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PROGRAM/放送作品
第十七捕虜収容所
都会派監督ビリー・ワイルダーが脱走モノに挑戦。笑いと緊張感のバランスが冴える異色の戦争映画
都会派コメディの達人ビリー・ワイルダーが戦争ドラマに挑戦。捕虜収容所からの脱走計画と密告者探しを、ユーモアと緊張感を絶妙に織り交ぜて描く。ウィリアム・ホールデンが1953年度アカデミー主演男優賞を受賞。
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COLUMN/コラム2016.07.02
フレンチ・リビエラの海岸でジーン・セバーグの太股が揺れる!! アメリカ人には不向きだったアナニュイな夏〜『悲しみよこんにちは』〜
ユベール・ド・ジバンシーと言えばオードリー・ヘプバーン。映画ファッション史に名を刻む2人のトレンドセッターが最初にコラボしたのは『麗しのサブリナ』(54)だが、時系列的にはそれから約4年後、『昼下りの情事』(57)でアリアンヌ役のオードリーか着る数点のドレスをデザインし終えた直後あたりに、ジバンシーが非オードリー作品に衣装デザイナーとして駆り出される。それが『悲しみよこんにちは』(58)だ。 映画はまるでジバンシー、もしくはジバンシー的ミニマリズムのオンパレード。彼が衣装を担当したどのオードリー映画より、オードリーがいない分、むしろジバンシー色が強いと言っても過言ではない程だ。なので、ここで衣装の解説に少し字数を割きたい。 冒頭でジーン・セバーグ演じるヒロインのセシルが着て現れる黒いベアトップのカクテルドレスは、もろ『麗しのサブリナ』でオードリーが着ていた"デコルテ・サブリナ"のアレンジ。両肩のリボンストラップを首元に移行させてはいるが、タイトな上半身と膨らんだパニエのドラマチックな対比、モノクロを意識したミニマルなシルエットは、どちらもジバンシーならでは。『悲しみ~』はストーリー展開に伴いカラーとモノクロをカットバックで切り替える手法だ。因みに、セシルやデボラ・カー扮するアンヌが身に付けるジュエリー類は、パリのハイブランド、カルティエとエルメスから提供されている。 セシルとデヴィッド・ニーブン演じる富豪でプレイボーイの父親、レイモンが夜な夜なパリの街に繰り出し、パーティに明け暮れる刹那的な冒頭シークエンスから、父娘が夏を過ごした1年前のフレンチ・リビエラに時間が巻き戻ると、画面は一転、モノクロからカラーにシフト。ここでカラフルなジバンシーファッションが一気に炸裂する。レイモンに招待されてコテージに現れる、後のフィアンセで、セシルにとっては継母になるはずだったアンヌがセシルにプレゼントする、胸にフローラル刺繍が施されたドレスを筆頭に、セシルと、レイモンまでが多用する(アンヌもやってる)シャツの裾結びとショートパンツの組み合わせ、セシルが履く楽ちんそうなバレエシューズ等々、否が応でもサブリナやアリアンヌを連想させる服と着こなしは、ジバンシー本人と、衣装コーディネーターのホープ・ブライスが場面毎にデザインまたは用意した品々。ブライスは本作の監督、オットー・プレミンジャー夫人で、夫が監督した計9作で衣装コーデを手がけている。ジバンシーのセンスとブライスの統括力のお陰で、映画はさながらジバンシーによるビーチリゾート・ファッションショーの趣きだ。 さて、ここらでファッションから映画の背景に話題を移そう。『悲しみよこんにちは』はフランソワ・サガンがブルジョワのアンニュイな生活と孤独を綴って作家デビューを飾ったベストセラー小説の映画化。これにインスパイアされたサイモン&ガーファンクルが、名曲"サウンド・オブ・サイレンス"を発表したとも言われる。確かに、父親の愛を繋ぎ止めるために、何の罪もないアンヌに惨い制裁を加えてしまうセシルが引き摺る後悔と、永遠に逃れられない孤独との共存を意味する映画のタイトルは、"S.O.S"の歌い出し"hello darkness my old friend~"と符合する。プレミンジャーは小説の世界観に魅せられ、映画化を決意。そして、完成した作品は、ヒッチコックの『泥棒成金』(55)と同じ ゴート・ダ・ジュールの海岸線や、オープンカーでのドライブ、ラグジュアリーなリゾートファッション等で共通するし、映画史的に見ると、1950年代のハリウッドではこの種のヨーロッパを舞台にした観光映画がちょっとしたブームだった。『ローマの休日』(53/ローマ)然り、『愛の泉』(54/同じくローマ)然り、『旅情』(55/ベニス)然り。 それは、当時のアメリカ人にとってヨーロッパはまだまだ遠く、いつか訪れてみたい憧れの地だったからだろう。そのため、作られた映画はほぼ間違いなく、旅には付きもののラブロマンスと決まっていたものだ。でも、『悲しみよこんにちは』は少しテイストが異なる。南仏でのバカンスを無邪気に楽しむレイモンとセシルが、遊びの延長でアンヌを排除してしまった罪悪感が、風景の彩度と反比例して、観客の気持ちまでアンニュイにするからだ。その刹那でデカダンなムードが映画の魅力とも言えるし、レイモンとセシルは毎夏リビエラに南下して来るパリ在住のブルジョワ。外国人が異国の地で萌える他のハリウッド映画とはそもそもキャラ設定が違う。だからだろうか、公開当時、アメリカメディアの評価は芳しくなかった。反面、原作者サガンの母国フランスでは映画人たちが絶賛。ジャン=リュック・ゴダールは1958年のベストンワンに選び、エリック・ロメールは"シネマスコープで撮られた最も美しい映画"と評している。 オットー・プレミンジャー自身も"自作中最も好きな映画"と自画自賛する本作で、誰よりも幸運を手にしたのは、言うまでもなく主演のジーン・セバーグだっただろう。トランジスターグラマーなボディライン(160センチ)から溢れ出る若々しさと、"セシルカット"と呼ばれたブロンドのショートヘアは一種のムーブメントとなり、特にそのヘアスタイルは、女優がイメージチェンジする際の必須アイテムとして定着。パーマネントが必要な"ヘプパーンカット"と比べてナチュラルな分、より一般的、普遍的に広がっていった。そして、ジバンシーがデザインしたリゾートウェアも、もしかして、スリムな体型に恵まれたオードリーより、むしろ、セバーグを通して女性たちの着るハードルを低くしたのかも知れない。太い太股や足首を隠そうともせず、リビエラの海岸をゴム毬のように走り抜けるセシルを見て、改めてそう思う。 そんなセシル=セバーグに魅了されたジャン=リュック・ゴダールは、彼にとっての初監督作『勝手にしやがれ』(59)のヒロインにセバーグを抜擢。その際、セバーグは個人的にもお気に入りだった"セシルカット"を続行し、そのヘアにマッチしたボーダーのカットソーと黒のロングスカートは、ジバンシーによるセシルのリゾートウェア以上に強烈なトレンドとなる。結局、セバーグのたった15年にも満たなかった女優人生(映画出演は1957〜71。1979年、パリ郊外で遺体で発見される)で、『悲しみよこんちには』は『勝手にしやがれ』と並ぶ彼女の代表作として記憶されることとなる。 ところで、タイトルシーケンスを飾る人が涙を流すグラフィックデザインは、プレミンジャーの『カルメン』(54)以来、ヒッチコックの『めまい』(58)等、数多くの映画でアートワークを手がけた伝説的なデザイナー、ソール・バスの手によるもの。また、劇中に登場するペインティング類は、日本人洋画家、菅井汲(すがいくみ。1919〜1966)の作品だ。本作にスタッフとして正式に参加した彼の名前がタイトルロールでもちゃんと紹介されるので、是非目を懲らして欲しい。■ Copyright © 1958, renewed 1986 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
帰らざる河
壮大なロッキー山脈に咲く、一輪の花マリリン・モンロー──大自然と戦う者たちのヒューマン西部劇
『ナイアガラ』で不動のセックスシンボルと絶賛されたマリリン・モンローが西部劇でも魅力を発揮。ワイドに収めたロッキー山脈の雄大な映像はもちろん、劇中でモンローが披露する「帰らざる河」など音楽も印象的。
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COLUMN/コラム2018.06.01
居なくなった娘は実在したのか!? 人間消失映画の最高傑作!『バニー・レークは行方不明』
『バニー・レークは行方不明』って奇妙な題名でしょ? “バニー・レーク”は、幼稚園くらいの女の子の名前です。舞台はロンドンで、そこにやってきたアメリカ人女性(キャロル・リンレー)が「娘がいなくなった」と、警察に届けます。ところが、幼稚園では「そんな子は預かってない」と言われます。他でも「そんな子は見たことない」と言われます。目撃者はどこにもいないんですよ。だから刑事が「娘さんの持ち物とか何か証拠になるものはありませんか?」と言うんですが、何もない。バニー・レークという娘が実在した証拠がいっさい出て来ない。それでだんだん観客も、バニー・レークというのは、このヒロインの妄想じゃないか? と疑いはじめるんです。 これは有名な“消える旅行者”という都市伝説ですね。映画でも人間消失ものはたくさんあります。最も古いのはヒッチコックの『バルカン超特急』(38年)。大陸横断鉄道に乗ったヒロインがある老婦人と話をしていたんですけど、その老婦人が、走る列車の中から忽然と消えてしまう。僕の世代にとって印象深いのは『恐怖のレストラン』(73年)というTVムービー。砂漠にあるドライブインに夫婦が入りまして、奥さんがトイレから席に戻ると、旦那がいなくなっている。で、店にいた人たちに「うちの連れは?」と尋ねると「あなたは一人で入ってきましたよ」と言われる。ジョディ・フォスターの『フライトプラン』(05年)もそうでした。飛行機に乗ってる間に娘が消えちゃう。それと、『フォーガットン』(04年)。ジュリアン・ムーア扮するお母さんが「息子が消えた!」と。このように山ほどある人間消失映画のなかでも最高傑作が、この『バニー・レークは行方不明』です。 監督はオットー・プレミンジャー。『黄金の腕』(55年)とか『或る殺人』(59年)を手がけた巨匠です。プレミンジャーの映画は、オープニングタイトルが素晴らしいことでも有名です。これを作ったのは、ソール・バスというグラフィック・デザイナーです。『バニー・レーク〜』でも抜群のタイトルデザインをしてます。黒い紙をびりびりと破るアニメーションで、非常に怖い。バスの最も有名な仕事は、ヒッチコック監督と組んだ『サイコ』(60年)ですね。 プレミンジャー監督は、ハリウッドで当時ものすごく厳しく自主規制があった時代に、それに反する映画を作り続けてきた人です。性的な会話とか、変態性欲とか、同性愛とか、タブーとされていたことを描いてきたチャレンジャーでした。 そのいっぽうで鬼監督とも呼ばれていて、俳優を徹底的に追い詰めるものだから、『第十七捕虜収容所』(53年)では、ナチの収容所長役に抜擢されました。ビリー・ワイルダー監督からは「いつも演出してるようにやってくれ」って言われたという(笑)。プレミンジャーはユダヤ系なのにナチの将校みたいに冷酷だと。『バニー・レークは行方不明』でも、主演のキャロル・リンレーを徹底的に追い詰めました。彼女の精神崩壊寸前の表情は演技を越えたリアルです。 人間消失映画は沢山ありますが、その種明かしはどれも凡庸です。ヒッチコックですら成功していません。そのなかで『バニー・レークは行方不明』だけは、唯一の成功作です。とにかくアッと驚く結末に注目です!■ (談/町山智浩) MORE★INFO. 原作は邦訳もあるイヴリン・パイパーの同名小説(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)。しかし、原作の舞台であるニューヨークを映画はロンドンに書き換えていて、結末も違う。脚本の初期段階では“赤狩り”のブラック・リストに載っているドルトン・トランボが参加していたが、クレジットはされていない。当初製作会社のコロムビアは、監督のオットー・プレミンジャーに主役のアン・レーク役にジェーン・フォンダを使えと求めたが、プレミンジャーはキャロル・リンレーにこだわって会社を押し切った。クレジット・トップのニューハウス本部長役も初めはジョージ・C・スコットにオファーされた。本作のケア・デュリアの演技を見て、スタンリー・キューブリック監督は『2001年宇宙の旅』(68年)のボウマン船長役に彼をキャスティングした。近年はリース・ウィザースプーンでリメイクの企画が動いていたが、最終的に棚上げされたそうだ。 BUNNY LAKE IS MISSING/65年米/製・監:オットー・プレミンジャー/原:イヴリン・パイパー/脚:ジョン&ペネロープ・モーティマー/出:ローレンス・オリヴィエ、キャロル・リンレー、ケア・デュリア/108分/©1965, renewed 1993 Otto Preminger Films, Ltd. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
悲しみよこんにちは
ジーン・セバーグの瑞々しい魅力がまぶしい…天才少女作家サガンの処女小説を鮮烈なタッチで映像化
フランソワーズ・サガンが18歳で書き上げた処女小説を映像化。現在をモノクロ、回想をカラーと使い分ける場面転換が秀逸。中性的な魅力が光るセバーグのヘアスタイルが“セシル・カット”と称されブームに。
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PROGRAM/放送作品
バニー・レークは行方不明【町山智浩撰】
町山智浩推薦。幼い娘が異国で行方不明。そもそも初めから実在しなかったのでは?行方不明映画の最高傑作!
町山智浩セレクトのレア映画を町山解説付きでお届け。昔からよくあるパターンのサスペンスだが、行方不明のネタを明かす段でたいがい竜頭蛇尾に。しかし本作は想像を絶するオチが用意されている!ネタバレ絶対厳禁!
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PROGRAM/放送作品
(吹)バニー・レークは行方不明【町山智浩撰】
町山智浩推薦。幼い娘が異国で行方不明。そもそも初めから実在しなかったのでは?行方不明映画の最高傑作!
町山智浩セレクトのレア映画を町山解説付きでお届け。昔からよくあるパターンのサスペンスだが、行方不明のネタを明かす段でたいがい竜頭蛇尾に。しかし本作は想像を絶するオチが用意されている!ネタバレ絶対厳禁!
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PROGRAM/放送作品
栄光への脱出
“約束の地”パレスチナを目指すユダヤ人たちの長く険しい旅。ポール・ニューマン主演の歴史ドラマ大作
パレスチナへの入植を目指すユダヤ人たちが起こした“エクソダス号事件”を、同じユダヤ人のオットー・プレミンジャー監督が感動的に映画化。勇壮な主題曲が物語とマッチし、アカデミー 劇・喜劇映画音楽賞を受賞。
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或る殺人
名優2人が弁護士と検察官に分かれ、殺人事件の法廷で激突!熾烈な駆け引きに息を呑む傑作サスペンス
本作でヴェネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞した弁護士役ジェームズ・スチュアートと、切れ者検察官に扮するジョージ・C・スコットによる法廷バトルが圧巻。出演も果たしたデューク・エリントンの音楽も必聴。