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COLUMN/コラム2018.12.19
“映画史”の転換点に立ち会った2人…“スライ”と“ボブ”がスクリーン上で邂逅『コップランド』
「スタローン壮絶。デ・ニーロ超然。」 これが本作『コップランド』が、1998年2月に日本公開された際のキャッチフレーズ。そこからわかる通り、本作最大の売りは、シルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロ、2大スターの“初共演”だった。 そもそもこの2人、同時代のアメリカ映画を牽引して来た存在ながら、共演など「ありえない」ことと、長らく思われてきた。それは偏に、スターとしての、それぞれの歩みの違いによるものだった。 シルベスター・スタローン、通称“スライ” 。スターとしての全盛期=1980年代から90年代に掛けては、鍛え上げたムキムキの肉体で、ボディビルダー出身のアーノルド・シュワルツェネッガーと、“アクションスターNo1”の座を争っていたイメージが強い。 そんな中でも代表作はと問われれば、誰もがまずは『ロッキー』(1976~ )シリーズ、続いて『ランボー』(1982~ )シリーズを挙げるであろう。特にプロボクサーのロッキー・バルボア役は、スタローンが最初に演じてから40年以上経った今も、『ロッキー』のスピンオフである『クリード』シリーズに、登場し続けている。 一方のロバート・デ・ニーロ、愛称“ボブ”の場合は、“デ・ニーロ・アプローチ”という言葉が一般化するほどに、徹底した役作りを行う“演技派”といったイメージが、まずは浮かぶ。 “デ・ニーロ・アプローチ”の具体例は、枚挙に暇がない。出世作『ゴッドファーザーPARTII』(1974)では、前作でマーロン・ブランドが演じたドン・ヴィトー・コルレオーネの若き日を演じるため、コルレオーネの出身地という設定のイタリア・シチリア島に住み、その訛りが入ったイタリア語をマスター。その上で、ブランドのしゃがれ声を完コピした。 『タクシードライバー』(1976)の撮影前には、ニューヨークで実際にタクシー運転手として勤務したデ・ニーロ。街を流して乗客を乗せたりもした。 特に有名なのが、実在のプロボクシングミドル級チャンピオン、ジェイク・ラモッタを演じた『レイジング・ブル』(1980)での役作り。まずトレーニングで鋼のような肉体を作ってボクサーを演じた後、引退後に太った様を表現するため、短期間に体重を27キロ増やすという荒業をやってのけた。 そんなこんなで、パブリックイメージとしては、マッチョなアクションスターのスライと、全身全霊賭けて役になり切るボブ。そんな2人の共演など、「ありえない」ことになっていたわけである。 しかしこの2人の俳優の歩みを振り返ると、スタートの時点では、そんなに縁遠いところに居たわけではない。 その起点は、1976年。 まずはマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』が、2月にアメリカで公開された。主演のデ・ニーロが演じたのは、「ベトナム帰りの元海兵隊員」を名乗る、不眠症の孤独なタクシー運転手トラヴィス。彼はニューヨークの夜の街を走り続ける内に、次第に狂気を募らせて、やがて銃を携帯。過激で異常な行動へと、走るようになる…。 デ・ニーロは、この2年前の『ゴッドファーザーPARTⅡ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞して、「最も期待される若手俳優」という位置を既に占めていたが、『タクシー…』はメジャー作品としては、初の主演作。公開後の5月には『タクシー…』が、「カンヌ映画祭」の最高賞である“パルム・ドール”を受賞したことなどもあり、その評価を更に高めることとなった。 同じ年の11月に公開されたのが、スタローンが脚本を書き主演を務めた、『ロッキー』である。うだつの上がらない30代の三流ボクサーであるロッキーが、世界チャンピオンから“咬ませ犬”として指名され、挑戦することになる。とても勝ち目がない勝負と思われたが、「もし最終ラウンドまでリングの上に立っていられたら、自分がただのゴロツキではないことが証明できる」と、愛する女性に告げて、ファイトに挑んでいく…。 この作品が製作され公開に至るまでの経緯は、もはやハリウッドの伝説になっている。ある時、プロボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチを、偶然に視聴したスタローン。偉大なチャンピオン=モハメド・アリに、ノーマークのロートルボクサー=チャック・ウェプナーが挑んで、大善戦したのを目の当たりにして感動。3日間で『ロッキー』の脚本を書き上げた。持ち込まれたプロダクション側は、スター俳優の起用を前提に、脚本に数千万円の値を付けた。しかし当時まったく無名の存在だったスタローンは、自らが主演することを最後まで譲らず、結局は最低ランクの資金で製作されることとなった。 そうして完成した『ロッキー』は、公開されるや誰もが予想しなかったほどの大ヒットに!正に、“アメリカン・ドリーム”を体現する作品となった。 デ・ニーロとスタローンにとって、“主演スター”としての第一歩になった、『タクシードライバー』と『ロッキー』は、その年の賞レースを席捲。翌77年の3月に開催されたアカデミー賞で、2人は“主演男優賞”部門で覇を競うこととなった。 両作は“作品賞”部門にも、共にノミネート。この激突はいま振り返れば、映画史的に非常に興味深い。 1967年の『俺たちに明日はない』以来、70年代前半まで映画シーンをリードしてきたのが、“アメリカン・ニューシネマ”というムーブメント。ベトナム戦争の泥沼化やウォーターゲート事件などで、アメリカの若者たちの間で自国への信頼が崩壊する中で、アンチヒーローが主人公で、アンチハッピーエンドが特徴的な作品が、次々と作られていった。 『タクシー…』は、そんな夢も希望もない内容の、“アメリカン・ニューシネマ”最後の作品と位置付けられている。 一方で『ロッキー』は、当初は“ニューシネマ”さながらに、主人公が試合を途中で投げ出す展開も考えられていたというが、結局は、“アメリカン・ドリーム”を高らかに歌い上げる結末を迎える。今では、翌年の『スター・ウォーズ』第1作(1977)と合わせて、“ニューシネマ”に引導を渡す役割を果たしたと言われている。 そんな因縁はさて置き、1976年度のアカデミー賞“主演男優賞”部門に、話を戻す。海外のニュースがネットで瞬時に伝わる今とは違って当時は、アカデミー賞の戦前予想は、月刊の“映画雑誌”などで読む他はなかった。それによると、“主演男優賞”はデ・ニーロ本命、対抗がスタローンといった雰囲気が伝わってきた。 ところが、ところがである。蓋を開けてみると、“主演男優賞”を獲得したのは、『ネットワーク』に出演したピーター・フィンチだった。 シドニー・ルメット監督が、視聴率獲得競争を描いてメディア批判を行ったこの作品に於いて、徐々に狂気に蝕まれていく報道キャスターを演じたフィンチは、役どころ的には、本来は“助演”ノミネートが相応しいと言われていた。しかしノミネート発表直後に、心不全で急死。同情票を集めることとなり、アカデミー賞の演技部門史上初めて、死後にオスカー像が贈られることとなったのである。 『ネットワーク』もフィンチの演技も、腐す気はまったくない。しかし40余年経った今、この結果と関係なく、『タクシー…』のデ・ニーロや『ロッキー』のスタローンの方が、未だに熱く語られる存在であることを考えると、賞など正に水物であることが、よくわかる。 とはいえ“アカデミー賞”が、映画人にとって最大の栄誉の一つであることには、疑いもない。『タクシー…』で本命と目されながらも逃したデ・ニーロは、1978年度にマイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』での2度目のノミネートを経て、80年度にスコセッシ監督の『レイジング・ブル』で、遂に“主演男優賞”のオスカー像を手にすることとなる。 これ以降もデ・ニーロは、名コンビとなったスコセッシ監督作品他で、多くの者がお手本にするような俳優として、キャリアを積み重ねていく。そしてアカデミー賞にも、度々ノミネートされることとなる。 一方のスタローン。『ロッキー』では“主演男優賞”に加えて、“脚本賞”にもノミネートされていたが、こちらも『ネットワーク』脚本のパディ・チャイエフスキーに攫われてしまった。『ロッキー』自体は、“作品賞”、“監督賞”、“編集賞”の3部門を制覇。『タクシードライバー』が無冠に終わったのに対し、大勝利と言える成果を収めたが、以降スタローンとアカデミー賞は、長く疎遠な関係となる。 『ロッキー』で大成功を収めた後の主演作となったのが、『フィスト』(1978)。スタローンは、労働組合の大物指導者でありながら、マフィアとの癒着が噂され、最終的には謎の失踪を遂げた実在の人物、ジミー・ホッファをモデルにした主人公を演じた。監督に起用されたのは、『夜の大捜査線』(1967)でアカデミー賞監督賞を受賞し、他にも『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1973)などの作品を手掛けてきた、ノーマン・ジュイスン。 明らかに賞狙いの作品であった『フィスト』だが、大きな話題になることもない失敗作に終わった。同じ1978年には、スタローンが初監督もした主演作『パラダイス・アレイ』も公開されたが、『ロッキー』に続くスタローン主演作のヒットは、翌79年の続編、『ロッキー2』まで待たねばならなかった。 このように、暫しは『ロッキー』シリーズ以外のヒットがなかったスタローンだが、1980年代に、ベトナムから帰還したスーパーソルジャーを主人公にした、『ランボー』シリーズがスタート!スタローンは、アクションスターとしての地位を確立していくと同時に、1984年以降は、毎年アカデミー賞授賞式の前夜に「最低」の映画を選んで表彰する、“ゴールデンラズベリー賞=ラジ―賞”受賞の常連となっていった…。 “マネーメイキングスター”としては、常にTOPの座を争いながらも、その“演技”が評価されることは、まず「ない」存在となったスタローン。しかし彼もスタート時点は、マーロン・ブランドのような性格俳優に憧れて、初主演作では“アカデミー賞”にノミネートされた、立派な“俳優”である。アクションではない“演技”で注目されたいという気持ちは、常にあったものと思われる。 そんな彼が、50代を迎えて主演作に選んだのが、本作『コップランド』であった。ニューヨーク市警の警官が多く住むため、“コップランド”と呼ばれる郊外の町ギャリソンを舞台にしたこの作品で、スタローンが演じたのは、落ちこぼれでやる気のない中年保安官。しかし、殺人まで絡んだ警察内の不正に目を瞑ることが出来なくなり、遂には孤高の戦いを繰り広げることとなる。 スタローンは、低予算ながらドラマ性の高い本作への出演を、ほぼノーギャラで受けた。そして主人公の保安官の愚鈍さを表すために、15キロも体重を増やす、“デ・ニーロ・アプローチ”ばりの役作りを行ったという。 一方本作でのデ・ニーロは、ニューヨーク市警の内務調査官役。コップランドの警官たちの不正を暴こうとする中で、スタローンの正義感を利用する、狡猾な役どころである。とはいえ、「2大スター共演」を売りにした割りには、登場シーンもさほど多くはない、ゲスト的な出演の仕方と言える。劇場公開時には、その辺りが何とも物足りなかったが、いま見返すと、短い出番ながらさすがに的確で印象的な演技をしていることに、感心する。 余談だが、スタローンとデ・ニーロは、『コップランド』から16年後に、『リベンジ・マッチ』(2013)という作品で再共演を果たしている。こちらは本格的なW主演作品で、2人の役どころは、30年前の遺恨のために、リング上で対戦する老齢のボクサー。作品的な評価は高くないが、2人の若き日が、『ロッキー』シリーズや『レイジング・ブル』のファイトシーンから抜き出されてコラージュされている辺りが、“楽屋落ち”のように楽しめる作品ではあった。 さて本作『コップランド』の話に戻ると、公開時に“俳優”スタローンの挑戦は、それなりに高く評価はされた。しかしその演技が、賞レースなどに絡むことはなかった。 スタローンとアカデミー賞との関わりは、2016年度の『クリード チャンプを継ぐ男』で“助演男優賞”にノミネートされるまで、『ロッキー』第1作以来、実に40年ものブランクを空けることとなる。候補となったのが40年前と同じく、ロッキー・バルボア役だったというのは、逆に特筆すべきことだと思うが…。◼︎ © 1997 Miramax, LLC. 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COLUMN/コラム2016.08.16
ミート・ザ・ペアレンツ2
恋人パム・バーンズ(テリー・ポロ)との結婚を、彼女の父ジャック(ロバート・デ・ニーロ)に渋々ながら認めてもらってから2年後。グレッグ・フォッカー(ベン・スティラー)は、結婚式の前にパムの両親を自分の両親に引き合わせることになった。 だが彼は恐れていた。弁護士と医師のカップルとジャックには説明していたものの、実際は父バーニー(ダスティン・ホフマン)は長い間専業主夫、母ロズ(バーブラ・ストライサンド)は高齢者専門のセックス・セラピストというジャックの価値観を超えた人々だったからだ。しかも二人とも奔放な性格で、元CIAのお堅いジャックとウマが合うはずがない。案の定、ジャックとバーニーは衝突し始め、騒動の中でパムの妊娠、そしてグレッグの隠し子疑惑まで発覚してしまう……。 『メリーに首ったけ』(98年)でトコトン不運なキャラを演じて、コメディ俳優として大ブレイクしたベン・スティラーが、ギャングや刑事といったコワモテなキャラを得意とする名優ロバート・デ・ニーロに散々にいたぶられる! 『ミート・ザ・ペアレンツ』(00年)はそんな絶妙のアイディアによって、世界中でメガヒットを記録したコメディ映画だった。 それから4年後に公開されたこの続編では、『Meet the Fockers(フォッカー家との面会)』という原題通り、ジャックの方が未来の義理の息子の一家と対面することになる。てっきりグレッグ同様の小心者の家族なのかと思いきや、息子とは正反対の豪快な両親という設定が意外で面白い。今作ではジャックも被害者側なのである。 そんな最強のフォッカー家の夫婦を、デ・ニーロとともに70年代のハリウッドを支えた大物俳優ダスティン・ホフマンとバーブラ・ストライサンドが扮するというサプライズ、しかもそれまで全く演じたことがなかったブッ飛んだキャラを演じるというインパクトはトンデモないものがあった。アメリカ本国だけで約2億8000万ドルという凄まじい興行収入を記録したことが、当時の笑撃を証明している。 監督のジェイ・ローチによると、当初バーニー役はバーブラの実の夫ジェームズ・ブローリン(『ウエストワールド』(73年)や『悪魔の棲む家』(79年)で知られる俳優。彼と前妻との間に生まれた子が今をときめくジョシュ・ブローリンだ)に演じてもらうことを考えていたらしい。 だが、その話が立ち消えになってしまい、ダメもとでダスティン・ホフマンに頼んだところ何故か快諾されたのだという。しかもローチが驚いたことには、『クレイマー、クレイマー』(79年)と『レインマン』(88年)で二度のアカデミー主演男優賞に輝く大名優は、バーニーそのままの天然な人だったそうなのだ。そのためか本作のホフマンは無理をしているところが全く無いどころか、無茶苦茶楽しそう。デ・ニーロとの硬軟対決もイイ味を出している。 本作で<本性>を現したホフマンは、これで肩の荷が下りたのか以後は、ウィル・フェレル主演作『主人公は僕だった』(06年)やアダム・サンドラー主演の『靴職人と魔法のミシン』(14年)、そしてジャック・ブラック扮する主人公パンダの師匠役の声を務めた『カンフー・パンダ』シリーズ(08年〜)といったコメディ映画における飄々とした脇役が当たり役となった。またストライサンドもセス・ローゲンと共演した『人生はノー・リターン ~僕とオカン、涙の3000マイル~』(12年)では、本作のロズとよく似たキャラを演じている。『ミート・ザ・ペアレンツ2』は、一時代を築いた名優たちの老後をも決定づけた重要作なのだ。 個人的には、本作におけるバーンズ家とフォッカー家の戦いには、デ・ニーロとホフマンというニューシネマ時代のスター同士の競演、真面目さと奔放さのせめぎあい以外にも、別の対立軸がひっそりと盛り込まれていると思う。それはW.A.S.P.とユダヤ系の差異だ。 W.A.S.P.とは、White Anglo-Saxon Protestant(白人のアングロ・サクソンのプロテスタント)の略称で、主にイギリスやドイツから渡ってきたプロテスタントのキリスト教徒のこと。イギリスの植民地だった時代からアメリカ社会の主流を占めているグループであり、現在までW.A.S.P.以外の大統領はジョン・F・ケネディ(カトリック教徒)とバラク・オバマ(父親がケニア人)しかいないことがその事実を証明している。 そんなW.A.S.P.の中でも支配階級と言えるのが、プレッピーと呼ばれるプレップ・スクール(名門私立高校)出身者だが、ブライス・ダナー演じるジャックの妻ディナが劇中で身につけている淡い色のサマーセーターやポロシャツのファッションはその典型といえるもの。おそらくバーンズ家はプレッピーという設定なのだろう。 一方のフォッカー家はユダヤ系だ。主に中欧や東欧に住んでいたユダヤ教徒を先祖に持つ彼らは、アメリカの人口比では2パーセントを占めるだけのマイノリティだが、ビジネスや学術の分野、そしてハリウッド映画界でも絶大なパワーを持つ。そのことによって「何か企んでいる」といった陰謀論が語られがちな人たちではあるのだけど、それは全くの言いがかりである。というのも、彼らの先祖がこうした仕事に多くいる理由は、人種差別によって農業に従事することを禁じられていたため、それ以外の分野を代々家業にせざるをえなかったからだ。そうしたら産業革命が起こり、彼らが携わっていた分野が重要視されるようになり、結果的に華やかなポジションに立ってしまったというわけだ。 ラビと呼ばれる宗教的指導者のもとで、旧約聖書の戒律に従って今も生きる超保守的な人々がいる一方で(興味がある人は、ジェシー・アイゼンバーグ主演作『バッド・トリップ 100万個のエクスタシーを密輸した男』(10年)を観てほしい)、その反動なのか無宗教や反体制の人々がやたらと多いのもユダヤ系の特徴である。ちなみにカール・マルクスやアレン・ギンズバーグ、ボブ・ディランはユダヤ系である。 もちろんフォッカー家は後者の流れに属する人々。そして彼らを演じるスティラー、ホフマン、ストライサンドも全員ユダヤ系だ。ただしスティラーの母親はカトリック(スティラーの両親であるジェリー・スティラーとアン・メイラは互いの宗教をネタにする夫婦漫才を得意芸としていた)で、W.A.S.P.役のデ・ニーロは本当はカトリック。ブライス・ダナーは自分はW.A.S.P.だが、夫だったブルース・パルトロウと娘グウィネス・パルトロウはユダヤ教徒だったりするので、現代のアメリカ社会は映画よりもずっと複雑なわけだが。 本作のラストを飾る結婚式のシーンもユダヤ教に則ったものだが、その司祭としてユダヤ教徒でも何でもないオーウェン・ウィルソン(しかもノークレジットのカメオ出演なので、当時観客はとっても驚いた)扮するケヴィンが再登場するのは、だから特大級のギャグなのである。 なおホフマンとスティラーは、ノア・バームバックの新作で、ユダヤ系家庭を描いたコメディ『Yeh Din Ka Kissa 』でも親子を演じる予定だ。しかもこの作品には『靴職人と魔法のミシン』でホフマンの息子役だったアダム・サンドラーも再びホフマンの息子役で出演する。つまりスティラーとサンドラーは兄弟を演じることになる。長年の友人同士でありながら、これまで共演の機会がなかったふたりのコメディ・レジェンドが、ホフマンというこれ以上ない重鎮の見守る中、ユダヤ系というアイデンティティのもとで共演する。個人的にはこれが今一番楽しみなコメディ映画だ。 © 2016 by UNIVERSAL STUDIOS and DREAMWORKS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2013.12.18
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年1月】にしこ
説明不要、オススメ不要かもしれませんが「アンタッチャブル」です!! 禁酒法時代のシカゴ。悪事の限りを尽くし、シカゴの帝王であったアル・カポネを財務省から肝いりでやって来た調査官エリオット・ネスはなんとかして捕まえようと息巻いていますが、警察内部までカポネの息がかかっているため、当然空回り。意気消沈のネスの前に現れたのはショーン・コネリー演じる巡回警官のマローン。マローン「この年でパトロール警官だ」ネス「どうしてだ?」マローン「この腐りきった街で唯一汚れてない警官だからさ」。 二人がスカウトする警察学校の生徒、若きアンディ・ガルシアのはにかみ笑顔もキュート。そしてそして、見所はたくさんありますが、ロバート・デ・ニーロ演じるアル・カポネの笑ってしまうほど絵に描いた様な悪役ぶりが、いろいろな意味ですごいです。ヒーローの前に立ちはだかる壁→尊敬する師との出会い→成長→悪との対決。シンプルだっていいじゃない。勧善懲悪だっていいじゃない。だって「アンタッチャブル」だもの。観終わった後の爽快感はピカ一!!そして!!この名作がザ・シネマではなんと元日1月1日に放送です!!新年の幕開けにこれほど相応しい作品があるでしょうか!!ザ・シネマでは12/28-1/5の9日間、年末年始の特別編成でヒット作から良作まで渾身のラインナップでお送りします。どうぞお楽しみ下さい!! TM & Copyright © 2013 Paramount Pictures. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2012.09.21
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年10月】飯森盛良
今はIKEAがあるあたりだ。バブル崩壊から数年後、当時はバブルの徒花の巨大屋内スキー施設が建っていて、深夜にはそのシルエットが黒々と天高くそびえ、不気味だった。ふもとは港湾倉庫街。二浪が確定し、終夜バイトをしていたオレ。人生ドン詰まり感、世に出れない焦燥感を抱きながら、海からの寒風吹きすさぶスキー施設の足元を、M-65の襟を立て、バイト先の倉庫まで週6日通った。なんだか解らんが何かに凄まじくムカついてたオレは、トラヴィスにおのれを重ねながら、何十回もこの映画を観た。家ではパッチン腕立てと東京ガスで鉄拳焙りをしてたのは言うまでもない。厨二ではなく二十歳の頃の話だ。そのおかげか、今どうにかこんな仕事で喰えてる。M-65は黄緑に色褪せたが、20年来オレのバディであり続けてくれてる。で、だ若者よ!不景気と閉塞感に窒息しそうな今日の若者よ!とりあえず、M-65を着なさい。全てはそこからだ。そしてトラヴィスを胸に、とりあえずパッチンと東京ガスをしながら、雌伏の今日を生きるのだ!そのうちなんとかなるだろう。 Copyright © 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年9月】招きネコ
ベトナム戦争の闇についてアメリカ映画が描いた作品として、そのロシアン・ルーレットというショッキングなモティーフと共に公開当時衝撃を呼んだ作品でした。それから、何度となく見ていますが、見る度に新しい発見があります。それは、戦争の恐怖とか、政治・反戦とかいうメッセージが声高に出てくるのではなく、感情移入できる人間ドラマが幾重にも織りなされ、俳優たちの演技やマイケル・チミノ監督の演出で込められた思いを何気ない一言や場面に見る度に新たに気づくからです。デ・ニーロ、メリル・ストリープ、そしてなんと言ってもウォーケン!彼らの作り出すキャラクターのなんと繊細なこと!何度でも見たい素晴らしい映画とは、こうやって一緒に年月を重ねられる作品なのかもしれません。 (C) 1978 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.06.27
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年7月】銀輪次郎
ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが豪華共演!「ゴッドファーザーPART II」の親子関係でもなく、「ヒート」の憎みあう敵同士でもない。本作では相性抜群のベテラン刑事を二人が熱演します。正直、デ・ニーロとアル・パチーノがここまで仲良くしている姿は見たことがなく、作品冒頭でお互いにニコニコしている姿は何だか不思議な気もします。とはいえ、やはり、この二人、いくつになってもすごい演技力。途中から、初めて見る仲良しの違和感も全く気にならなくなり、ぐいぐいと作品に引き込まれていきます。そして最後に用意される驚きの結末。作品の展開も小気味良く、二人の共演を安心して楽しめるオススメ作品です。 (C) 2007 RIGHTEOUS PRODUCTIONS, INC.
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COLUMN/コラム2011.11.01
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2011年11月】招きネコ
大スター、デニーロは「タクシー・ドライバー」「ゴッド・ファーザー」など強烈なカリスマで、私の中で「デニーロ様」だったのが、新たな魅力、憎めないバカな男のかわいらしさを発見し「デニーロちゃん」になったのが本作。小物の賞金稼ぎジャックと彼に捕まった保釈中の逃亡犯デュークの珍道中を笑いとアクション満載で描いたバディ・ムービーです。デニーロ作品でイチオシですが、ご本人も一番好きな出演作品らしいです。 © 1988 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.