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PROGRAM/放送作品
未来世紀ブラジル
こんな社会が近づいている!?鬼才テリー・ギリアムが過度な管理社会を皮肉たっぷりに描く近未来SF
書類やデータが何よりも優先される情報管理社会が、20世紀のどこかの国という設定で展開される。無様なほどに滑稽な官僚社会像は苦い笑いを誘い、劇中の視覚イメージは鮮烈で、カルト的な人気を誇る一作。
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COLUMN/コラム2017.06.20
希少なテーマと、米式ロマンティック・コメディとの奇跡の融合〜『ヒステリア』06月01日(木)ほか
■性具の王様「電動バイブ」の開発秘話 本作のタイトル『ヒステリア』とは、日本で定着しているドイツの外来語「ヒステリー」の英語読みである。感情をコントロールできなくなって、泣いたり怒ったりの激しいリアクションを示してしまうアレだ。もともとは「子宮」を指す言葉で、古来の医学では性交渉が久しくおこなわれていないと、子宮が肉体を圧迫し、女性の感情を乱すものとされてきた。そのことから、先述の症状を総じて「子宮性病的興奮状態(ヒステリー)」と呼ぶようになっていったのである。しかし後年、医学の発展とともに研究がなされ、こうした科学的、医学的根拠の乏しい診断は姿を消していく。そして、先の精神状態を称する言葉として「ヒステリー」が残ったのである。 この映画は、そんなヒステリーの治療に用いられ、のちに女性用の性具として発展を遂げる振動按摩機、いわゆる「電動バイブレーター」の開発に迫った作品だ。開発者はモーティマー・グランヴィル(ヒュー・ダンシー)という、イギリスの医師。頃は産業革命によって同国が著しい発展を遂げた、ヴィクトリア朝後期の時代である。グランヴィルはそんな発展を医療の分野にも求めようと、近代医学の理想を勤め先の病院で唱えていた。ところが、古い治療を続ける医師たちからは理解を得られず、転職する先々の病院でつまはじきにされてしまう。 ある日、縁あってグランヴィルは女性医療の権威・ダリンプル医師のもとで働くことになるのだが、そこには先述したヒステリーを抱える女性たちが後を絶たず訪れていた。こうした患者の症状を和らげるために、グランヴィルはダリンプル病院の伝統ともいえる有効的治療=すなわち女性の局部に直接手を入れ、刺激を与えるという療法を施していたのだが、そのあまりの患者数の多さに自らの手が追いつかず、彼は腱鞘炎を起こしてしまう。 映画はそんなグランヴィル医師が、ヒステリー治療の革命的な打開策となる電動バイブを生み出すまでを、笑いと感動のもとに描いていく。キャストもグランヴィル医師を演じるヒュー・ダンシー(『ジェイン・オースティンの読書会』(07))を筆頭に、『未来世紀ブラジル』(85)のジョナサン・プライスやルパード・エヴェレット(『アナザー・カントリー(84)』)、そして今や『インフェルノ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(16)で注目の女優となったフェリシティ・ジョーンズなど堂々たる英国人役者を揃え、興味が先行する際どいテーマを、エレガントかつ説得力のあるものにしている。 ■史実との違いーーグランヴィル医師は電動バイブを発明していない!? しかし、この「ヒステリア』、先のごとく電動バイブ開発史を取り扱っているものの、映画は実際とかなり違うようだ。 治療器具として技術革新されてきた、電動バイブの軌跡をたどるレイチェル・メインズの研究書「ヴァイブレーターの文化史」によると、ヒステリー治療のための器具開発は世界で同時多発的におこなわれており、グランヴィル医師の発明はあくまでその一翼を担うものであった、と論じられている。 それどころかグランヴィルは、女性を快楽へと導く電動バイブを自ら作り出しておきながら「女性に使うべきではない」と主張した人物として知られ、映画で描かれている内容に食い違いを生じさせているのだ。 以下、史実とされる電動バイブ開発の流れを大略的に記しておくと、19世紀、産業革命による鉄道などの旅客輸送が発達し、それらの振動がヒステリー治療に有効であるとの医学的見解が出てきた。加えて電力の普及が、これまで手技によっておこなわれてきた治療に成り代わる、機械式按摩装置の発明を世界的に展開させていくのである。映画ではグランヴィルが友人の愛用する電動ホコリ払い機に閃きを得て電動バイブを発明するが、そこまで現実は単純明快なものではない。 また先に挙げたグランヴィルの「女性は使うな」発言だが、氏は装置の強度な振動に注意をはらい、強靭な肉体の男性治療のみに使うことを使用マニュアルに記している。それもそのはず、グランヴィルの開発した最初の電動バイブはバッテリー式で、装置としてかなり巨大であり、映画に出てくるようなコンパクトなものではなかったのだ。 さらに言及すると、グランヴィルが開発したとされる電動バイブ第一号機は、じつは他人が作ったものとする説も存在する(「ヴァイブレーターの文化史」には、サウペトリエール病院に勤務していた精神科医オギュスト・ビグルーが発明したとの記述あり)。そうなると、もはや映画そのものが成り立たないではないか。 なので本作は、あくまで史実を基にしたフィクションであることを理解したうえで楽しむのが理想だろう。この映画で電動バイブ開発史を真剣に学ぼうとか、卒業論文のテーマにしようなどど向学心を先走らせてはいけない。もっとも、電動バイブにそこまでして執着する人に、それはそれである種の好ましさを覚えはするのだが。 ■女優も脚本家もアメリカ人、そして監督も女性のアメリカ人 この映画『ヒステリア』は本質的に、電動バイブの開発史に主眼を置いたものではない。監督を手がけたターニャ・ウェスクラーは、本作を手がけた動機についてこう語っている。 「わたしはこの映画を、グランヴィル医師のロマンティック・コメディとして作ったの」(*1) そう、劇中でグランヴィルは、ダリンプル医師の長女シャーロット(マギー・ギレンホール)と出会う。シャーロットは女性の地位向上を推進する人物で、女の立場に気を配らず、日々手技による診療に明け暮れるグランヴィルを非難する。そんな彼女との接触こそが、グランヴィルに電動バイブの開発をうながし、ひいては女性の性の独立に貢献していく。そしてソリの合わなかったグランヴィルとシャーロットは、やがて共に惹かれあっていくのだ。このストーリーラインを引き出して見ると、二人のラブロマンスを成立させるために、史実がじつに巧く加工されていることがわかる。 そもそも本作はイギリス、フランス、ドイツ資本による合作映画で、産業革命たけなわのロンドンを舞台にしているが、製作の核となる部分はアメリカ人スタッフとキャストが担っている。ウェスクラー監督は1970年にシカゴで生まれ、コロンビア大学で芸術修士号を得て、映画の世界に入ってきたアメリカ人だし、シャーロットを演じたマギー・ギレンホールも、ハリウッドを代表するアメリカ人スターだ。そして脚本を手がけたスティーブン&ジョナー・リサ・ダイヤー兄妹もハリウッドライターとして、本作の後の2015年には“Away and Back”というロマンティック・コメディドラマの脚本を手がけ、プライムタイム・エミー賞テレビ映画のスペシャル番組部門にノミネートされている。 つまりこの『ヒステリア』は、テンプレとして存在するアメリカ映画のスタイルのひとつ「ソリの合わない男女が出会い、初対面での悪印象が行動を共にすることで愛へと変わる」といったロマンティック・コメディを、イギリス産業革命時代の性具開発という、希少なテーマにリンクさせた珍妙さこそが最たる味わいなのだ。 ただ監督が女性であることから、こうした女性的に際どいテーマに踏み込んでいける理由も納得できるし、そういう意味では奇跡の融合でもあり、両者が出会うべくして生まれた作品だ、とも解釈できるだろう。 ちなみにグランヴィルと同時期、電動電動を用いた医療装置を数多く考案し、はからずも電動バイブの開発に影響を与えたのが、かの医学博士ジョン・ハーヴェイ・ケロッグである。あの朝食シリアルでおなじみ「ケロッグコーンフレーク」の生みの親であり、その半生は“The Road to Wellville”(96・監督/アラン・パーカー)というタイトルで映画化されている(邦題は『ケロッグ博士』)。氏の開発品は、むしろ性行為を抑制させる目的のものが多かったのだが、英国の名優アンソニー・ホプキンス扮するケロッグ博士の「健康のためなら死んでもいい」とでも言いたげな独自医療への執心ぶり、ならびに当時の医療事情を汲んだ描写は本作『ヒステリア』とほんのり似通ったところがあるので、ぜひ合わせてご覧になられるといい。■ PHOTO©LIAM DANIEL2© 2010 HYSTERIA FILMS LIMITED, ARTE FRANCE CINÉMA AND BY ALTERNATIVE PICTURES S.A.R.L.
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PROGRAM/放送作品
ロイヤル・セブンティーン
普通のアメリカの女の子。父親が英国の名門出身と判明し、押しかける!どたばたシンデレラ・ストーリー
TVシリーズ「恋するマンハッタン」で主演を務める若手コメディエンヌのアマンダ・バインズ主演。アメリカ庶民と英国貴族、文化の違いと身分の差から生まれる大騒動を描いた、キュートなシンデレラ・ストーリー。
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COLUMN/コラム2013.06.30
2013年7月のシネマ・ソムリエ
■7月6日『リアル・ブロンド』 売れない役者ジョーとヘアメイクアーティスト、メアリーは同棲中のカップル。倦怠期に陥った彼らのトラブル続きの日々を、シニカルなユーモア満載で綴るコメディだ。 主演のM・モディン、C・キーナーが、何をやっても空回りしてしまう男女を絶妙なコミカル演技で体現。ダメ人間たちの切実な奮闘ぶりが笑いと共感を呼び起こす。 監督はジム・ジャームッシュらと親交が深く、米国インディーズ界で活動するT・ディチロ。昼メロ撮影現場などの芸能界の内幕を見せる、軽妙なギャグ・センスに注目。 ■7月13日『歌う大捜査線』 かつて薬物問題で保護観察処分を受けたR・ダウニーJr.が、その復帰作として主演した異色コメディ。英国製のTVドラマ「The Singing Detective」の映画化である。主人公は謎の皮膚病に冒された小説家ダン・ダーク。そんな彼が病院でセラピーを受ける現実と、“歌う探偵”として活躍する妄想の中の出来事がシュールに錯綜していく。ノワールとミュージカルの要素をはらむ映像世界は遊び心たっぷり。不気味な特殊メイクを施したダウニーJr.と、意外な役柄に扮したM・ギブソンの共演も見ものだ。 ■7月20日『エビータ』 アンドリュー・ロイド=ウェバーの大ヒット・ミュージカルの映画化。アルゼンチン国民の絶大な支持を得た実在のファーストレディ、エバ・ペロンの生き様を描く。数々の音楽映画の秀作を手がけてきた名匠A・パーカーが、その実力を遺憾なく発揮。セリフを排除し、楽曲のメロディとリズムを前面に押し出した映像世界は圧巻である。大物女優たちを押しのけて大役を射止めたマドンナが、A・バンデラスとともに見事な歌唱力を披露。とりわけマドンナが歌う「アルゼンチンよ泣かないで」は感動的だ。 ■7月27日『幻の女』 『光年のかなた』『白い町で』などで世界的に注目されたスイスの映画作家アラン・タネール。1980年代末のミニシアター隆盛期に日本公開された味わい深い小品である。創作意欲を失った映画監督が若い助手を雇い、新作の女優探しを始める。スイスからイタリアの港町へ。そのあてどもない旅は、映画と人生をめぐる“製作日誌”のよう。主人公の情熱を呼び覚ます“幻の女”役は『息子の部屋』などのイタリア人女優ラウラ・モランテ。その端正な貌立ちと、謎めいた美しさは一度見たら忘れられない。 『リアル・ブロンド』© 1997 Lakeshore Entertainment Corp. All Rights Reserved 『歌う大捜査線』TM & Copyright © 2013 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures. All Rights Reserved 『エビータ』COPYRIGHT © 2013 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 『幻の女(1987)』1987 Filmograph/MK2 Productions
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PROGRAM/放送作品
スティグマータ/聖痕
両手首に釘で打ち抜いたような傷が理由もなく生じる…“聖痕現象”を題材にしたオカルト映画
“聖痕現象(スティグマータ)”とは、手を十字架に釘付けにされたキリストと同じ傷が、突然、普通の人の手に理由もなく生じる、という宗教的な奇蹟(怪奇現象?)のこと。本作はそれを題材にしたオカルト映画だ。
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PROGRAM/放送作品
かけひきは、恋のはじまり
[PG-12]プロアメフト界の黎明期を描く、ジョージ・クルーニー監督・主演のロマンティック・コメディ
ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めたロマンティック・コメディ。アメフト・プロリーグの黎明期をユニークなエピソードを交えて綴る。共演は『ブリジット・ジョーンズの日記』のレニー・ゼルウィガー。
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PROGRAM/放送作品
エビータ
マドンナ×アントニオ・バンデラス競演!伝説的な“アルゼンチンの国母”の生涯を描くミュージカル映画
天才作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバー(『キャッツ』、『オペラ座の怪人』)によるミュージカルを映画化。アルゼンチンの母として慕われた大統領夫人エバ・ペロンの人生を、“ポップの女王”マドンナが歌い上げる!
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PROGRAM/放送作品
マリー・アントワネットの首飾り
一人の女の野心がフランス王朝を崩壊へと導いた!一大スキャンダルを新解釈で描く歴史ドラマ
革命前夜の18世紀フランスで起き、王室への世論を悪化させた“首飾り事件”。歴史の闇に包まれたその顛末を独自の解釈で描き出す。奪われた家名を取り戻すため策略を練るヒロインをヒラリー・スワンクが熱演。
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PROGRAM/放送作品
ヒステリア
[PG12]女性用アダルトグッズは“治療”用に開発された!若き医師の奮闘をユーモアで綴る実録ドラマ
女性用アダルトグッズ“電動バイブレーター”の誕生秘話を映画化。女性のヒステリーを治療する目的で、医療の一環として真面目に開発に挑む若き医師の奮闘と恋を、英国映画らしくシニカルなユーモア満載に織りなす。
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PROGRAM/放送作品
テリー・ギリアムのドン・キホーテ
構想30年、企画頓挫9回…鬼才テリー・ギリアムの執念が実った狂気と妄想のファンタジー・アドベンチャー
テリー・ギリアム監督が幾度もの製作中止を乗り越えてついに完成させた作品。自分をドン・キホーテと信じる男の奇想天外な冒険は、これまで現実と妄想の境目が曖昧になった世界を描き続けてきたギリアムの集大成。