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PROGRAM/放送作品
第9地区
難民エイリアンが地球で人間と共存!?アパルトヘイトへの社会風刺を融合した驚異のSF傑作
本作が長編デビューとなるニール・ブロムカンプ監督が、母国・南アフリカのアパルトヘイト問題をエイリアン差別になぞらえた斬新なSF。巨大な宇宙船や戦闘ロボットによる派手なアクションで娯楽性も追求している。
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COLUMN/コラム2015.06.20
『チャッピー』の監督、南アが輩出した若き天才ニール・ブロムカンプが20代で放った衝撃作〜『第9地区』〜
1982年、南アフリカのヨハネスブルグ上空に、巨大な宇宙船が出現した。宇宙船の中にいたのは、難民化した大量のエイリアンたちであった。エイリアンたちはその外見から「エビ」という蔑称を付けられ、人間との反発による衝突を防ぐため、地上にある隔離地区「第9地区」へと移住させられる。そして「第9地区」の管理は、半官半民の巨大企業MNU(Multi-Nation United)に委託されることとなった。 それから28年後、エビたちが「第9地区」で増殖し続け、またナイジェリアン・ギャングが跋扈する治安の悪化に危機感を感じたMNUは、エビたちをさらに劣悪な環境である「第10地区」に移住させることを計画。そのためには「第9地区」に住むエイリアンたちから移住に合意する契約書にサインをもらう必要が生じた。その担当には、MNUのエイリアン対策課の職員で、MNU幹部の娘を妻としながらも凡庸な能力のために出世できないヴィカスが選ばれた。 ヴィカスはMNUの特殊部隊と共に「第9地区」に向かい、半ば強制的にエイリアンたちから移住合意書にサインをさせていく。その際、エビのクリストファーの家で見付けた液体を、不注意から浴びてしまったヴィカス。直後からヴィカスの身体に変化が現れ、MNUはヴィカスを研究の対象として扱い、様々な人体実験に強制的に参加させられることになる……。 『第9地区』は、前述の南アフリカのパブリックイメージを全部ぶち込んで、さらに我々があまり知らない南アフリカの現実と塩分濃度高めの男気で味付けし、極上のアクションで煮込んだ超絶傑作映画だ。 本作は、監督のニール・ブロムカンプの長編デビュー作。ブロムカンプは南アフリカのヨハネスブルグ生まれの現在35歳(『第9地区』撮影時は29歳)。高校生の時に、後に本作の主人公ヴィカスを演じることになるシャールト・コプリーと出会う。ブロムカンプの才能に惚れこんだコプリーは、高校を卒業したブロムカンプとともに制作会社を立ち上げ、ブロムカンプは3Dアニメーターとして映画業界で働き始めた。『ダークエンジェル』などのテレビシリーズでCGを担当するなどしてキャリアを積み上げたブロムカンプは、同時に自社で複数の短編映画を制作。中でも『アライブ・イン・ヨハネスブルグ』は、まさに『第9地区』の原点と言える作品であり、巨大宇宙船、エイリアン、特殊部隊、パワーローダーといった『第9地区』の重要要素が登場するだけでなく、モキュメンタリースタイルの撮影・編集方法もすでにここで確立している(『第9地区』でヴィカスを演じたコプリーが、『アライブ・イン・ヨハネスブルグ』では特殊部隊側として出演している)。そもそもこの『アライブ・イン・ヨハネスブルグ』のコンセプトは、1966年に6万人以上の黒人が住んでいたケープタウン近郊の「第6地区」において、アパルトヘイト政策による強制移住させられた事件にヒントを作られている。 そんなブロムカンプの才能に気付いたのはコプリーだけでなく、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンもブロムカンプの溢れる才能に惚れこんだ。ピージャクは長編映画を一本も撮ったことのないこの20代の若者を、総製作費100億円以上の大作SF映画の監督に抜擢する。マイクロソフトがXbox用ゲームとして発売し、全世界で3,000万本以上のセールスを記録している大ヒットゲーム『HALO』の実写映画化である。 2006年に発表され、ピージャクが製作総指揮をつとめるビッグプロジェクトだったが、予算、利益の分配だけでなく、まったくの新人監督であるブロムカンプをこのような大作の監督に起用するという人事についてもマイクロソフト側との交渉が難航。2009年1月には、このプロジェクト自体が消滅することが発表された。 しかしピージャクとブロムガンプは『HALO』のために準備したリソースやチーム体制を、そのまま解散するようなことはしなかった。ブロムガンプがかねてから構想していた『アライブ・イン・ヨハネスブルグ』の長編映画化、『第9地区』の実現に向けて、企画をスタートさせたのだった(ブロムガンプ自身は『HALO』の映画化には今でも前向きなコメントを出している)。 完成した『第9地区』は、実に恐るべき映画となっている。主人公ヴィカスの身に何かが起こったことだけが分かるインタビューで構成される序盤、人間とエイリアンが共存する異常な世界観、エイリアンと共生するナイジェリア人ギャング団など、オープニングからグイグイと物語に引き込まれていく。そしてヴィカスの身体に変化が起きてからは、政府、MNU、警察、市民、ギャングという南アフリカのすべてが自分を付けねらう中で、最後の選択として「第9地区」に逃れたヴィカスの孤独。そしてエイリアンの武器を手に入れてからはジェットコースターのような超展開で怒涛のクライマックスに向けて突き進む。 本作にはブロムガンプとコプリーが、南アフリカ出身ではあるが本質的にはよそ者であるアングロ・アフリカン(アフリカ中南部に住む、英語を第一言語とする白人系民族)である影響が大きい。国家の主権を黒人に戻したことにより、出身地が自身の国家でないというアイデンティティ喪失と、それでいながら抗らい難い故郷アフリカへの望郷の念が映画の所々に強く感じられるのだ。これは舞台は違えど、ブロムカンプの長編2作目『エリジウム』でも顕著に表れていたし、ローデシア(現ジンバブエ)出身の傭兵が主人公であるレオナルド・ディカプリオ主演作『ブラッド・ダイヤモンド』なども同じ流れで語れる作品だ。 またブロムガンプの作品に共通するのが、本人の意思とは無関係に悪意ある行動を取っていた人間が、否応なく巻き込まれた状況の中で、土壇場で男気溢れる正しい選択をしてカタルシスを最高潮に高める点。これもやはり前述の『ブラッド・ダイヤモンド』や、デンゼル・ワシントン主演の『デンジャラス・ラン』、古典傭兵映画『ワイルド・ギース』といったアフリカを舞台にした秀作群に共通するし、ブロムガンプ最新作の『チャッピー』では、南アフリカ人ラッパーのNINJAが演じたチンピラのニンジャが、最後の最後で見せる行動にもはっきりとにみられる。ブロムガンプの映画からは、環境が悪人を作り、状況で悪人は変わることが出来るという性善説的な思いが多分に伝わってくる。 そしてブロムガンプ映画には、共通して激しい銃撃アクションが見所となっている点も注目。南アフリカはアパルトヘイト体制維持のために発展したアフリカで最も進んだ軍事組織を持つ国家であり、アフリカ各地での非正規戦を多く戦った経験豊富な軍人を多く抱える国だ。さらにアパルトヘイト終了後の軍縮によって失業した特殊部隊員らによって、「エグゼクティブ・アウトカムズ」のような世界最大級の民間軍事会社(傭兵会社)が設立されたり、6,000社以上の警備会社に元軍人を中心に4万人以上が勤務するなど、独自の発展を遂げた民間の軍事組織を持つ国だ(「エグゼクティブ・アウトカムズ」社は国家を転覆させるほどの力を持ったため、後に南アフリカ政府によって強制的に解体させられた)。また本作には南アフリカの銃器メーカーデネル社ヴェクター小火器事業部が開発した銃器が大量に登場。マニアを唸らせている。 ブロムガンプ渾身の『第9地区』は30億円の制作費で作られ、最終的に世界で210億円の興行収入を獲得する常識外れのメガヒット作となった。知名度のある俳優も出ておらず、登場人物はクセがあり、残酷描写や文化の違いから違和感を感じる点もあるという、少々取っつきづらい作品ではある。しかし観始めてしまえば、110分が一瞬で過ぎ去っていくこと請け合い。そして観たら語らずにはいられない作品である。■ © District 9 Ltd.
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PROGRAM/放送作品
(吹)第9地区
難民エイリアンが地球で人間と共存!?アパルトヘイトへの社会風刺を融合した驚異のSF傑作
本作が長編デビューとなるニール・ブロムカンプ監督が、母国・南アフリカのアパルトヘイト問題をエイリアン差別になぞらえた斬新なSF。巨大な宇宙船や戦闘ロボットによる派手なアクションで娯楽性も追求している。
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COLUMN/コラム2019.03.09
全編一人称視点の異色作『ハードコア』誕生の背景
■『ストレンジ・デイズ』と共有されるエクストリームなPOV視点 2015年に製作されたロシア映画『ハードコア』は、 一人称視点によってストーリーが語られるアクションスリラーだ。最大の特徴としては、主人公の目線によって状況の推移を展開させていく「POV」のショットだけで構成されている。映画用語で一人称視点をPoint of View(ポイント・オブ・ビュー)、略してPOVと呼称するが、全編をこれで通した作品というのは革新的といっていいだろう。 とはいえ長い映画の歴史において、全編POVといった試みに前例がなかったわけではない。1947年、ハードボイルド小説の第一人者であるレイモンド・チャンドラーの原作を映画化した『湖中の女』は、私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする一人称物語のスタイルを、そのまま映像へと置き換えた実験作として知られている 『湖中の女』予告編 『ハードコア』の監督であるイリア・ナイシュラーは本作を参考のために観たと、オフィシャルのインタビューにて述懐しているが(*1)、極めて古典的ということもあってか、さほどインスピレーションの喚起にはならなかったとのこと。むしろ発想に大きな影響を与えたのは1995年製作のSF映画『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』(95)だと言明している。女性監督キャスリン・ビグロー(『ハートロッカー』(08)『デトロイト』(17))の手によるこの映画は、他人の五感を記録し、第三者に疑似体験させるバーチャル装置「スクイッド」をめぐって、元警官が陰謀に巻き込まれていく近未来サスペンス。冒頭の約3分30秒に及ぶPOVショットが見どころのひとつといっていい。車に乗った強盗団が現金を奪い、現場に駆けつけた警官を振り切ってビルの屋上へと移動。そして別のビルの屋上へと飛び越えていくまでのエクストリームな逃走POVは、まさに『ハードコア』の起点と解釈して相違ない。ビグローのキャリア初期を飾るこの傑作は、残念なことに日本では接する機会が極端に減ってしまっているが、『ハードコア』と併せて観ると、大胆なアイディアのネタ元が分かって面白い。 ■デジタル時代が可能にした難易度の高い撮影 しかし現実的な問題として、実績のない監督が、何の担保もなくこんな長編作品を撮れるはずもない。もちろん、そこには然るべきプロセスがある。ナイシュラー監督は2013年、『ストレンジ・デイズ』のテイストを引用し、自分が所属するインディーズバンドのプロモーションビデオ'Bad Motherfucker'をPOVで監督している。それがYouTubeで話題を呼び、世界的に注目されることによって、POVスタイルの長編映画化という流れへと行き着いたのだ。 Biting Elbows - 'Bad Motherfucker' さいわいにも、時代はこうした大胆な挑戦に対して優しい環境となっていた。一昔前だと、POVスタイルを全編通してやる、という方針をつらぬこうにも、技術的な制約が難関となって立ちはだかる。フィルムだと感光のためにライティングを必要とし、照明機材の配置が欠かせず、激しい移動をともなうショットの撮影には向かない。またフィルムカメラは大型で機動性にも限界があり、根本的にフィルム撮影では難しい手法なのである。 しかし、やがて時代はフィルムからデジタルへと移行。フィルムから解放されたカメラは小型になり、また少ない光源でも充分な明るさが得られるようになったことから、堰を切ったようにPOVスタイルの作品が群発されていく。怪獣出現のパニックをカムコーダーごしに捉えた『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)や、ゾンビの増殖をカメラクルーの視点から捉えた『REC/レック』(07)などがその筆頭だろう。 ただ『ハードコア』はシューティング・スタイルのバトルゲームにも似た映像表現を用いることで、他の同系統の作品とは一線を画すものになっている。加えて編集もワンショット長回しによる構成を基本とし、観客と画面上における主人公との同化率をより高いものにしている。なによりPOVがインパクトを与えるだけのものではなく、作品のテーマや結末のサプライズに結びついていくのだから徹底されている(ただ非常にショッキングな残酷描写が多いので、鑑賞には一定の配慮と注意が必要だ)。 そのため『ハードコア』の撮影には特殊な撮影機器が用いられている。アクション用のカメラ「GoPro」をマスク形のヘッドリグに装着した、ウェアラブル(着用)型の特別仕様カメラが本作のために開発され(*2)、それをかぶったスタントマンを介して撮影が行われているのだ。また磁気的に画像を安定させる機能もマスクに追加され、デジタル合成などのマッチムーブへの配慮もなされている。劇中、上空から脱出ポッドで地上へと落下したり、カーチェイスになだれ込んで撃ち合いを始めるといったアクロバティックな展開は、こうした開発の賜物といえるだろう。 ところが、あまりにもスムーズなカメラの動きは観る者に違和感を与え、リアリティを欠落させるという懸念から、わざとショットに揺れを発現させる改良がほどこされた。余談だが、スタンリー・キューブリック監督のベトナム戦争映画『フルメタル・ジャケット』(87)は、この技術的な思想を共有している。同作では戦闘シーンの撮影において揺れを抑止し、スムーズな移動映像が撮ることのできるステディカムが用いられているが、激しい戦場を写し取るのにかえって臨場感を損ねるということから、性能の精度を落として撮影がなされたのである(*3)。 ■新規ジャンルに着手する革新派ベクマンベトフ 若き監督の非凡な才能によって生まれた『ハードコア』だが、なによりもこの映画を語る上で、同作のプロデューサーであるティムール・ベクマンベトフの存在をないがしろにはできない。彼の映画に対する一貫した姿勢と無縁ではないからだ。 ベクマンベトフはナイシュラーの演出した'Bad Motherfucker'を観て、即座にコンタクトをとり映画化を提案。その即決ぶりに驚かされるが、氏はわずか数分の短編を一見しただけで、ナイシュラーのポテンシャルを感じたのだという。いわく、 「従来の手法と異なる作品は、もとより相当のスキルがないとできない」(*4) ナイシュラー監督同様、ベクマンベトフもプロモーションビデオ作家という前歴を持ち、またCMディレクターとしてロシアの広告の発展に貢献。自国で空前の大ヒットを記録したダークファンタジー『ナイト・ウォッチ NOCHINOI DOZOR』(04)を生み出すなど輝かしい経歴を持つ。加えて『ナイト・ウォッチ』では、映画スタジオの民営化によって乱立した小規模VFXプロダクションをまとめ、大きな作品をVFXを担当できるようにインフラを整理し、ロシア映画の娯楽大作化・大型化への轍を築いたのだ。また映画やテレビドラマの劇中に実在の商品や企業を映し出すことで広告収入を得る「プロダクト・プレイスメント」をロシアで初めて導入するなど、映画にリアリティとコストダウン効果をもたらしている。また近年においても、『アンフレンデッド』(14)と『search サーチ』(18)といった作品を世に送り出し、その革新性を強く示す形となった。両方ともにPC(パソコン)のモニター上だけで物語が展開するという、これまでの映画表現にない手法を持つものだ。 『ハードコア』は監督のスタイルや実験的な着想もさることながら、それに理解を示して積極的なサポートをし、世に送り出そうとするプロデューサーがいればこそ可能になった企画なのである。■ ©2016 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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PROGRAM/放送作品
ハードコア
[R15+]機械の体になった男の死闘を一人称視点で体験させる!ロシア発の新次元バイオレンスアクション
主人公を演じる俳優に頭部カメラを装着させ、全編を主観映像で描き出す意欲作。過激なバイオレンスの数々が一人称視点によっていっそう生々しく迫り、これまでにない臨場感を体験することができる。
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PROGRAM/放送作品
ビースト(2022)
まるで陸上版『ジョーズ』!アフリカのサバンナで凶暴なライオンに襲われる恐怖を描くサバイバルアクション
広大なアフリカのサバンナで繰り広げられる人間とライオンの死闘を、登場人物を最小限にすることによって緊張感を持続させながら展開。人間を憎む凶暴なライオンがVFXでリアルに映し出されて迫力満点。
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PROGRAM/放送作品
特攻野郎Aチーム THE MOVIE
80年代TVドラマシリーズの映画化。命知らずな特殊チーム4人組のド派手な活躍を描く破天荒アクション
1980年代の人気TVシリーズを豪華スター競演で映画化。パラシュートで落下する戦車での砲撃など、リアリティをとことん無視した破天荒なアクションが痛快。名セリフやテーマ曲などTV版へのオマージュも必見。