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PROGRAM/放送作品
ハンニバル・ライジング
[R-15]美しき殺人鬼、誕生!トマス・ハリス原作のハンニバル・シリーズ映画化最新作!
『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』と続く、殺人鬼ハンニバル・レクター博士の映画化シリーズ、第4弾!美形俳優ギャスパー・ウリエルが復讐に燃える青年期の博士を妖艶に演じた話題作!
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COLUMN/コラム2015.12.05
髑髏が怪異な現象を巻き起こす『がい骨』は、今は亡き、2大怪奇スター競演が魅力!
だがハマー作品も、60年代終わり頃からマンネリ化と作品の質の低下(今振り返れば、それでも充分面白かったが)を招き、観客に飽きられはじめて興行も厳しい状況に陥っていった。それでもハマーを世界的に知らしめた、『フランケンシュタインの逆襲』(57年)と『吸血鬼ドラキュラ』(58年)でのピーター・カッシングとクリストファー・リーの競演は、ホラー映画史に刻むほどの名場面の数々を生んだ……。 比較的若い映画ファンからすれば、カッシングといえば『スター・ウォーズ』(77年)での帝国軍モフ・ターキン役で知られているし、リーの場合は『スター・ウォーズ エピソード2&3』(02・05年)のドゥークー伯爵役や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(01・02・03年)のサルマン役、そしてティム・バートン監督作品などで人気を集めてきた名優だ。 ピーター・カッシングとクリストファー・リーは、60年代から英国製怪奇映画のスターとして海外でも広く知れ渡り、SF&ホラーのジャンル系映画を製作するアミカス・プロダクションの映画にもたびたび出演した。アミカスは、オムニバス形式の怪奇ホラー物に活路を見出し、『テラー博士の恐怖』(64年)をはじめ、『残酷の沼』(67年)、『怪奇!血のしたたる家』(71年)、『魔界からの招待状』(72年)などを次々と発表し、単独のSF&ホラーものでは、『Dr.フー in 怪人ダレクの惑星』(65年)、『怪奇!二つの顔の男』(71年)、『恐竜の島』(74年)、『地底王国』(76年)などを製作してきた。 そのアミカスが65年に製作した『がい骨』では、カッシングとリーを競演させたうえ、ハマーの『フランケンシュタインの怒り』(64年)や『帰って来たドラキュラ』(68年)では監督を務めつつ、Jホラーにも多大な影響を与えた心霊映画の名作『回転』(61年)、デヴィッド・リンチ監督の『エレファント・マン』(80年)や『砂の惑星』(84年)では撮影監督を手がけたフレディ・フランシスが監督に抜擢された。 怪奇スターのカッシングとリー、監督フランシスの3人は、アミカスのオムニバス作品『テラー博士の恐怖』で一度組んで実証済みの黄金トリオ。その3人が挑んだ『がい骨』は、ロバート・ブロック(代表作「サイコ」「アーカム計画」)の短編小説「サド侯爵の髑髏」(朝日ソノラマ発行「モンスター伝説 世界的怪物新アンソロジー」所収、現在絶版)が原作である。 物語はとてもシンプルで、悪魔学や黒魔術等のオカルト研究家として名高いクリストファー・メイトランド(ピーター・カッシング)が、骨董商人マルコが売りつけようとした不気味な髑髏の魔力に徐々に魅せられてゆくという怪奇譚。 メイトランドは、マルコから昨日も、人皮で装丁された古めかしい奇書「悪名高きサド侯爵の生涯」を購入し、それを愛でるように読んでいた。そして今回持ってきた髑髏は、サド侯爵のものだとマルコは言う。「1814年、サド侯爵が埋葬されてまもなく、頭部が盗まれた。盗んだのは骨相学者ピエールで、彼は研究対象としてサドに興味があった。サドが本当に常軌を逸していたかを、髑髏から探ろうとしていたんだ。数日後、死んだピエールの友人である遺言管理人ロンドがピエールの家を訪れると、ピエールの愛人が“彼は、あの夜から邪悪に豹変した”と言う。まもなく髑髏の魔力により、ロンドがピエールの愛人をナイフで殺害した。彼は自らの犯行を説明できず、唯一、口にした言葉が、“髑髏(がい骨)”だった……」 メイトランドは、マルコからその話を聞かされても真実か否か疑わしく、しかもあまりに高額のため、購入を躊躇していた。 だがまもなく、メイトランドのライバルで知人でもあるオカルト蒐集家フィリップス卿(クリストファー・リー)から意外な事実を知らされる。あの髑髏は、フィリップス卿の蒐集品の一つで、何者かに盗まれたという。しかもフィリップス卿は、「盗まれて、ホッとしている。君も手を出すな」と。さらに迷信を信じない彼が、「あれは危険だ。サドが異常ではなく、悪霊に憑かれていた。髑髏には今も悪霊が……」と言う姿を見たメイトランドは、あの髑髏がサドのものであると確信を得て、心底欲しくなってしまう。 そしてフィリップス卿は、先日の有名なオークションで17世紀の石像4体(ルシファー、ベルゼブブ、リヴァイアサン、バルベリト)を高額落札したのは、髑髏の意志だったと言う。 導入部のオークション会場で、フィリップス卿が石像4体をメイトランドと異様に競って落札した理由がここにあった。会場でフィリップス卿が少しばかり病的に見えたのも、髑髏に脅えていたせいかもしれない。あげくに、その石像がどのように用いられるのか、フィリップス卿が身を持って知る展開も見事だった。 かたやメイトランドにとって、マニアやコレクターの性(さが)のせいか、恐怖や呪いの話を聞かされても、それ以上にサド侯爵の髑髏が欲しくてたまらない。私のものにするんだという強い執着心を抱き、なんとか手に入れようとする。 サド侯爵の髑髏(造型物らしさはなく、本物の人骨のよう)は不気味だが、見た目は“がい骨”そのもの。髑髏の意志を表現するため、髑髏の2つの眼孔の内側から見たような主観映像がたびたび挿入される。それはメイトランドを見据えるかのような印象を与えるが、恐怖までは感じられない。そのため、髑髏で恐怖を表現するのではなく、髑髏の意志によって人間の欲望が増幅(強調)され、存在感いっぱいの怪奇スターが異常行動を見せる! そこに緊迫感が生まれ、恐怖を滲ませる。 例えばその一つが、マルコのアパートをメイトランドが訪れた際に起きる衝撃のアクシデントだろう。ある男がアパートの上層階から、吹き抜けに取り付けてあるステンドグラスを幾つもつき破って落下してゆく凄絶ショット(まるでダリオ・アルジェント作品を観ているような興奮を覚えた)。 白眉はメイトランドと髑髏が対峙する、約20分にもおよぶ終盤のシークエンスだろうか。メイトランドは、髑髏を自分の書斎のガラス戸棚に収容するが、やがて髑髏は魔力を発揮し宙に浮遊しはじめる。その魔力に屈したメイトランドは、ベッドに寝ている妻を殺害しようとする。この一連のくだりは、ピーター・カッシングの台詞らしい台詞がひとつもない一人芝居で、彼の名演とフレディ・フランシスの演出が相まって、見事な緊迫感を生んでいる。 現在のホラー映画はVFXの見せ場が幅を利かせているが、かつては怪奇スターと監督の絶妙なコラボレーションによって興奮したものである。VFXの見せ場も嬉しいが、今では怪奇スター不在に寂しさを感じる。 劇中半ばに、メイトランドとフィリップス卿がビリヤードを興じる場面がある。カッシング、リー、フランシスの3人は鬼籍に入ってしまったが、あの世でのんびりとビリヤードを楽しんで欲しいと願う。『がい骨』での怪奇スター競演を観ながら、映画界で長年活躍してきた3人に感謝したい気持ちでいっぱい……。■ COPYRIGHT © 2015 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.
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PROGRAM/放送作品
ブラック・ダリア
[R-15]ロサンゼルス最悪の迷宮事件をデ・パルマが映画化!欲望にまみれた黒い謎を暴くサスペンス!
作家エルロイがロスの闇を描く『L.A.コンフィデンシャル』を含むシリーズのうち、原作発表順では第1作となる同名小説を、鬼才デ・パルマが映像化。実際に起きた未解決猟奇事件に着想を得たL.A.ノワール。
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COLUMN/コラム2014.12.18
実は凄い子!ホンモノの格闘家テイラー・ロートナーの『ミッシングID』
多くの場合、映画の中では演技のプロである俳優がアクションをすることになるのだが、撮影前にどれほどトレーニングを積んだとしても、彼らのアクションが素晴らしい出来になるとは限らない。むしろ「スタントマンに任せておけば良いのに……」と思わせるような“半端に頑張っちゃった映画”が非常に多いのだ。 だからこそ筆者は常に思う。「演技力のあるホンモノの格闘家のアクション映画が観たい!」 最初にその筆者の願望を現実のものとしたのは、言うまでもなくブルース・リーだ。中国武術の詠春拳に始まり、空手、ボクシング、柔道、シラット、カリと様々な武術を融合させ、現在のMMA(Mixed Martial Arts:総合格闘技)の礎を気付いたブルース・リーは、『燃えよドラゴン』で映画における格闘技アクションのオリジナルにして完成形を提示した。その後のカンフー映画の大ムーブメントでは多くの武術家が映画に進出し、スクリーンでその技を見せ付けてくれたのだった。 またブルース・リーの親友で世界プロ空手選手権ミドル級王者のチャック・ノリスは、ハリウッド映画に本物の空手アクションを取り入れるとともに、タカ派アクション全盛の波に乗ってヒット作を連発させることに成功。80年代末期にはスティーヴン・セガールが、合気道というまったく新たな(それでいて伝統的な)格闘スタイルをアクション映画に持ち込み、全世界のアクション映画ファンの度肝を抜いている。 そしてアメリカで総合格闘技イベントUFCが産声を上げると、打撃系格闘技でない新たな護身格闘技としてブラジリアン柔術が知られるようになり、UFCが世界的な人気を博すようになると、ランディ・クートゥア、チャック・リデル、クイントン“ランペイジ”ジャクソンといった、現役格闘家が映画に出演するようになったのは2000年代に入ってからとなる。同時期にアジアでは古式ムエタイのエッセンスをふんだんに取り入れたタイ映画『マッハ!!!!!!!!』や、インドネシアの伝統武術シラットの達人たちが出演する『ザ・レイド』が世界的な評価を受けるようになっている。 こうしたアクション映画の成功事例に共通するのは、単に本物の格闘技をその道の達人たちとともにそのまま映画の世界に持ち込んだわけではなく、既存の映画のアクションの方程式の中に本物のエッセンスをふんだんにまぶすことで、映画のアクションに対するリアリティを格段にアップさせた点である。そして俳優として人気を博しながらも、前述のアクション映画でのリアリティを大いに感じさせるアクションの出来る俳優、その中でもイチオシとなるのが、テイラー・ロートナーなのである。 ロートナーと言えばアメリカで社会現象になるほどの大ヒットを記録したヴァンパイア・ラブロマンス『トワイライト』で人狼青年ジェイコブを演じたことで、ティーンの人気を獲得したイケメン。今では映画一本の出演料が2000万ドルを超えるAランク俳優として活躍していることは、周知の通りである。しかしこのロートナーは、単なる二枚目俳優ではないのだ。 1992年2月、ミッドウェスト航空のパイロットである父とソフトウェア開発会社に勤める母の下に生まれたロートナーは、6歳から空手を習い始め、7歳の時にはアメリカ国内の空手トーナメントに出場。そこで空手やテコンドーの師範であるマイケル・チャットと出会い、チャットの道場であるエクストリーム・マーシャルアーツへの入門を許可される。そこでメキメキと頭角を現したロートナーは、8歳にして黒帯を取得。いくつかのジュニア世界選手権で優勝し、キックボクシングで有名なISKA(国際競技空手協会)の国際大会でも優勝して、2003年には空手の世界ランキング1位になっている。ロートナーは名実ともに世界最強の少年空手家であったのだ。 そしてロートナーの師であるチャットは、『パワーレンジャー』シリーズや『オースティン・パワーズ』などの映画/テレビでスタントマンを務めていたため、その世界にロートナーを紹介。様々な民族がミックスされたエキゾチックなルックスを持ち、世界ラインキング1位の空手家という完璧を絵に描いたロートナーは、オーディションに次々と合格。『トワイライト』のジェイコブ役で全米最高のマネーメイキングスターの仲間入りをしたのだった。そんなロートナーの初主演作が、本稿で取り上げる『ミッシングID』なのである。 ケンカっぱやいのが玉に傷な男子高校生ネイサン・ハーバー。ネイサンに徹底した格闘スキルを叩き込み、その習得状況は非常に厳しくチェックが入るという点において一風変わってはいるが、理解のある両親のもとで幸せに暮らしていた。ただ時折見る女性が殺される生々しい夢に悩まされており、カウンセラーのベネット医師の下に通っていた。ある日幼馴染のカレンとともに学校の課題のために児童誘拐の調査を始めたネイサンは、誘拐被害児童の情報提供を呼びかけるサイトで驚くべきものを見付けてしまう。それは、自分自身の幼少期の写真であった。単なるそら似とも思えたが、その写真に写っている児童が身に着けているものは、ネイサンの子供のときの洋服と染みの位置まで完全に一致。ネイサンはサイトの運営にコンタクトを取り、さらに両親にそのことを問いただしてみた。しかしその時、自宅を訪れた黒いスーツ姿の二人組に両親は射殺されてしまう。間一髪脱出に成功したネイサンは、カレンとともに自身の出生の秘密を探るための旅に出発するのだったが…。 ストーリー的には、ティーン版『ボーン・アイデンティティ』とも言うべき内容の作品であるが、何より本作のアクションシーンには、最新のMMAテクニックがふんだんに盛り込まれているのが特徴的であろう。中盤の列車内でのアクションシーンでは三角締めなどの柔術技も披露。長い手足を持つロートナーの柔術テクニックはなかなかのものである。もちろん本業(?)である空手の経験を存分に活かしたサイドキックやパンチは、一朝一夕に身に着けたようなものではないだけに迫力満点だ。 ちなみに本作のスタントコーディネイターはブラッド・マーティン。『エクスペンダブルズ』シリーズや、ジェイソン・ステイサムの『バトルフロント』でもMMAのエッセンスを大量に投入したアクションをコーディネイトしたやり手アクション監督であり、『ミッシングID』でもその辣腕は奮っている。 サスペンスとして充分に魅力的な本作であるが、そこにロートナーのキレッキレのアクションに加え、ジャッキー・チェンばりのスタントシーンも堪能できる『ミッシングID』。是非ともこの機会ご覧になって頂きたい。そして新たなアクションスター、テイラー・ロートナー誕生の瞬間を確認してほしい。■ © 2011 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ニードフル・シングス
誘惑に負けた者には恐怖の取り引きが待っている!骨董品屋ニードフル・シングスの秘密とは?
ベストセラー作家スティーブン・キングが創りだした架空の町キャッスル・ロックを舞台にした小説が原作のホラー映画。「エクソシスト」のメリン神父役を演じた名優マックス・フォン・シドーが主演している。
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COLUMN/コラム2017.01.24
トランプさんの演説が『ダークナイト ライジング』のベインのアジ演説と激似の件について
ここ数日来、この件でネット上がちょっとザワザワしていますね。今なら以下の各ニュースサイトのリンクがまだ生きているはず。 http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1768238.html https://www.businessinsider.jp/post-458 http://news.livedoor.com/article/detail/12572697/ https://www.buzzfeed.com/bfjapannews/people-cant-get-over-how-much-trump-sounded-like?utm_term=.ewGQwJa1l#.wjRM1O0rx でもこういうリンクはすぐに切れちゃうものなんで、経緯を簡単にワタクシの方でも記しときましょう。 去る2017年1月20日の大統領就任式で、トランプさんは15分という短尺の就任演説をブったのですが、この中で、 “we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another - but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.” 「(前略)我々は、ある政権から別の政権へ、またはある政党から別の党へ、ただ権力の移行をしているのではない。我々は、権力をワシントンD.C.から移譲させ、お前たち人民に取り戻してやるのである!」 とおっしゃられました。この “and giving it back to you, the people.” の部分が、『ダークナイト ライジング』劇中におけるベインのアジ演説のワンフレーズ “and we give it back to you... the people.” というくだりを丸パクリしたんじゃないの!?との疑惑が出てネット界隈がザワついてるのです。 ここ、全文ですと、 “We take Gotham from the corrupt! The rich! The oppressors of generations who have kept you down with myths of opportunity, and we give it back to you... the people. Gotham is yours.” 「我々が腐敗からゴッサムを奪い返すのだ!金持ちの手から!迫害者どもはチャンスという言葉をチラつかせ、長らく我々を搾取してきた。ゴッサムを奪い返すのだ、市民の手に。街は市民のものだ」 と言ってるんですな。ベインがゴッサム市庁舎の前でブつ大演説からの一節であります。 ワンフレーズだけ見ると確かにほとんど100%同じですが、こうして前後の文脈ごと読み比べてみると、全体としては当然、2人はまるで違うことを言ってる。でも、実はベインもトランプさんも、ある決定的に同じことを“口実”にすることによって、一部の層から人気を博して権力を握ったので、やっぱり最も根本的な根っこの部分ではこの2人、モロにやってることとキャラがかぶっているのです(2人とも、あくまでそれは“口実”にしてるにすぎないところまで同じ)。 それは何かと言うと、格差社会批判です。 当チャンネルの土日メイン作品枠「プラチナ・シネマ」でも、昨年末から立て続けに『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『パワー・ゲーム』、来月も『アップサイドダウン』をお送りしますが、まさに、今の時代に映画が描き、糾弾している、現代最大の社会悪こそが“格差”ではないでしょうか? ■ ■ ■ ベインはゴッサム版ウォール街のような証券取引所を襲い、ゴッサム市民の前にはじめてその姿を現します。後に革命軍みたいな連中を率いて「我々は解放者だ!」と叫びながらゴッサムのアリーナに現れ、さらに先の市庁舎前演説では、 「刑務所にいる抑圧された者たちを解放する」「今より市民軍を結成する。志願する者は前に出ろ」「金持ちの権力者どもを豪華な住まいから引きずり出せ」「今まで我々が味わってきた冷酷な世界に放り出すのだ」「我々の手で裁きを下す」「贅沢は皆で分け合え」 などともアジ演説をブち続けます。言っとることはまさしく「革命」ですな。 『ダークナイト ライジング』の『ライジング』とは「立ち上がる」、「蜂起する」、「蹶起する」といった意味。つまりは「革命」です。この映画、革命のイメージに満ち溢れておりまして、 ①ベイン革命軍は真っ赤なスカーフを巻いており、まるで文革の時の紅衛兵みたい。 ②人民法廷に資本家や旧体制の官憲が引き出され、上訴なしの即決裁判で死刑判決を受けるシーンがあるが、あの絵ヅラは世界史の教科書で見覚えがある。フランス革命のルイ16世の裁判↓か、 もしくは、「球戯場の誓い」のページに載っていた挿絵↓にソックリ。被告席の椅子もなんだかとってもヴェルサイユ風だし。 ちなみに「球戯場の誓い」とは、フランス革命の直接原因となった事件。税金を払わされている圧倒的多数の平民が「一握りの特権階級が税金を免除されているのはおかしい!」、「三部会で特権階級の主張ばかりが通るのはおかしい!」と訴え、自分たちこそが国民の真の代表なんだと立ち上がった出来事。 さらにこのシーン、判事席(裁判官はスケアクロウ!)は、机や椅子などを雑然とうず高く積み上げたもので、『レミゼ』の六月暴動やパリコミューンにおける「バリケード」を連想させる。「バリケード」はかつて革命市民軍にとって基本戦術だった(普通選挙が広まると、革命勢力は選挙による政権奪取を目指すようになり、エンゲルスが亡き同志マルクス著『フランスにおける階級闘争』1895年版に寄せた序文で「あの旧式な反乱、つまり1848年までどこでも最後の勝敗をきめたバリケードによる市街戦は、はなはだしく時代おくれとなっていた。」と批判し、バリケード戦術は廃れていった…かと思いきや日本では昭和40年代の大学紛争においてもまだまだバリバリ現役だったけど)。 ③その革命裁判で死刑を宣告されると凍った川を渡らされ、途中で氷が割れて死んでしまう。これは原作コミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』の中ですでに描かれているイメージだが、この映画ではさらに、ロシア革命の時に赤軍に追われた人々が凍結したバイカル湖を渡ろうとして沈んだ歴史的悲劇“バイカル湖の悲劇”をも想起させる。 ④ベイン率いる革命軍とバットマン率いる警官隊が衝突するシーンでは、バットマンは珍しくなぜだか日中に戦う。そのシーン、晴れた日で粉雪が舞っている昼間なのだが、ここはロシア革命の導火線となった「血の日曜日事件」の光景を彷彿させる。雪の積もる晴れた日の出来事だった。 こうした革命のイメージの数々に、さらに9.11のNYのイメージや(ベインがテロを仕掛けるシーンではグラウンドゼロをわかりやすく空撮してます)、そしてコミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』のイメージを掛け合わせ、見てると心臓に若干のプレッッシャーすら覚えるような、凄まじいまでに圧迫感のあるリアリズムを漂わせながら、このまま理不尽な格差社会が是正されないと遠からず現実になるかもしれない革命と混乱の様相を『ダークナイト ライジング』という映画は生々しく描出しているのです。 ■ ■ ■ つい数年前の“ウォール街を占拠せよ”運動というのをご記憶でしょう。正確には2011年の出来事です。この『ダークナイト ライジング』のまさに撮影中に全米を揺るがしていた社会運動で、特にウォール街があるためロケ地ニューヨークがかなり騒然としていた様を、ワタクシもニュースで連夜見ていた記憶があります。 アメリカは、上位1%の富裕層がケタちがいの富を独占している格差社会とよく言われます。しかもその1%が2008年リーマンショックを起こして世界を経済危機に陥れ、99%の中からは失業する人もおおぜい出たのに、1%は税金で救済され、挙げ句の果てにその公的資金を自分たちのボーナスに回したということで、99%側の人たちの間で「フザけんじゃねえ!」という機運が高まり、”We are the 99%”をスローガンにデモを行ったのが“ウォール街を占拠せよ”運動でした。 この運動とちょうど同時期に撮影・公開されたため、当時から『ダークナイト ライジング』はこれと結び付けられて論じられるケースが多くて、実際、ベインと彼の革命軍の姿と“ウォール街を占拠せよ”運動の様子はものすごくオーバーラップします。一時は実際のデモの模様をノーラン隊が撮影し、劇中にそのフッテージを使うのではという噂まで流れていたぐらい。 ノーラン監督自身は「この映画に政治的な意図はない」、「モデルはフランス革命だ」と語っており、他の制作陣も「ベインと“ウォール街を占拠せよ”運動が似ているのは単なる偶然」と言ってはいますけれど、その言葉を鵜呑みにはできません。たまたま似ちゃったのか、炎上沙汰にならないようしらばっくれているのか定かではありませんが、しかし、意図してやってはいないとしても、時代が感じとっている理不尽感をこの映画が生々しく撮らえていることは間違いありません。 そして今、2017年、格差社会を徹底的に攻撃し、貧しき人びとの“味方”を自称して大統領選を勝ち抜いてきたトランプさん就任に際して、再びこの『ダークナイト ライジング』と時事・世相がシンクロしたのです。 映画史に残る文句なしの傑作『ダークナイト』と、ヒース・レジャーが命をかけて演じたジョーカーは、誰もが、全員が全員、高く評価するところでしょう。それに比べて毀誉褒貶あることは否めない『ダークナイト ライジング』ですけれども、ジョーカーというヴィランが「正義とは何か」という普遍的かつ哲学的な問題提起をしてくるのに対し、ベインの主張は逆に、きわめてタイムリーかつアクチュアル。トランプさんと同じ、“ウォール街を占拠せよ”運動とも同じ、格差社会批判です。 格差社会、暴走するマネー資本主義。こんなのおかしい!こんなの理不尽だ!という至極ごもっともな鬱積した怒りが、昨年2016年には、数年前なら想像すらできなかったような“極端な政治的選択肢”に世界中の人々を飛びつかせてしまいました。 文革やフランス革命、ロシア革命は、やがては反対派を弾圧・粛清しまくる恐怖政治になっていきました。ベインの革命も、ちょっと良いことを言ってるようでいて、歴史を知っているとその恐ろしさとオーバーラップして見えてきます。 “極端な政治的選択肢”に飛びつきたい気になったら「まずは落ち着け」と、ひとまず深呼吸して見るべき映画、それこそが『ダークナイト ライジング』!このような時代になってしまった2017年、この作品の重要性は今こそ相対的に高まっているように思えるのであります。 ちょっと良いことを言ってる人、「権力を大衆の手に取り戻すのだ!」とか胴間声でアジってる人、実はこいつベインじゃねえのか!? ということを慎重に見極めないといけない時代に、なんか、なっちゃいましたなぁ…。寒い時代だとは思わんか…。 © Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary Pictures Funding, LLC© 2012 Universal Pictures. All Rights Reserved. 保存保存
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PROGRAM/放送作品
プレッジ
名優ショーン・ペンが監督としても成熟!ジャック・ニコルソンと再びタッグを組んだ監督第3作
オスカー俳優ショーン・ペンの「クロッシング・ガード」以来6年ぶり3度目となる監督作。遺族とのプレッジ(約束)で次第に妄想へ追いやられていく狂気の老刑事をジャック・ニコルソンが哀愁たっぷりに演じ上げる。
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COLUMN/コラム2014.01.31
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年2月】招きネコ
コミック作家の卵コンビ、親友のホールデンとバンキーは、コミケで同じコミック作家を目指すキュートな女の子エイミーに出会う。奥手なホールデンはエイミーに一目惚れ。ところが、彼女はレズビアン。さらに実はバンキーはゲイで密かにホールデンに恋していた!この3人はどうなる??という、おかしくもちょっとほろ苦いオタクたちの青春ラブ・ストーリー。今や、海外でクール・ジャパンを支えるマンガオタクたちの生態や、アメリカン・カルチャーは、この映画を見るととてもよくわかります。1997年の作品ですが、今のほうが設定とかがすんなり入るかもしれません。ホールデンを演じるのはベン・アフレック。『アルゴ』で完全に映画人として認められるステップ・アップを果たした彼。その前は私生活を含めてなんちゃって俳優のイメージが定着してましたが、いい作品にも出てるんです。その中でもこの作品の彼は『グッド・ウィル・ハンティング』のいいヤツ・イメージのラインで、不器用なオタクを繊細に魅力的に演じています。実生活の親友マット・デイモンもカメオ出演しているのでお見逃しなく。 ©1996 Too Askew Productions, Inc. and Miramax
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PROGRAM/放送作品
鍵(1958)
死を招く女と彼女を愛してしまった男のラブロマンス。魔性の女役ソフィア・ローレンの美しさが光る
『オリバー!』のキャロル・リードがヤン・デ・ハルトグ原作の「ステラ」を映画化。『慕情』のウィリアム・ホールデン、『船の女』のトレヴァー・ハワード、『ふたりの女』のソフィア・ローレンで贈るラブロマンス。
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】招きネコ
アイリッシュ系マフィアと新興イタリア系マフィアの抗争を舞台に、男と男、男と女の愛と友情と裏切りが描かれるギャング映画と言うと、全くもって普通に聞こえるかも知れませんが、コーエン兄弟ワールドなので、かっこいいけど、おかしいんです。人間って真面目であればあるほど、客観的に見ると可笑しく見えるというのがよくわかります。この映画にはまっていた当時、「迷惑なヤツ」という代名詞として、この作品でジョン・タトゥーロが演じる主役でもない「バーニー」を隠語として友達と使っていたくらい、脇役から主役まで人間くさく愛すべきキャラがそろい、アルバート・フィニーやガブリエル・バーンら、普段あまり主役をやらない個性派俳優たちが輝いています。コーエン兄弟作品の魅力である、カメラワークと音楽による名シーンも満載。アルバート・フィニーがマシンガンを撃ちまくり、「ダニー・ボーイ」が流れる場面は映画史に残る名シーンだと思います。 (C)1990 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved