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PROGRAM/放送作品
インテルビスタ
映画愛そのものを映画として描いた巨匠フェリーニの大名作。代表作『甘い生活』のファンは必見
撮影班、出待ちの女優、大道具、取材陣…、撮影所の様子や映画制作の醍醐味、フェリーニの映画への愛がぎゅっと収められた映画。中でも『甘い生活』の二人が27年の時を越えて再会するシーンは見逃せない。
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COLUMN/コラム2016.04.16
ファミリー・アゲイン/離婚でハッピー!?なボクの家族
9歳のバースデー・パーティーの最中に、父(リチャード・ジェンキンズ)と母(キャサリン・オハラ)が大ゲンカをした末に離婚するという衝撃的な経験を持つカーター(アダム・スコット)。だが彼はそんなトラウマを乗り越え、両親と関わることを避けながら現在はレストラン経営者として充実した日々を送っていた。 そんなある日、弟のトレイ(クラーク・デューク)から「ガールフレンドと結婚するから、式には両親を呼んでほしい」と頼まれてしまう。激しく動揺したカーターが、悩みを相談しようと向かった先は、両親の離婚直後に熱心に話を聞いてくれたドクター・ジュディス(ジェーン・リンチ)だった。 しかし当時はセラピストだと思っていた彼女は実は研究者で、カーターとの会話をネタにしてベストセラー本「離婚家庭の子どもたち(Children of Divorce)」を出版していたことが発覚。おまけに現在はそれぞれ別のパートナーがいる両親が何故かヨリを戻してしまい、カーターのストレスはピークに。遂にはガールフレンドのローレン(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)との仲もギクシャクしてしまい …。 日本の離婚率は年々上昇していて、現在は約3割にまで達しているという。でもアメリカにはまだまだ及ばない。あの国では2組に1組が離婚しているからだ。 ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープが、裁判で子どもの養育権を争う元夫婦に扮した『クレイマー、クレイマー』(79年)は公開当時、<家族の最新の形を描いたドラマ>として大いに評判になったものだった。でも昨年公開された『ジュラシック・ワールド』『ヴィジット』『ヴィンセントが教えてくれたこと』といったハリウッド映画に登場した子どもたちは、いずれも母親だけと暮らしている設定である。今やアメリカにおいては離婚家庭の子どもの方がデフォルトなのだ。 だからといって、彼らがこうした境遇を平然と受けとめているなんてことはありえない。子どもにとっては両親の離婚は精神的な打撃であり、その後の人生観に重大な影を落としている。 そんな重大な影を落とされた典型例が、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(15年)がこの夏に日本公開されるノア・バームバックだ。<大人になりきれない大人>を描かせたら右に並ぶ者がいない映画作家である彼の根底には、幼少期の両親の離婚が横たわっている。『イカとクジラ 』(05年)や『マーゴット・ウェディング』(07年)といった作品は、いずれも両親に振り回された少年時代の想い出をベースにした半自伝作だ。模範とすべき大人の姿を間近に出来ずに育ってしまった子どもは、成長してもなかなかしっかりした大人になれずに、もがき苦しむ。バームバックはそうした自分にとっての現実を執拗に物語にし続けているのである。 『エレクトラ』(05年)や『ジ・アメリカンズ』(13年〜)といったアクション/スリラー系の脚本家として知られているスチュアート・ジマーマンの初監督作であるこの『ファミリー・アゲイン/離婚でハッピー!?なボクの家族』もまた、こうしたアダルト・チルドレンの姿を描いたビターなコメディだ。彼のいつもの作風とかけ離れていることには理由がある。本作もまたバームバックの諸作と同様にジマーマン自身が、弟の結婚式の準備中に両親とモメた実体験をベースにした半自伝作なのだ。 両親のエキセントリックさを糾弾し、自分こそが一番マトモな人間だと主張していたカーターが、本当は自分が離婚に傷ついていたことを認めたくなかったことを悟るという展開は、だから説得力満点。脚本が執筆されると、2008年には「ブラック・リスト(製作が決定していないものの、優れた脚本が選ばれる業界内のリストのこと)」に挙げられ、複数の製作会社による争奪戦が繰り広げられたというのも納得だ。 そんな注目作において主人公カーター役に抜擢されたのがアダム・スコットだ。アメリカン・コメディ好きにとっては、ウィル・フェレル主演の『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』(2008年)やベン・スティラーの『LIFE!』(2013年)で憎まれ役を演じていた男として知られているかもしれない。でも本国での彼はコメディ・ドラマ『Parks and Recreation』(2009〜15年)のベン役で知られている人気俳優だ。 日本では遂に放映されなかったけど、『サタデー・ナイト・ライブ』の人気コメディエンヌだったエイミー・ポーラーと、『セレステ∞ジェシー』(2012年)などへの出演で知られるラシダ・ジョーンズが中心となったこのドラマはもはや伝説となっている。というのも、あのクリス・プラットをはじめ、オーブリー・プラザやニック・オファーマン、そしてアジス・アンサリといった現在のコメディ界のVIPがブレイクしたのがこの作品だったからだ。 そんな錚々たるメンツの中でアダムが演じていたベンは、主人公であるエイミーと恋に落ちるナイス・ガイ・キャラ。逆に言えば、『Parks and Recreation』で築き上げた圧倒的な好感度の高さがあるからこそ、演じる俳優によってはアブない人に見えてしまう危険性があるカーター役を任されたのかもしれない。 本作を既に観ている人なら、これで気づいたはず。大スターであるエイミー・ポーラーが、父の後妻役という端っこの役で登場して、やたら楽しそうに奇人変人キャラを演じているのも、そんな彼女に向かってアダムが「こんな関係じゃなかったら、俺たち良い友達になれたかもしれないよな」と語りかけるシーンがあるのも、一種の楽屋オチなのだ。 またアダムと彼の弟トレイに扮したクラーク・デュークのコンビネーションの良さにも注目してほしい。学園コメディ・ドラマ『GREEK〜ときめき★キャンパスライフ』(07〜11年)や『キック・アス』(10年)で注目されたクラークは、『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』(10年)ではチェヴィー・チェイス、『ジャックはしゃべれま1,000』(12年)ではエディ・マーフィというコメディ・レジェンドたちと渡り合った実力の持ち主。『オフロでGO!!!!!タイムマシンはジェット式2 』(15年)ではアダムとリユニオンを果たしているので、そちらも是非チェックしてほしい。 女優陣に目を移してみよう。メイン・ヒロインのメアリー・エリザベス・ウィンステッドや、『glee/グリー』のスー先生ことジェーン・リンチもそれぞれ好演しているけど、個人的にはチョイ役で登場するジェシカ・アルバの演技が興味深かった。彼女が演じているのは、カーターと同様にドクター・ジュディスの研究対象だった離婚家庭の元子どもであるミシェル。父親くらいの年上の男としか付き合えないという明らかに病んでいるキャラが妙にハマっている。 アクションやSFといったジャンルの大作映画では、セクシーで強い女を演じ続けているジェシカだけど、エイミー・ベンダーの『私自身の見えない徴』を映画化した『ジェシカ・アルバのしあわせの方程式』(15年)など、低予算のインディ映画ではたまに風変わりな文化系女子を演じることがある。そうした作品での演技が意外とイケてるので、そっちこそが彼女の真の姿なのではないかとか妄想してしまう。 映画内ではそんなエイミーとカーターが出会ってすぐに互いを理解しあう様子が描かれる。その姿はどこかもの悲しくも滑稽だ。それは二人とも結構いい歳なのに『A.O.C.D.(Adult Children of Divorce=離婚家庭で育ったために大人になりきれなかった子どもたち)=本作の原題である』でい続けているからに違いない。 © 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
シルバラード
魂の故郷シルバラードを死守するため、腕利きのガンマン4人が悪を討つ!傑作西部劇!
抜き撃ちペイドン、早撃ちエメット、2丁拳銃のジェイク、ライフルのマル!4人の名手が華麗なガン・アクションでシルバラードの町を救う、ローレンス・カスダン監督渾身の超大作西部劇!
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COLUMN/コラム2016.05.16
ハッピー・クリスマス
シカゴ。映画監督のジェフの家に、恋人と別れた妹ジェニーが転がり込んできた。「子どもの世話で忙しいこの家に住まれても、トラブルを生むだけなんじゃないの?」ジェフの妻ケリーのそうした不安は的中する。ジェニーは、パーティーで泥酔したり、ベビーシッター兼ハッパの売人のケヴィンと恋愛関係になったりと問題を起こし続ける。彼女に対して怒るケリーだったが、小説家の夢を中断して子育てを押しつけられている立場を同情されたことで、人間関係に変化が生じていく …。 『ピッチ・パーフェクト』シリーズ(12年〜)や『イントゥ・ザ・ウッズ』(14年)といった大ヒット作によってハリウッドのトップスターとなったアナ・ケンドリック。そんな彼女の出演作にしては、2014年の『ハッピー・クリスマス』はあまりに地味な映画である。彼女が演じているのは無職のトラブル ・メイカーだし、ジェフを演じているのは監督のジョー・スワンバーグ本人。子役は彼の実の長男だし撮影はロケばかり。セットを組まれて撮影したものは何ひとつないのだ。 ひょっとすると騙されて出演したのか?いや、そんなことはない。アナはスワンバーグの前作『ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式』(13年)にも出演しており、彼女はやる気満々で本作に出演したのだ。理由は、スワンバーグが新しいアメリカ映画のムーヴメントのキー・パーソンだからだ。 ここで時計を9年前に巻き戻してみよう。スワンバーグは『ハンナだけど、生きていく!』(07年)というインディ映画を発表している。出演もしているアンドリュー・バジャルスキー、ライ・ルッソ=ヤング、そしてマーク・デュプラスらとスワンバーグは、ゼロ年代初頭から始まっていた映画ムーヴメント<マンブルコア>の担い手だった。 マンブルコア作品の特徴は、自主製作に近い環境下で経済面でも恋愛面でも恵まれていない自分の冴えない日常をビデオ撮りで描くという、地味にもほどがあるものだった。出演者は監督仲間ばかりでプロの俳優なんて殆どいなかった。メディアから<マンブルコア>なんて呼ばれるようになったのは、皆セリフをモゴモゴ言っていた(mumble)からだ。 映画学校を卒業したのはいいけど、シリーズ物の超大作ばかり製作するようになったハリウッドで仕事出来る可能性なんてゼロ。マンブルコア作品は、若者たちの小さな嘆き声であり、そこには明るい未来のヴィジョンなんて一切漂っていなかった。 だが『ハンナだけど、生きていく!』に出演したひとりの女子が、そんな現状を打開するきっかけを与えることになった。スワンバーグの前作『LOL』に端役で出演したことをきっかけに本作で主演と共同脚本を務めたグレタ・ガーウィグである。 大学を卒業したばかりで、美貌と才能を兼ね備えた彼女は、スワンバーグの次作『Nights and Weekends』(08年)では共同監督も務め(この時期ふたりは交際していたという話もある)、『ハンナ』で共演したマーク・デュプラスとその兄ジェイが監督した『Baghead』(08年)にも出演するなど、マンブルコアのミューズとして大活躍、運動をネクスト・レベルに持ち上げた。 こうした地下ムーヴメントに反応したのが、『彼女と僕のいた場所』(95年)でデビューし、『イカとクジラ』(05年)をはじめとする一連の半自伝作で知られていた映画監督ノア・バームバックだった。ウェス・アンダーソン作品の共同脚本家としてハリウッドでも評価を得ていた彼は、マンブルコアの作家たちを地上に引き上げようと、スワンバーグの『Alexander the Last』(09年)をプロデュース。遂にはマンブルコアのテイストを取り入れた作品を自ら監督しようと決意する。 それが『人生は最悪だ!』(10年)だった。コメディ界のスーパースター、ベン・スティラーが主演したこの作品には、相手役としてグレタ・ガーウィグが抜擢された。そして本作の撮影をきっかけにバームバックとガーウィグは恋に落ち、ふたりは『フランシス・ハ』(12年)『Mistress America 』(15年)といったコラボ作を作り続けている。 『人生は最悪だ!』に俳優として出演していたマーク・デュプラスも、兄のジェイと『僕の大切な人と、そのクソガキ』(10年)でメジャー進出を果たした。その後も監督業の傍ら、二人は俳優としても活躍(マークの代表作は『タミー Tammy』(14年)、ジェイの代表作はドラマ『トランスペアレント』(14年〜)だろう)、また兄弟でプロデュースして、マークが出演もした『彼女はパートタイムトラベラー』 (12年)は大評判を呼び、監督のコリン・トレヴォロウが『ジュラシック・ワールド』(15年)の監督に抜擢されるきっかけも作るなど、ふたりはエンタメ界で確固たる地位を築いている。 そんなかつての仲間たちから出遅れたかに見えたスワンバーグが、初めてまともな製作環境で撮ったのが『ドリンキング・バディーズ』だった。映画は絶賛を博し、クエンティン・タランティーノはその年のベスト10の一本にこの映画を選んでいる。シカゴの地ビール工場で働く男女の微妙な関係を描いたこの作品は、美人女優オリヴィア・ワイルドが主演していることもあってパッと見は「月9ドラマ」みたいな感じなのだけど、実はセリフが全て出演者による即興という前衛的な作りがされている。相手役は『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』(11年〜)の人気者ジェイク・ジョンソンだが、彼は『彼女はパートタイムトラベラー』にも出演しており、マンブルコアのノリというものを理解している俳優なのだろう。 そんなジョンソンの恋人役を演じていたのがアナ・ケンドリックだった。彼女が『ハッピー・クリスマス』に出演したのも、即興演技の楽しさにヤミツキになったからに違いない。その『ハッピー・クリスマス』最大の見所も、アナとケリー役のメラニー・リンスキー、そしてレナ・ダナムの三人が即興で繰り広げる<官能小説のネタ出し会議>のシーンだ。 テレビドラマ『GIRLS/ガールズ』(12年〜)の製作・監督・脚本・主演の4役で多忙を極めるレナが本作の脇役で顔を出しているのには理由がある。彼女の出世作であるインディ映画『Tiny Furniture』(10年)はマンブルコアの影響下のもとで作られた作品だったからだ。『ハッピー・クリスマス』への出演は彼女なりの恩返しなのかもしれない。 一方でレナとグレタ・ガーウィグは長年の友人であり、『GIRLS/ガールズ』でレナが見出したアダム・ドライヴァーは『フランシス・ハ』とまもなく日本公開されるバームバックの監督作『ヤング・アダルト・ニューヨーク』にも出演している。 後者でアダムが演じているのは若く貧乏なアーティストだ。ベン・スティラー演じる主人公のドキュメンタリー監督は、社会的な評価を気にしない彼に感化されてツルむようになるが、やがて痛いしっぺ返しを食らうことになる。自らインディペンデントな立場を選んだスティラーと、成功への道があらかじめ閉ざされていたアダムは所詮異なる世代だったことが明らかになるのだ。 スティラーが再び主人公を演じていること、アマンダ・セイフライド扮するアダムの恋人役に当初グレタ・ガーウィグがキャスティングされていたことを考えると、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』はバームバックがマンブルコアの作家たちと親しく交流していた時代をベースにしているに違いない。するとアダムのキャラのモデルはジョー・スワンバーグということになるのだが …。 COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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PROGRAM/放送作品
スカーフェイス
[R15相当]ブライアン・デ・パルマがギャング映画の古典的傑作『暗黒街の顔役』を更なる傑作にリメイク
ギャング映画の名作を、ブライアン・デ・パルマ監督が現代を舞台にリメイク。アル・パチーノが、『ゴッドファーザー』とはまた違った鬼気迫る大熱演で、底辺からのし上がり、てっぺんに上り詰めるボスを演じる。
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COLUMN/コラム2018.03.10
史実に忠実な局地戦映画『ズール戦争』は歴史的大傑作!
1800年代初頭に南アフリカに進出したイギリス帝国。先行して入植していたボーア人(オランダ系の植民者)はイギリス帝国の支配を嫌い、新たな入植地を求めてグレート・トレックと称される北上を開始した。そこには強大な戦力を誇るズールー王国が存在し、ボーア人たちとの血で血を洗う抗争を展開。1835年、ボーア人はブラッド・リバーの戦いでズールー族に勝利を収めると、この地にナタール共和国を建国した。しかしこのナタール王国もボーア人の独立を快く思わないイギリス帝国の侵攻によって、わずか4年という短い期間で崩壊してしまう。 その頃、ズールー王国ではボーア人に敗れたディンガネ国王は威信を失って失脚。後継のムパンデ国王の息子2人が後継の座を争って対立し、この内乱に勝利したセテワヨが国王に即位した。セテワヨは軍制を再編し、マスケット銃(先詰式の滑腔式歩兵銃)を装備した小銃部隊を編成するなど、軍の近代化を推進。これは拡大を続けるイギリス帝国を迎え撃つ準備であった。 セテワヨ自身はイギリス帝国との関係を良好に保とうとしていたが、イギリス帝国の原住民問題担当長官のシェプストンが高等弁務官フレアに対し、ズールー王国はイギリス帝国のアフリカ覇権最大の障害であることを報告。南アフリカ軍最高司令官のチェルムスフォード中将もこの意見に同意し、南アフリカのイギリス軍は着々とズールーとの戦争の準備を行うことになる。 1878年、高等弁務官のフレアは2人のズールー兵がイギリス領の女性と駆け落ちして越境したことを口実に、ズールー王国に対して多額の賠償を請求。ズールー王国がこれを拒否すると、フレアはズールー王国側に最後通牒を提示。13か条に及ぶこの最後通牒は、ズールー王国側が絶対に飲めない条件を列挙したものであり、ズールー王国のセテワヨ王はこれに対する明確な回答をせずにいた。 1879年1月、チェルムスフォードはヨーロッパ兵とアフリカ兵からなる17,100名の部隊を率いて、ズールー王国へと侵入を開始。迎え撃つズールー軍は4万の兵力。軍の近代化・火力化は未完だったが、イギリス帝国軍を上回る兵力と、圧倒的な士気の高さ、そして地の利を活かした機動力を持つ強力な部隊であった。 実戦経験の少ないチェルムスフォード中将は、部隊を複数に分割。そのため個々の部隊の兵力は手薄となり、第三縦隊1,700名はイサンドルワナに野営地を構築。そこに突如現れた約2万人のズールー軍が突撃を敢行し、“猛牛の角”と呼ばれる連続突撃戦術によってイギリス軍を全滅させてしまう。イサンドルワナの戦いはズールー軍の精強さをいかんなく発揮した戦いであり、ズールーの名を世界に轟かせることになったエポックな勝利であった。 前置きが長くなったが、ここからが今回ご紹介する『ズール戦争』(64年)の舞台となるロルクズ・クリフトの戦いが始まることになる。 1月22日にイサンドルワナの戦いでイギリス軍を撃破したズールー軍は、翌23日未明に約4,000人の部隊をイサンドルワナから15km離れたロルクズ・クリフトにある伝道所跡に駐屯するイギリス軍守備隊に突撃させた。イサンドルワナの敗戦を聞いたアフリカ兵が逃亡してしまい、ロルクズ・クリフトの守備隊の人数はわずか139人。30倍以上の敵軍に囲まれ、ろくな防御設備も無いロルクズ・クリフトの守備隊だったが、新任将校のチャード中尉指揮の下でズールー軍の猛烈な突撃を何度も撃退することに成功。イサンドルワナから退却してきたチェルムスフォードの本隊が接近したことから、2日間昼夜に渡る波状攻撃を繰り返していたズールー軍はようやく撤退した。ロルクズ・クリフトの戦いでイギリス人は27人が死傷。対するズールー軍は351人が戦死した。 このロルクズ・クリフトの戦いを描く『ズール戦争』は、監督のサイ・エンドフィールドがロルクズ・クリフトの戦いに関する記事を読み、インスピレーションを受けたことから始まる。エンドフィールドはこの映画の企画を友人で俳優のスタンリー・ベイカーに持ち込み、ベイカーはプロデューサーとして資金調達を実施。最低限の資金が集まると、早速映画製作を開始した。 集まった制作費はわずか172万ドル(メイキングでは見栄を張っているのか、260万ドルと称している)。そこでエンドフィールドは友人の俳優とスタッフを集めて制作費を抑え、さらにセット構築費を削減するために南アフリカでのオールロケーションを実施した。現地ではズールー族の協力を得て、1,000人以上のエキストラが参加。演技初体験のズールー族とのコミュニケーションをとるために、スタッフとキャストは積極的にズールー族とコミュニケーションを取る努力を行っている。しかし当時の南アフリカではアパルトヘイト法が存在しており、本作の脚本がズールー族を勇敢で敬意を受けるに足る存在として描いていることもあり、南アフリカの公安が撮影クルーの監視を行っている中での撮影となった。 『ズール戦争』は公開されるや興行収入は800万ドル、イギリス市場では過去最大級の記録的な大ヒット作品となった(映画の舞台となった南アフリカでは、映画に参加した一部のエキストラ以外の黒人はながらく観ることの出来ない映画となっていた)。本作はイギリス人の琴線に触れる作品となっており、毎年年末年始にTVで放映されるという『忠臣蔵』のような定番映画となっている。 本作の素晴らしさは、まず映画をロルクズ・クリフトの戦いのみを描いたことであろう。ズールー戦争全体を描けば、イギリス帝国の侵略戦争、黒人差別、虐殺といったセンシティブなキーワードに触れざるをえず、価値観が目まぐるしく変わる現代においては観る者によって評価を大きく変えてしまうポイントとなる。しかし本作では、どちらが正義でどちらが悪という描き方ではなく、純粋にひとつの戦いを史実に沿って描く作品とし、余計なものを極力そぎ落としている点が、後世でも高い評価を受けている大きな要因だろう。 また驚くべきことに1960年代の脚本にも関わらず、ズールー族を野蛮な原住民ではなく、特殊な美意識を持った尊敬すべき集団として描いている点も注目。逆にイギリス軍側は、侵略者でも犠牲者でもなく、絶望的な状況に放り込まれたごく普通の青年たちとして描くことで普遍性をゲットすることに成功している(フック二等兵の描き方には子孫からのクレームもあったが)。 また史実を忠実に再現し、緊急の防御陣地設営、長篠の戦いよろしくマルティニ・ヘンリー銃(5秒に1発射撃可能)での三段射撃で間断なく制圧射撃を繰り返す様子や、ズールー族側の“猛牛の角”作戦など、緻密なリサーチが行われたことが映画の端々から感じられ、マニアックな視点でも信頼性が非常に高い作品となっている。 他にも予算不足に起因したオールロケーションも、結果的には大成功。アフリカの広大な風景はセットやマットペイントでは決して再現できなかったであろう。音楽を担当したジョン・バリーも流石のお仕事だ。 そして本作で存在感を示したのは、準主役のマイケル・ケイン。ながらく下積みを続けていたケインは、オーディションの末にフック二等兵役となっていた。しかしブロムヘッド少尉役の俳優が降板し、現地入りした俳優の中で一番貴族出身将校っぽく見えるケインがブロムヘッド少尉役に抜擢。初めての大役で戸惑うケインの立ち位置と、初めての戦場で戸惑うブロムヘッドの立ち位置が見事にシンクロして高い評価をゲット。ケインは『国際諜報局』(65年)で世界的スターへと上り詰めていくことになる。 本作は英国映画協会が選ぶイギリス映画ベスト100でも、30位に入る作品。イサンドルワナの敗戦を描く『ズールー戦争』(79年)も併せて観ておきたい作品である。■ TM, ® & © 2018 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ブルーベルベット
[R15相当]『ツイン・ピークス』のD・リンチ監督独特の世界が満喫できる、官能的なダークスリラー
カルトの帝王・リンチ監督一流の悪夢的なヴィジュアル表現と、悪夢そのもののような不条理なストーリー展開が堪能できる、初期の代表作。主演は、リンチ作品常連のカイル・マクラクラン。
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COLUMN/コラム2016.06.17
バッド・ティーチャー
『マスク』(94年)でジム・キャリーの相手役として華々しくデビュー。かと思ったら、『ベスト・フレンズ・ウェディング』(97年)では当時人気絶頂だったジュリア ・ロバーツの恋敵役という、どう考えても損な役を振られながら、その昇り竜的オーラでジュリアを完全に食ってしまったキャメロン・ディアス。あの映画を当時観た者なら、ロマンティック・コメディの女王の座がジュリアからキャメロンの手に渡ったと誰もが感じたはずだ。 しかし彼女はその王冠をあっさりと捨ててしまった(まるでローマ五輪で獲得した金メダルを川に投げ捨てた逸話を持つ故モハメド・アリのように!)。代わりにキャメロンが築いていったのは、女優として誰も歩んだことがないキャリアだった。 というのも、その翌年に彼女が主演したのは下ネタギャグばかりが執拗に連発されるファレリー兄弟監督作『メリーに首ったけ』(98年)だったからだ。ベン・スティラーとのコンビネーションがスウィートだったとはいえ、ここでの彼女は完全な「ヨゴレ」キャラ。昔のハリウッドだったら出演すること自体がスター女優として自殺行為だったはずだ。 でもこの作品が、女優キャメロンのステイタスを一気に高めた。映画ファンは自分のメンツばかりを気にする女優よりも、映画を面白くするためなら何だってやってくれる、話が分かる女優を待ち望んでいたからだ。こうした時代の空気を、彼女は肌で感じとっていたのかもしれない。 ともすれば、華やかなルックスばかりが印象に残ってしまうキャメロンではあるけれど、実は演技も巧い。盲目の女性に扮した『彼女を見ればわかること』(99年)では、グレン・クローズやホリー・ハンターといったベテラン女優たちを相手に一歩も引かない存在感を示しているし、スパイク・ジョーンズの劇映画監督デビュー作『マルコヴィッチの穴』(99年)では、一見彼女とは分からない地味(というか小汚い)格好で登場、奇妙な世界観に説得力を与えている。 とはいえ、キャメロンはこうした演技力を活かす作品を無理して選ぶようなことはない。それどころか『チャーリーズ・エンジェル』二部作 (00〜03年)ではノリノリでワイヤー・アクションに挑み、『ナイト&デイ』』(10年)ではトム・クルーズとともにガン・ファイトを繰り広げている。「最初はセクシーなコメディエンヌ・タイプとして登場しても、最終的には演技派に成長しなくてはいけない」ハリウッド女優たちが縛りつけられている、こうした呪縛からキャメロンはとことん自由なのである。 キャメロンが他の女優と異なる点がもうひとつある。それは演じるキャラクターのリアリティ度の高さだ。ハリウッドのスター女優が映画の中で演じるキャラクターは、ファンの憧れを投影した華やかな職業に勤めていることが多い。そしてその仕事に打ち込んで、充実した毎日を送っているものと相場が決まっている。ところがキャメロンはそんなものは嘘っぱちなのだと嘲笑うかのようなキャラを演じることが多い。 もちろん『ホリデイ 』(06年)のビデオ製作会社の経営者、『ダメ男に復讐する方法』(14年)のように弁護士を演じることもあるけれど、『クリスティーナの好きなコト』(02年)や『イン・ハー・シューズ』(05年)では仕事への意欲はゼロの単なる遊び人役だ。 大胆な現代化が話題を呼んだミュージカル『ANNIE/アニー』(14年)では悪役のミス・ハニガン役を演じていたが、オリジナルのハニガンが孤児院の経営者だったことから一転して、福祉手当て欲しさにステップマザーをやっている落ちぶれた元歌手(しかもC&Cミュージック・ファクトリーの初期メンバーというのが笑える)という設定に改変されていた。キャメロンは、自分に美貌と演技力のどちらかが少しでも欠けていたらなっていたかもしれない境遇の女子、地に足が着いているを通り越してぬかるみに足が半分埋まっているようなキャラクターを演じることがとても多い。その抜群のリアリティが観客を惹きつけるのだ。 そんな彼女の<リアリティ路線>の決定版とも言える主演作が、ブラック・コメディ『バッド・ティーチャー』(11年)だ。人気コメディ番組『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』(11年)や『ファン家のアメリカ開拓記』(15年〜)のプロデューサー兼監督として知られるジェイク・カスダンが監督を、やはり人気テレビ番組『ザ・オフィス』(05〜13年)のプロデューサー兼脚本家のジーン・スタプニツキーとリー・アイゼンバーグが脚本を手がけたこの作品でキャメロンが演じるのは、やる気ゼロの中学教師エリザベスだ。 彼女は物語冒頭、金持ちの男を捕まえて結婚退職したはずが、金目当てであることがバレて婚約を破棄されてしまう。やむなく学校へと帰ってきた彼女だが、仕事熱心な新任の代理教師スコットが名家の出身であることを知り、玉の輿に乗ろうと急に生徒に熱血指導を行うようになる。だがそんな彼女の態度に疑問を抱いたナンバーワン女教師エイミー(英国のコメディ女優ルーシー・パンチが怪演)が立ちはだかり、壮絶なバトルが展開されていく。 このエリザベスのキャラが凄い。生徒の平均点数を上げしようとするあまり共通試験の回答を盗みだすは、マリファナ喫煙の濡れ衣を他人にきせるは、第三者を使って相手を脅迫したりと、やっていることは悪人そのものなのだ。おまけに最後までこれっぽっちも改心することはない。 それでも観客は、エリザベスにどうにかピンチを切り抜けてほしいと願ってしまう。教師としての才能はゼロだけど、授業以外の場面での生徒への気遣いやアドバイスは、偽悪ぶっている彼女の、実はピュアな内面を証明するような誠実なものだからだ。 そんな複雑なキャラを、観客に周到な演技プランを感じさせることなく、素で振舞っているかのように見せるキャメロンは、やはり上手い女優だと思う。 私生活ではかつて4年間も交際していたこともあるというのに、ジャスティン・ティンバーレイクがスコット役で嬉々として登場、バカな演技を披露しているのも、相手が名女優キャメロンだからこそなのである。 そんなティンバーレイク以上に、本作でキャメロンと相性の良さを示しているのが、エリザベスにアタックしては砕け続ける気のいい体育教師ジェイに扮したジェイソン・シーゲルだ。大人気シットコム『ママと恋に落ちるまで』(05〜14年)で人気者になったシーゲルだが、元々はあのジャド・アパトーの愛弟子であり、『ザ・マペッツ』(11年)や『憧れのウェディング・ベル』(12年)といった主演作ではプロデュースや脚本も兼務している才人である。 本作で共演したことでキャメロンのコメディ・センスに感服したのか、シーゲルは監督のジェイク・カスダンごと彼女を誘って、自身がプロデュースと原案を担当した『SEXテープ』(14年)でリユニオン共演を果たしている。 キャメロンとシーゲル扮する倦怠期の夫婦が刺激を求めて自分たちのセックスをタブレット型コンピュータで撮影したところ、自動でクラウドにアップされてしまい大騒動 になる……というこのスラップスティック ・コメディで、キャメロンは公式では初のヌードを披露している。ちなみにこの時、彼女は42歳! こんな女優、キャメロンより前には存在していなかった。そして今のところ彼女に続こうとする者もいない。 人跡未踏の女優道をキャメロン・ディアスは歩み続けているのだ。 Copyright © 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ミシシッピー・バーニング
鬼才アラン・パーカー監督が、60年代のアメリカ南部の人種差別問題を描いた社会派サスペンス
ジーン・ハックマンとウィレム・デフォー演じるFBI捜査官の捜査を通じて、保守的な60年代アメリカ南部がかかえる人種差別問題を鬼才アラン・パーカー監督があぶり出す、社会派サスペンスの秀作。
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COLUMN/コラム2016.07.15
ステイ・フレンズ
ニューヨーク。人材スカウトのジェイミーは、ロサンゼルスで生まれ育ったアートディレクターのディランを雑誌「GQ」のためにヘッドハントすることに成功する。これをきっかけに飲み友達になる二人だったが、互いに恋人と別れたばかりなことを知って「恋愛関係には絶対ならない」ことを条件にセフレに。だがそれぞれが沸き起こる感情を否定しようとしたことから、二人の仲はこんがらがりはじめてしまい……。 大勢の人が集まる大都会。でも皆忙しいから恋人を見つけることは難しい。そして恋愛がいつか終わりを告げることを考えると、そうした関係はなかなか面倒臭いものである。でもセックスはしたい ……。こうした現代の恋愛事情を、フラッシュ・モブやアプリといった今どきのツールを交えて描いたロマンティック・コメディが『ステイ・フレンズ』だ。 監督は、『小悪魔はなぜモテる?!』(10年)のヒットによって、新世代のコメディ作家と目されるようになったウィル・グラック。エマ・ストーンが映画冒頭でディランを振るガールフレンドとして特別出演しているのは、彼女が『小悪魔』の主演女優だからだ。こんな小さな役でもスターのエマが出演してくれるということは、グラックに「この人と仕事を続けたい」と思わせる才能と人間的な魅力が備わっているのだろう。本作でもグランド・セントラル駅やタイムズスクエアといったニューヨークの名所の風景や、水上ボートの疾走シーンを盛り込んで映像にメリハリを付けているところに彼の才能を感じる。 とはいえ、プロットの関係上、ベッドシーンが多くを占める本作において、最も重要なのは主演のふたりだ。しかも大画面に耐える美しいボディを備えながら、ユーモラスに見せなければいけないのだから、下手な文芸大作よりも演じるのが難しい。この難しい役に抜擢されたのがジャスティン・ティンバーレイクとミラ・クニスだった。 音楽活動におけるスーパースターのイメージの方が断然強いティンバーレイクだけど、レコーディングやツアーの合間に俳優活動も精力的に行っている。『TIME/タイム』(11年)や『ランナーランナー』 (13年)といった主演作のほか、『ブラック・スネーク・モーン』 (06年)や『ソーシャル・ネットワーク』 (10年)、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』 (13年)などでは脇で光るキャラを演じたりと、シンガーの余技を超えた演技力を持つ男だ。 コメディへの取り組みも「イケメンがちょっとふざけてみました」というレベルを遥かに超えている。ティンバーレイクはこれまで老舗お笑い番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で5回司会を担当しているのだが、40年以上の歴史で16人しかいない「司会を5回以上務めたスター」の中で80年代以降に生まれたのは彼だけだ。 この番組を通じて、レギュラー出演者だったアンディ・サムバーグ(ミラ・クニスを振る男として本作冒頭にゲスト出演していのが彼だ)とは親友となり、ふたりで演じたデジタルショート(ビデオ撮りのネタ)の数々は名作として『SNL』の歴史に輝いている。 また『SNL』出身のレジェンドであるマイク・マイヤーズとは、『シュレック3 』(07年)と『愛の伝道師 ラブ・グル 』(08年)で共演。ここで伝授された笑いのノウハウを、元カノのキャメロン・ディアスとリユニオンした『バッド・ティーチャー』 (11年)では全開させていたりと、「安心してコメディを任せられる」俳優としてハリウッドで認められているのだ。本作でも仕事が出来るイケメン設定でありながら、スイカを食べて下痢したり、数字の計算が超苦手というキャラをイヤミなく演じてのけている。 そんなティンバーレイクに対するヒロインを演じているのがミラ・クニスだ。彼女のことを知ったのがナタリー・ポートマンのライバルを演じたダーレン・アロノフスキー監督のバレエ映画『ブラック・スワン』(10年)という映画好きは多いはずだ。世界的にもそうした認識だったのか、この作品でミラは第67回ヴェネツィア国際映画祭で新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しているのだが、この快挙にアメリカ人は笑い転げたはずだ。 というのも、彼女は70年代を舞台にしたレトロ調テレビ・コメディ『ザット'70sショー』(98〜06年)で人気者になってから既に10年以上のキャリアを誇っていたからだ。同じ頃始まったアニメ『Family Guy』(99年〜)に至っては、一家の長女メグの声優を今なお務め続けている。 この番組のクリエイターだったのがセス・マクファーレン。彼が映画進出作『テッド』(12年)のヒロイン役にミラを指名したのは、長年の共演から得た彼女のコメディ・センスへの信頼感ゆえだったのだ。そのセンスは本作以外でも、ジェイソン・シーゲル(今作の劇中映画に特別出演している)と共演した『寝取られ男のラブ♂バカンス』(08年)や『デート & ナイト』(10年)といったコメディでも十二分に発揮されている。 このふたりを中心に、ウディ・ハレルソンやパトリシア・クラークソン、リチャード・ジェンキンズといったオスカー受賞/ノミネート俳優たちが周辺に配され、それぞれ同性愛者、恋愛依存症、アルツハイマー病患者を演じることによって、映画には重層的な視点が加わっている。それによって映画では人生を謳歌する術としてのセックスが語られる。だから本作、下ネタ満載でエッチではあるけど全然いやらしくはないのだ。 とはいえ、本作を観ても、セフレから本当の恋人になるなんて、映画の中だけの絵空事と思うかもしれない。でも実際にそうしたことが起きるのだ。その証拠に格好の具体例を挙げてみよう。 『ステイ・フレンズ』と同じ年に、ベテランのアイヴァン・ライトマンが監督した『抱きたいカンケイ』というやはりセフレを題材にしたロマンティック・コメディが公開されている。主演は、ミラがライバル役を演じた『ブラック・スワン』(10年)の主演女優ナタリー・ポートマン、そしてアシュトン・カッチャーだった。 カッチャーは、日本では『バタフライ・エフェクト』(04年)や『ベガスの恋に勝つルール』(08年)、伝記映画『スティーブ・ジョブズ』(13年)で知られている俳優だけど、元々の出世作はミラと同じ『ザット'70sショー』である。しかもそこで彼が演じていたマイケルは、ミラ扮するジャッキーとくっついたり別れたりを繰り返していたのだった。ふたりの相性があまりに良かったことから、番組のファンは私生活でも付き合って欲しいと願っていたそうだが、この時点ではふたりは単なる仲の良い友人同士だった。 ところが『ステイ・フレンズ』と『抱きたいカンケイ』が公開された翌年、ふたりの関係は急展開する。ある授賞式でふたりは久しぶりに再会。ミラが長年交際していた『ホーム・アローン』の名子役マコーレー・カルキンと別れたばかり、カッチャーが05年に結婚したデミ・ムーアと破局したばかりなことを知ったふたりは、「昔から知ってる仲間だから友情が壊れることもない」とセフレになったのだ。でも映画同様、ふたりとも相手が別の人間とデートするのを嫌がるようになり、12年には真剣交際を開始。ウィル・グラックが監督したリメイク版『ANNIE/アニー』に揃ってカメオ出演した14年には婚約および第一子が誕生。15年には正式に結婚している。現在ミラはカッチャーとの第二子を妊娠中だ。セフレから生まれる真実の愛は実在するのである。 Copyright © 2011 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.