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PROGRAM/放送作品
無ケーカクの命中男/ノックトアップ
[R-15]一夜限りの女性が妊娠!甲斐性なしのダメ男の大騒動と成長を描くドタバタ・コメディ
『40歳の童貞男』のジャド・アパトー監督が、おバカコメディ映画の常連セス・ローゲンを主演に迎え、無責任なダメ男の成長を笑いと共感たっぷりに描く。相手役のキャサリン・ハイグルも女心の機微を好演。
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COLUMN/コラム2016.02.15
ふたりのパラダイス
ニューヨーク。会社員のジョージ(ポール・ラッド)は、自分探し中の妻リンダ(ジェニファー・アニストン)を養うために仕事に励んでいた。ところがある日、会社がFBIによる業務停止処分を受けたことであえなくクビになってしまう。 やむなくアトランタに住む兄を頼って都落ちする二人だったが途中、偶然立ち寄ったヒッピー・コミューンで金銭に縛られない生き方を知り、これまで感じたことがない喜びを経験する。「ここがパラダイスだ!」コミューンへの永住を決意したジョージとリンダだったが、ニューヨーカーだった二人には理解不能なコミューンの風習や掟がその前に立ち塞がる。遂には二人の間にも隙間風が吹くようになってしまい …。 それまでの常識が崩れ落ちる瞬間に、人は笑う。だからコメディ映画にとって、2008年の世界的金融危機(いわゆるリーマン・ショック)は格好の題材だった。何故なら今まで「頭が良い人たちがマジメに働いている」と信じられていたアメリカの金融業界が、素人を騙すことしか考えていない詐欺まがいの集団だったことが明るみになってしまったのだから。 その証拠と言うわけではないけれど、あの事件から現在までわずか8年ほどしか経ってないにも関わらず、金融危機を題材にしたコメディ映画の多さと言ったらない。例えばベン・スティラーとエディ・マーフィの共演が話題を呼んだ『ペントハウス』(11年)。一見すると単なる泥棒コメディなのだけど、実際はスティラー扮する高級タワーマンションの管理人が、従業員仲間の年金を詐欺まがいの投資で台無しにしてしまった悪徳投資家へのリベンジを描いたものだった。 やはり一見お気楽な刑事コメディに見えるウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグの共演作『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10年)も地道に働く庶民を食い物にする金融機関の横暴がテーマだった。エンド・タイトルでは金融危機を引き起こしながら、法律で裁かれた金融関係者が殆ど居ないことが具体的なデータで挙げられている。 この隠れた意欲作の監督兼脚本家を務めたアダム・マッケイが、クリスチャン・ベールやスティーヴ・カレル、ブラッド・ピットといった豪華キャストを迎えて撮ったのが、今年のオスカー賞レースで数多くのノミネートを獲得した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15年)だった。 サブプライム市場の崩壊を事前に予測した金融トレーダーたちの活躍を描いた実録映画ではあるものの、巨額の利益を上げながら主人公たちの表情がいずれも冴えなかったのが印象的だった。無理もない。金融市場が崩壊したことで確かに銀行の首脳陣は退陣を余儀なくされたけど、その際に彼らが億単位の退職金を得ていたのに対して、庶民は不況の影響で仕事を失い、巨額の負債に苦しむことになったのだから。 ブラック・コメディとしても鑑賞可能なデヴィッド・フィンチャー監督作品『ゴーン・ガール』(14年)の主人公であるニックとエイミーも、金融危機をきっかけにマスコミ界の仕事を失い、夫の故郷のミズーリ州に都落ちせざるを得なくなった夫婦だ。引っ越し先で妻のエイミーが引き起こす事件は、元の生活に戻ろうとするあまりの行為だったことを考えると、たしかにヒドい人ではあるものの(詳しくは映画を見れば分かる)彼女だってある意味、金融危機の被害者だったと言えないこともないのである。 そして『ふたりのパラダイス』の主人公であるジョージとリンダもまた金融危機の被害者といえる。しかも都落ちを決意するまでの経緯は『ゴーン・ガール』のニックとエイミーそっくり。但しその行き先をヒッピー・コミューンにしたことで、もっとブライトな笑いに満ちた仕上がりになっている。 資本主義から逃れて自由な生き方を模索するヒッピーたちが、都会から離れて農村や山奥に集団で住むことによって自給自足を試みた共同体がヒッピー・コミューンである。 「ヒッピー・コミューン?『イージーライダー』には出てきたけど、そもそも今も実在するの?」そう思ってしまう日本人は多いかもしれない。たしかに全盛期である60〜70年代に比べると随分と数は減ってしまったけど、ヒッピー・コミューンは今もあちこちで存続中だ。ウィノナ・ライダーやジャック・ブラックのようにコミューン育ちのハリウッド・スターがいるくらいだし、その思想はシリコン・ヴァレーのIT起業家やブルックリンのヒップスターにも受け継がれている。 本作では、幻覚剤や無農薬農業、菜食主義、フリーセックス、そして新生児の胎盤食い(ヒッピーは動物が出産後に胎盤を食べることを真似て、煮たり焼いたりして食べているらしい。もっともとてもマズいらしいけど)といった<コミューンの儀式あるある>がことごとくギャグになっていて、ヒッピー・カルチャーを知っていたら最高に笑えること間違いなしだ。 こうしたヒッピー・カルチャーに翻弄される主人公のジョージとリンダを演じているのは、ポール・ラッドとジェニファー・アニストン。ふたりの共演は、『私の愛情の対象』(98年)で既に実現しており、アニストンの人気を決定づけたシットコム『フレンズ』の末期(02〜04年)にはラッドも準レギュラーで出演していたりと、その交流歴は長い。但し前者ではゲイの男とストレートの女性の親友同士、後者では「アニストンの親友の恋人がラッド」という間接的な関係だったので、今回が初めての男女関係を演じることになる。 何でも、ラッドの親友で本作の監督兼脚本家であるデヴィッド・ウェインから本作のアイディアを初めて聞いた際に、ラッドは「遂にジェニファーと本格共演する時が来た」と直感し、彼女を誘ったのだそう。多忙なジェニファーもそれに応えて、念願の共演が実現したというわけだ。私生活でも友人同士というだけあって、さすがに息はぴったりで、途中二人の間に隙間風が吹く際には、ハッピーエンドが分かってはいてもハラハラしてしまう。 そんな二人を、『『M*A*S*H』』(72〜83年)やウディ・アレン作品で知られるベテランのアラン・アルダ(奇しくも彼は『ペントハウス』で悪得投資家を演じている)や『ライラにお手あげ』(07年)の怪演が未だに忘れられないマリン・アッカーマン、『シックス・フィート・アンダー』(01〜05年)のローレン・アンブローズら個性派たちが好サポート。中でもコミューンのリーダー格のセスを演じるジャスティン・セローは、いかがわしさ満点で強烈な印象を残してくれる。 日本の映画ファンには『マルホランド・ドライブ』(01年)の映画監督役や『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(03年)の悪役くらいでしか知られていないセローだけど、近年は『LOST』のクリエイター、デイモン・リンデロフが手掛けるミステリー・ドラマ『LEFTOVERS / 残された世界』に主演したことで人気爆発。また『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08年)や『アイアンマン2』(10年)、『ロック・オブ・エイジズ』 (12年)の脚本も書いている才人である。 そんな多才な才能に惹かれたのか、アニストンとセローは本作での共演をきっかけに交際をスタート。昨年遂にゴールインを果たしている。結果的にポール・ラッドは親友のジェニファーに家庭という名のパラダイスをもたらしたのだった。 こうした事実を踏まえながら、リンダとセスの2ショット・シーンを観てみるのも本作の隠れた楽しみだろう。 Film © 2012 Universal Studios. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ぼくたちの奉仕活動
全米ロングランヒット!抱腹絶倒お下劣コメディながら最後は感動。これぞアメリカン・コメディの真髄!
問題児と“問題大人”の心の交流を、お下劣要素タップリで描きつつ、最後はキッチリ感動させる、近年のアメリカン・コメディの良作。米本国で約2ヶ月トップ10に居座り続けたロングランヒットも納得の出来。
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COLUMN/コラム2016.03.16
40歳からの家族ケーカク
高年齢童貞を主人公にした大ヒットコメディ『40歳の童貞男』(05年)で華々しい監督デビューを果たしたジャド・アパトー。続く監督第二作『無ケーカクの命中男/ノックト・アップ』(07年)も大ヒットしたことで、ハリウッドにおける彼の評価は決定的なものとなった。しかしこの映画はとても不思議な作品でもあった。 何が不思議かというと、そのストーリーである。冒頭、主人公であるベン(演じているのはアパトーの愛弟子セス・ローゲン)は、キャサリン・ハイグル扮する美人キャスターのアリソンと、酔った勢いで一夜限りの関係を結んだ結果、妊娠させてしまう。 普通ならアリソンが中絶を考えたり、「子どもは自分だけで育てる」とベンを遠ざけたりする紆余曲折を経て、ハッピーエンドに向かうはずだ。しかしアリソンはすぐに出産を決心すると、ベンに子どもの父親としての自覚を求めるのだ。そう、映画としてのお約束を全く守っていないのである。でもその一方で妊娠中のアリソンの描写はリアルそのものだったりする。 実はこれには理由がある。『無ケーカクの命中男』はアパトー自身の体験をベースにした半自伝作だからだ。彼にとってのアリソンは女優のレスリー・マンだった。当時、アパトーは友人のベン・スティラーとジム・キャリーがそれぞれ監督と主演を務めたコメディ『ケーブル・ガイ』(96年)でプロデューサーとして働いていた。そこで彼は、映画の主演女優だったレスリーを妊娠させてしまったのだ。 その結果、彼女はあと一歩でトップ女優になれるポジションにありながら、アパトーと結婚して子育てに注力することになった。しかしそんな大きな犠牲を払われながら、アパトーはなかなかハリウッドで浮上出来なかったのである。 それ以前からアパトーの人生は挫折の連続だった。子どもの頃からお笑いマニアだった彼はスタンダップ・コメディアンとしてキャリアをスタートしている。当初は「自分以上に面白い奴なんていない」と考えていたものの、同世代の三人のコメディアンと知り合った途端、彼の自信はこなごなに打ち砕かれてしまう。 その三人とは、前述のベン・スティラーとジム・キャリー、そしてアダム・サンドラーだった。この世代を代表するコメディアンだから負けるのは仕方ないことなのだが、アパトーのショックは大きく、彼はパフォーマーの道を断念せざるをえなかったのだった。 この時期の体験もアパトーは映画にしている。『素敵な人生の終り方』(09年)がその作品だ。アダム・サンドラー扮するジョージがサンドラー自身で、仲間内でいち早く出世するジェイソン・シュワルツマン演じるマークがベン・スティラー、そして「面白いギャグを書くけどカリスマ性がない」アイラ(演じているのはまたしてもセス・ローゲン)がアパトー自身と言われている。そして彼は芽が出ない状態のまま、レスリーを妊娠させてしまったというわけだ。 アパトーの名がようやく知られるようになったのは、プロデュースと脚本を手がけた『フリークス学園』(99〜00年)によってだった。このテレビドラマで彼は少年時代を送った80年代を舞台に、イケてないグループの少年少女たちをヴィヴィッドに描いたのだった。視聴率が伸び悩んで打ち切られたものの、この作品に関わった監督のポール・フェイグやジェイク・カスダン、俳優のセス・ローゲン、ジェイソン・シーゲル、そしてジェームズ・フランコらは後年それぞれ成功を収めることになる。 高評価を得ていたものの数字がついてこなかったアパトーにようやくチャンスが巡ってきたのは、ウィル・フェレル主演作『俺たちニュース・キャスター』(04年)にプロデューサーとして参加した時だった。彼はこの作品に脇役で出演していたコメディ俳優スティーブ・カレルと知り合ったことで、彼が温めていた企画「高年齢童貞の初体験」をテーマにした映画の実現に奔走。これが『40歳の童貞男』に結実したのだった。 『俺たちニュース・キャスター』と『40歳の童貞男』には、現在『アントマン』の主演俳優として知られているポール・ラッドも出演している。アパトーとポールは、同世代で同じ年頃の子どもを持つことから意気投合して親友になった。こうした経緯もあり、ポールは『無ケーカクの命中男』にも出演している。この作品で彼が演じたのはアリソンの姉デビーの夫ピート。デビーはレスリー・マン、ふたりの娘セイディーとシャーロットはアパトーとレスリーの娘モードとアイリスが演じていた。つまりピートのモデルはアパトー自身なのだ。『無ケーカクの命中男』には過去のアパトー(ベン)と現在のアパトー(ピート)両方が登場していることになる。 このピートとデビーの一家のその後を描いた作品が『40歳からの家族ケーカク』(12年)である。夫婦の倦怠や緊張感、思春期を迎えて不機嫌になる長女、そして老いた親との付き合いなど、テーマは四十代にとってのリアルそのものだ。 ピートがカップケーキを、デビーがタバコを(見かけは)絶っていたり、デビーの「私のおっぱいは全部娘に吸われちゃった」というセリフ、家でのWi-Fiの使用禁止を言い渡されてキレるセイディーといった細かい描写も真に迫ったものがある。 一方で、ピートの経営するインディ・レコード会社が販売不振によって倒産の危機にあるという設定は、映画監督/プロデューサーとして大成功を収めているアパトーにしては謙遜しすぎの描写に見えるかもしれない。でもこれにも理由がある。アパトーの母方の祖父ボブ・シャッドは、メインストリーム・レコードというインディ・レーベルを経営していた人物なのだ。つまりこの設定もアパトーにとっては「母方の家業を継いでいたら、こうなっていたかもしれない」というもう一つのリアルな現実なのだ。 映画の中では、こうした課題の数々は完全に解決されることはない。社運を賭けた英国のベテラン・ロッカー、グレアム・パーカー(本人が好演!)のアルバムが失敗に終わって、ピート一家はマイホームを売りに出さざるをえなくなる。その過程で夫婦の想いはすれ違い、ピートはデビーからこんな問いを投げかけられてしまう。 「もし14年前にわたしが妊娠しなかったら、今でも一緒にいたかしら?」 夫婦喧嘩の最中にレスリーから絶対言われたことがあるに違いない強烈な言葉だ。その言葉の前にピートは黙り込んでしまう。おそらくアパトーも同じ反応をしたのだろう。でも人生とは選択の積み重ねであり、過去に戻ることは出来ない。それを二人が受けとめるエンディングはほろ苦くも暖かい。 『40歳からの家族ケーカク』で自分の現在を描ききったからだろうか。これ以降アパトーがひとりで脚本を書いた作品は存在しない(最新監督作『Trainwrecking』(15年)は主演のエイミー・シューマーが脚本も書いている。但し親の介護や音楽ネタには監督アパトーの影を強烈に感じさせる)。現在レスリー・マンはコメディ女優として大成功を収めており、娘のモードとアイリスもテレビドラマで両親譲りの才能の片鱗を見せはじめている。 映画作家としては徹底して個人の体験にこだわり続けるアパトーが、将来再び脚本も単独で手がけた監督作を発表することがあるなら、その作品の主人公は、成長した娘たちに旅立たれた老いた夫婦になるのではないだろうか。そしてその際に夫婦を演じるのはきっとポール・ラッドとレスリー・マンにちがいない。 ©2012 Universal Studios. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
俺たちニュースキャスター
ダサさ炸裂!70年代を舞台にウィル・フェレルがニュースキャスターに扮した爆笑アメリカン・コメディ
ウィル・フェレルが70年代のTV業界を舞台に、ダサい柄物70’sスーツ姿で暴れ回る爆笑作。ベン・スティラー、ヴィンス・ヴォーンら「フラット・パック」と通称される同志のコメディアンも豪華大量カメオ出演。
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COLUMN/コラム2016.09.14
俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク
70年代後半のサンディエゴ。ローカルテレビ局のキャスター、ロン・バーガンディーは仲間の野郎どもと和気あいあいとニュース番組を作って、我が世の春を謳歌していた。だが才能と野心に満ちた女性レポーター、ヴェロニカが入社したことで状況は一変する。自分たちの無能ぶりがバレそうになったロンは、「このままでは俺たちの立つ瀬がない!」と、彼女にいやがらせをして追い出そうとするが、逆にキャスターの座を失う羽目に。果たしてロンはかつての栄光を取り戻すことが出来るのだろうか? 『俺たちニュースキャスター』は、老舗お笑い番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で、90年代後半にエースとして活躍していたウィル・フェレル(主演&脚本)と、ヘッドライター(脚本家グループのリーダーで番組のかじ取り役)だったアダム・マッケイ(監督&脚本)のコンビが、番組卒業後に取り組んだ本格的な映画進出作だった。フェレルとマッケイは本作のアイディアを、ネットワーク局で最初のアンカー・ウーマンになったジェシカ・サヴィッチの自伝を読んでひらめいたという。70年代のサヴィッチは、ローカル局でキャスターを務めていたのだが、当時のテレビ局は超マッチョな世界で、ネットワーク局のアンカー・ウーマンになる夢を語ると笑われたというのだ。 そんな本に感銘を受けたのなら、普通は女性を主役にするところだろうけど(事実この本をベースに、96年にミシェル・ファイファー主演で『アンカー・ウーマン』という映画が作られている)、流石『SNL』でトップになる奴らは発想のレベルが違う。敢えて<才能ある女子をバカにするマッチョな性差別主義者>の方を主人公にして、それをフェレルが演じるというアイディアを思いついたのだ。 こうして最低で最高の迷キャラクター、ロン・バーガンディーが誕生した。まるでバート・レイノルズのようなワイルドな口ヒゲを蓄え、真っ赤なスーツに身を包んだロンは、未だに一度もリバイバルしたことがない70年代後半のイカれたセンスを体現したかのような男。しかもキャスターとしての才能はゼロで、見当外れの言動を繰り返し、興に乗るとフルートを吹きまくるのだ! 『SNL』の大先輩マイク・マイヤーズが扮した60年代の化身、オースティン・パワーズが、実はオシャレなのと比べるとマジでダサすぎる。でもこれが逆にウケた。イイところがひとつもないのに何故か憎めないロンになりきることで、フェレルはダサさを突き抜けたクールなコメディ・スターになったのである。 全くの私見だが、フェレルはこうしたキャラ造形術をベン・スティラーから学んだのではないだろうか。コメディ番組の5分間のスケッチと、上映時間が90分以上にも及ぶコメディ映画は同じお笑いでも全くの別モノだ。いくら笑いのコンセプトが良くても、その裏に人間性が感じられないと映画の観客は飽きてしまう。マイヤーズほどの天才コメディアンが、『オースティン・パワーズ』以降ヒット作を生み出せなかった理由もそこにある。 『SNL』在籍時に『オースティン・パワーズ』に脇役でゲスト出演したフェレルは、こうした問題点に気づいたのだろう。別の手本を探すようになり、その結果スティラーと共演した『ズーランダー』の中にヒントを見出したのだ。あの作品の<栄光の頂点に君臨して得意顔だった主人公が、才能が無いのがバレてドン底まで落ち、そこから何とか這い上がろうと頑張る>という基本プロットは、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』(06年)や『俺たちフィギュアスケーター』(07年)といった以降のフェレル主演作の多くに共通するものだ。 前作から9年の歳月を経て、『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』で、フェレルがロン・バーガンディーを再び演じた理由のひとつは、ここいらでこの路線の集大成的な作品を作りたいとフェレルとマッケイが考えたからに違いない。 今作の舞台は1979年のニューヨーク。前作のラストでヴェロニカと共同でネットワーク局のアンカーマンに就任したロンが、ひとりクビになってしまうところから物語は始まる。失意の日々を送る彼のもとに、新規開局する24時間ニュースチャンネル、GNNからキャスター就任の誘いが舞い込む。 喜んだロンは、サンディエゴ時代の仲間を集めて番組に臨むが、担当の時間帯は午前2時から5時という、誰も観ていない時間帯だった。だがメゲないロンは「視聴者が聞くべきことを伝えるのではなく、彼らが聞きたいことを伝えるんだ」と政治的に偏向したニュースを放映したり、カーチェイスの中継を延々行うことで記録的な高視聴率を獲得していく。 GNNという名前自体は、1980年に開局したCNNのパロディだけど、むしろ本作の笑いの対象はフォックス・ニュースの方に向けられている。1996年に開局したフォックス・ニュースは、国際的な問題(視聴者が聞くべきこと)を多く報道するリベラル色が強いCNNに対し、保守的なアメリカ人のプライドをくすぐるような内容(彼らが聞きたいこと)を意識的に報道。リベラル派を「アンチ・アメリカ」とディスり、大統領選では共和党候補を熱烈に支持することで、あっという間にナンバーワン・ニュース局にのし上がった。フェレルとマッケイは、そのコンセプトを知性ゼロのロンが考えついたことにすることによって、強烈な批判を浴びせているのだ。 一見アホなギャグを追求し続けてきたかに見えるフェレルとマッケイだが、実はかなりのリベラル派。政治的なメッセージは、刑事アクション『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10年)あたりから表面化しはじめ、政治そのものを描いた『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員! 』(12年)で一層深まった。『史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』も作品としてはあくまでその延長線上にある。 ちなみに本作の後、マッケイは初めてフェレル主演作ではない映画を監督したのだが、その作品こそが、リーマン・ショックの裏側を描いて評論家にも絶賛された『マネー・ショート 華麗なる大逆転 』(15年)だったりする。アカデミー賞脚色賞を獲得した同作のプロトタイプは『史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』にあるのだ。 また本作はある種の同窓会映画でもある。第一作で、挙動不審なお天気キャスターを怪演したスティーブ・カレルや、モテ男の屋外レポーターを演じたポール・ラッドは、当時はまだスターと言える存在では無かった。プロデューサーを務めたジャド・アパトーに至っては殆ど仕事が無い状態。しかし『ニュースキャスター』で手応えを感じた彼らは『40歳の童貞男』の製作へとなだれ込んでいった。その後の活躍はここに書くまでもないだろう。そんな彼らが本作でフェレルとマッケイのもとに帰ってきた。全編にパーティ・ムードが漂っているのはそのためだ。 こうしたパーティ・ムードにさらに輪をかけているのが大量のカメオ出演だ。ざっと紹介するだけでも、ハリソン・フォード、ドレイク、サシャ・バロン・コーエン、カニエ・ウエスト、ティナ・フェイ、エイミー・ポーラー、ジム・キャリー、マリオン・コティヤール、ウィル・スミス、リーアム・ニースン、ジョン・C・ライリー、キルスティン・ダンスト、そして第一作にも顔出ししたヴィンス・ヴォーンが登場する。映画ファンなら、誰がどのシーンに出るのかを固唾を飲みながら観るのも一興だろう…まあ、その固唾は笑いで吐き出してしまうだろうけど。 © 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ロミオ&ジュリエット
[PG-12]絶世の美男子レオナルド・ディカプリオのハマリ役!シェイクスピア恋愛悲劇の斬新な現代版
シェイクスピアの名作ラブ・ストーリーを、鬼才バズ・ラーマン監督が舞台を現代に置き換えて華麗なタッチで映像化。当時若手アイドルとして絶頂期にあったレオナルド・ディカプリオが、甘く情熱的な魅力を振りまく。
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COLUMN/コラム2015.07.20
プレップファッションとギャル語が満載!!みんながノーテンキでいられた時代のカルト映画『クルーレス』。
1995年に全米公開され、"ハイスクール・ロリータ"とも言われたファンシーなファッションとメイク、連発されるギャル用語、そして、主人公のブルジョワ女子高生、シェールの一見ノーテンキに見えて実は知的でイノセントなキャラクターが受けて、今でも少女たちの間でカルトムービーとして君臨する『クルーレス』。その根強い人気は、日本公開後にVHSが発売された後も、繰り返しDVDがリリースされ、公開後10年が経った2005年には"コレクターズエディション"と題する特典付きDVDが再度発売されたことでも明らかだ。何がそんなに受けるのか? まずは、ファッション。ビバリーヒルズの高校に通うシェールと親友のディオンヌが通学服として愛用している必須アイテムは、トラッドをガーリーにアレンジした'90's風プレップスタイル。冒頭で登場するタータンチェックのミニスカスーツを始め、女子高生たちが劇中で着るチェックの柄はシェールの7種類を始めトータルで実に53種類。また、シェールが散らかったワードローブの中から探し出そうとするお気に入りのシャツは、1961年にアメリカ西海岸で開業以来、複合セレクトショップとして人気の"フレッド・シーガル"でゲットしたもの。その日本一号店が、ようやく今年4月、東京の代官山にオープンしたのは記憶に新しい。また、男友達とドライブ中に喧嘩して、危険エリアのサン・バレーに置き去りにされる時にシェールが着ているのは、ボディコンシャスの権化、アズディン・アライアの赤いミニドレスだったり、狙いを定めたイケメン男子と初デートに出かける時に彼女が選ぶのは、カルバン・クラインの白いボディコンミニだったりと、表情はまだ子供なのに服は男の視線を刺激しまくり。そんな娘を見たパパが、「下着みたいだ」と怒るのも無理はない。この映画に"ロリータ"と形容詞が付く理由は、そんなところに起因するのだ。因みに、衣装デザインを担当しているのは、25歳のヒロインが17歳の女子高生に化けて高校に潜入する『25年目のキス』(99)や、同じ高校の同窓生たちが13年ぶりに再会する『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』(12)等、キャンパスルックのパイオニア、モナ・メイ。服好きで映画好きの女子たちの間ではレジェンドなデザイナーだ。 連発されるギャル語にも耳をそばだてよう。言葉は生きもの。時代の空気を映す鏡だ。今でもハリウッド映画やドラマでよく耳にする「whatever(どうでもいいじゃん)」や、「totally~(超なになに)」、「as if(サイテー~)」等々は、日本の女子高生用語としても転用できそうなフレーズだ。その場合は、シェールのように少しダレ気味に、相手を小馬鹿にする感じが必要だろう。また、お互いのパパとママが再婚し、2人が離婚した今も交流を続けている血が繋がらない兄のようなジョシュのことを、シェールが「ex-stepbrother(元・義兄)」なんて表現しているのも、アメリカの離婚事情の現れ。重ねて、言葉は生きもの。社会情勢の変化に伴い形を変えて当たり前なのだ。 シェールたちが学校で義務付けられているカリキュラムの中に、堂々と"ディベート"が組み込まれているのも、討論を重んじるアメリカならでは。ある日、国の移民政策に対して反対か賛成かを議論し合う授業で、シェールが賛成する理由を「パパが開くパーティにもっとたくさん人が呼べると楽しい。故に、移民も大歓迎」と発表してどん引きされるのだが、ロジックはどうであれ、反対意見と対決する姿勢こそが大事なわけだ。 監督と脚本を担当しているエイミー・ヘッカリングは、南カリフォルニアにある高校を舞台に、ロスト・ヴァージンを目指す女子高生の奮戦ぶりを描いた出世作『初体験 リッジモント・ハイ』(82)以来、不倫の末に産まれた赤ちゃん目線で母親や大人たちの騒動を眺める『ベイビー・トーク』(89)と、その赤ちゃんに妹ができる続編『リトルダイナマイツ★ベイビー・トークTOO』(90)、そして、年上の大学教授と不倫する女子大生に恋してしまう一途な男子学生の苦闘を綴る『恋は負けない』(00)等、愚かだけれど憎めない人々のささやかな物語を紡ぎ続け、今に至っている。ヘッカリング作品が時代や国境を超えて愛され続ける理由は、ファッションやカルチャーだけではない。難しい事は抜きにして楽しみ、時に懐かしみ、思い入れられるテーマが各々の作品のベースにあるからだ。それは、映画の公開後、『初体験 リッジモント・ハイ』『クルーレス』『ベイビー・トーク』の3作が次々とTVシリーズ化され、アメリカ国内のみならず全世界に拡散されていったことでも証明されている。 そして、『クルーレス』の世界観は、その後、シェールに負けず劣らずノーテンキなハイスクールギャルがハーバード大学に乗り込む大ヒット作『キューティ・ブロンド』(01)や、シェールたちの立ち位置をニューヨークのキャリアガールに置き換えた『セックス・アンド・ザ・シティ』(08)、さらに、ヘッカリング自身がエピソードの一部を監督したTVシリーズ『ゴシップガール』(12)にも引き継がれている。 偶然だが、シェール役の候補者の1人には、後に『キューティ・ブロンド』でブレイクするリース・ウィザースプーンがいたし、ライバルにはやはりブレイク前のアンジェリーナ・ジョリーやグウィネス・パルトロウ等、未来の大器がひしめいていた。そんな強者たちを押し退け、シェール役をゲットしたのがアリシア・シルバーストーンだ。15歳で映画デビュー後、18歳の時に出演した『クルーレス』でティーンエイジスターのトップに躍り出た彼女の、大人びたルックスと甘えた声のギャップは男女を問わず虜にし、一躍時代のアイコンにジャンプアップ。業界人としてもクレバーだったアリシアは直後、自ら製作プロ"ファースト・キス"を成立し、当時個性派俳優として注目され始めていたベネチオ・デル・トロを共演者に迎えた『エクセス・バケッジ シュガーに気持ち』(97)をプロデュースする等、活動の場を広げる。 しかし、9.11後、テーマ選びもバジェットに於いても守勢に回ったハリウッドに、アリシア等女優プロデューサーの出番は減り、かつて、エイミー・ヘッカリングが監督した、あのノーテンキなコメディ自体の需要が減ってしまったのは、実に嘆かわしいことだ。かつて、メディアの取材に応えて、「心が澱むから暗い話には興味がない」と明言したヘッカリングと、彼女の意図を汲み取ってお馬鹿だけど憎めない女子高生を好演したアリシアが、久々にコラボする機会を待ち焦がれているのは、何もファッションチェックに忙しい女子高生ばかりじゃない。夢見る男子だったオジサンたちだって、あの頃の自分に戻って泣き笑いしたいに違いないのだ。■ COPYRIGHT © 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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PROGRAM/放送作品
40男のバージンロード
花婿介添人を頼める親友を探して…、結婚が決まった男が慌てて友達作りに励む、男子の友情コメディ
大ヒットコメディ「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズの脚本を手がけたジョン・ハンバーグの監督・脚本作品。女同士の友情とはまた違う、男同士のやんちゃな友情の楽しさを描き、アメリカで大ヒットしたコメディ。
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COLUMN/コラム2012.01.01
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年1月】山田
ダメな大人2人が刑務所入りを免れるべく、問題児相手の奉仕活動に悪戦苦闘しながらも絆を深めていくハートウォーミングコメディ。注目は何と言っても、「キック・アス」では異様な存在感で世を魅了したクリストファー・ミンツ=プラッセ。本作品でも、重度のオタク役を演じ、圧倒的なキモさを発揮。全米では数ヶ月にわたってトップ10入りしたほどの作品なのに、日本では未公開。「なぜか日本ではヒットしない」というジンクスを打ち破るべく、これからもザ・シネマではアメリカン・コメディを応援していきます。 © 2008 Universal Studios. All Rights Reserved.