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PROGRAM/放送作品
レマゲン鉄橋
敗軍にとっては脱出路、勝軍にとっては進撃路となる“橋”をめぐる攻防戦を描く、戦争娯楽映画の傑作
『タワーリング・インフェルノ』の監督による戦争娯楽作。本作でロバート・ヴォーンが築いた“まるでドイツ軍人に見えないドイツ軍人はヒーロー”というパターンは、『ワルキューレ』のトム・クルーズにも引き継がれた。
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COLUMN/コラム2018.02.01
動物パニック映画の枠を超えた奇想と、驚異のミクロ描写に目が釘付けの昆虫映画2作品『燃える昆虫軍団』『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』〜2月8日(木)・9日(金)ほか
ある日突然、筆者のもとに〈シネマ解放区〉の担当さんからシュールなメールが届いた。「“昆虫セット”はいかがですか?」。要するに『燃える昆虫軍団』『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』という往年の昆虫パニック映画2本をまとめて紹介してくれという原稿の発注だ。どちらも30年以上前にテレビで観ていて、やたら面白かった記憶があるので、さして迷うこともなく「昆虫セット、承りました」と返信し、今この文章を書いている。 この2作品が世に出た1970年代は、空前のアニマル・パニック映画ブームが吹き荒れ、地球上のあらゆる動物が人類を脅かした時代だった。ヒッチコックの『鳥』がそうであったように、特に理由も示されぬままサメ、ワニ、クマなどが我も我もと凶暴化し、普段はあまり人目につかないネズミやヒルといった小動物までも人間に襲いかかった。 そんな1970年代に作られた『燃える昆虫軍団』『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』は小動物よりさらに小さい昆虫が主役であり、内容もかなりの変化球であるため、漠然とアニマル・パニック映画ブームの“後期”の作品だと思い込んでいた。ところが今回、改めてそれぞれの本編を見直すと同時に、製作年をチェックして驚いた。『燃える昆虫軍団』はスピルバーグの『ジョーズ』と同じ1975年、『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』に至ってはさらに早い1973年に作られているではないか。「そろそろブームもマンネリだから、ちょっと変わった昆虫パニックものでも作るか」といういかにも商魂旺盛なB級映画のプロデューサー的な発想とは、まったく関係なく生み出された2作品だったのだ。 まず『燃える昆虫軍団』の凄いところは、この邦題の“燃える”というのが何かの比喩でもハッタリでもなく、本当に“燃える昆虫”を描いている点だ。物語はとある夏の日、田舎町で大地震が発生し、あちこちにできた地割れから未知の虫が現れるところから始まる。その体長10センチ弱くらいの三葉虫のような生き物は、お尻のあたりにパチパチッと火花を発す特殊スキルの部位を装備しており、乾ききった草むらはもちろん、手当たり次第に車や家屋を燃やし始める。すかさずありったけの消防車が出動するが、とても消火活動は追いつかない。生物学に精通した地元の教授がこの発火昆虫を分析すると、さらなる驚きの事実が次々と明らかに。人間の足で踏みつけても殺せない屈強な甲殻を持ち、害虫の駆除薬でも死なず、草木や新聞などの燃えかすの灰を食べて栄養にするこの昆虫は、太古の時代から粘り強く地底で生き抜いてきた最古の生物だったのだ! 先ほど“三葉虫のよう”と書いたが、実際にはゴキブリを撮影に使っているので、少年時代に目の前に飛んできたゴキブリを避けようとしてガラス戸に突っ込んで大ケガしたトラウマを抱える筆者には、直視できないシーンの多い困った映画である。それでも本作から目を離せないのは、発火昆虫の意表を突いた設定に加え、アニマル・パニック映画の型にはまらない異様なストーリーが繰り広げられるせいだ。運の悪いネコや数名の人間が発火昆虫に殺害され、あちこちで火災が発生する前半はよくあるパニック映画風の滑り出しなのだが、中盤以降はパニックがスケールアップするどころか極端にスケールダウン。一軒家に閉じこもって研究に没頭していた教授が、昆虫に妻を惨殺されたことで怒りを爆発させ、彼個人の私的な復讐ドラマへ転じていくのだ。しかも何を思ったのか、太古の発火昆虫を現代に生きるゴキブリと異種交配させ、なおさら危険な新種の昆虫を創造する始末。主人公がマッドサイエンティスト化する展開に呼応して、映像のトーンもからっと明るいパニック映画から陰影を強調したサイコスリラーへと変貌していく。思わず呆気にとられつつも、その不可解なストーリーの転調をきちんとビジュアルで表現していることに感心させられる。 かくして驚異の進化を遂げ、知能も発火機能もバージョンアップした昆虫のディテールがさらに念入りに描かれ、後半にはあっと驚く“虫文字”などの見せ場が用意されているのだが、それは観てのお楽しみ。そして今回観直して気づいたことだが、日曜日に大勢の信者が集う“教会”が大地震に見舞われるシーンで幕を開け、教授が生命の創造という神をも恐れぬタブーを犯し、ついにはこの世に“地獄の裂け目”が表出する破滅的なエンディングを招き寄せてしまう構成も秀逸。すなわち本作は昆虫をモチーフにした宗教的パニック・カタストロフ映画とも解釈できるわけだ。 ちなみに手堅い演出を披露しているのは、タイムスリップSFの傑作『ある日どこかで』で知られ、今も現役で「グレイズ・アナトミー」などのTVシリーズの演出を手がけているヤノット・シュウォーク。しかし、より注目すべきは製作、脚本のウィリアム・キャッスルだろう。1950年代末から1960年代にかけて『地獄へつゞく部屋』『13ゴースト』などのホラー映画を世に送り出し、4DXの先駆けとも言えるあの手この手のアトラクション体験を観客に提供。そんな偉大なる“ギミックの帝王”がキャリアの最後に携わった一作なのだ。さすがに劇場公開時、ゴキブリを観客席にばらまくなどというシャレにならないギミックはしでかさなかったようで、本作の完成から2年後の1977年に心臓発作でこの世を去った。 うまくストレートに内容を表している『燃える昆虫軍団』に比べると、『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』はかなり損をしている題名ではなかろうか。日本では劇場未公開に終わったこの作品はチープなアニマル・パニック映画ではなく、哲学的とも言える本格志向のハードSF。遅ればせながら数年前に国内盤DVDがリリースされたことで、もはや知る人ぞ知るの域を超えて多くの映画ファンを唸らせてきたカルトムービーの逸品である。 はるか彼方の宇宙空間で発生した異変の影響が地球へと伝わり、アリゾナの小さな小さな生き物=アリの一群が奇怪な行動を見せ始める。そのアリたちは同じ種族で争うことを止めて一致団結し、カマキリやヘビといった自分たちの天敵を駆逐し、ぐんぐん勢力を拡大していく。冒頭の10分間はそうしたアリの生態がネイチャー・ドキュメンタリーさながらに超接写やハイスピード撮影を駆使して延々と描かれるので、たまたま暇つぶしでこれを観始めた人は、ザ・シネマではなく間違ってナショナル・ジオグラフィックかアニマル・プラネットにチャンネルを合わせてしまったかと錯覚することだろう。 アリたちの不思議な行動を知って現地に赴いた学者のハッブスと若いエンジニアのレスコが、シルバーのドーム状施設で研究を開始するまでが〈フェイズⅠ〉、すなわちアリと人類の存亡をかけた前代未聞の闘いの第1段階。そのドームの前には7つの幾何学的なモニュメントがそびえ立っている。人間の背丈よりもはるかに高いそのタワーは、アリたちが築き上げた巨大なアリ塚だ。学者としての情熱は人一倍だが、かなり傲慢な性格のハッブスはアリタワーを荒っぽい手段で粉砕し、上から目線でアリたちを挑発する。もともと好戦的なアリたちがその宣戦布告を受けて立ったことで、両陣営の攻防は一気に激化。虫ごときに発電機を破壊されたハッブスは、お返しに強力なイエローの殺虫液をお見舞いして無数のアリたちを抹殺する。ここからの描写が凄まじい。生き残ったアリは殺虫剤のかけらを女王蜂のもとに届けるため、決死の覚悟で運び始める。運び主のアリが絶命したら、別のアリがそれを受け継ぐという捨て身のリレー。ついに殺虫剤を受け取った女王蜂は、その薬物に耐性のあるイエローのアリを産み落とす。当然ながらCGなど存在しない時代に、本物のアリを使って“演技”させ、その組織だった連係プレーや自己犠牲をいとわない献身性を映像化してみせた撮影に舌を巻く。ましてや地下空間に戦死したアリたちの亡骸が整然と並べられた“葬儀”シーンは、揺るぎない全体主義を形成するアリ社会の圧倒的な強みをひしひしと伝え、エゴイスティックで何かと感情に左右されがちな人間との優劣を残酷なまでに浮き彫りにする。 続いて、人間が高温に弱いと見抜いたアリたちは、太陽光を反射させる鏡面機能を備えた新たなアリ塚を建造し、エアコンも破壊して(このシーンにおけるアリとカマキリとの絡みが見ものだ)、蒸し風呂状態のドームにこもったハッブスとレスコを苦しめていく。まだ〈フェイズⅡ〉だというのに、早くも人類の敗色ムードは濃厚。初見の視聴者の興趣を殺がないよう〈フェイズⅢ〉以降の詳細を書くことは避けるが、アリたちは人間をやすやすと殺したりはしない。なぜならアリ目線の一人称ショットがさりげなくも随所に挿入されるこの映画は、人類がアリを倒す話ではなく、アリが人類を観察してある目的のために有効利用しようとする恐るべき話なのだ! 監督は、ヒッチコックの『めまい』『サイコ』などのメインタイトルの作者として名高いグラフィック・デザイナーのソウル・バス。このキャリア唯一の長編監督作品で独創的な視覚的センスを遺憾なく発揮し、哲学的な寓意をはらんだ異種族間の一大戦記をヴィジュアル化した。人間の主要キャラクターは前述のハッブスとレスコ、そして研究ドームに逃げ込んできた近所の農家の娘ケンドラの3人だけ。半径数百メートルの局地戦を描きながら、『燃える昆虫軍団』よりもはるかに深遠な黙示録的なドラマを創出し、『2001年宇宙の旅』や人類と宇宙病原体とのミクロな死闘を描いた『アンドロメダ』をも連想させるレベルのSFに仕上げたその手腕には驚嘆せずにいられない。これまた男性視聴者の視覚を大いに潤すであろうケンドラ役のリン・フレデリックの麗しい魅力を生かし、アリがその柔肌を這いずり回る倒錯的なエロティシズムも表現。この紅一点の美女が単なるお色気担当ではないことが判明する衝撃的な結末にも注目されたし。 そして最後に、インセクト・シークエンス、すなわち見事な昆虫撮影を手がけたケン・ミドルハムについて。1971年にアカデミー賞ドキュメンタリー長編賞を受賞した『大自然の闘争/驚異の昆虫世界』の撮影監督であるミドルハムが、『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』で重要な役目を担っていることはもともと知っていたが、何と『燃える昆虫軍団』にもインセクト・シークエンスでクレジットされていたとは! ザ・シネマがお届けする昆虫撮影の名手によるこの2作品、いろんな意味で興味の尽きない必見&録画必須の“昆虫セット”なのである。■ TM, ® & © 2018 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ピラニア
[PG12相当]恐怖の生物兵器、凶暴なピラニアが人肉を食いつくす!大ヒットを記録した動物パニック映画
『グレムリン』のジョー・ダンテ監督の出世作。70年代動物パニック映画の流れに名を連ねる作品。かつて日活の女優で、後に渡米した筑波久子がチャコ・ヴァン・リューウェンという名前で製作に携わっている。
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COLUMN/コラム2018.09.05
ロジャー・コーマン製作の『ジョーズ』亜流映画はバカの連鎖によって大惨事が引き起こされる痛快(?)ブラック・コメディ『ピラニア』
B級映画の帝王ロジャー・コーマンが弟ジーンと共に、'70年に設立したインディペンデント系映画会社ニューワールド・ピクチャーズ。'83年にコーマンがハリウッドの大物弁護士3人の合弁会社へ売却するまでの間、実に100本以上の低予算エンターテインメント映画を製作・配給した同社だが、その中でも興行的に最大のヒットを記録した作品がジョー・ダンテ監督の『ピラニア』('78)だった。 ニューワールド・ピクチャーズの基本方針といえば、言うまでもなく徹底したコストの削減である。人件費を浮かせるため撮影期間は最小限に抑えられ、キャストもギャラの安い無名の若手新人か落ちぶれたベテラン勢で固め、セットや衣装、大道具・小道具などは別の映画でも使い回しされた。時にはフィルムそのものを使い回すことも。さらに、リスクを取ることなく確実に当てるため、映画界のトレンドやブームには積極的に便乗。最初期の代表作『危ない看護婦』('72)シリーズは折からのソフトポルノ人気に着目しての企画だったし、ヨーロッパ産の女囚映画が当たり始めるとすかさず『残酷女刑務所』('71)や『残虐全裸女収容所』('72)などの女囚物をバンバン連発した。さらに、『バニシングIN 60”』('74)が大ヒットすれば『デスレース2000年』('75)や『バニシングIN TURBO』('76)を、『スター・ウォーズ』('77)がブームになれば『宇宙の七人』('80)や『スペース・レイダース』('83)を、『エイリアン』('79)が当たれば『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』('81)や『禁断の惑星エグザビア』('82)をといった具合に、時流のジャンルや大ヒット映画を臆面もなくパクるのがコーマン流の成功術だったわけだ。 なので、当時のロジャー・コーマンが折からの『ジョーズ』ブームに目を付けたのも当然と言えよう。'75年の6月に全米公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』('75)は、900万ドルの予算に対して4億7000万ドル以上を売り上げ、各映画会社が夏休みシーズンに目玉映画を公開するサマー・ブロックバスターの恒例行事を初めて確立し、自然界の生き物が人間を襲うという動物パニック映画のブームを巻き起こした。自然公園に出現したクマが人間を襲う『グリズリー』('76)、可愛い犬たちが集団で人間を襲撃する『ドッグ』('76)、さらにはオゾン層の破壊の影響で様々な動物が凶暴化する『アニマル大戦争』('77)などなど。ただ、『シャークジョーズ/人喰い鮫の逆襲』('76・旧テレビタイトル)と『オルカ』('77)、そしてイタリア産の巨大タコ映画『テンタクルズ』('78)の例外を除くと、『ジョーズ』の直接的な亜流に当たる水中生物系のパニック映画が量産されるようになるまでには少し時間がかかった。 そもそも、この『ピラニア』だって『ジョーズ』のヒットから3年も経って劇場公開されている。そのほか、鮫だけでなくワニやカマスや海洋モンスターなど、手を変え品を変えた一連の『ジョーズ』パクり映画群も、だいたい'78~'81年頃に集中して作られている。その理由の一つとして考えられるのは、陸上に比べると水中撮影は時間もコストもかかることであろう。また、『ジョーズ』のように撮影用の巨大な生物メカを製作するとなると、さらに費用がかかってしまう。懐に余裕のない独立系映画会社にとっては負担が大きい。しかし、多くのプロデューサーが『ジョーズ』の亜流映画製作に慎重となった最大の理由は、本家製作元のユニバーサルから訴えられることを恐れたためではないかと思われる。実際、あまりにもストーリーが『ジョーズ』と酷似したイタリア産の『ジョーズ・リターンズ』('81)は、案の定ユニバーサルから訴訟を起こされ、全米公開からたったの1か月で上映を差し止められている。それでも1800万ドルの興行収入を稼いだというのだから立派なものなのだが。 そういうわけで、巨大な鮫に対して小さいピラニアだったら、仮に訴えられても言い訳できるだろうと考えたロジャー・コーマン。ところが、当時『ジョーズ2』('78)を劇場公開したばかりだったユニバーサルは、著作権侵害を理由に『ピラニア』の公開差し止めを求めようと動いていた。うちの客を奪われちゃかなわん!ってことなのだろう。それを思いとどまらせたのが、なんとほかでもない本家『ジョーズ』の生みの親スピルバーグ監督だったと言われている。事前に『ピラニア』本編の完成版を見て気に入ったスピルバーグは、ジョー・ダンテ監督の腕前を高く評価していたらしいのだ。そのことをダンテ監督自身は、後にオムニバス映画『トワイライトゾーン/異次元の体験』('83)の監督の一人として、スピルバーグから声がかかるまで全く知らなかったらしい。その後、『グレムリン』('84)や『インナースペース』('87)などでもダンテと組むことになるスピルバーグだが、この頃から既に彼の才能に着目していたのである。 そんなスピルバーグをも認めさせた映画『ピラニア』の面白さとは、一言で言うなら「開き直りのパワー」であろうか。どうせ低予算のパクり映画なんだから、思い切って好きなことやって楽しんじゃおうぜ!という若いスタッフの情熱と意気込みが、スクリーンから溢れ出ているのである。先述したように、ロジャー・コーマンは徹底して予算を抑えた映画作りをしていたわけだが、その一方で経験が豊富とは言えない若いスタッフたちに積極的にチャンスを与え、クリエイティブ面でも彼らの意見を最大限に尊重し、その才能を後押しすることを惜しまなかった。まあ、それもまたコーマン流の人件費削減術(経験の浅いスタッフはギャラも安い)なのだが、結果的に多くの優秀な映画人が彼のもとから育ったわけだから全然オッケーでしょう。実際、ニューワールド作品からも、ロン・ハワードやジョナサン・デミ、ジョナサン・カプラン、ポール・バーテルなどの監督が巣立っていった。もちろん、『ピラニア』のジョー・ダンテもその一人だ。 もともと、ニューワールド作品の予告編編集マンとして腕を磨いてきたダンテ監督。『ハリウッド・ブルバード』('76)での共同監督を経て、初めて単独で演出を任されたのが『ピラニア』だった。当時のダンテ監督は31歳。脚本のジョン・セイルズは26歳だし、そのほか編集のマーク・ゴールドブラットやクリーチャー・デザインのフィル・ティペット、特殊効果担当のクリス・ウェイラスなど、後にオスカーを賑わせる豪華なスタッフたちも、みんな当時は20~30代のチャレンジ精神旺盛な若者だった。当初オファーされていたリック・ベイカーの推薦で、特殊メイク担当の代役に起用されたロブ・ボッティンなどは、まだ18歳の少年だったというのだから驚きだ。そんな彼らの、お金も経験もないけれどアイディアでは負けないぜ!という向上心と貪欲さが、本作の屋台骨をしっかり支えていると言えよう。 オープニングはテキサスの山奥の怪しげな施設。そこへ迷い込んだ10代男女のバックパッカーが、「あ!プールあるじゃん!まじラッキー!」とばかりに素っ裸になって飛び込み、案の定というかなんというか、水中に潜む正体不明の何かに殺されてしまう。で、そんな2人の行方を捜しにやって来た家出捜索人マギー(ヘザー・メンジーズ)は、飲んだくれの自然ガイド、ポール(ブラッドフォード・ディルマン)の案内で若者たちが足を延ばしたであろう例の施設へ。プールの水を抜けば何か分かるかもしれないと考えた2人は、彼らの様子を陰でうかがっていた科学者ホーク博士(ケヴィン・マッカーシー)が必死になって止めるのも聞かず…というか、なんかヤバいオッサンが出てきた!こんな××××は問答無用で倒すべし!とばかりに、博士を殴って気絶させてプールの排水蛇口をひねってしまう。近くの川へと流れ出るプールの水。しかし、そこには米軍がベトナム戦争の生物兵器として開発した獰猛なピラニアの大群が潜んでいたのだ…! というわけで、この映画、基本的に愚かでバカな連中が愚かでバカなことをやらかし続けた挙句、そのバカの連鎖によって大惨事が引き起こされるという痛快(?)なブラック・コメディなのである。冒頭のティーン男女然り、主人公のマギーとポール然り、ピラニアを遺伝子操作したホーク博士然り、さらには隠蔽工作をする米軍大佐(ブルース・ゴードン)やその片腕のメンジャーズ博士(バーバラ・スティール)、リゾート施設の悪徳経営者ガードナー(ディック・ミラー)といった憎まれ役に至るまで、みーんな後先のことなど深く考えずに間違った選択をしてしまう。しかも、誰一人として反省しない(笑)。その究極がクライマックスの無謀としか思えないピラニア撃退作戦ですよ。結局、人類にとって最大の害悪は人類そのもの。そんな大いなる皮肉をシニカルなユーモアで描いたジョン・セイルズの脚本は実に秀逸だ。 とはいえ、やはり最大の見どころはピラニアの大群が人間を襲う阿鼻叫喚のパニック・シーン。しかも、子供たちが楽しげに水遊びをするサマー・キャンプ、大勢の観光客で賑わう川べりのリゾート施設と、2か所でピラニアたちが派手に大暴れしてくれる。ここで才能を大いに発揮するのが、フィル・ティペットやクリス・ウェイラス、ロブ・ボッティンといった、'80年代以降のハリウッド映画を引っ張っていくことになる若き天才特撮マン&天才特殊メイクマンたちだ。人間を食い殺すピラニアたちは、いずれもゴム製のパペットに長い棒を通して、手元の引き金で口をパクパクさせるだけの単純な代物だが、絶妙なカメラアングルと細かな操作によってリアルに見せているし、後に『ターミネーター』シリーズで名を上げる編集者マーク・ゴールドプラットのスピーディで細かいカット割りがアナログ技術の粗を上手いこと隠している。子供だろうが女性だろうが容赦なく血祭りにあげていく大胆さも小気味いい。まさにやりたい放題。しかも、毎日上がってくる未編集フィルムをチェックしていたロジャー・コーマンが、唯一現場に要求したのは「もっと血糊を」だったというのだから、御大もよく分かっていらっしゃる(笑)。 水面に生首が浮かぶシーンには少々ギョッとさせられるが、実はこれ、ロブ・ボッティンが自分の頭部をモデルに製作したダミーヘッドだ。そういえば、前半の軍施設に登場するストップモーション・アニメのミニ・クリーチャーは、特撮映画の神様レイ・ハリーハウゼンの『地球へ2千万マイル』('57)に出てくる怪物イーマへのオマージュだし、劇中のテレビには『大怪獣出現』('57)のワンシーンも映し出される。そうした、ダンテ監督やスタッフの映画マニアっぷりを感じさせる小ネタを含め、そこかしこにお茶目な遊びが散りばめられているところも本作の大きな魅力だ。もしかすると、スピルバーグはそういったところに感じるものがあったのかもしれない。低予算のB級エンターテインメントとして良く出来ているのは勿論のこと、とにかく全編を通してすこぶる楽しいのだ。 かくして、興行収入1600万ドルのスマッシュ・ヒットを記録した『ピラニア』。3年後にはジェームズ・キャメロン監督による続編『殺人魚フライングキラー』('81)が作られ、さらにはオリジナルの特撮シーンを流用したテレビ版リメイク『ザ・ピラニア/殺戮生命体』('95)、フランスの鬼才アレクサンドル・アジャによる新たなリメイク『ピラニア3D』('10)とその続編『ピラニア リターンズ』('12)まで生まれるという、本家『ジョーズ』も顔負けのフランチャイズと化したことは、恐らくロジャー・コーマンもジョー・ダンテも想像していなかっただろう。これに関しては、もともとコーマンのもとへ企画を持ち込んだ元日活女優・筑波久子こと、チャコ・ヴァン・リューウェンの尽力によるものと言える。しかしそれにしても、本来『ジョーズ』のパクりである本作が、さらにイタリアで『キラーフィッシュ』('79)としてパクられたのだから、映画ビジネスの世界というのは面白い。 なお、本作を足掛かりにダンテ監督は人狼映画の傑作『ハウリング』('81)を成功させ、さらに先述した通りスピルバーグとのコラボレーションを経てハリウッドの売れっ子監督に。一方のコーマン御大率いるニューワールド・ピクチャーズは、太古の巨大魚が人間を襲う『ジュラシック・ジョーズ』('79)に海洋モンスター軍団が海辺の町を襲う『モンスター・パニック』('80)を製作。さらに、ニューワールド売却後にコーマンが新設した映画会社ニューホライズンズでも、トカゲ人間がハワイのリゾート地に現れる『彼女がトカゲに喰われたら』('87)なるポンコツ映画を作っている。◾️ © 1978 THE PACIFIC TRUST D.B.A. PIRANHA PRODUCTIONS. All Rights Reserved
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PROGRAM/放送作品
追憶(1973)
幸せな思い出だけを胸に──互いの生き方を変えられない男女の出会いから別れまでを描く名作ロマンス
価値観も信念も異なる男女の約20年間に及ぶ愛の軌跡を、現代米国史の出来事を交えながら情感豊かに紡ぐ。バーブラ・ストライサンドが切々と歌う「追憶」がアカデミー歌曲賞に輝いた。他にも作曲賞を受賞。
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PROGRAM/放送作品
燃える昆虫軍団
[PG12相当]昆虫が火を噴く!人間、建物を燃やす!B級カルト映画の巨匠製作の衝撃のパニック・ホラー
“ギミック(仕掛け)映画の帝王”と呼ばれたウィリアム・キャッスル最後のプロデュース作。自ら発火し所構わず火災を起こすゴキブリ状の虫が、集団知能を駆使して人間を追い詰めるという奇抜なアイデアが不気味。
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PROGRAM/放送作品
ダーティハリー4
ついにイーストウッド自身がメガホンを取った第四弾。ハリーは新たに幻の珍銃44オートマグを愛用
イーストウッド自身が監督を務め、私生活でも恋人だったソンドラ・ロックがヒロインを演じた第4弾。米大統領も引用したというかの有名なセリフ"Go ahead, make my day"は本作に登場。
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PROGRAM/放送作品
ダーティハリー3
44マグナムに替わってバズーカを必殺の武器に携え、テロリストを殲滅!痛快!ハリー・キャラハン第3弾
社会性やメッセージ性がこめられた前2作と比べて、娯楽アクション色が強化された今作。クライマックスの舞台はアルカトラズ島。ちなみにこの2年半後、イーストウッドは『アルカトラズからの脱出』に主演する。
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PROGRAM/放送作品
(吹)燃える昆虫軍団
[PG12相当]昆虫が火を噴く!人間、建物を燃やす!B級カルト映画の巨匠製作の衝撃のパニック・ホラー
“ギミック(仕掛け)映画の帝王”と呼ばれたウィリアム・キャッスル最後のプロデュース作。自ら発火し所構わず火災を起こすゴキブリ状の虫が、集団知能を駆使して人間を追い詰めるという奇抜なアイデアが不気味。
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PROGRAM/放送作品
ピラニア(1978)
恐怖の生物兵器、凶暴なピラニアが人肉を食いつくす!!大ヒットを記録した動物パニック映画
『グレムリン』のジョー・ダンテ監督の出世作。70年代動物パニック映画の流れに名を連ねる作品。かつて日活の女優で、後に渡米した筑波久子がチャコ・ヴァン・リューウェンという名前で製作に携わっている。