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PROGRAM/放送作品
スリーメン&ベビー
子供にも家庭にも縁が無いリッチな独身男性3人組が、突然、赤ちゃんを育てることに!!
『スタートレック』のミスター・スポック役、レナード・ニモイが監督した、父親3人・母親不在という異色ファミリーのホーム・ドラマ。赤ちゃんの面倒を見ることになった独身男性が巻き込まれるドタバタを描く。
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COLUMN/コラム2016.02.15
男たちのシネマ愛④愛すべき、キラキラ★ソフィアたん(1)
なかざわ:今月は「シネマ・ソムリエ」枠で放送される、映画監督ソフィア・コッポラ【注1】の特集企画が対談テーマですね。 雑食系映画ライター なかざわひでゆき 飯森:ザ・シネマというのは基本的に40~60代の男性視聴者が多いオジサン向けチャンネルなので、ガーリームービー【注2】の教祖的なソフィア・コッポラを特集しても見ない方が多いかもしれない。ちなみに、“ガーリームービーの教祖”ってキャッチフレーズは僕が考えたんですけど、そのネーミングセンス自体が既にオジサン臭い(笑)。教祖なんてナウなヤングは絶対言わない。とはいえ、そういうオジサンたちに今回ここではあえてオススメしたいんです。 なかざわ:個人的に彼女は、映画界の巨匠フランシス・フォード・コッポラ【注3】の娘として育った、裕福でインテリなお嬢様という印象があって、作品そのものに関しても、そうした生い立ちが色濃く出ているようにも思います。 飯森:アメリカ映画界の最高峰と呼べる巨匠のもとで、彼の映画作りを間近で見ながら育ったわけですから、ありえないほど恵まれた環境ですよね。しかも、例えばファッションの勉強がしたいと言ったら、誰のもとで修行をすることになったかというと、あのカール・ラガーフェルド【注4】なんですよ。太ってた頃の。父親の口利きなのかどうかは分かりませんが、いずれにせよパリス・ヒルトンみたいな単なるお金持ちのお嬢様ではない。最高レベルのクリエーターたちに実地で手とり足とり教えられ、監督デビューのレールを敷いてもらえたという、完全に姫。「ブリングリング」を見ると、若干パリスのことを見下しているような印象も受ける。「金だけ持ってたってダメなのよ。あんたと違って私はクリエイティブ帝王学を学んでるよの」と。 ザ・シネマ編成部 飯森盛良 なかざわ:まさに究極のサラブレッド。恐らく、映画ばかりか芸術の世界を志したことのある人にとっては、羨望の的のような人ですね。ただ、基本的に自分の経験や興味の対象から外れるものは描かない。それこそ、アガサ・クリスティ【注5】が「私はパブに集うような男たちの話は書けない」と言っていたように、自分のテリトリーから外れるような題材はよく分からないので手を付けません、という姿勢が感じられます。 飯森:職人監督のように様々なジャンルを股にかけるのではなくて「私には描きたいものがあるし、描けるものはこれしかない」ということで、同じ主題を描き続けている。それこそが作家性というものでしょう。 なかざわ:どの作品を見ても、彼女独自の感性で見える世界を描いているように思います。 飯森:実は、僕はある時期からソフィア・コッポラ映画が嫌いになったんですよ。今回も、対談のかなり直前まで、僕は嫌がってましたよね(笑)? なかざわ:嫌がっているとまでは思いませんでしたが、でも躊躇されているのはありありでしたよ(笑)。どうしよー、難しいなあーって仰ってましたし。 飯森:もう一度見直さなくちゃいけないのかと思うと憂鬱だったんです。でもね、これが結果的には良かった!これは本当に今の本心なんですけれど、ソフィア・コッポラのことが大好きになりましたね。だから心からの萌えの情を示すために「ソフィアたん」と呼ばせてください(笑)。およそガーリーとは縁のないオジサンたちにも、これは是非とも見ていただきたい!と思うようになったわけです。 なかざわ:なるほど、そうだったんですね! 飯森:改めて彼女の全作品を短期一気見したことで、ソフィアたんが描きたいテーマはこれじゃないか!?というものが明確に見えてきた気がする。それが各作品の公開時にリアルタイムでは分からなかった。公開に数年タイムラグがあると気づきにくいんですよ。短期間で一気見したからこそ魅力に気づけた。で、今回ウチでも一挙放送しますから、これはお客さんにも是非とも一気に全作見ていただきたいんです。 今日は彼女の作品を幾つかに分類してお話しながら、僕が考えるソフィアたんの作家性、そのテーマについてトークしたいと思います。まあ、僕の気のせいというか、思い込みに過ぎないのかもしれないですけれど(笑)。 なかざわ:ただ、ちょっとその前に触れておきたいのは、監督デビュー前の女優としてのキャリアについて。ホント、女優を続けなくて良かったね!って思うんですけれど(笑)。 飯森:あれこそ親のコネ以外の何物でもない。「ゴッドファーザーPARTⅢ」【注6】でラジー賞【注7】を取ったんでしたっけ? なかざわ:そうです。「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」【注8】では再度ノミネートされています。 飯森:あれは、どこに出ていたのか未だに分からない。まさかジャー・ジャー・ビンクス【注9】の中の人だったんじゃないでしょうね? なかざわ:いやいや、あれはCGですから! 飯森:声を担当した黒人の俳優さんが、モーション・キャプチャーのモデルもやってたんでしたっけ。 なかざわ:アミダラ【注10】の脇にいる侍女の役です。1人がキーラ・ナイトレイ【注11】で、もう1人がソフィア。もっとも、セリフは殆どないので、あれでラジー賞というのも気の毒だとは思いますけど。 飯森:完全にやっかみでしょう。でも親父さんの友達のルーカスに使わせるってところが、これぞまさしくゴリ押しというやつですね。 なかざわ:ただ、やはり「ゴッドファーザーPARTⅢ」を見たときは、さすがの巨匠コッポラも娘に関しては贔屓の引き倒しなのかな~、やっちまったなあ~と思いましたね。 飯森:あれは事前に当時人気絶頂のウィノナ・ライダー【注12】が決まっていたんですよね。それが直前になって降板したため、急遽代役を探さねばならなくなったわけですけど、あのブリジット・フォンダ【注13】にどうでもいい役を振っておきながら、よりによって自分の娘を、あまつさえあの最盛期ウィノの代役でヒロインに据えちまうのかよ!?と(笑)。せめて逆にしなさいよ!と。当時は親の七光りだとかブ●だとか散々なことを言われて、僕も正気なところ同じように思っていました。あれはものすごいバッシングで、姫は姫でもマリー・アントワネットになっちゃった(笑)。まあブリジット・フォンダも七光りですが、あっちは文句のつけようも無い絶世の美人ですからね。でも、今見るとソフィアたんもそんなに悪くないんですよ。むしろ案外良い!確かにウィノナ・ライダーほど可愛くはないかもしれないけれど、普通にそこらへん歩いてたら結構良い方だぞ、あそこまでバッシングされるほど悪くないぞ、いや全然有りだぞ!と。なんか可哀想という気になってくる。アイドルグループでそんなに人気の無いブ●カワな娘を一番応援したくなる心理に似ている(笑)。 それと、あの時のソフィアたんの、バブル時代を象徴するような、ワンレンボディコン【注14】が似合うサラサラのストレートヘア。以降彼女はボブにしちゃってますけど、あのワンレン姿は今見るとゴージャスで意外とイケてますよね。ちなみに、あの映画って時代設定がいつだか知っていますか? なかざわ:え、’80年代とか’90年代とかじゃないんですか? 飯森:そう思うでしょ?公開年イコール劇中年で1990年が舞台なのかと。ところがですね、実はリアルタイムの話じゃないんですよ!今回、野沢那智吹き替え特集で仕事で改めて見ていて気がついたんですが、冒頭に1970年代のニューヨークってテロップが出てくるんですよ。 なかざわ:マジっすか!? それ全く記憶にない! 飯森:あれはバブル時代の工藤静香【注15】とか千堂あきほ【注16】のワンレンではなくて、アグネス・チャン【注17】とか栗田ひろみ【注18】のロングヘアだったんです(笑)。 なかざわ:麻丘めぐみ【注19】とか小林麻美【注20】とかの(笑)。 飯森:そうそう、そっちなの。それをやりたくて、あのロングヘアーにしていたのかもしれないけど、そうは見えねえよバカヤロー!っていう(笑)。ある意味でラジー賞も仕方がない。 なかざわ:随分な衝撃ですね。 飯森:でしょ?恐らく、コルレオーネ家の“ファミリー・ヒストリー”をきちんと年表に整理していくと、あの時点が’70年代という設定でなければ辻褄が合わなくなるんですよ。しかし、そうは全く見えない。アメリカ映画って古い時代の雰囲気を出そうと思えば余裕で出せるじゃないですか。そこは日本映画が苦手としているところで、どんなに「ALWAYS 三丁目の夕日」【注21】が頑張ってみても、リアルに再現はできない。その点、「ゴッドファーザーPARTⅢ」は最初からそこ放棄してたってことですね。 <注1>1971年5月14日生まれ。ニューヨーク出身。アメリカの映画監督で元女優。「ロスト・イン・トランスレーション」(’03)でアカデミー賞脚本賞を受賞、監督賞にノミネート。 <注2>若い女性向け映画のことを意味する俗称。 <注3>1939年生まれ。アメリカの映画監督。代表作「ゴッドファーザー」(’73)でアカデミー賞脚本賞を、続く「ゴッドファーザーPART2」(’74)でアカデミー賞作品賞や監督賞など3部門を受賞。「地獄の黙示録」(’79)ではカンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールなどを獲得。 <注4>1933年生まれ。ドイツ出身の世界的ファッション・デザイナー。 <注5>1890年生まれ。イギリスの女流ミステリー作家。「オリエント急行の殺人」や「そして誰もいなくなった」などの名作を世に送り出し、ミス・マープルやエルキュール・ポワロなどの名探偵を生んだ。1976年死去。<注6>1990年制作、アメリカ映画。アカデミー賞で2部門にノミネート。フランシス・フォード・コッポラ監督。 <注7>正式にはゴールデンラズベリー賞。その年の“最低”映画を部門ごとに表彰する。 <注8>1999年制作、アメリカ映画。「スター・ウォーズ」シリーズの第4弾。ジョージ・ルーカス監督。 <注9>「スター・ウォーズ」エピソード1~3に登場するエイリアン。ファンからは総スカンを食らった。 <注10>「スター・ウォーズ」エピソード1~3のヒロイン。惑星ナプーの女王。 <注11>1985年生まれ。イギリスの女優。代表作は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」など。「プライドと偏見」(’05)ではアカデミー賞主演女優賞にノミネート。 <注12>1971年生まれ。アメリカの女優。「若草物語」(’94)でアカデミー主演女優賞にノミネート。その他、「シザーハンズ」(’90)や「リアリティ・バイツ」(’94)などが代表作。 <注13>1964年生まれ。アメリカの女優。父は俳優ピーター・フォンダ、祖父はオスカー俳優ヘンリー・フォンダ。代表作は「ルームメイト」(’92)、「アサシン 暗・殺・者」(’93)など。 <注14>ワンレングスの髪型にボディコンシャスな服装という、バブル期の典型的な女性のファッションスタイルのこと。 <注15>1970年生まれ。日本の歌手。元おニャン子クラブのメンバーで「禁断のテレパシー」(’87)でソロデビュー。その他、代表曲に「嵐の素顔」(’89)、「恋一夜」(’89)など。夫はSMAPの木村拓哉。<注16>1969年生まれ、日本の女優。’90年代初頭に“学園祭の女王”として活躍。「マジカル頭脳パワー!!」(’90〜’99)などのバラエティや、「振り返れば奴がいる」、(’93)などのドラマで活躍。<注17>1955年生まれ。香港出身の日本の元アイドル歌手。’72年に「ひなげしの花」でデビューして大ブレイク。当時は真ん中分けのロングヘアもトレードマークだった。 <注18>1957年生まれ、日本の女優。代表作は「夏の妹」(’72)、「放課後」(’73)など。丸ポチャで清純派風のルックスとヌードも厭わない大胆さで、’70年代前半に活躍。<注19>1955年生まれ。日本の女優で元アイドル歌手。モデルを経て、’72年の歌手デビュー曲「芽生え」が大ヒット。翌年の「私の彼は左きき」でトップアイドルに。おかっぱのロングヘアを真似する女性ファンも多かった。 <注20>1953年生まれ。日本の女優で元アイドル歌手。’72年にデビュー。華奢な体と長い黒髪で多数の化粧品CMでも活躍。’84年のシングル「雨音はショパンの調べ」が大ヒット。<注21>2005年制作、日本映画。昭和30年代の東京を舞台にした人情劇。日本アカデミー賞の最優秀作品賞など12部門を獲得。山崎貴監督。 次ページ>> 「ヴァージン・スーサイズ」&「ブリングリング」 『ヴァージン・スーサイズ』©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures, All Rights Reserved『ロスト・イン・トランスレーション』©2003, Focus Features all rights reserved『マリー・アントワネット(2006)』©2005 I Want Candy LLC.『SOMEWHERE』© 2010 - Somewhere LLC『ブリングリング』© 2013 Somewhere Else, LLC. 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PROGRAM/放送作品
ホーク・ザ・スレイヤー/魔宮の覇者
善と悪の対決、胸躍るキャラクター…剣と魔法の世界を舞台に繰り広げられるヒロイック・ファンタジー
悪の魔術師に立ち向かう、人間、エルフ族、ドワーフ族のパーティの大活躍を描いた、まさに教科書どおりの正統派ファンタジー。ロール・プレイング・ゲーム誕生の直後から吹き荒れた80年代ファンタジー映画ブームのさきがけ的な作品だ。
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COLUMN/コラム2016.02.15
男たちのシネマ愛④愛すべき、キラキラ★ソフィアたん(2)
なかざわ:では、そろそろ作品の方に話題を移しましょうか。 飯森:まずは「ヴァージン・スーサイズ」【注22】と「ブリングリング」【注23】をセットにしてお話したいと思います。 なかざわ:なるほど。どちらの作品も、ある特定の時期の少女たちに顕著な感受性というものを、ソフィア・コッポラならではの視点から描いているように思えますよね。 飯森:確か彼女って、一時期タランティーノ【注24】と付き合っていたことありましたよね?あれ彼女の方がファンだったんじゃないですか?まぁタラの方にもコッポラ一族とコネクションが欲しかったというのもあったのかもしれませんが。というのも、今回改めて「ヴァージン・スーサイズ」を見て、タランティーノの影響がかなりあるなって気がしたんですよ。 なかざわ:とおっしゃいますと? 飯森:ソフィアたんというと音楽のセンスが良くて、過去のポップミュージックから「よくぞこれを選びました!」という絶妙な楽曲を引っ張り出してくる。それが、その後も彼女の顕著なスタイルであり続けるわけですが、「ヴァージン・スーサイズ」にはタランティーノに共通するような音楽使いの良い意味での“雑さ”がある気がするんですよ。例えば、カットが変わると同時に引用した音楽もぶつ切りに終わらせちゃうとか。「この雑な感じ、70’sっぽくてダサかっこいいっしょ?」というのが’90年代のタランティーノの大発明だったじゃないですか。あの頃は’70年代がリバイバルで流行ってましたから。音楽だけでなく洋服のセンス、車のセンス、テロップや編集の過剰なケレン味なども含め、クール70’sの匂いが妙にタラ臭いんですよ。あれの女子版。まあ時代設定が’70年代の映画だからそうしてるってこともあるのでしょうが。 なかざわ:王道的な名曲とマニアックな楽曲を無造作に混ぜ込むあたりもタランティーノ的かもしれませんね。彼女って、幼少期に当たる’70年代の楽曲は結構王道寄りだけど、思春期に差しかかった’80年代以降の楽曲になると途端にエッジが効いていたりする。そんな選曲の傾向を見ていると、’90年代の申し子だなという印象を受けます。 飯森:それ!僕がタラっぽいと言っているのは、まさにその点なんです。非常に’90年代っぽい。タランティーノのフォロワーというか、ポスト・タランティーノというか。ただ、だから悪いと言っているわけじゃないですよ、「ヴァージン・スーサイズ」は事実上の長編デビュー作ですから、誰かの影響があるのは当然のことだと思います。と言っても、僕の気のせいかもしれませんけどね。 なかざわ:でも間違ってはいないように思いますよ。 飯森:で、この作品。冒頭でナレーションが入って、いきなり映画のオチを明かしちゃうんです。リズボン家の5人姉妹が自殺したと。なぜ彼女たちは自殺してしまったのか…ということを、近所に住んでいた、もしくは学校で同じクラスだった男子たちが、大人になった25年後に回想するというお話なんです。でも、結局その理由は最後まではっきりとは分からない。特に、一番下の妹がリストカットをし、一度は助かったのに結局投身自殺してしまう動機は一番不可解です。 映画開始直後、理由を描く暇もなく早速自殺しようとする。後からも答えは一切描かれない。でも、答えはその娘自身が最初の未遂の時に医師に向かってハッキリと明言してるんですけどね。 で、上のお姉ちゃんたち4人が遺されるわけですが、彼女らも特段に号泣したり精神的に荒れたりなどすることもなく、淡々と日常へ戻ってしまうのも、映画的には控え目すぎる気がするし、およそドラマチックじゃない。男の子たちに誘われて夜遊びなどもするけど、それも大して悪さをするわけじゃない。で、お母さんから厳しく叱られる。でも「厳しく」と言っても常識の範囲内ですよ?どの家でもあれぐらいは怒られる。「キャリー」【注25】の狂った母親みたいではないから、そこにも映画的な大げささは盛っていない。なのに、どうやらそれを苦にして自殺しちゃったみたいなんですよ。4人の姉妹全員が同じ屋根の下で同時に。これは何なのか?と。 なかざわ:唐突で意味が分からないですよね。死ぬほどのことなのか?と。 飯森:でもね、我々は今は分からなくなっちゃったかもしれない。なぜならオジサンになったから。最初に自殺未遂をしでかした妹が冒頭で医者にハッキリ明言してるんですよ、「10代の女の子じゃなければ死のうとした理由は分からない。先生には絶対分からない。オジサンだから」って。これは原作小説にはないから、脚本も書いてるソフィアたんが加えたと思われるセリフなんですが、答えは映画開始直後に出てたんです。「理由は10代にしか分からない」がこの物語にソフィアたんが出した結論なんですよ。 お姉ちゃん達の場合は、夜遊びの罰として外出禁止にされたから、って理由っぽいものが一応あるにはある。でもだからって「死んでやる!」という、その二つの釣り合わなさということは、我々はオジサンだから分かる。そんな損な話はないと。でも、それが分からなかった時期ってあるんじゃないですか?っていうことを描いた映画だと思うんですよ。 もう一方の「ブリングリング」ですが、こちらはある男の子がロサンゼルスに引っ越してきて、一人の中国系の女子と意気投合をする。お互いにお洒落とかファッションが好きなんですよね。この二人が学校帰りに旅行中の知人の家に空き巣へ入ろうということになり、味をしめて次からはパリス・ヒルトン【注26】やオーランド・ブルーム【注27】など有名人の豪邸を狙うようになる。有名人のフェイスブックを見ると「今パリにいます」とか書いてあるけど、それって家が留守ってことじゃん?だったら住所もセレブマップですぐ分かるから、空き巣に入って盗もうよ♪みたいな軽いノリで。そこに他の女子も仲間として加わって、次から次へとセレブの豪邸に忍び込んでは高級ブランド品を盗んでいく。でも、彼らにとっては盗みが本当の目的なんではなくて、ただ単にセレブの自宅やワードローブの中身を見て、友達同士「わー!」「すごーい!」「ステキー!」ってキャッキャやりたいだけなんですよね。そのついでに戦利品も頂いていっちゃう。 なかざわ:それっていうのは、今のSNS文化【注28】はもちろんのことですけれど、若者たちの過剰なセレブ崇拝というのもバックグラウンドにあると思います。ある時期から、アメリカではゴシップ誌を賑わせる“セレブ”と呼ばれる人々が、テレビのリアリティー番組で自分の豪邸や華やかな暮らしぶりを自慢げに披露するようになり、若い人たちがやたらと興味を惹かれて憧れるようになったんですよね。 飯森:とはいえ、興味があるからといって空き巣に入るというのも発想が飛躍している。でも一番理解不能なのは、その犯行をSNSでイエーイ!みたいな感じでアップして自ら晒しちゃう感覚ですよ。それは捕まるに決まってるよね?と。確かに、悪いとは分かっていても衝動が抑えられないってことはあるかもしれない。それは分かる。でも、証拠隠滅するなり何なり自分が逮捕されない悪知恵も普通は働かせるはずですよ。それを、シッポ出さないようにするんじゃなくて逆に自らネットに晒すとは!これもまた、大人になった今なら「バカなクソガキどもめ」と思うだけかもしれないけれど、ある限られた年頃だったら理解できるんじゃない?と感じるんです。 なかざわ:そうですね。人間の死だとか犯罪だとか、そういった重大な事柄に対する想像力の欠如ですよね。モノを知らない若者ならではの無軌道というか。 飯森:かといって、その無軌道をソフィアたんは批判しているようにも見えない。もちろん共感しているわけでも推奨しているわけでもないとは思うのですが。しかし高校生くらいのガキが調子に乗って、ここではそれこそ警察に捕まるような悪いことをしているわけですけれど、刑務所に入れられたら大変だ、家族や周りにも迷惑がかかる、という大人の理性がストッパーにならない年頃ってあるじゃないですか。友達と一緒になって、いいじゃん!やっちゃおうよ!と盛り上がっている時の楽しさ。それを得意気に自慢する楽しさ。つまりは調子ぶっこいている楽しさ。もちろん犯罪行為までは普通いかないけれど、10代の頃を振り返ってみた時に、誰しも多かれ少なかれ身に覚えがある、あの感覚。ソフィアたんはその年代の子供たちにしか見えないであろう世界の“キラキラ感”を描いているんですよ。“キラキラ感”って言葉も作ってみたんですが、これもどうにもオジサン臭いな(笑)。 なかざわ:言うなれば危険な冒険ですよね。一歩間違えれば犯罪に巻き込まれてしまう、もしくはその行為そのものが犯罪になりかねない。でも楽しいからやってしまった。そういう経験がある人は多いと思いますよ。 飯森:それはさっきの「ヴァージン・スーサイズ」も同様で、夜遊びで無断外泊して親から怒られるなんて、「ブリングリング」の空き巣以上に誰にでも経験がありますよね?それが原因で自殺するというのは、一見すると飛躍ですけど、彼女らのような10代だったら共感できるかも知れない。一切の外出を禁じられてしまったことで、姉妹は日々変化していく学校生活や友達関係に参画できなくなってしまう。1ヶ月後に外出禁止が解かれたとき、どんな顔をして学校へ行けばいいのか。長い人生の中で後から振り返れば取るに足らないことですが、いま10代だったらそれがどれほど重大かは、我々も何十年か昔を思い出せば共感できると思うんです。そんなの堪えられない!そうなるぐらいならいっそ死んでしまいたい!って衝動的に思うのも、10代ならありうる。 なかざわ:彼女たちにとっては生き地獄だったのかもしれませんね。 飯森:かといって全然地獄っぽくは描かれてないですけれどね。むしろきれいに描かれている。地獄だから自殺したんじゃなくて、世界がきれいすぎて見えるほど感受性が敏感な年頃だったから自殺しちゃった。だから全編、徹底的にきれい。この映画、とにかく景色がきれいなんですよ。もう異常なんです。25年前の出来事の回想なので、思い出の中の風景のようにも見えるし。美人姉妹の目には世界がこういう風に見えていたのかとも思える。世界がキラキラに描かれているんです。大人にとってはなんの面白みもない住宅街の退屈な風景であっても、10代の女の子の目を通すと、世界はこんなにも輝いて見えるのか!と思うわけです。あるいは、あれは男子たちの目線なのかもしれない。遺された近所の男の子達が、あの25年前の夏の集団自殺は何だったのだろう?と40歳ぐらいになってから思い返す映画なので、男子目線のノスタルジックな美しさなのかもしれない。どちらにせよ、ティーンの頃に我々の目にも確かに見えていたはずの、信じられないくらいの世界の“キラキラ感”を視覚化することに成功しているんです。 なかざわ:確かに、感受性が豊かで多感な時期の記憶というのは、実際よりもかなり美化されて脳裏に焼き付きますからね。 飯森:これを描ける人はソフィアたん以外にはなかなかいない!才能ですね。親のコネだけじゃ無理です。偉大すぎる親父さんでもこれだけは描けそうにない。オジサンだから(笑)。 <注22>1999年制作、アメリカ映画。 <注23>2013年制作、アメリカ映画。 <注24>クエンティン・タランティーノ。1963年生まれ。アメリカの映画監督。「レザボア・ドッグス」(’92)で脚光を浴び、カンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールを獲得した「パルプフィクション」(’94)で時代の寵児となる。<注25>1976年制作、アメリカ映画。狂信者の母親に悪魔の子と冷遇されて育った超能力イジメられっ娘のパワーが、イジメのエスカレートにより暴走して大惨劇を引き起こす。<注26>1981年生まれ。アメリカのソーシャライト(社交界の名士)。ヒルトンホテル創業者一族の出身で、お騒がせセレブとしても有名。劇中に登場する自宅は本物。 <注27>1977年生まれ。イギリスの俳優。「ロード・オブ・ザ・リング」(’01)シリーズのレゴラス役でブレイクし、その後も「パイレーツ・オブ・カリビアン」(’03)シリーズや「キングダム・オブ・ヘブン」(’05)などのヒット作に出演。<注28>TwitterやFacebookなどのSNSを利用した生活様式のこと。 次ページ>> 「ロスト・イン・トランスレーション」&「SOMEWHERE」 『ヴァージン・スーサイズ』©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures, All Rights Reserved『ロスト・イン・トランスレーション』©2003, Focus Features all rights reserved『マリー・アントワネット(2006)』©2005 I Want Candy LLC.『SOMEWHERE』© 2010 - Somewhere LLC『ブリングリング』© 2013 Somewhere Else, LLC. 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PROGRAM/放送作品
(吹)U・ボート
逃げ場なき深海の密室で勃発する極限サバイバル・ドラマ!戦争の真実を描いた潜水艦映画の金字塔
『エアフォース・ワン』のウォルフガング・ペーターゼン監督がドイツ時代に手がけた潜水艦映画の傑作。狭くて逃げ場のない艦内で続発する危機を臨場感満点に描く。戦争の非情さを突きつけるラストも語り草。
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COLUMN/コラム2016.02.15
男たちのシネマ愛④愛すべき、キラキラ★ソフィアたん(3)
飯森:次に「ロスト・イン・トランスレーション」【注29】と「SOMEWHERE」【注30】をセットで喋らせて頂きたいと思います。「ロスト~」はアカデミー脚本賞に輝いた作品ですが、日本人にとっても「マリー・アントワネット」【注31】と並ぶソフィアたんの代表作として知られているかもしれません。なにしろ東京が舞台ですし。主人公はウイスキーのCMに出演するため来日したベテランのハリウッド俳優と、お洒落なファッション・フォトグラファーの夫にくっついてきた大学出たばかりの新婚奥さん。この2人がたまたま同じホテルに宿泊するわけです。 なかざわ:新宿のパークハイアット東京【注32】ですね。 飯森:このハリウッド俳優の置かれた状況がまさにロスト・イン・トランスレーション状態で、言葉が通じなかったり、日本人の習慣や感性が分からなかったりする。CM撮影やスチール撮影の現場で、どうにも歯車の噛み合わないもどかしさを感じているわけです。一方の若妻の方も旦那がさっさと一人で撮影旅行に出かけちゃって、いきなり右も左もわからない新宿に一人で放置される。そんな彼らがホテルのラウンジ・バーで知り合い、お互いにアメリカ人だってことで言葉を交わしていくうち、だんだんと仲良くなっていくわけです。で、誰かと一緒にいるってハッピーなことだな、と噛み締めながら、あっという間に東京滞在の期間が終わってしまい、それぞれの人生へと戻っていく。 なかざわ:面白いのは、お互いに親近感というか、惹かれあうものがありながらも、具体的にロマンスへは踏み込まないんですよね。 飯森:そこですよ!決してロマンスには行かない。でもベッドシーンはあるんです。そこは後ほど説明しますね。で、もう一方の「SOMEWHERE」ですけれど、これもハリウッド俳優の話。主人公は人気のアクションスターで、ロサンゼルスのシャトー・マーモント【注33】という実在するセレブ御用達の高級ホテルで暮らしながら、自堕落な生活を送っている。暇になると部屋にポールダンサー【注34】を呼んでエロ踊りを踊らせたり、映画スターの余得で向かいの部屋の宿泊客とセックスしちゃったり。そこへ、離婚した奥さんが連れて行った中学生くらいの愛娘が転がり込む。元奥さんの都合で、しばらく娘を預かることになるんです。それで一緒にお出かけして、一緒にご飯を食べて、一緒にTVゲームをする。なんてことはない娘との時間を過ごす。最後も別にドラマチックに娘と死に別れたりするわけでもなく、ただ単に預かり期間が終わったので娘が去っていくだけで、映画はアッサリおしまい。 なかざわ:確かサマーキャンプに行くんですよね。 飯森:で、その娘といた時間というのがまた、なんともキラキラしているんですよ。「ロスト~」の主人公たちの東京滞在もキラキラしていた。このキラキラは先ほどの「ヴァージン・スーサイズ」や「ブリングリング」の“10代キラキラ”とはちょっと性質が違うので、“ラブストーリー一歩手前キラキラ”と名付けたい。ショッキングなことを言うと、実は「SOMEWHERE」にもベッドシーンはある。父娘の間で。「ロスト~」でもハリウッド俳優と若妻のベッドシーンがある。 なかざわ:ただ一緒にベッドで横になっているだけでしょ? 飯森:そう!そういう意味での文字通りの“ベッドシーン”で、これは意図的だろうと思うんですよ。ラブストーリー一歩手前だからベッドの上では何も起きない。そもそも「SOMEWHERE」でそれが起きたら大変です!ボロフチック【注35】になってしまいますから(笑)。主人公はラブストーリーには絶対に発展するはずのない男女。「SOMEWHERE」は父娘だから当たり前ですが、「ロスト~」だってそうだと思いますよ。あの映画を恋愛映画だと言っている人もいますけど、本当か!?と。スカーレット・ヨハンソン【注36】がビル・マーレイ【注37】に恋愛的な意味で惚れていたと思いますか? なかざわ:思わないですよ。親愛の情は抱いていたと思いますけど。 飯森:そう!まさに「親愛の情」としか表しようのない感情ですよね。ビル・マーレイにしたって、確かに一般論として男は下心が最優先になる不便な生き物だけれど、彼という役者の場合、そんな印象をほとんど受けない。若い頃からそういう俳優で、女を食っちゃうにしても飄々とした斜に構えた感じを若いのに漂わせてましたけど、この歳になるとその方面では完全に枯れ果てた出涸らしに見える(笑)。あの天下のスカヨハのプリケツを前にして、しかもベッドで一緒に寝るのに!だから、恋に落ちることは絶対ないカップルに見えるんです。 なかざわ:最後にキスをして別れますけど、あれも恋愛のキスではなく親子のキスみたいな印象でしたし。 飯森:どちらの作品でも主人公たちは“デート”をしますが、でも、「今日はパパとデート」、「今日は異性の知人とデート」っていうノリですよね。〆でホテルに行かない方のデート。その楽しそうな時間を支配しているのは、またしても“キラキラ感”。ベッドを共にしても、例えば「ロスト~」の場合だと寝転がってお悩み相談大会になっちゃうし、「SOMEWHERE」ではベッドの背もたれに寄りかかって一緒にアイス食いながらテレビを見ている。恋愛一歩手前とか、父娘とか、男女のフレンドリーな関係の心地よさが、この2作品ではキラキラした感じで描かれているんです。 なかざわ:他者と繋がって心が触れ合うことで、前向きに生きていけるようになるというテーマが、どちらでも共通しているように思いますね。 飯森:「SOMEWHERE」の父親は泣いていましたよね。娘がいなくなったことで、またあの空っぽな生活に戻らねばならないのかと慄然とする。娘とのあのキラキラした日々が、いかに充実していたかを思い知らされるわけです。 なかざわ:確か最後に車を乗り捨てますよね。 飯森:そう、最初のシーンではフェラーリらしき車に乗ってグルグル回っていて、あれは解釈に苦しみましたが、ラストではフェラーリを乗り捨てていました。 なかざわ:あれって、それまでの自堕落な生活との決別を心に決めた瞬間だと思うんですよ。 飯森:だから冒頭ではフェラーリで同じ所を無意味にグルグル回ってたんだ!フェラーリは虚栄の象徴か! なかざわ:そういうことだと思います。 飯森:あとね、これは僕の私見なんですけれど、ソフィアたんは恋愛が嫌いだと思うんです。「ヴァージン・スーサイズ」でも、確かに近所の小僧どもはリスボン家の美人姉妹に憧れますけれど、彼女らは自分たちだけの閉鎖された世界でキャッキャしていて、外の男子と恋愛する気がなさそう。小僧どもはそれを遠くから指をくわえて見守ることしかできない。 なかざわ:彼女たちはさながら妖精のサークルですよね。 飯森:唯一恋愛っぽくなるのは、ジョシュ・ハートネット【注38】演じるイケメンの不良に三女のキルステン・ダンスト【注39】が憧れる展開ですけど、これにはとんでもないオチが付く。あの美少年が25年後にはどうなっているか。「あんた少女時代にイケメンから何か酷い目にでも遭わされたの!?」とソフィアたんの恋愛相談に乗ってあげたくなる、それくらい、憎悪さえ込めたような衝撃の展開(笑)。だから、彼女は恋愛が嫌いなんじゃないかと思えるんです。まあ、小僧どももジョシュ・ハートネットも原作通りではあるんですが。 なかざわ:そういえば、ソフィア・コッポラの作品で純然たる恋愛映画ってないですよね。 飯森:「ブリングリング」も主人公の転校生はゲイだから、親友の女子と意気投合こそすれ恋愛には発展しえない。あとで話す「マリー・アントワネット」ではフェルゼン【注40】が出てきますけど、「ベルサイユのばら」【注41】とは大違いで、何も起こらない。もしかすると、ソフィアたんの理想というのは、この人とは恋に落ちることはないけれど一緒にいるとすごくハッピーになれる、そんな異性のパートナーがいるって素敵じゃない?ってことなのかもしれない。女だからってラブストーリーを描くと思ったら大間違い、恋だの愛だのなんて私大っ嫌いなのよ!ダサっ!!とでも言わんばかりの剣幕を感じてしまう。勝手にそう僕が感じてるだけなんですが、本当に、過去に何かあったのか(笑)? <注29>2003年制作、アメリカ映画。アカデミー賞では作品賞など4部門にノミネートされ、脚本賞を獲得。 <注30>2010年制作、アメリカ映画。ヴェネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞を受賞。 <注31>2006年制作、アメリカ映画。アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞。 <注32>新宿新都心の新宿パークタワーに入居しているホテル。 <注33>1929年に創業したロサンゼルスのホテル。フランスの古城シャトー・アンボワーズを模したヨーロッパ風建築で、古くからハリウッド映画人に人気がある。 <注34>垂直の柱を使用したアクロバティックなダンスを踊るダンサーのこと。現在ではダンス競技の一種として認められているが、もともとはストリップクラブの出し物の一つで、本作に登場するポールダンサーもストリッパー。 <注35>ヴァレリアン・ボロフチック。1923年生まれ。ポーランド出身のフランスの映画監督。タブーを恐れない大胆な性描写で有名。代表作は「インモラル物語」(’74)など。2006年死去。ザ・シネマ10周年記念として前月に特集を組んだ。前回対談のトークテーマ。 <注36>1984年生まれ。アメリカの女優。本作では若妻役を演じる。そのほかの代表作には「真珠の耳飾りの少女」(’03)や「それでも恋するバルセロナ」(’08)、「アベンジャーズ」(’12)など。 <注37>1950年生まれ。アメリカの俳優。本作では中年のハリウッド俳優役。その他の代表作には「ゴーストバスターズ」(’84)や「3人のゴースト」(’88)、「天才マックスの世界」(’98)など。 <注38>1978年生まれ。アメリカの俳優。代表作は「パール・ハーバー」(’01)や「ブラックホーク・ダウン」(’01)、「ブラック・ダリア」(’06)など。 <注39>1982年生まれ。アメリカの女優。代表作は「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(’94)、「スパイダーマン」(’02)、「メランコリア」(’11)など。 <注40>「ベルサイユのばら」に登場するスウェーデン貴族。モデルとなったフェルセン伯爵もマリー・アントワネットの愛人だった。映画に登場するのは、こちらのフェルセン伯爵の方。 <注41>池田理代子による日本の漫画。フランス革命前後を舞台に、マリー・アントワネットら実在の人物と男装の麗人オスカルなど架空キャラクターの激動の運命を描く。宝塚歌劇団による舞台化を契機に空前の大ブームを巻き起こし、テレビアニメや実写映画にもなった。 次ページ>> 「ロスト・イン・トランスレーション」&「SOMEWHERE」(続き) 『ヴァージン・スーサイズ』©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures, All Rights Reserved『ロスト・イン・トランスレーション』©2003, Focus Features all rights reserved『マリー・アントワネット(2006)』©2005 I Want Candy LLC.『SOMEWHERE』© 2010 - Somewhere LLC『ブリングリング』© 2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved
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PROGRAM/放送作品
コマンドー
まさに一人軍隊!アーノルド・シュワルツェネッガーの超人的な強さが極まったガン・アクション
『ターミネーター』で一躍人気を集めたアーノルド・シュワルツェネッガーが、アクション・スターの地位を不動のものにした代表作。銃撃戦から肉弾戦まで、シュワルツェネッガーの超人ぶりを見せつける見せ場が満載。
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COLUMN/コラム2016.04.02
男たちのシネマ愛⑥愛すべき、クレイグ・ボンド。そして、愛すべき洋画の未来。(1)
なかざわ:泣いても笑っても今回が最終回の対談となるのですが、テーマはダニエル・クレイグ(注1)版「007」シリーズ(注2)ですね。 飯森:これが非常に難しい。なにしろメジャー中のどメジャー・タイトルなので、おのずと我々が語ることのできる内容も限られてきますから。「んなこたぁお前ごときに言われなくても知っとるわ!」と(笑)。 なかざわ:熱狂的なマニアが多いですから、下手な事を言うと炎上しかねない(笑)。 飯森:だから、というわけでもありませんが、今回は前半「007」をアッサリと、後半を洋画チャンネルの今後の展望と、2つのテーマで対談を進めていきたいと思います。 なかざわ:それは最終回に相応しいですね。 飯森:で、ダニエル・クレイグなんですけれど、これは恐らく僕だけじゃないと思うんですが、最初彼が新しいジェームズ・ボンドをやるって聞いて「え? この人が?」と思いましたよね?でも始まってみると全然アリだった。中でも「007/スカイフォール」(注3)は個人的にはシリーズ最高傑作と思えるくらいに良かった! なかざわ:ボンド役って新しい役者が起用されるたびに必ず何か言われますけれど、結局蓋を開けてみると、どのボンドもちゃんと成立しているんですよね。それはダニエル・クレイグも同様だと思います。僕は原作を読んだことがないので、小説版とのイメージの比較はできませんけれど、子供の頃から映画館やテレビで親しんできたファンとしては、確かに最初は疑問を感じましたよ。そもそも当時の知名度は低かったし、それ以前の仕事もアート系の映画が多かった。ボンド役には渋すぎなんじゃね?とは思いました。ただ、何代にもわたるボンド俳優の変遷を見てきたので、受け入れる準備はありましたし、実際に見たら十分良かった。ただ、これは彼の役者としての個性もあってのことなんでしょうけれど、シリーズの方向性もガラリと変わりましたよね? ダニエル・クレイグ版「007」シリーズには、従来のような軽さとか柔らかさがない。 飯森:ですね。硬派で暗い、と言い切ってしまってもいいでしょう。好みはバックリ分かれた。 なかざわ:そこが僕自身の好みとはちょっと違ったかもしれない。確かに「007/慰めの報酬」(注4)も「007/スカイフォール」も面白かった。特に「スカイフォール」は素晴らしい。ただ、こないだの「007/スペクター」(注5)辺りでそろそろ限界かなとも思っちゃったんですよね。「キングスマン」(注6)と「コードネームU.N.C.L.E.」(注7)を見た後だったこともあって。’60年代スパイ映画ファンとしては、やっぱりあのノリが恋しいんですよ。 飯森:これはやばい! 話が思い切り脱線しそうですぞ(笑)。僕もあの2つは大好きなんですよ。とりあえず、この2作品については後回しにしませんか? なかざわ:了解しました(笑)。いずれにせよ「スカイフォール」はダニエル・クレイグ版「007」映画の頂点だったようには思います。 飯森:僕はロジャー・ムーア(注8)世代なんですよ。小学生の頃テレビで盛んにロジャー・ムーアをやってて子供ながらに見ていた。後にある理由からショーン・コネリー(注9)版に夢中になるんですが、ただ、当時リアルタイムでは残念ながらロジャー・ムーアの「007」シリーズの魅力に気づけなかったんです。まず最大の問題が、ロジャー・ムーアって省エネルック(注10)みたいのを着てたでしょ?あれははっきり言って子供の目にも深刻なダサさだった!「007」からファッションの魅力を抜くと、けっこうな致命傷になる。それより何より、その頃の僕は「ランボー」(注11)や「コマンドー」(注12)に夢中になっていて、小学校のロッカーにBB弾のトイガンを数丁隠し持っていたような凶器準備集合罪スレスレのイヤな映画小僧でしたから、「007」シリーズにはアクションとして物足りなさを感じていたんですよね。だってロジャー・ムーアってスタローン(注13)より弱そうじゃないですか。一方がムキムキの裸でM60(注14)を腰ダメで撃ちまくったりRPG-7(注15)をブっ放している時に、もう一方はタキシード着ていまだにワルサーPPK(注16)でパチパチ撃っている。軍用の分隊支援マシンガンや対戦車ロケットランチャーに対し、戦前の警官用ポケット拳銃ですからね、地味感は否めない。お話的にも、MI6(注17)に所属する殺人ライセンスを持った英国諜報部員が、人類を抹殺して選ばれし少数者だけで海底都市を築こうとか宇宙移民しようとか、荒唐無稽にもほどがある大陰謀を企む悪の秘密結社を、女をコマしながら片手間で倒し、ラストは大英帝国に栄光あれ!ついでにオマケで女ともう一発!! みたいなストーリーは、元米軍特殊部隊のヒーローがソ連軍をバっタバっタとやっつけて捕虜を奪還する、というようなレーガン政権時代の空気を反映した映画がウケてた頃には、浮いちゃってたと思うんですよ。タキシードでめかしこんで女のケツ追っかけてソ連の女まで喰っちゃいやがってコノ、冷戦ナメんな!と(笑)。あと、全体的に良くも悪くも漫画チックなシリーズでしたんで、漫画やアニメを今まさに卒業してきたばっかりで大人の実写映画のリアリズムに飢えていた年頃にとっては、たまたま喰い合わせが悪かったという、タイミングの問題もあった。まさしく海底都市とか宇宙移民とか。それはアニメでさんざっぱら見てたよと。それと敵キャラもえらく漫画チックでね、ジョーズ(注18)とか。 なかざわ:ロジャー・ムーア版ボンドってのがこれまた随分と軽いですからね。 飯森:そこなんですよね。悪役を殺すたんびに要らん軽口たたいたりするんですよ。“英国紳士のユーモア”とかそんな上等なものじゃなくて「いま上手いこと言った!」的なしょうもない捨て台詞を。そんなことランボーだったら絶対言いませんって!まぁメイトリックス(注19)は割とよく言うんですけどね(笑)。しかも、吹き替えが広川太一郎(注20)さんだったりするからマックスでチャラい(笑)。チャっら〜!へっちゃらー♪ってな印象ですよ。チャラいというかフザけてるのか!?と。もちろんフザけてるに決まってる。ジャンル的にそもそもアクション・コメディー路線になっていたので、フザけてて当然、正解なんですけどね。 なかざわ:ロジャー・ムーア版ボンドの魅力というのは、すなわち’70年代におけるディスコ&フリーセックス(注21)の雰囲気だと思うんですよ。キラキラしていてケバケバしくて、エレガントで華やかで軽い。そういうところが僕は逆に好きなんですけれどね。 飯森:そう。あれはアクションではなく“色気”を楽しむための映画だったんですよね。そのことに大人になってから気づいた。逆に「ランボー」や「コマンドー」には色気なんて一切無い。ランボーはコー・バオ(注22)に指一本触れないし、コーがまた全くエロくない貧相な身体つきなんですよね。服もブラックパジャマで全然そそられないし。しかも川船の会話で判明した通り、ランボーは案の定パーティーではまるでモテない“リア終”だった。プロムとかでは異性相手に上手いこと言える、タキシードの似合うニヤけたジェームズ・ボンドみたいな野郎に女を全部総取りされてたのでしょう。さぞや長く苦しい童貞生活だったろうとシンパシーを禁じえません。一方のレイ・ドーン・チョン(注23)の方は超エロい身体しててその上スッチーだけれども、シュワ(注16)はベネット(注24)を殺すのに夢中で目もくれない。どっちの映画にも色気のかけらもない。小学生にそうした“色気”は解らないから、当時はひたすらロジャー・ムーアはチャラく見えて、やっぱりアクション見るならスタローンやシュワルツェネッガーだったんです。まして中学生の頃には「ダイ・ハード」(注25)が出てきちゃいましたから、もはや「ランボー」や「コマンドー」ですら、「なに鍛えたのを見せようとして、わざわざ裸になって戦ってんの?(笑)」と嘘っぽく見えるほど、アクションがリアルになってしまった。なので、かえってダニエル・クレイグ版のこのリアル路線、暗さとか渋さが、僕は個人的に本当に心から大好きなんですよ。このリアリズムこそ、僕が長年「007」に求めていたものだったんです! 注1:1968年生まれ。イギリスの俳優。’06年以降、6代目ジェームズ・ボンド俳優として活躍。「007」シリーズ以外では、「エリザベス」(’98)や「ロード・トゥ・パーディション」(’02)などに出演している。注2:「007/ドクター・ノオ」(’62)以降、現在までに通算24本作られているスパイ映画。’60年代の世界的なスパイ映画ブームの起爆剤となり、映画のみならずテレビドラマでも数多くの亜流作品を生み出した。注3:2012年制作。イギリス・アメリカ映画。NATOのスパイ情報が盗まれた上に英国諜報部の本部が爆破され、ジェームズ・ボンドが窮地に陥る。サム・メンデス監督。注4:2008年制作。イギリス・アメリカ映画。愛する女性を殺されて復讐に燃えるジェームズ・ボンドが国際的秘密組織と戦う。マーク・フォースター監督。注5:2015年制作。イギリス・アメリカ映画。ジェームズ・ボンドが巨大な悪の組織スペクターの陰謀に挑む。サム・メンデス監督。注6:2015年制作。イギリス・アメリカ映画。幼い頃に父親を亡くした貧しい若者が、スパイ組織キングスマンにスカウトされて一流エージェントへと育てられる。コリン・ファース主演、マシュー・ヴォーン監督。注7:2015年制作。アメリカ映画。米国スパイのナポレオン・ソロとソ連スパイのイリア・クリアキンがコンビを組み、ヨーロッパを舞台に巨大なテロ計画に立ち向かう。’60年代の人気ドラマ「0011 ナポレオン・ソロ」の映画リメイク。ヘンリー・カヴィル主演、ガイ・リッチー監督。注8:1927年生まれ。イギリスの俳優。3代目ジェームズ・ボンド俳優として、1973年の「007/死ぬのは奴らだ」以降、7本の「007」映画に主演。そのほか、「ワイルドギース」(’78)や「キャノンボール」(’80)などに出演。注9:1930年生まれ。イギリスの俳優。初代ジェームズ・ボンド俳優としてブレイクし、通算6本の「007」映画に主演。その後も「風とライオン」(’75)や「アンタッチャブル」(’87)、「レッド・オクトーバーを追え!」(’90)など代表作は多い。注10:オイルショックで弱冷房が奨励された’79年に考案された半袖の準スーツ。推進した大平首相ら政治家が自ら着用してモデルを務めるという愚を犯したことで、オッサンくさいイメージがインパクト絶大に人々の間に定着してしまい、一般には全く普及しなかった。以後リバイバルブームが起きることもなく、ファッション史上にも稀な失敗例として今日に語り継がれている。なお、ロジャー・ムーア扮するボンドのスタイルは、正しくはサファリ・ルック。注11:1982年制作。アメリカ映画。ベトナム帰還兵ランボーの活躍を描く。以降、現在までに3本の続編が作られている。シルヴェスター・スタローン主演、テッド・コッチェフ監督。注12:1985年制作。アメリカ映画。娘を誘拐された元軍人が南米の独裁国家を相手に戦う。アーノルド・シュワルツェネッガー主演、マーク・L・レスター監督。注13:1946年生まれ。アメリカの俳優。アカデミー作品賞に輝く「ロッキー」(’75)シリーズを筆頭に、「ランボー」シリーズや「エクスペンダブルズ」(’10)シリーズなど数多くの代表作を持つ。注14:「ランボー」で夜の田舎町で市街戦を起こすランボーが乱射する機関銃。「ランボー/怒りの脱出」ではヘリの銃座に備え付けられていたものを取り外して片手で撃ち、CIA秘密作戦本部に生還してからも乱射する。注15:「ランボー/怒りの脱出」のポスターアートでランボーが抱えているソ連製の対戦車ロケットランチャー。注16:ボンドの愛銃だがもともとはドイツ製で、戦前、ドイツ警察のために作られた短銃身の小型モデルだが、ナチスの将校も愛用。ヒトラーその人も所持しており、自殺に使ったのもこの拳銃。注17:イギリスの秘密諜報部の通称。注18:「007/私を愛したスパイ 」と「007/ムーンレイカー」に出てきた殺し屋。身長2mを超える無口な大男で、歯が金属で鎖をも嚙み切り、怪力でバンの車体を紙のように引き裂き、かつ、不死身。しまいにはロマンスまで描かれた。注19:アーノルド・シュワルツェネッガーが演じた「コマンドー」の主人公。肉弾アクションだけでなく、「お前は最後に殺すと言ったのを覚えてるか?ありゃ嘘だ」、「これで腐ったガスも抜けるだろう」など皮肉の効いた数々の名台詞で人気。注20:1939年生まれ。日本の声優。ロジャー・ムーアやロバート・レッドフォードなどの吹き替えで知られる。2008年死去。注21:‘70年代はディスコ・ブームとフリーセックスの時代だったが、前者は’80年代ニューウェーブ・ロックの台頭によって、後者はHIVの蔓延によって衰退する。注22:「ランボー/怒りの脱出」のヒロイン。演じるのはシンガポール出身のジュリア・ニクソン=ソウルで、1958年生まれ。これがデビュー作。注23:1961年生まれ。「コマンドー」のヒロインであるシンディを演じたカナダの女優。様々な人種の血を引いたエキゾチックな美貌とタイトスカート映えするヒップで「コマンドー」を彩った。注24:「コマンドー」の悪役。「銃は必要ねぇぜ、ウヘヘヘヘ、こんな銃なんかいらねぇ!野郎、ぶっ殺してやらぁ!」という決めゼリフで有名。注25:1988年制作。アメリカ映画。休暇の刑事がたまたま寄った妻の勤務先でテロに巻き込まれる。人間離れしたキャラクターを一人も出さず、普通の男が単身、犯罪集団と戦う様をリアルに描出し、アクション映画の流れを変えた。ブルース・ウィリス主演、ジョン・マクティアナン監督。 次ページ >> 僕だって「007」シリーズの好きな理由ってボンドガールですから(なかざわ) 『007/カジノ・ロワイヤル(2006)』CASINO ROYALE (2006) © 2006 DANJAQ, LLC, UNITED ARTISTS CORPORATION AND COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC.. All Rights Reserved. 『007/慰めの報酬』QUANTUM OF SOLACE © 2008 DANJAQ, LLC, UNITED ARTISTS CORPORATION AND COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC.. All Rights Reserved. 『007/スカイフォール 』Skyfall © 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. Skyfall, 007 Gun Logo andrelated James Bond Trademarks © 1962-2013 Danjaq, LLC and United Artists Corporation. Skyfall, 007 and related James Bond Trademarks are trademarks of Danjaq, LLC. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
セイ・エニシング
キャメロン・クロウ監督×ジョン・キューザック主演、心に残る青春ラブストーリーの名作!
平凡な青年ロイドが恋をしたのは、卒業式のスピーチを務めた才色兼備のダイアン…。育った環境も夢も全く異なる二人の恋の行方は…? 主演ジョン・キューザックの魅力溢れる、瑞々しく切ないラブストーリー。
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COLUMN/コラム2016.04.06
男たちのシネマ愛⑥愛すべき、クレイグ・ボンド。そして、愛すべき洋画の未来。(2)
飯森:ティモシー・ダルトン(注26)以降は新作が出るたんびにリアルタイムで追いかけてもきましたが、実は僕がちゃんと積極的に「007」シリーズを見るようになったのは、恥ずかしながらだいぶ遅れて’90年代の半ばなんです。確か’94年だったと思うんですが、「STUDIO VOICE」(注27)という雑誌で’60年代のお洒落でキュートな女の子を回顧する特集が組まれまして、その中の見開きページで往年のボンドガールたちが紹介されていたんです。ショーン・コネリー時代の。要は、昔のボンドガール(注28)はレトロなキューティーの見本であると。そこで初めて「007」シリーズに積極的・肯定的に興味を持ったんです。アクションとしてではなくボンドガールのダサ可愛さが入口だったわけです。なので、邪道ですよね。王道のファンからは怒られてしまうかもしれません。 なかざわ:いや、それは全然アリですよ。僕だって「007」シリーズを好きな理由ってボンドガールですから(笑)。そして、ダニエル・クレイグ版「007」シリーズで一番物足りなさを感じるのもボンドガールなんです。「慰めの報酬」のオルガ・キュリレンコ(注29)とか大好きですけれど、全体的に見渡すと地味じゃないですか。特に「スペクター」のレア・セドゥ(注30)は見終わっても顔が思い出せないくらいでしたし。かえって出番が10分そこらのモニカ・ベルッチ(注31)の方が目立っていた。 飯森:その発言はレア・セドゥ崇拝者の僕としては聞き捨てなりませんねえ(笑)。まぁ、女の趣味論争ほど勝者なき不毛な議論もないからやめとくとして、いや、確かに仰ることは分かりますよ。エヴァ・グリーン(注32)がボンドの運命の人だと言われてもピンと来ない。そんなに深く心が結びついてるように描かれてたっけ?ずいぶんと唐突ですな!と。オルガ・キュリレンコだってあまりボンドと絡まないでしょ?っていうか絡み、つまりセックスが一回も無い。ボンド映画が清く正しい男女交際って、なんだそれ?と。お前はランボーと違ってヤリチンが売りだろ、とかね。この2人は女優として普段は大好物なだけに、もうちょっと扱いを印象的にしてあげてほしかったですよね。ただ、「スカイフォール」はボンドガールがジュディ・デンチ(注33)でしょ?あれにはやられました!これはもう反則としか言いようがない!女の趣味論争に決して発展しようがない。誰しも認めざるをえない。こんな裏技的なボンドガールの解釈があっていいものかと。歴代最高(齢)のボンドガールですよ(笑)。 なかざわ:ロッテ・レーニャ(注34)という人もいましたが(笑)、ジュディ・デンチはなんたってM(注35)ですからね。 飯森:そういう面でも「スカイフォール」は凄い!まあ、賛否両論あるみたいですけれどね。あんなの「007」じゃないという声もありますし。かえって「スペクター」が最高だという意見もあります。でも、やっぱり僕にとっては「スカイフォール」なんですよ。まさかボンドガールで泣かされるとは思いませんでしたし。まあ、途中で殺されちゃう方の、普通に若いきれいどころのボンドガールは全然目立ってなくて気の毒でしたけどね。ああいうポジションの人ってよくいますよね。出てきてすぐに金粉塗ったくられて殺されちゃうとか(笑)。 なかざわ:「007/ゴールドフィンガー」(注36)のシャーリー・イートン(注37)ですね。ボンドガールにもメインとサブがいますから。だいたいサブは殺されるか悪役か。悪役ボンドガールといえば、キャロライン・マンロー(注38)とかファムケ・ヤンセン(注39)とか大好きです。 飯森:どちらも人を殺してると感じて濡れてくるという。漫画チックですよね。 なかざわ:それはそうですね。その究極が、番外編だけれど「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」(注40)のバーバラ・カレラ(注41)。あれは最高だった! 飯森:シンドバッドみたいな衣装で出てきて。 なかざわ:しかも最後は爆死ですから(笑)。 飯森:そういう意味では、地に足のついているダニエル・クレイグ版ボンドガールというのは、確かに地味といえば地味ですよね。リアルな女性の延長線上にいるキャラクターですから。 なかざわ:まあ、それがダニエル・クレイグ版「007」シリーズのカラーですよね。 飯森:この、地に足がいている、というのは一事が万事に言えることで、悪の組織がお洒落なラウンジ系インテリアの秘密基地にいて派手な揃いのユニフォーム着てたりとか、Q(注42)の秘密兵器めかしたものも出てこないじゃないですか。 なかざわ:確かに発明品は出てくるけれど、みんなが連想する「007」シリーズのガジェットではない。現実的なんですよね。 飯森:そうなんですよ。僕はロジャー・ムーア時代なんかの荒唐無稽な秘密兵器に萎えを感じていたので、こういう姿勢もとても心地よかったです。 なかざわ:なるほど。逆に僕は荒唐無稽な秘密兵器が大好きなんですけれどね(笑)。 飯森:あとはスーツですよ。「007」というと新作が公開されるたびに男性ファッション誌で特集が組まれますよね。何十万円もする高級スーツ着た公務員スパイなんて現実にはいないだろと思いますが、ボンドのスーツスタイルはメンズファッション的に昔からサラリーマンのお手本だった。でも、例えばピアース・ブロスナン(注43)のクラシコイタリア(注44)のコンサバすぎるスーツなんて、ギャグすれすれじゃないですか。それこそ「キングスマン」ですよ。あっちはサヴィル・ロウ(注45)の方でしたが。どっちにしても今の時代だとコスプレ感が出ちゃう。その点、トム・フォード(注46)のモード系スーツをスタイリッシュに着こなすダニエル・クレイグは、まさしく今のスパイ。そういう点でも新しかったと思いますね。 なかざわ:それまでのボンド・ファッションは前時代的過ぎるというか、一種のファンタジーですね。 飯森:そういうところも僕はクレイグ・ボンドが大好きで、中でも「スカイフォール」は最高だと思っています。「カジノ・ロワイヤル」も「慰めの報酬」も、言ってみれば「スカイフォール」でイクための前戯です。この作品で真の「007」になるわけじゃないですか。「カジノ・ロワイヤル」では当初「007」ですらなかったですから。 なかざわ:ここで一旦、シリーズがリセットされていますからね。 飯森:なのでファッション的にも最初はアロハ着たド汚いチンピラみたいな姿で出てくるんですよね。ガンバレル・シークェンス(注47)でのスーツ姿は、タイトなトム・フォードのシルエットとは真逆の、オーバーサイズで見苦しいダボダボ・ヨレヨレ汚スーツ姿。しかも場所が薄汚い便所なんですよ、ションベンが足元に跳ねてるような。もう、見るからに三下の鉄砲玉なんです。「カジノ・ロワイヤル」のラストでようやくスーツの似合う男にはなれた。でも、このラストシーンではピアース・ブロスナンと同じブランド、イタリアのブリオーニ(注48)の物を着てるんですよね。スリーピースのまぁ大時代な代物を。だから今見ると若干クレイグ・ボンドらしからぬ違和感がある。タイトなトム・フォード スタイルになるのは次の「慰めの報酬」からで、そこからさらに紆余曲折を経て、「スカイフォール」のラストで真の「007」の新たな始まりが描かれるわけです。それまでは過去のお馴染みのストーリーを脱構築するような試みがなされていましたけれど、そのプロセスが完全にここで完了して、いつもの「007」が始まりますよ、というのが「スカイフォール」のエピローグでした。なので、「スペクター」は驚くぐらい昔の「007」っぽくなっていましたよね。 なかざわ:まあ、確かにそうかもしれません。 飯森:なかざわさんが仰るように、決して明るくはない。でも秘密兵器はバンバン出てきますし。 なかざわ:列車での格闘シーンなどはまさに「ロシアより愛をこめて」(注49)へのオマージュでしたね。 飯森:そしてついにスペクターを出してきましたからね。とんでもない悪事を働いて金儲けをする多国籍企業という荒唐無稽な敵の登場です。悪の組織のユニフォームもオシャレ秘密基地もちゃんと出てくる。それまでのリアリズムから一気に突き抜けました。でも、これが本来の「007」シリーズの持ち味であって、それまでの3本が例外的なポジションにあった。そう考えると、僕の好きなクレイグ・ボンドというのが特別な存在だったんだなと思います。そして、「スペクター」では元の路線へ戻ろうとしているわけですね。 なかざわ:そこが僕にはちょっと中途半端に思えたのかもしれません。冒頭のメキシコでのアクションは文句なしに素晴らしかったですけれど。 飯森:でもファッションも今回は特に良かったと思いますよ。砂漠で車を待っているシーンのダニエル・クレイグとレア・セドゥの服装がまた実にオーセンティックなリゾート・スタイルでカッコいいのなんの! ボンドの着ているベージュのコットン・サマー・スーツといい、レア・セドゥの白いバギー・パンツといい。 なかざわ:レトロなスタイリッシュさですね。 飯森:「カサブランカ」(注50)みたい。でも、ちゃんと2015年仕様にアップデートされている。今回あのハイウエストのバギー・パンツはいてる時のレア・セドゥのケツときたら、おおおー!という。それまでのダニエル・クレイグ版ボンドガールって、みんな華奢で線が細かったじゃないですか、ジュディ・デンチは別として(笑)。エヴァ・グリーンもオルガ・キュリレンコもよく脱いでる女優さんだから、実は美巨乳だって知ってますけど、少なくとも服を着た状態の印象としてはスレンダー。そこへくると「スペクター」はレア・セドゥもモニカ・ベルッチも豊満でグラマラス。これぞまさにオレ好み!もともとボンドガールってそういうもんじゃないですか。ウルスラ・アンドレス(注51)も、オナー・ブラックマン(注52)も、クロディーヌ・オージェ(注53)も、そして我らが浜美枝(注54)も。グラビアアイドル的な肉体の持ち主が多いですよね。男性客を意識するわけですから、女性に受けるような細身の人よりは、男好きのする肉感的な体つきの人の方がボンドガールには相応しい。今回の2人はまさにドンピシャですよ! なかざわ:モニカ・ベルッチなんてエロの塊ですもんね。フェロモンがダダ漏れというか。まさにエロスの化身。 飯森:僕は熟女趣味は無いんで「マレーナ」の頃ならともかく今だとやっぱりレア・セドゥなんだよな。それまでの映画でもバンバン脱いでいるし、かなり際どいヌード写真まで平気で撮らせている人で、名門の超お嬢様だからか我々平民に施しを惜しまないところが最大級の感謝と尊敬に値する。まぁモニカ・ベルッチも出し惜しみなんてしたためしがない人ですが(笑)。そんなわけで、ダニエル・クレイグ版「007」シリーズは超最高!というのが結論です。さあ、これでノルマは達成したぞ!で、せっかくなので、あちらの話もしましょうか? 注26:1946年生まれ。イギリスの俳優。1987年の『007/リビング・デイライツ』と1989年の『007/消されたライセンス』で4代目ジェームズ・ボンドを務めた。注27:日本の高級カルチャー雑誌。1976年に創刊され、ハイセンスな誌面作りと知的な特集記事で人気を集めたが、2009年に休刊。2015年に復活している。注28:「007」シリーズに登場するヒロインたちの呼称。注29:1979年生まれ。ウクライナ出身の女優。「007/慰めの報酬」(’08)でブレイクし、以降も「オブリビオン」(’12)や「スパイ・レジェンド」(’14)などで活躍。注30:1985年生まれ。フランスの女優。ハリウッド進出作「イングロリアス・バスターズ」(’09)で脚光を浴び、「アデル、ブルーは熱い色」(’13)の演技で高い評価を得た。注31:1964年生まれ、イタリアの女優。世界的なトップ・モデルから女優へ転身。「ドーベルマン」(’97)や「マレーナ」(’00)で絶賛され、「マトリックス・リローデッド」(’03)などハリウッド映画への出演も多い。注32:1980年生まれ。フランスの女優。母親は往年の名女優マルレーヌ・ジョベール。「キングダム・オブ・ヘブン」(’05)で注目される。そのほか、「ダーク・シャドウ」(’12)や「シン・シティ 復讐の女神」(’14)などに出演。注33:1934年生まれ。イギリスの女優。若い頃は主に舞台の大物女優として活躍。’80年代から映画にも本格進出し、「Queen Victoria 至上の恋」(’97)で初めてアカデミー主演女優賞にノミネート。「恋におちたシェイクスピア」(’99)で同助演女優賞を獲得し、以降もたびたびオスカー候補となっている。注34:1898年生まれ、オーストリア出身の歌手。若かりし頃、第一次大戦後のナチス独裁前まで、ドイツが民主的で華やかだったワイマール時代に活躍し、“名花”と呼ばれた。65歳の時「007/ロシアより愛をこめて」(’63)に悪役として出演。注35:ジェームズ・ボンドの上司でMI6の局長。もともとは男性の設定だったが、「007/ゴールデンアイ」(’95)以降、7作に渡って女優ジュディ・デンチが演じた。注36:1964年制作。イギリス・アメリカ映画。大富豪ゴールドフィンガーの陰謀にジェームズ・ボンドが立ち向かう。ショーン・コネリー主演、ガイ・ハミルトン監督。注37:1936年生まれ。イギリスの女優。「007/ゴールドフィンガー」で脚光を浴び、以降は「姿なき殺人者」(’65)や「女奴隷の復讐」(’68)などB級映画で活躍。注38:1950年生まれ。イギリスの女優。「ドラキュラ’72」(’72)や「地底王国」(’76)などB級娯楽映画のセクシー女優として熱狂的なファンを獲得し、「007/私を愛したスパイ」(’77)の悪役ボンドガールを務めた。以降も「スタークラッシュ」(’78)や「マニアック」(’80)などのカルト映画で人気に。注39:1964年生まれ。オランダ出身の女優。アメリカへ留学して女優に。「007/ゴールデンアイ」の悪役ボンドガールでブレイクし、「X-メン」(’00)シリーズや「96時間」(’08)シリーズなどで活躍している。注40:1983年制作。アメリカ映画。初代ボンド俳優ショーン・コネリーを主演に、本家「007」シリーズとは別の制作会社が作った番外編的な「007」映画。アーヴィン・カーシュナー監督。注41:1951年生まれ。アメリカの女優。「ドクター・モローの島」(’77)の豹女役で注目され、「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」の悪女ファティマ役でゴールデン・グローブ賞候補に。エキゾチックな顔立ちのセクシー女優として根強い人気を持つ。注42:MI6内でスパイ用秘密兵器の開発を指揮している“発明オジサン”。数々の珍発明を生み、長年デスモンド・リュウェリンが演じてきたが、「スカイフォール」でベン・ウィショーが起用され、ダニエル・クレイグとの絡みが一部の熱心な女性ファンたちを喜ばせた。注43:1953年生まれ。アイルランドの俳優。「007/ゴールデンアイ」(’95)で5代目ジェームズ・ボンドに起用され、「007/ダイ・アナザー・デイ」(’02)まで4作品にわたって務めた。注44:クラッシックなイタリアン・スーツ・スタイルのこと。英国のトラディショナルなスタイルにイタリアならではの軽さと華やかさが加わる。注45:ロンドン中心部にある有名なファッション・ストリート。英国トラディショナル・スタイルの高級仕立服店が数多く並び、日本の「背広」の語源だという説もある。注46:1961年生まれ。イギリスのファッション・デザイナー。ビヨンセやウィル・スミス、ヒュー・ジャックマン、ジェニファー・ロペスなどハリウッド・セレブにもファンが多い。映画監督としても知られる。注47:「007」 シリーズの冒頭に必ず出てくる、銃口からタキシード姿のボンドを覗き、狙いを定めたところで逆にボンドに撃たれ、銃口からの視点が血に染まりヨロヨロと揺れながら倒れていく、という表現のシーン。注48:1945年にローマで創業したクリシコ・イタリアの代表的ブランド。仕立てより“世界最高の既製服”としての名声が高い。注49:1963年制作。イギリス・アメリカ映画。ジェームズ・ボンドが秘密組織スペクターに命を狙われる。ショーン・コネリー主演、テレンス・ヤング監督。注50:1942年制作。アメリカ映画。モロッコのカサブランカを舞台に、運命に翻弄される男女の切ない愛を描く。古典的なお洒落映画としても有名。ハンフリー・ボガード主演、マイケル・カーティス監督。注51:1936年生まれ。スイス出身の女優。「007/ドクター・ノオ」(’62)で初代ボンドガールに起用され、そのグラマラスな肉体で大ブレイク。「炎の女」(’65)や「カトマンズの男」(’65)、「レッド・サン」(’71)など、世界各国の映画で活躍した。注52:1925年生まれ。イギリスの女優。テレビドラマ「おしゃれ(秘)探偵」(‘62~’64)の黒いレザースーツに身を包んだ女探偵キャシー役で人気を博し、「007/ゴールドフィンガー」のボンドガールとしてブレイク。近年も「ブリジット・ジョーンズの日記」(’01)や「ロンドンゾンビ紀行」(’12)などで元気な姿を見せている。注53:1942年生まれ。フランスの女優。「007/サンダーボール作戦」(’65)のボンドガールで世界的な注目を集め、以降も「トリプルクロス」(’66)や「エスカレーション」(’68)、「フリック・ストーリー」(’75)などヨーロッパの人気女優として活躍。注54:1943年生まれ。日本の女優。東宝映画の活発な若手女優としてクレイジー・キャッツなどの映画でヒロイン役を務め、「007は二度死ぬ」(’07)のボンドガールに起用された。テレビの司会者としても人気に。 次ページ >> 僕は「007」の二番煎じ的なスパイ映画が昔から大好きなんです。(なかざわ) 『007/カジノ・ロワイヤル(2006)』CASINO ROYALE (2006) © 2006 DANJAQ, LLC, UNITED ARTISTS CORPORATION AND COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC.. 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