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PROGRAM/放送作品
イングリッシュ・ペイシェント
よくある不倫が戦争によって胸しめつける劇的愛憎ドラマに変わる。アカデミー賞受賞、最上の人間ドラマ
「英国人患者」という題ながら、二次大戦に関わった様々な人種の登場人物と場所・土地が、壮大なスケールである男女の不倫の物語をつむぎ出していく。アカデミー作品賞、監督賞ほか8部門受賞、至高の人間ドラマ。
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COLUMN/コラム2017.09.09
40オトコの恋愛事情
ローカル新聞に人生相談コラム「Dan in Real Life」を連載中の中年男ダンは、文章の中では物分かりの良い男なのに、現実世界では変化を嫌うカタブツ。三人の娘ジェーン、カーラ、リリーの中には色気づいている子も出始めているというのに、毎年の慣例を守って彼女たちを引き連れロードアイランドの両親の家へと向かうのだった。それもそのはず、彼は四年前に妻と死別して以来、人生の時計を止めてしまっていたのだ。 そんなダンだったが、書店で偶然出会った女性に久しぶりのときめきを感じてしまう。マリーと名乗る女性の方も「つきあい始めたボーイフレンドがいる」と言いながら同じことを感じている様子だった。しかしトラブル発生。遅れて到着した弟ミッチが連れてきた新しいガールフレンドこそが、そのマリーだったのだ。。 気まずくなったふたりは、書店の出会いを無かったことにしようと決めたものの、家族のイベントはことごとく微妙な感じに。おまけに更なるトラブルが降りかかる。ダンに好意を持っていた「ブタ顔」の幼馴染ルーシーが見違えるような美女になって現れたのだ。まんざらでもない様子のダンと、そんな態度に嫉妬するマリーの緊張関係は最高潮に達してしまう…。 スティーブ・カレルのキャリアにとって、07年の主演作『40オトコの恋愛事情』は大きな役割を果たした作品だ。というのも、彼はその2年前に『40歳の童貞男』のキモメン役でブレイクしたばかり。同じ年には主演テレビドラマ『ザ・オフィス』(05〜13年)も始まって高視聴率をゲットしてはいたけど、そこで演じたマイケルはセクハラ、モラハラお構いなしの最低上司というキャラだった。つまりスティーブ・カレルは既にスターではあったけど、この時点では<イっちゃった変人>専門俳優と思われていたのだ。 カレルは、子育てに励む等身大の中年を演じたこの作品での好演があったからこそ、『ラブ・アゲイン』(11年)や『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』(14年)といった家族ドラマ、シリアスな『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15年)といった作品に出演できるようになったのだ。 監督と脚本を務めたピーター・ヘッジスは、ヒュー・グラント主演の『アバウト・ア・ボーイ』(02年、脚本のみ)やケイティー・ホームズ主演の隠れた傑作『エイプリルの七面鳥』(03年)などで知られる人物。本作のストーリー自体は、共同脚本家のピアース・ガードナーの個人的な体験を描いた半自伝作らしいけど、<人生の時計を止めていた男が、再び時計を動かす>といったテーマは、作曲家だった父親のヒット曲の印税で暮らす男を主人公に据えた前者、<毎年恒例の家族行事で事件が起きる>といったプロットは、感謝祭を題材にした後者との共通点を感じさせる。 またヒロインのマリー役にフランス人のジュリエット・ビノシュを配したキャスティングは明らかに晩年のルイ・マルが監督した『ダメージ』(92年)へのオマージュだろう。今でこそサバけた大人の女役を得意とするビノシュだが、『汚れた血』(86年)や『存在の耐えられない軽さ』(88年)といった初期の代表作では神経質な美少女を演じており、『ダメージ』でも謎めいた若い女に扮していた。ジェレミー・アイアンズ扮する主人公は、ただならぬ運命的な繋がりを感じた彼女と、息子の恋人として再会してしまう。『ダメージ』と『40オトコの恋愛事情』は物語構造が全く同じなのだ。 映画ファンは、ロマ・コメというジャンルの特性上、ダンとマリーの関係がバッド・エンドを迎えることはないだろうと思いながらも、愛の代償に全てを失ってしまう『ダメージ』の主人公のイメージが脳裏によぎって、物語の展開にハラハラしてしまうというわけだ。ビノシュから出演オファーにオッケーの返事をもらったとき、ヘッジスは「これで成功間違いなし」と会心の笑みを浮かべたに違いない。 キャスティングの話を続けよう。おそらく脚本の完成度が高かったことで、オーディションに将来有望な俳優が押し寄せたことが原因だと思うのだけど、今の時点から観ると『40オトコの恋愛事情』のキャスティングは信じられないくらい豪華だ。 たとえば生真面目な長女ジェーンを演じているアリソン・ピル。ヘッジスとは『エイプリルの七面鳥』でも仕事をしている彼女は、ラース・フォン・トリアーが脚本を手がけ、トマス・ヴィンターベアが監督した『ディア・ウェンディ』(04年)でジェイミー・ベルやマイケル・アンガラノ、マーク・ウェバー(『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10年)でもリユニオンしている)といった当時期待の若手と共演。本作以降はテレビ局を舞台にしたドラマ『ニュースルーム』(12〜14年)で人気を博し、ジェシカ・チャスティン主演の『女神の見えざる手』(16年)でも重要な役を務めている実力派だ。 そしてトラブルメイカーの次女、カーラを演じたブリット・ロバートソン。当時16歳だった彼女は『シークレット・サークル』(11〜12年)や『アンダー・ザ・ドーム』(13〜14年)といったテレビドラマ出演を経て、ブラッド・バード監督のSF大作『トゥモローランド』(15年)では事実上の主演に抜擢。ピッチ・パーフェクト』シリーズの脚本家ケイ・キャノンが製作総指揮を務めたNetflixドラマ『ガールボス』(17年)にも主演するなど、将来を最も期待される若手女優のひとりになっている。 ダンの弟ミッチと妹アイリーン役を、本作後に『噂のアゲメンに恋をした! 』(07年)や『2日間で上手に彼女にナル方法』 (08年)と主演作が相次ぐことになるコメディアンのデイン・クックと、ベン・アフレックの監督デビュー作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07年)でのホワイト・トラッシュ役でアカデミー助演女優賞にノミネートされるエイミー・ライアンがそれぞれ好演していることにも注目したいけど、元「豚顔」のルーシーを演じる女優のインパクトの前には霞むかもしれない。そう、今をときめくエミリー・ブラントなのだ。『プラダを着た悪魔』(06年)の脇役で注目されたばかりだからこそ、このチョイ役が可能だったと思うのだけど、登場人物の口から散々「ブタ顔」と言われていながら、現れたのが彼女だった時のインパクトはトンデモないものがある。マリーが嫉妬して気が動転してしまうのも無理はない美しさだ。 そんなマリーに自分の真意を伝えようと、ダンはギター弾き語りで「レット・マイ・ラブ・オープン・ザ・ドア」を歌う。 「僕は君の心の鍵を持っている/僕なら落ち込む君を止められるんだ/今日試してみようよ/道が開けるはずさ/僕の愛でドアを開けよう/君の心の」 ザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントがソロとして80年に放ったこのヒット曲は、ジョン・キューザック脚本・主演の『ポイント・ブランク』(97年)、アダム・サンドラー主演作『Mr.ディーズ』 (02年)、ケヴィン・スミス監督作『世界で一番パパが好き! 』(04年)、ベン・スティラーとジェニファー・アニストンの共演作『ポリーmy love』(04年)といったコメディでも重要なシーンに使われている。 いずれも変化を避ける暮らしを続けてきた主人公の人生の転機を描いた作品であることに注目したい。扉を開けるのは実は主人公の心の方なのだ。もちろんその方程式が『40オトコの恋愛事情』にも当てはまることは、映画を観た者なら分かるはずだ。 ©2007 Disney Enterprises Inc. ALL RIGHTS RESERVED
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PROGRAM/放送作品
トリコロール/青の愛
“自由”の青に込めた絶望と希望──。フランス屈指の女優が競う「トリコロール」シリーズ第1作
フランスの三色旗をテーマに、ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキが描く「トリコロール」3部作の第1作。夫と娘を事故で失った妻の心の再生を描く。ヴェネチア映画祭金獅子賞・主演女優賞・撮影賞受賞。
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COLUMN/コラム2012.11.28
2012年12月のシネマ・ソムリエ
■12月1日『戦場のアリア』 戦況が泥沼化していた第一次世界大戦下、フランス北部の村。そこで対峙するドイツ軍と、フランス&スコットランド連合軍との間に起こった信じがたい実話の映画化。戦場にオペラ歌手の歌声が響き渡ったことをきっかけに、両軍の間でまさかの休戦協定が実現。一触即発の緊迫感と人間臭いユーモアとともに、その顛末が描かれる。澄んだ歌声とバグパイプの音色が、クリスマスを背景にした物語を荘厳に彩る。映画向けの脚色が施されているとはいえ、誠実な反戦メッセージが心に響く一作である。 ■12月8日『ドリーマーズ』 5月革命に揺れるパリのシネマテークで、アメリカ人留学生の青年が双子の姉弟と出会う。映画が縁で意気投合した3人の関係は、危ういアバンチュールに発展していく。巨匠B・ベルトルッチが60年代カルチャーと映画の引用を詰め込んだ青春映画。若者たちが織りなす官能的で遊戯的な映像世界は、まさにはかなくも甘美な“夢”のよう。ベルトルッチがヒロインのイザベル役に抜擢したのは当時新人のエヴァ・グリーン。のちにボンドガールになった美人女優が、惜しげもなく豊麗な肢体を披露している。 ■12月15日『存在の耐えられない軽さ』 チェコ人作家ミラン・クンデラが、1968年の“プラハの春”を背景に紡いだ恋愛小説の映画化。監督は「ライトスタッフ」で名高いアメリカ人のフィリップ・カウフマン。 主人公トマシュは優秀な医師だが、奔放なまでに女好きの独身男。ヒロインのテレーザが、彼の“軽さ”と人生の“重み”を対比させるセリフが題名の意味を表している。3時間に迫らんとする長尺だが、男女の摩訶不思議な関係を掘り下げた物語には得も言われぬ魅惑が横溢。名手スヴェン・ニクヴィスト撮影の詩的な映像美も印象深い。 ■12月22日『ジンジャーとフレッド』 アメリアとピッポは、ハリウッド・ミュージカルの名コンビにあやかった芸名で人気を博した元有名人。30年前に引退した2人は、クリスマスのTV局で再会を果たす。作曲家ニーノ・ロータ亡き後の巨匠フェリーニが発表した晩年の一作。常連俳優M・マストヤンニと監督夫人J・マシーナは、意外にもこれが初めての共演作となった。TVのコマーシャリズムを痛烈に批判しつつ、猥雑なサーカスのようにショーの裏側を映像化。最大の見せ場は、主役2人が終盤に披露する哀歓豊かなダンスである。 ■12月29日『敬愛なるベートーヴェン』 近作「ソハの地下水道」も好評だったポーランドのA・ホランド監督の代表作のひとつ。聴覚障害を抱えた晩年のベートーヴェンと、彼を支えるひとりの女性の交流劇だ。1824年のウィーン。ベートーヴェンのもとに派遣されたアンナは、曲を譜面に書き起こすコピイスト。「第九」の歴史的な初演を間近に控えた2人の創作活動を描く。アンナは歴史上実在しない架空の女性だが、ベートーヴェンの伝記としても、痛切な師弟のドラマとしても見応え十分。中盤の「第九」演奏シーンは心震わす迫力だ。 『戦場のアリア』©2005 Nord-Ouest Production/Photos:Jean-Claude Lother 『ドリーマーズ』©2002 Miramax Film Corporation. All Rights Reserved Initial Entertainment Group 『存在の耐えられない軽さ』©1987 The Saul Zaentz Company. All Rights Reserved. 『ジンジャーとフレッド』© 1985 PEA Produzioni Europee Associate. 『敬愛なるベートーヴェン』© 2006 Film & Entertainment VIP Medienfonds 2 GmbH & Co. KG
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PROGRAM/放送作品
トリコロール/白の愛
奇妙な復讐を軽妙に描く“平等”の白──。フランス屈指の女優が競う「トリコロール」シリーズ第2作
フランスの三色旗をテーマに、ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキが描く「トリコロール」3部作の第2作。性的不能で妻に去られた男の駆け引きを軽妙なタッチで描く。ベルリン国際映画祭監督賞を受賞。
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COLUMN/コラム2012.11.28
2012年12月のシネマ・ソムリエ
■12月1日『戦場のアリア』 戦況が泥沼化していた第一次世界大戦下、フランス北部の村。そこで対峙するドイツ軍と、フランス&スコットランド連合軍との間に起こった信じがたい実話の映画化。戦場にオペラ歌手の歌声が響き渡ったことをきっかけに、両軍の間でまさかの休戦協定が実現。一触即発の緊迫感と人間臭いユーモアとともに、その顛末が描かれる。澄んだ歌声とバグパイプの音色が、クリスマスを背景にした物語を荘厳に彩る。映画向けの脚色が施されているとはいえ、誠実な反戦メッセージが心に響く一作である。 ■12月8日『ドリーマーズ』
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PROGRAM/放送作品
嵐が丘(1992)
エミリー・ブロンテの名作小説を5度目の映画化。名優の競演と斬新なアイデアが光る文芸ロマン
過去に4度映画化されたエミリー・ブロンテの名作英国小説を、ジュリエット・ビノシュとレイフ・ファインズの共演で描く。原作者ブロンテを語り部として登場させる斬新な演出が光る。坂本龍一の音楽も聴き応えあり。
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PROGRAM/放送作品
存在の耐えられない軽さ
正反対の女性2人の間で揺れる男…激動の時代を背景に大人の三角関係を描く大作ロマンス
チェコ出身の作家ミラン・クンデラの傑作ベストセラーを、ヨーロッパの一流キャスト&スタッフを結集して映画化。男女3人の愛とすれ違いを、名匠フィリップ・カウフマン監督が大人向けの洒脱な語り口で綴る。
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PROGRAM/放送作品
ショコラ(2000)
魅惑のチョコレートがすべての人を幸せに…甘く温かい気分に包まれるファンタジー・ロマンス
謎めいた母娘の作るチョコレートが厳格な村の人々を変えていく様を、名匠ラッセ・ハルストレム監督が寓話仕立てで描く。ヒロインとロマンスが芽生えるロマの青年をジョニー・デップが好演し、甘い恋のムードを高める。
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PROGRAM/放送作品
【無料】ショコラ(2000)
魅惑のチョコレートがすべての人を幸せに…甘く温かい気分に包まれるファンタジー・ロマンス
謎めいた母娘の作るチョコレートが厳格な村の人々を変えていく様を、名匠ラッセ・ハルストレム監督が寓話仕立てで描く。ヒロインとロマンスが芽生えるロマの青年をジョニー・デップが好演し、甘い恋のムードを高める。