッドへ招かれたこともあったという。チリへ帰国して暫くはソロ・アーティストとして活動するも、やがて自らの制作プロダクションを立ち上げて映画監督へ転向。長編2作目の『La Nana(女中)』(’09)がサンダンス映画祭のワールド映画部門グランプリやラテンアメリカ映画祭の批評家賞などを獲得し、ゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞にもノミネートされたことで、一躍脚光を浴びることとなったのである。 そんなセバスティアン・シルバ監督の作品に共通するキーワードは“相互不理解”と“パラノイア”である。裕福な家庭で長年に渡って雇い主の信頼を得てきたメイドを主人公にした『La Nana』では、年を取ってきた彼女に良かれと思って家主が若いメイドを補佐役として雇ったところ、自分の立場が脅かされると思い込んだ主人公が強迫観念を暴走させていく。また、同じくサンダンス映画祭でワールド映画部門監督賞に輝いた『Crystal Fairly & the Magical Cactus』(’13)は、幻のドラッグを求めてチリを旅する利己的なアメリカ人の若者(マイケル・セラ)とラブ&ピースな現代版ヒッピー女性(ギャビー・ホフマン)の対立を描くロードムービーだった。ベルリン国際映画祭でテディ賞を獲得した最新作『Nasty Baby』(’15)では、ゲイのカップルとその親友の女性が親切心で恵まれない浮浪者と関わったところ、その浮浪者がゲイに偏見を持つ差別主義者だったことから命の危険に晒されるという、弱者をヘイトする弱者の構図が描かれた。ディスコミュニケーション=相互不達によってもたらされるカオス、それこそがシルバ監督の一貫して描いてきているテーマだと言えよう。 そして、日本で唯一見ることのできるシルバ監督作品が『トランストリップ』(’13)。ちょうど『Crystal Fairly & the Magical Cactus』の直後に撮影され、ほぼ同時期に発表されたアメリカとチリの合作映画である。両作品にマイケル・セラが出演しているのもそのためだ。まずは簡単にストーリーを説明しよう。 主人公はカリフォルニアからチリへとやって来た若いアメリカ人女性アリシア(ジュノ・テンプル)。現地在住の従姉妹サラ(エミリー・ブラウニング)のもとを訪れた彼女は、その足でチリ南部の島へとバカンスに向かう。同行するのはサラとその彼氏アウグスティン(アウグスティン・シルバ)、その姉バーバラ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)、そしてアウグスティンの同級生ブリンク(マイケル・セラ)だ。ただでさえ初めての外国旅行で緊張している上に、見ず知らずの他人に囲まれたアリシアは気分が落ち着かない。 5人揃って車に乗り出発したのも束の間、従姉妹のサラが学校の試験を受けるために戻らねばならなくなる。明日には合流するから、それまでみんなと一緒にいてというサラに押し切られ、知り合ったばかりの3人と旅を続けることになったアリシア。仲間同士の中でたった一人の赤の他人。内気で大人しく繊細なアリシアは、少々乱暴だが気がよくて明るい若者たちの輪に溶け込めない。島へ着いてからもなかなか打ち解けられず、彼らの他愛ない悪ふざけやジョークを必要以上に深刻に受け止める彼女は、やがて自分が彼らに嫌われている、馬鹿にされている、危害を加えられるかもしれないという妄想に取りつかれ、どんどん精神のバランスを崩していく…。 とまあこんな感じなのだが、冗談半分で催眠術を掛けられたアリシアが一気に被害妄想を暴走させていく後半の展開は殆どホラー。まるで悪霊に取りつかれたような有様だ。まさか自分たちが誤解されているなどと思いもよらない若者たちは、彼女の異常な行動の原因や理由を全く理解できず、パニックで右往左往するしかない。まさしくディスコミュニケーションの招いたカオス、そして悲劇としか言いようがないだろう。 悪意を持った人間は一人も出てこない。誰もが言ってみればごく普通の若者だ。しかし、人見知りで生真面目で感受性豊かなアリシアにとって、アウグスティンら仲間たちは得体のしれない野蛮人にしか思えない。一方、細かいことなど気にしない楽天的なアウグスティンたちにとってみれば、終始うつむき加減で怯えたような様子のアリシアはどことなく薄気味の悪い存在だったりする。お互いに頑張って歩み寄ろうとはするものの、その溝はなかなか埋められない。次第に不信感を募らせていく両者の心理を丁寧に汲み取ることで、ヒリヒリとするような緊張感を高めていくシルバ監督の演出は非常に巧み。誰もがどこかで身に覚えのある嫌な感覚を蘇らせるのだ。 そう、相容れない他者との相互不理解というのは、恐らく誰でも一度は経験したことがあるはず。イジメや民族紛争の原因も往々にしてそこにあると言えよう。たいていの場合は、そういうものと割り切ってやり過ごせば済むものだが、しかし小さな島という限定空間の中に閉じ込められるとそうはいかない。みんなが自分と同じ価値観を持ち、自分と同じジョークで笑い、自分と同じものを好きだとは限らないという、我々が時として忘れがちな当たり前のことを、この作品は強烈に思い起こさせてくれる。 そして、本作は最後までその相互不理解が解消されることはない。恐らくクライマックスは賛否両論だろう。実際、あのエンディングはなんなんだ⁉という批判の声も多い。しかし、世界中で紛争やイジメのなくなることのない現実を鑑みれば、一見して不完全燃焼のように見える本作のラストも当然の帰結だろう。そこには、軍事独裁政権の恐怖政治によって国民の間に根深い相互不信の広がったチリという国の、いまだ払拭できないトラウマと歴史の教訓が反映されているようにも思えるのだ。■ © 2013 MAGIC, MAGIC LLC
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PROGRAM/放送作品
トランストリップ
[R15+]初めて異国へ旅行した少女の精神が崩壊していく…若手俳優の競演で描くサスペンス・スリラー
『マレフィセント』『ブラック・スキャンダル』など話題作への出演が続くジュノー・テンプルが主演。不慣れな環境で情緒不安定に陥っていく少女を熱演し、2013年シッチェス映画祭で主演女優賞を獲得。
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COLUMN/コラム2014.10.07
映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』と、アメコミ映画の現在
■あれから4年 映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』は2010年にアメリカで公開された(日本では翌年公開)。いまから4年ばかり前になる。だが、いわゆる“アメコミ映画”は、この4年のあいだに大きく様変わりした。2012年に映画『アベンジャーズ』が大ヒットすることで、コミックのキャラクターを使った超大作映画が、毎シーズンの目玉としてハリウッドに完全に定着したのだ。 いまや盤石の地位を固め、ますます活況を呈するアメコミ映画だが、その一方で、最近すっかりなりをひそめてしまったジャンルもある。スーパーヒーロー(もしくは、そのパロディ)じゃなく、“SF”や“アクション”といったはっきりしたジャンルでもくくれないコミックを原作にした映画である。あえて分類するなら、“青春”や“文芸”路線とでも呼べばいいのだろうか。かつては2001年の『ゴーストワールド』や、2005年の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』といったコミックの映画化が、細々ではあるが良作を生んでいた。しかし『スコット・ピルグリム』以降、そんな流れには新しい動きがなかなか見られないまま現在に至っている。そう考えると『スコット・ピルグリム』という作品は、時代の転換点に立っているような気がしてくるのだ。コミックとしても、映画としても……。 ■オルタナティブ・コミックとマンガ 映画の原作となったコミック『スコット・ピルグリム』シリーズの著者は、カナダ人のブライアン・リー・オマリー。作品は2004年から2010年にかけて、インディ系の出版社オニ・プレスより、全6巻の描きおろし単行本として刊行された(日本版はヴィレッジブックスより、全3巻で発売)。まずこのコミックが生まれるに至った背景を考えてみよう。 1990年代あたりから、インディ系コミックブックの世界で、日常生活における心理の機微をあるときには繊細に、またあるときにはユーモラスにつづる作品が注目を集めるようになった。表面的な絵柄こそさまざまだったが、こうした派手なアクションやわかりやすいギャグを売り物にしない作品は、当時の音楽の流行に合わせるかのように、“オルタナティブ・コミック”と呼ばれるようになる。そんな流れを代表する作品の一つが、先述の『ゴーストワールド』である。1990年代も後半になると、“オルタナティブ・コミック”を刊行するインディ出版社が増えた。『スコット・ピルグリム』を刊行したオニ・プレスもそんな会社の一つだった。 また、1990年代後半といえば、日本のマンガが本格的に北米進出を果たした時期でもあった。それ以前から『AKIRA』や『子連れ狼』といった、いかにも“日本的”な名作は紹介されていたし、アニメ/マンガ的な絵柄のアメコミだってあった。だがその頃、少女マンガをはじめとして、それまでとは比べ物にならないほど多種多様なマンガが英語圏でも読めるようになり、2000年代に入ると、アメリカの出版社で“アメコミ”ではなく“マンガ”の新人賞すら開催されるまでになったのだ。 2000年代前半には、“オルタナティブ・コミック”もメジャーな出版社から刊行され、ベストセラー・リストに名を連ねるようになっていた。つまり、ことさらに“オルタナティブ(もう一つの)”という言葉を使わなくてもいいくらいに、コミックを使って日常を描く手法が普及した時代、そして“アニメ”、“ゲーム”に続く日本のサブカルチャーとして、“マンガ”が定着した時代に『スコット・ピルグリム』は生まれた、ということになる。 ■映画によるコミック表現の極致 2004年にコミック『スコット・ピルグリム』の第1巻が刊行されると、間もなく映画化の企画が持ち上がった。監督を任されたのは、長編映画第1作『ショーン・オブ・デッド』を完成させたばかりのイギリス人エドガー・ライト。しかし、その頃はコミックがどんな結末を迎えるか、まだ原作者自身にもわかっていなかった。単行本の刊行はおよそ1年に1冊。撮影に入るまでには長い時間がかかり、そのあいだにライト監督は長編第2作『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』を完成させている。 映画制作にあたって、原作者と監督は密にやり取りをした。オマリーは初期の創作メモを提供したので、コミックに使われなかった要素が映画に登場することになった。また、脚本と原作の制作が並行していたので、コミックの後半には、脚本に使われたセリフが取り入れられることもあった。2009年になって、ようやく映画の撮影に入るのだが、コミック最終巻の刊行は映画の公開とほぼ同時期。映画の結末はギリギリの段階で、原作に合わせて変えられた。ここまで原作と映画が相互に影響し合った例も珍しいだろう。 こうして完成した映画版『スコット・ピルグリム』は、“コミックの映画化”の一つの到達点とでも呼べる作品になった。物語が進むにつれて、両者の展開は異なっていくものの、映画における多くの場面や出来事が、原作を踏襲している。撮影はカナダの、コミックに登場した土地で行われた。原作者が位置を忘れていたような場所も、コミックに使った資料写真をもとに探し当てられた。さらに、Tシャツの柄などは当然として、擬音を始めとするマンガ的な記号表現すら画面上で再現されている。オマリーが映画のためにわざわざ記号を描きおろす場合もあったらしい。 興行的には製作費すら回収できずに終わってしまったが、映画版『スコット・ピルグリム』は、2003年の『アメリカン・スプレンダー』や2005年の『シン・シティ』以来の、野心的なアメコミ映画となった。そんなエドガー・ライトがマーベル・コミックスのB級ヒーロー『アントマン』を監督すると聞いて、コミックファンの誰もが期待に胸を躍らせたものだった。だが……。 ■そして現在 今年の5月、エドガー・ライト監督の『アントマン』降板が発表された(彼の脚本は使用される予定)。正式な理由は公表されていない。だが、“マーベル・シネマティック・ユニバース”立ち上げ時からの企画だった同作、その後ユニバースが大成功を収め、拡張していくなか、次第に描ける内容に制約が生じたのではないだろうか。スーパーヒーローのシニカルなパロディ映画『スーパー!』を撮ったジェームズ・ガン監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が、今夏アメリカで一番のヒット作となったことを思うと、なんとも切ない気持ちになる。ちなみに『アントマン』の後任は、『チアーズ!』、『イエスマン “YES”は人生のパスワード』のペイトン・リード監督である。 一方、『スコット・ピルグリム』以降のアメコミ映画の状況は、冒頭で書いたとおり。やはりいまのハリウッドでは、“物語”より“キャラクター”に需要があるのだろう。せめて『ゴーストワールド』原作者の、ダニエル・クロウズによる新作『ウィルソン』の映画化に何か進展があれば……と願うばかりである。 とはいえ、そんな現状も映画『スコット・ピルグリム』を楽しむのには関係ない。『ショーン・オブ・デッド』、『ホット・ファズ』、『ワールド・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』とジャンル映画を巧みに異化してきた監督が、“アメコミ映画”を一つのジャンルとみなして、手法を深め、徹底的に作り込んで娯楽度を高めた作品だ。クリス・エヴァンス(元ヒューマン・トーチ/現キャプテン・アメリカ)、ブランドン・ラウス(元スーパーマン/現アトム)、トーマス・ジェーン(元パニッシャー)といった、ムダに豪華なスーパーヒーロー俳優のゲスト出演にあらためて驚くもよし、ベック、ダン・ジ・オートメーター、コーネリアス、ナイジェル・ゴッドリッチといった面子によるローファイ、8ビットの入り混じった充実の音響を味わうもよし。約1200ページにおよぶコミックを、見事な手際で113分に圧縮した、高密度の映画をぜひ堪能してほしい。■ ©2010 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2014.05.27
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年6月】駒騒 貫八
ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」へのオマージュとして知られ、ホラーとコメディとラブストーリーのミックスを試みた映画「ショーン・オブ・ザ・デッド」。ゾンビ映画好きならご存知の方も多いでしょう。今回紹介させていただくのは、その監督である”映画オタク”エドガー・ライトの2010年の作品。物語の舞台はまだ雪が残るトロント。どこか冴えないバンドのベースを務めるスコット・ピルグリムはゲイの同居人や年下の彼女らと共に、バンド同様冴えない生活を送っていた。しかし、ある日パーティーで出会った(その前に夢の中で会っている)ラモーナに一目惚れをしてから、彼の生活は良くも悪くも激変していく…主演はマイケル・セラ。カナダの若手俳優で、出演作「JUNO/ジュノ」はまだ記憶に新しい。そして彼の同居人役のキーラン・カルキン。カルキンと聞いてあのいたずらっ子を思い浮かべる人も多いと思いますが、その通りマコーレー・カルキンの弟でございます。彼ら二人の台詞の掛け合いも見所の一つ。他にも「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンス、アカデミー賞助演女優賞にノミネート経験のあるアナ・ケンドリック、ウェス・アンダーソン作品常連メンバーのジェイソン・シュワルツマンといったそうそうたる面々が名をつらね、日本ではお馴染みの斉藤慶太・祥太も邪悪な元カレ軍団の一員として出演している。冒頭からエドガー節が炸裂します。デジタル化したユニバーサルのロゴ、RPGを思わせるナレーション、軽快なSE(サウンド・エフェクト)によって観客たちをゲームの世界に誘う。どこかで聞いたことのあるゲーム音楽(ゼルダの伝説)、ゲームのステージを連想させる展開、ストリートファイターや鉄拳を彷彿とさせるファイトシーン、ライフゲージ等の演出は観る者にあたかも自らが仮想現実の世界にいるような錯覚をも起こさせる。またこの映画には他にも様々な要素が詰まっています。バックに笑い声が入るホームドラマのようなシーンがあったり、ボリウッドを思わせるダンスシーンがあったり、原作が漫画なこともあり擬音文字が宙を舞ったり。それでいてリアルなところはリアル。過度な演出とリアル、そのギャップがまた僕らを夢中にさせます。前述したように、主人公はバンドマン。そのせいもあってかこの映画は音楽が非常に豪華。レディオヘッドのプロデューサーとしても名高いナイジェル・ゴドリッチを音楽監督に迎え、ブロークン・ソーシャル・シーン、ローリング・ストーンズ、T・レックスらが楽曲を提供、主人公のバンド「Sex Bob-omb」が演奏する曲はベックが作詞作曲している。是非音楽にも”注耳”したい。やりすぎ感がたまらない。いかにもエドガー・ライトな作品ではないでしょうか。この作品、1回観ただけでは味わいきれない面白さがあります。何度も観てほしいです。毎回新しい気付きがあるでしょう。マイケルの可愛いTシャツには注目です。 ©2010 Universal Studios. All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2014.05.25
2014年6月のシネマ・ソムリエ
■6月1日『ロリータ』 ロリータ・コンプレックスの語源となったナボコフの小説を映画化。巨匠S・キューブリックが『スパルタカス』と『博士の異常な愛情?』の間に発表した異色恋愛劇だ。 中年の文学者が下宿先の未亡人の娘ロリータに心奪われ、人生を狂わされていく。物語は原作に忠実だが、ヒロインの年齢設定などが変更され、モノクロで撮影された。 規制が厳しかった時代の作品ゆえに性描写は一切なく、犯罪映画風の冒頭に続いて、人間のエゴをえぐる破滅的なドラマが展開。脇役P・セラーズの怪演も見逃せない。 ■6月8日『砂漠でサーモン・フィッシング』 中東イエメンの砂漠に川を造り、鮭釣りができるようにしたい。大富豪からそんな壮大なプロジェクトの実現を依頼された、英国人水産学者の奮闘を描くコメディである。 原作はポール・トーディの小説『イエメンで鮭釣りを』。イメージアップをもくろむ英国政府の思惑も絡む物語はシニカルなユーモア満載で、恋愛映画としても楽しめる。 堅物の学者に扮したE・マクレガーと、投資コンサルタント役のE・ブラントの機知に富んだ掛け合いが魅力的。夢や理想といったテーマを爽やかに謳い上げた珠玉作だ。 ■6月15日『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』の俊英E・ライトが放ったラブ・コメディ。理想の女の子と交際するため、彼女の元カレ7人と対決する青年の物語だ。 ポップカルチャーから多大な影響を受けた監督の漫画やロックへの偏愛が爆発。主人公が次々と出現する元カレとのバトルを突破していく展開は、まさにゲームのよう! 凝った視覚効果や編集テクを駆使し、ファミコンのチープな電子音まで導入。マニアックな小ネタとギャグも詰め込んだ映像世界は、これぞ究極のオタクワールドである。 ■6月22日『パーフェクト・センス』 人間の嗅覚や聴覚といった五感が順次失われていく奇病が世界中で蔓延。そのさなかに恋に落ちたシェフのマイケルと感染症学者スーザンの身体も異変に見舞われていく。 CGによるディザスター描写に依存せず、人類存亡の危機を描いた英国製の終末映画。五感の喪失という現象が一般市民の日常を混乱に陥れる過程をリアルに映し出す。 世界が静寂と暗闇に覆われていく悲劇的な物語が問いかけるのは、愛と希望というテーマ。他者を“感じる”ことの尊さを感動的に映像化したラブストーリーでもある。 『ロリータ』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc. 『砂漠でサーモン・フィッシング』©2011 Yemen Distributions LTD. BBC and The British Film Institute All Rights Reserved. 『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』©2010 Universal Studios. All Rights Reserved. 『パーフェクト・センス』© Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010