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PROGRAM/放送作品
山猫は眠らない2 狙撃手の掟
伝説的スナイパー、トーマス・ベケットが帰ってきた!前作から11年後を描く、人気アクション第2弾
伝説的スナイパー、トーマス・ベケットが活躍する人気サスペンス・アクションのシリーズ第2弾。前作から11年後を描く今回の舞台はバルカン半島。主演は前作に引き続きトム・ベレンジャーが務めた。
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COLUMN/コラム2016.05.03
【DVD絶版】男子、厨房に入って散らかすシリーズ第1弾(2弾はあるのか!?) 『暗い日曜日』に出てくる“ビーフロール”ことルラードを作る!
「ザ・シネマSTAFFがもう一度どうしても見たかった激レア映画を買い付けてきました」特集で、ワタクシが激烈に推薦しております『暗い日曜日』。DVD絶版で鑑賞しづらい作品なのですが、これを買い付けてきてHDでザ・シネマでは放送します。 「暗い日曜日」という自殺ソング、これは実際にある曲なんですが、それに着想を得た物語です。この作品はサイトの解説もワタクシ自分で書きましたんで、まんまコピペしてきます。 「今もブダペストにあるレストラン、サボー。戦前、ユダヤ系の支配人サボーは父娘ほど歳の離れたウェイトレスのイロナと愛し合い、幸せな日々を送っていた。新たに雇ったピアニストのアンドラーシュにイロナが惚れたので、サボーは奪い合うより男2人で彼女をシェアする大人の関係を提案。だがその関係は次第にアンドラーシュの心を蝕み、ナチの脅威が迫ってハンガリーも右傾化し、社会が狂ってくる中、彼は、ある曲を作ってしまう。」 という物語でして、ザ・シネマ10周年記念対談の方ではさらに踏み込んだトークをしておりますんで、よろしければそちらも覗きに来てください。 さて、劇中でレストランのオーナーである主人公サボーさんが、ドイツから来た観光客のハンスに「ルラード」という料理の作り方について説明するくだりがあります。ハンスは「ビーフロール」と呼んでルラードをいたく気に入っているので、奴が非常に凹んでいる時に、親切なサボーさんは秘密のレシピを教えてやるのです。 「まず柔らかいヒレ肉を薄くスライスしてたたいておく。鍋にバターを溶かし、いい香りがしてきたらニンニクを入れる。丸ごとね。バターにニンニクの香りがついたら肉を入れてソテーする。中身は覚えているかい?ハンガリーのハムとチーズだ。薄くスライスしておく。だから一口切って食べると、舌に3つの味が広がる。その3つの全く違った味が、ふた口めで1つに溶け合うというわけだ」 ぐぬぅ!実に美味そうですなぁ!! 食えるもんなら食ってみたいが、日本でこれを食わせてくれるレストランがそうそう在る気がしない…。東京にはハンガリー・レストランが何件かありますが、本日(4/30)はゴールデン・ウィーク初日ってことで、こんな日には時間をかけて、ヘタの横好きで手ずから作ってみるとしましょうか。映画を見て美味そうな食い物を知り、そいつを食す、作る、ってのもまた、映画マニアの大いなる愉しみの1つなのであります。ではありませんか?俺だけか? このルラード、日本ではマイナーすぎるんで、レシピが全然見つかりません。「ルラード(Roulade)」自体は「巻いた物」って意味らしいので、ネットで検索するとチキンのやつとかいろいろと見つかるんですが(ロールケーキもRouladeと呼ばれてるようで、ヒットしちゃう)、上記のサボーさんの言っているようなルラード、ハンスが言う「ビーフロール」みたいなハンガリー料理のレシピが、これが容易に見つからないんだなぁ。なので、今回は海外のサイトを何カ所か参考にしました。特にパクリ元にしたのがココのブログ。 このメインぱくり元に加え、他のサイトと、サボーさんの前出のセリフと、あと本編映像を一時停止して何度も何度も観察する、ということで、劇中に近いルラードの再現を試みております。以下、当コーナー初となる、レシピです。 【材料(男のデタラメ料理なので分量は超適当)】 ニンニク レモン 赤いパプリカ ほうれん草のベイビーリーフ 生マッシュルーム エシャロット イタリアン・パセリ 牛ヒレステーキ肉 マンガリッツァ・ハム ハヴァティ・チーズ パルメザン・チーズ 生クリーム ニョッキ 白ワイン バルサミコ酢 チキン・スープ・ストック ディジョン・マスタード 【作り方】 ①まずマリネ液を作っておく。大きめのタッパーにレモン1個を絞り、バルサミコ同量を加え、そこに細かく刻んだニンニクを入れ、混ぜる。 ②牛ヒレステーキ肉をラップで包んで、ミートハンマーで均一に薄くなるまで叩く。できれば形よく長方形に整えたい。塩と挽きたての黒胡椒で両面をシーズニングする。 ③マリネ液に肉を漬け込む。少なくとも30分、できれば数時間、ニンニク風味の強さがお好みならば一晩、冷蔵庫に置いて両面をよくマリネする。 ④焼きナスと同じ要領で“焼きパプリカ”を作る。アルミホイルで二重に包んだレッド・パプリカを、ガスコンロに直に置いて直火で20分間焼く。5分おきにトングで少しずつ回転させていく。20分たったらホイルをめくり、真っ黒に炭化した皮を丁寧に剥がしていき(これが骨が折れる)、ヘタと種を取り除く。これを細切りにし、後で使う具材として横に取り置いておく。 ⑤十分にマリネされた肉をまな板に広げ、たっぷりのディジョン・マスタードを裏側(具を乗せる面)全面に塗る。 ⑥肉の上に具を乗せていく。ほうれん草のベイビーリーフ、マンガリッツァ・ハム、パプリカ細切り(最後の飾り用に少し残しておく)、ハヴァティ・チーズの順に。ヘリは2〜3cmほど具を乗せずに空けておく。最後にパルメザンをチーズおろしでふりかける。 ⑦肉をきつく巻いていく。こぼれた具も拾って肉巻きの中に押し込もう。まな板の上に閉じ目を下にして置き、ほつれないようタコ糸でしっかりと縛る。 ⑧オーヴン対応の中鍋を中火で熱し、大きなバターひとかたまりとオリーブ・オイル同量を入れ、バターが溶けて鍋に油がよく回ったら、潰したニンニク1かけを入れて香りを十分に引き出す。 ⑨その鍋に肉巻きを投入し、時おり回転させて全面に色がつき渡ったら、鍋ごと230℃に予熱したオーヴンに入れて20分間熱する。それと⑩で作るニョッキ用の湯をここらで大鍋で沸かし始めること。20分たったらオーヴンから鍋を出し、肉巻きを取り出してアルミホイルで包んでおき、ソースを作る間の10〜15分間冷ましておく(冷まさないと切り分けられない)。 ⑩その10〜15分間にソースを作り、ニョッキも茹でる。ニョッキは出来合いのものをパッケージの指示通りに茹でるだけ。ソースは、ソースパンでバターを溶かし、マッシュルームとエシャロットをソテーする。マッシュルームから水分が流れ出し、その水気が飛んで色が茶色くなりクタっとなってきたら、白ワイン1/4カップとチキン・スープ・ストック1/4カップを加え、分量が半分に減るまで煮詰めていく。最後に生クリーム1/4カップを加えてトロミが出るまでかき混ぜ、塩胡椒で味を整える。これでだいたい15分。 ⑪盛り付け。肉巻きのタコ糸を外して切り分ける。皿の真ん中にまずマッシュルーム・ソースを広げ、切り分けた肉巻きを置き、周囲に付け合わせのニョッキを盛り付けて、最後に彩りを加えるため、ニョッキの上にイタリアン・パセリを、肉巻きの上には残しておいたレッド・パプリカを飾る。 完成!実食!! こ、これはマジでシャレになってないですぞ!美味い!そして、食ったことのない味だ!まず、ニンニクを合計2カケも使ってますが、香りの主役は完全に焼きパプリカに持ってかれてる。口にするとパンチの効いたスモーキーフレーバーと、あの焼きナス的ビター感がまず広がります。次いで、レモン汁とバルサミコでマリネした牛肉の酸味の爽快サッパリ感が満ちていき、結構バターを使いまくってるにも関わらず意外としつこくはない。そして、マッシュルーム・クリームソースがこのワイルドな焼きパプリカの香りと攻撃的な酸味をマイルドにまとめ上げる、という絶妙な具合。こいつはイケる! と手前味噌ばかり言うのもさすがに恥ずかしいので、NEXTに活かすため、今回の反省点も記しておきましょう。まず、牛ヒレステーキ肉がウチの近所の肉屋に無かったので、実は今回は肩ロース肉を用いてる。安上がりに済んだけど、そりゃヒレよりかは多少硬い。ヒレ使っていれば、ナイフがスッと入るような柔らかさになったかもしれず、上品感がかなり増したでしょう。でも、それは大した問題ではない。次に、「ほうれん草のベイビーリーフ」なんて物は見たことも聞いたこともないので、冷蔵庫のサニーレタスで代用しました。さりとてこれも、だからといって大した問題ではない。 一番大きな問題は、ハヴァティ・チーズとマンガリッツァ・ハムです。この2つはTHE輸入食材!という感じなので値も張りました。ほぼ2000円近くがこれだけにかかってるんですが、費用対効果が薄すぎて、ハッキリ言って不経済。まずチーズ。元のレシピで2つ使えと指示されているうち、今回ハヴァティ・チーズが手に入らずパルメザン一種類だけでチャレンジしたんですが、焼き色を付けている時とその後のオーヴンで熱を入れる過程で、液状化したチーズが肉巻きからすっかり流れ出てしまうので、意味ねー!チーズの風味や、あのピザのような糸を引く感じが今回ほとんどありませんでした。 それとマンガリッツァですが、これもそんな生ハムみたいなものを内側に巻き込んだのでは、熱が入る過程で溶けて無くなっちゃって、食っていてどこにハム状のものがあるのか、サッパリわからないぐらいでした。 劇中のセリフでサボーさんは「舌に3つの味が広がる」と言っていました。チーズとハムと、そして牛肉のことですが、そのうちの2つがほとんど消えて無くなっちゃってるというのは、美味い不味いとは別の話として、失敗といえば大失敗でしょう! これを踏また上で、次に作る時には、まずチーズはハヴァティか、少なくとも「とろけるチーズ」的なものは必須で具材に加えるようにします。パルメザンだけでは不十分です。そしてハムは、マンガリッツァのような生ハム系ではなくて、ボンレスハムなどの熱が加わっても牛肉にも負けない食感がしっかりと残りそうなタイプのものを選ぶことにします。 にしても、一回目で失敗して、捲土重来を誓い、次回、雪辱戦!というのも、映画マニアのオッサンののん気な食道楽としては、なかなかに楽しみなものなのです。「おっ、あの時、軽く失敗したレシピに、今週末あたりもう一回トライしてみよう」ってスケジュールが土日の欄に書き加わるのは、毎日にちょっとした充実をもたらしてくれますぞ。■ LICENSED BY Global Screen GmbH 2016, ALL RIGHTS RESERVED
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PROGRAM/放送作品
暗い日曜日
この曲を聴いたら自殺する!男女関係の懊悩と、右傾化する悪夢じみた世相が生んだ、呪われた名曲の誕生秘話
聴くと自殺する曲として戦前センセーションを巻き起こし、各国で放送禁止曲に指定された呪歌の誕生秘話を描いたフィクション。ザ・シネマSTAFFがもう一度どうしても観たかった激レア映画を買い付けてきました。
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COLUMN/コラム2016.03.30
男たちのシネマ愛⑤愛すべき、極私的偏愛映画たち(7)
飯森:最後の「暗い日曜日」の話に移りましょう。第二次大戦前にハンガリーのブダペストでレストランを経営しているサボーさんというユダヤ人が主人公なんですが、彼が劇中で良いセリフをたくさん言うんですよ。「俺は父親と母親がユダヤ人だったからユダヤ人なだけで、両親がイロコイ族だったらイロコイ族になってたよ」と。ただそれだけのことなんだと。あとはね、ブダペストのユダヤ人コミュニティで一目置かれている老教授が彼のレストランにやって来て「君はユダヤ教の安息日(注75)にも店を開けているらしいけど、あまり感心しないね」みたいな叱言を言うんです。それに対してサボーさんは「うちは年中無休なので日曜日もクリスマスも過ぎ越しの祭り(注76)も開けてます」とニッコリ切り返す。カッコいいんですよ、リベラルで。 なかざわ:豚肉を出すのはいかがなものか、みたいな叱言も言われていましたよね(笑)。 飯森:そうそう。で、彼の店にはイロナというすごい美人のウエイトレスがいて、サボーさんとは父娘ほど年の離れたカップルなんですね。2人で一緒に朝風呂に入っちゃったりするんですけど、このイロナという女性の肉体がまぁ素晴らしいのなんの!ああいうジューシーなヌードってのはヨーロッパ映画の独擅場です。ハリウッド女優みたいにワークアウト(注77)でむやみやたらに鍛えていたりとか、ボトックス(注78)や豊胸手術したりとか、人工甘味料や防腐剤入りのナイスバディではなくて、ちゃんと天然由来のオーガニック女体美を備えていて、それを惜しげもなく披露してくれるんです。まるでルノワール(注79)の裸婦画みたいに自然な豊満さを。もう「美味しかったよ、御馳走様!」としか言いようがありません(笑)。しかもサボーさんのいい具合に仕上がってきている汚メタボっぷりとの好対照で、ゼロ劣化状態の若い女体美が引き立つ引き立つ!そんな女性とサボーさんは半同棲してよろしくチンチンカモカモやってるんですが、うちの店でもそろそろピアノの生演奏をしようかという話になってオーディションをして、最後にやって来た、腕の立つ、ちょっと影のある瘦せぎすの青年を雇うわけです。このピアニストとイロナができちゃうんですよ。割とすぐに。 なかざわ:彼らの三角関係というのが自由で面白いですよね。それぞれに少なからず複雑な思いはありつつも、サボーとイロナ、イロナとピアニスト、どちらも関係を壊したくないから、だったらいっそのこと三角関係を楽しんじゃおうよ、みたいな。常識に縛られない奔放さがとても魅力的です。 飯森:“ヨーロッパという文明”を強烈に感じさせますよね。ハンガリーというのはハプスブルグ家の伝統もあるヨーロッパのメインストリームですから、文化的にとても成熟・爛熟している。三角関係というものについても、最近の日本だと“ゲス不倫”が叩かれてますけれど、ああいうことを他人が正義面してバッシングするような風潮って、それはそれで如何なものかと僕個人としては思っちゃうんですよね。人のことに首突っ込むのはよしなさいよと。あれってアメリカのピューリタニズム的な潔癖症っぽくって、アメリカの悪いところまで全部我々は真似しちゃったんじゃないかと疑ってるんですよ。 なかざわ:そういう点に関しては、やっぱりアメリカというのはキリスト教国家だなと思いますよね。 飯森: かつてクリントン(注80)さんがモニカ・ルインスキー(注81)との不倫で大スキャンダルになりましたけど、ほとんど同時期にフランスのミッテラン(注82)大統領に隠し子がいたことが判明したんですよね。その時にテレビのニュース番組で、現地の通りすがりのパリ市民にインタビューをしてたんですが、「ミーたちおフランスの人間は、他人様の色恋に首突っ込んで大騒ぎするような、アメリカの方たちみたいな趣味は持ち合わせてないんざます。別に政治さえきちんとおやりになられていれば、よろしいんじゃございませんこと?」みたいなことを言っていたんです。それを見て「なんて大人でカッコいいんだ!これが“ヨーロッパという文明”なのか!」と圧倒されましたね。なんか、人として余裕だな、と。で、話を戻しますと、「暗い日曜日」にもこの感じありますね。この余裕感が。三角関係を社会悪としては描いていない。当人たちの問題として描いてるんです。サボーさんとイロナとピアニストの3人が、お互い折れるところは折れ妥協して上手く関係を続けていこうと話がついた後で、ドナウ川の水辺の木陰でピクニックを楽しむシーンになるんですが、そこは画家マネ(注83)の描いた「草上の昼食」(注84)という青姦3P絵画の傑作そのままの構図で、思わずニンマリしてしまったんですけど、そういうさりげない引用にも文化的豊かさを感じさせます。実に格調の高い、“ヨーロッパという文明”がそのまま映画になったような大人な作品なんです。主人公サボーさんは、そうした“ヨーロッパという文明”を象徴するリベラルな中年男性。だからこそ、本気で狂った奴らが出てきても、不幸にしてにわかには信じられないんです。彼の常識では想像もできない。イロナが「ナチスって本当にやばいわよ、ユダヤ人を皆殺しにするって言っているけれど、彼らならやりかねないわ」と心配するんだけれど、サボーさんは本気でそんなバカなことをする狂った人間などいるわけがないと甘く考えてしまう。人間というものを信じちゃった。自分が文明人だからって、世の中に野蛮人なんていないんだ、と思い込んでしまうんですね。そうした状況の中で、ピアニストの男だけが精神的にいち早く参ってしまうんです。その彼が「暗い日曜日」(注85)という曲を作るわけなんですが、これを聴いた人たちが次々と自殺していく。 なかざわ:これは事実だそうですけど、ただ、詳しく調べると直接的な因果関係が確認できる事例というのは少ないらしいですね。 飯森:一説によると150人くらい自殺しているらしいですよ。 なかざわ:そうなんですけれど、本当に「暗い日曜日」が原因だと立証できる自殺は5件くらいだとも言われています。いずれにしても、この曲を聴いて自殺してしまった人たちがいたことは紛れもない事実ですね。 飯森:このピアニストは愛する女性を男2人で日替わりでシェアするという状況に内心傷ついていて、さらにはナチスの台頭で世間がクソみたいな状況になりつつある。実際にセリフで「クソ」という言葉を使っているんですが、こんな世の中はもう嫌だと。3人の中で一番精細な神経の持ち主である芸術家の彼が真っ先に参っちゃうわけです。「暗い日曜日」というのは、そういう時代の暗い空気みたいなものが作曲家の意図を超えて込められちゃった曲だから自殺を誘発したのではないか、という解釈に立った映画なんですね。 なかざわ:ただ、あくまでも事実を基にしたフィクションであって、登場人物が辿る運命というのも創作です。 飯森:「暗い日曜日」は実際にハンガリーの作曲家が書いた曲ですし、ハンガリーは戦前戦中にナチス寄りの右派政党があり、大戦末期にはユダヤ人を迫害したという結構な黒歴史を背負っている。そうした事実を頂いてきて作り上げたフィクションではありますけどね。あと、この映画にはハンスというドイツ人が出てきますよね。ドイツからハンガリーへと観光にやってきた冴えない奴で、女にも慣れてなくて見るからに童貞臭い。背広姿なんですが、サイズが全然合っておらずブカブカで不格好ったらない。自信がないから最低限の自己演出もどうしたらいいのか分からないみたいで、誰の目にもキョドって見える。人間的にもファッション的にもこなれ感ゼロなんですよ。仕方ないから首からライカ(注86)のカメラをぶら下げてひたすら写真ばかり撮っている。こいつが、サボーさんの店でカメラ自慢を始めるんですよね。オドオドしていた彼が、カメラの話になると俄然熱を帯びてくる。「これは“世界が絶賛するドイツの職人”が作ったライカのカメラだ!」みたいにね。でも、何ムキになって自慢してんの!?ってちょっと滑稽じゃないですか。「確かにライカは凄いですよね。でも、お前はライカじゃないから!」と思わず突っ込みたくなる(笑)。 確かに人は生きていく上で、自尊心というもの無しには生きていけない。だから誰しも、何か誇れるものを人生の中に持ちたい、せめて自分で納得いく最低限のレベルぐらいには自分の価値を高めていきたい、と多少なりとも努力したり、あるいは現状と折り合いをつけて満足・納得・妥協したりするんだけど、当時のドイツのように、戦争では負けるわ、政治的には大混乱だわ、経済的には大不況だわ、生活が好転する兆しは皆無だわだと、この現状に満足・納得・妥協はとてもできないし、今後の人生も不安でいっぱいで明るい見通しなんか全く立たないという庶民の中には、自尊心を持ちたくても持ちようのない人が大量に出てくる。でも人らしく生きていく上で自尊心は必要だ。となると「世界が絶賛するドイツの職人!」的なことを声高に叫んで自尊心を満たすしか他に手がない。「確かに俺はうだつの上がらない、しがない男かもしれん。だがなぁ!俺の中には偉大なるドイツ民族の血が流れてるんだ!!」と。それには何の努力も自己投資もいりませんからね。誰でも、どんな最低の奴でも、明日からすぐ実践できる、一番イージーな自尊心のチャージ法です。こういう奴が1人だけだと「チンケな野郎だな」で話は済むんですけど、ある国で人々が自尊心を持とうにも持てない社会状態が長引くと、こういう手合いが大量発生し大チンケ団として徒党を組みはじめ、あるいは有権者の大半を占めるようになる。最後は自分たちとちょっとだけ違う集団を見下すことで大きくなった気分を満喫する。それがナチス党です。このハンスが何年かして、再びハンガリーにやってくる時には、今度は軍服を着ている。ナチスに入党したんですね。アルゲマイネSSの格好良い黒い制服でキメて颯爽と店に現れる。今度はサイジングもピッタリです。ここが映画的に上手い!他人が服装ルールを設けてくれた軍服ならビシッと着こなせるみたいなんですよ。自由にコーディネートしてオリジナリティで勝負してみろと言われると何を着ていいのか分からないくせにね。そして、将校の権威をひけらかせば女も気おくれせずに抱けるようになったみたいで、どうやら無事に童貞卒業を済ませてきたっぽい。別人みたいに態度に自信がみなぎっているんです。 なかざわ:結局はナチスの権威を笠に着ているだけですけれどね。 飯森:そうなんですよ。今度も「ナチスに世界が絶賛の嵐!」みたいなことを自慢げに言っているだけで、あんたまたそれ!?と。まぁチンケな野郎なんです。 なかざわ:自分自身に誇れる要素が何か一つでいいからないんですか?と。要するに俗物なんですよね。そのくせして、ちゃっかりと戦後の保険だけは自分にかけていますが。 飯森:終戦まぎわ、お金持ちのユダヤ人だけ助けて戦後の財産を築こうとするんですよね。でも、あそこまでいくと悪役としてちょっと出来過ぎというか、悪党すぎてもはや漫画!とも思っちゃうんですけどね。僕としては、そこに行き着く前の映画前半、「世界が絶賛するドイツの職人!」とか「ナチスに世界が絶賛の嵐!」と言っては気持ち良くなっちゃって、自尊心を10秒チャージしていたチンケ極まりない彼こそ、妙にリアルで忘れがたいんです。人間こうはなりたくないもんだと感じますね。もっとも唾棄すべき人間類型だと思います。そう思わせるほど、悪い意味で本当にリアルな、生きたキャラクターですし、主人公のサボーさんはその反対で、これほど人として手本としたい、理想の市民像も他に僕には思いつかない。人としてのお手本と反面教師を両方見せてくれた映画ということで、ものすごく人生勉強をさせてもらった、規範としている作品なんですよ。最後に、この作品は、僕の趣味をよく理解してくれていた友人に薦められて当時観たんです。今その人とはすっかり疎遠になってしまったけれど、この映画を見るたびに、もしくは「暗い日曜日」という曲を思い浮かべるたびに、その人のことが脳裏に去来します。映画には、そういう出会い方もありますよね。実に幸福な出会いだったと思います。 (終) 注75:ユダヤ教の安息日は土曜日。この日は何もしてはいけないため、家庭でも食事は前日の金曜日に作り置きしておく。注76:ユダヤ教の三大祭りの一つで、神の怒りによる災いがユダヤ人の家を過ぎ越していった、という旧約聖書の出エジプト記に記された出来事に由来する。注77:筋力トレーニングやストレッチ、エアロビクスなどのこと。注78:ボツリヌス菌から抽出されるたんぱく質の一種で、これを顔に注射することでシワ取りの効果が得られる。注79:ピエール=オーギュスト・ルノワール。1841年生まれ。フランスの印象派を代表する画家。1919年死去。注80:1946年生まれ。アメリカの政治家。1993~2001年まで第42代アメリカ合衆国大統領を務めた。注81:1973年生まれ。1998年に発覚したビル・クリントン大統領との不倫スキャンダルで知られる。注82:フランソワ・ミッテラン。1916年生まれ。フランスの政治家で第21代大統領。愛人との間に隠し子がいたことが1994年に発覚した。1996年死去。注83:エドゥアール・マネ。1832年生まれ。フランスの印象派画家。1883年死去。注84:1863年に描かれたマネの代表作。注85:1933年にハンガリーで発表された歌。作詞はヤーヴォル・ラースロー、作曲はシェレッシュ・レジェー。1936年にフランスのシャンソン歌手ダミアがレコーディングをして世界的に有名となる。日本では淡谷のり子や美輪明宏が歌っている。注86:1913年に創設されたドイツの世界的なカメラ・ブランド。 『愛すれど心さびしく』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc. 『マジック・クリスチャン』COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 『ラスト・ウェディング』©2016 by Silver Turtle Films. All rights reserved. 『ビザと美徳』©1997 Cedar Grove Productions. 『暗い日曜日』LICENSED BY Global Screen GmbH 2016, ALL RIGHTS RESERVED
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PROGRAM/放送作品
(吹)山猫は眠らない2 狙撃手の掟
伝説的スナイパー、トーマス・ベケットが帰ってきた!前作から11年後を描く、人気アクション第2弾
伝説的スナイパー、トーマス・ベケットが活躍する人気サスペンス・アクションのシリーズ第2弾。前作から11年後を描く今回の舞台はバルカン半島。主演は前作に引き続きトム・ベレンジャーが務めた。