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COLUMN/コラム2014.05.25
2014年6月のシネマ・ソムリエ
■6月1日『ロリータ』 ロリータ・コンプレックスの語源となったナボコフの小説を映画化。巨匠S・キューブリックが『スパルタカス』と『博士の異常な愛情?』の間に発表した異色恋愛劇だ。 中年の文学者が下宿先の未亡人の娘ロリータに心奪われ、人生を狂わされていく。物語は原作に忠実だが、ヒロインの年齢設定などが変更され、モノクロで撮影された。 規制が厳しかった時代の作品ゆえに性描写は一切なく、犯罪映画風の冒頭に続いて、人間のエゴをえぐる破滅的なドラマが展開。脇役P・セラーズの怪演も見逃せない。 ■6月8日『砂漠でサーモン・フィッシング』 中東イエメンの砂漠に川を造り、鮭釣りができるようにしたい。大富豪からそんな壮大なプロジェクトの実現を依頼された、英国人水産学者の奮闘を描くコメディである。 原作はポール・トーディの小説『イエメンで鮭釣りを』。イメージアップをもくろむ英国政府の思惑も絡む物語はシニカルなユーモア満載で、恋愛映画としても楽しめる。 堅物の学者に扮したE・マクレガーと、投資コンサルタント役のE・ブラントの機知に富んだ掛け合いが魅力的。夢や理想といったテーマを爽やかに謳い上げた珠玉作だ。 ■6月15日『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』の俊英E・ライトが放ったラブ・コメディ。理想の女の子と交際するため、彼女の元カレ7人と対決する青年の物語だ。 ポップカルチャーから多大な影響を受けた監督の漫画やロックへの偏愛が爆発。主人公が次々と出現する元カレとのバトルを突破していく展開は、まさにゲームのよう! 凝った視覚効果や編集テクを駆使し、ファミコンのチープな電子音まで導入。マニアックな小ネタとギャグも詰め込んだ映像世界は、これぞ究極のオタクワールドである。 ■6月22日『パーフェクト・センス』 人間の嗅覚や聴覚といった五感が順次失われていく奇病が世界中で蔓延。そのさなかに恋に落ちたシェフのマイケルと感染症学者スーザンの身体も異変に見舞われていく。 CGによるディザスター描写に依存せず、人類存亡の危機を描いた英国製の終末映画。五感の喪失という現象が一般市民の日常を混乱に陥れる過程をリアルに映し出す。 世界が静寂と暗闇に覆われていく悲劇的な物語が問いかけるのは、愛と希望というテーマ。他者を“感じる”ことの尊さを感動的に映像化したラブストーリーでもある。 『ロリータ』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc. 『砂漠でサーモン・フィッシング』©2011 Yemen Distributions LTD. BBC and The British Film Institute All Rights Reserved. 『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』©2010 Universal Studios. All Rights Reserved. 『パーフェクト・センス』© Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010
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COLUMN/コラム2013.09.01
2013年9月のシネマ・ソムリエ
■9月7日『白いカラス』 講義中の何気ない発言が黒人への差別だと糾弾され、辞職に追い込まれた古典学の大学教授コールマン。実は彼自身も“肌の色”にまつわる重大な秘密を隠し持っていた。 現代米国文学の巨匠フィリップ・ロスの小説「ヒューマン・ステイン」を映画化。主人公の数奇な人生を通して、人種差別問題の根深さ、複雑さを描く人間ドラマだ。実力派の豪華俳優陣が、癒しようのない心の傷を抱えた男女の悲痛な運命を体現。田舎町の荒涼とした冬景色と相まって、静謐にして重厚な緊迫感みなぎる一作である。 ■9月14日『ファンタスティック Mr.FOX』 『ムーンライズ・キングダム』の若き鬼才、W・アンダーソン監督が初めて手がけた長編アニメ映画である。原作はロアルド・ダールの児童文学「すばらしき父さん狐」。 元泥棒の野生キツネが仲間を率いて、農場を営む傲慢な人間とのバトルを展開。昔ながらのコマ撮りアニメの手作り感を生かした活劇シーンは、胸弾むスリルと痛快さ! 主人公のキツネ夫婦の声を担当するのはG・クルーニーとM・ストリープ。アンダーソン監督のユニークな美学と遊び心が全開のカメラワーク、美術、音楽もご堪能あれ。 ■9月21日『シングルマン』 世界的なトップデザイナー、トム・フォードの監督デビュー作。同性の恋人を事故で亡くしたことで生きる意味を失い、自殺を決意した大学教授のある一日を映し出す。 TVドラマ「マッドメン」の美術デザイナーを起用し、1960年代L.A.の風俗を再現。主人公のガラス張りの邸宅や衣装など、あらゆる細部に繊細な美意識が感じられる。 死へのカウントダウンのサスペンス、幻想的な悪夢や回想シーンを織り交ぜ、喪失と孤独の痛みをスタイリッシュに表現。冷たい色気が香り立つ映像美が見事である。 ■9月28日『サラの瞳』 フランス人作家タチアナ・ド・ロネの同名ベストセラー小説を映画化。1942年、ナチス占領下のパリで起こった衝撃的なユダヤ人迫害事件を、現代からの視点で描き出す。 現代のパリに住む女性ジャーナリストが、戦時中に家族とともに連れ去れたユダヤ人少女サラの消息を追う。そのミステリーに隠された痛切な人間模様に胸を打たれる。 歴史の重い真実と向き合おうとするジャーナリストの微妙な心の移ろいを、K・スコット・トーマスが好演。東京国際映画祭で監督賞、観客賞を受賞した作品でもある。 『白いカラス』©2003 FILMPRODUKTIONGESELLSCHAFT MBH&CO .1.BETEILIGUNGS KG 『ファンタスティック Mr.FOX』© 2009 Twentieth Century Fox Film Corporation and Indian Paintbrush Productions LLC. All rights reserved. 『シングルマン』©2009 Fade to Black Productions, Inc. All Rights Reserved. 『サラの鍵』© 2010 - Hugo Productions - Studio 37 -TF1 Droits Audiovisuel - France2 Cinéma