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COLUMN/コラム2015.08.09
芸術性と優れた脚本でジャンル映画ファンを魅了する、スパニッシュ・ホラーの世界
世紀末から新世紀にかけて、Jホラーが世界的に注目を浴びていた。ハリウッド映画は、すぐさまリメイク化や新たな才能を欲し、日本版のリメイク『ザ・リング』(02年)を作り、その続編『ザ・リング2』(05年)では、オリジナル版の中田秀夫を監督に抜擢した。さらに清水崇も、ハリウッド版リメイク『THE JUON/呪怨』(04年)とその続編『呪怨 パンデミック』(06年)の監督を手がけた。それ以外にもJホラーの世界躍進は凄まじかったが、それに負けず劣らずの勢いにあったのが、スパニッシュ・ホラーだった。 それ以前のスパニッシュ・ホラーは、独特なテイストで強烈なインパクトを放つものが多かった。稀代の怪優ポール・ナッチー主演の『ヘルショック 戦慄の蘇生実験』(72年)、イギリスとの合作による怪作『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急“地獄”行』(72年)、オリジナリティ溢れる『エル・ゾンビ』シリーズ全4作(71~75年)、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』(68年)の換骨奪胎版といえる『悪魔の墓場』(74年)、ナルシソ・イバニエス・セラドール監督の伝説的名作『ザ・チャイルド』(76年)など。 でもJホラーと共に世界的に脚光を浴びてきた現代のスパニッシュ・ホラーは、画家サルバドール・ダリや映像作家ルイス・ブニュエルらシュールレアリスムの芸術家を多数生んだお国柄を反映してか、恐怖の秀逸な設定と共にキメの細かな映像を重視し、多かれ少なかれ芸術性を感じさせるような濃密なドラマを構築している。 ペドロ・アルモドバルが発掘した異才アレックス・デ・ラ・イグレシアも代表的な映像作家といえるだろうが、現代のスパニッシュ・ホラーの起爆剤になったのは、新進気鋭のジャウマ・バラゲロの監督デビュー作『ネイムレス 無名恐怖』(99年)が注目されてからだと思う。バラゲロは次いでアメリカとの合作『ダークネス』(02年)を手がけ、スパニッシュ・ホラーの次代を担う監督に急成長した。 そして、『次に私が殺される』(96年)のスペイン映画界の鬼才アレハンドロ・アメナーバル監督が、大スターのニコール・キッドマンを主演に据え、スペイン・アメリカ・フランス合作の心霊映画の傑作『アザーズ』(02年)を発表し、バラゲロも人気TVシリーズ『アリー・myラブ』(97~02年)のキャリスタ・フロックハートを主演に迎えた『機械じかけの小児病棟』(05年)を手がけた。またバラゲロ、セラドール、イグレシアら全6人の監督が競作したアンソロジー『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト』(06年)が作られ話題にもなった。さらにメキシコ出身で世界的なヒットメイカーになったギレルモ・デル・トロはスペイン映画にも参画し、『デビルズ・バックボーン』(01年)やオスカー受賞作『パンズ・ラビリンス』(06年)を監督しつつ、『永遠のこどもたち』(07年)や『ロスト・アイズ』(10年)等でスペインの才能ある若手監督を抜擢してきた。 現代のスパニッシュ・ホラーは、比較的脚本が素晴らしく、作品のクオリティも高い。ジャンル系映画ファンの熱い支持を獲得し、なかでも中核をなすバラゲロの知名度は格段に高い。特に彼の『機械じかけの小児病棟』は、娯楽性と芸術性を融合させた秀作で、英国の小さな島にある閉鎖寸前の病院を舞台に、時の流れと切ない思いが繊細に練り込まれた濃密な恐怖ドラマを堪能することができる。 過去の失敗で心に傷を負った臨時の看護師エイミー(フロックハート)は、不治の病を患う少女マギーと親しくなり、彼女が言う、“機械の少女”の謎を調べてゆくと……。 長らく封鎖されている病院の2階、子供患者の骨が突然折れる怪異な現象、前に在籍した女性看護師の急死、古びた記録フィルム、アニメ『眠れる森の美女』(ディズニー・アニメではなく、本作のために製作)など、これら全ての要素がドラマを形作る要素になっていて、まったくもって無駄がない作りだった。 次いで、バラゲロがパコ・プラサ(別名義フランシスコ・プラサ)と共に、当時注目されていたPOV(主観映像)手法で監督したのが、『REC/レック』(07年)だった。若い女性リポーターのアンヘラとTVカメラマンが、一台のTVカメラのレンズを通して、未知の感染ウィルスによってアパートの住民らが次々とゾンビのように変貌してゆく様を捉えていて、切迫した恐怖がストレートに伝わってきた。一瞬の迷いや躊躇が命取りになる凄、まじい緊迫感と展開により、観ているコチラが疲労感を味わうほどだ。この作品は世界的に大成功を収め、複数台のPOVによって、アパート内外の状況を捉えた続編『REC/レック2』(09年)が作られた。 そして、バラゲロがクリエイティヴ・プロデューサーにまわり、パコ・プラサの単独監督になった『REC/レック3 ジェネシス』(12年)では、雰囲気が一変。設定は、前2作とほぼ同時間帯の結婚披露宴会場に移り、そこがウィルスによって地獄の惨状になる。ジェネシス=“起源”といえる明確な描写はないものの、1作目で未知の病気にかかった犬の目撃情報があり、3作目では新郎側のペペ叔父さんが、「病院で犬に咬まれた」と言っていた。だから1作目でアパート周辺に徘徊していた犬と、3作目で病院に現れた犬は同じ犬だった可能性が高い。 1作目では、人間の凶暴化は未知のウィルスだと最初は思われていたが、2作目になると、アパート最上階の研究室が、悪魔によるウィルスに対抗するワクチン開発のための極秘施設だと判明する。バイオホラーからオカルトホラーへと奇妙な変貌を遂げる離れ技と、悪魔に憑依された少女メデイロスの血を求める神父を新たに登場させ、神父VS悪魔の図式を打ち立てていた。ここで1と3作目でウィルスを放った(と思われる)犬の存在が、ある意味、悪魔のしもべのような見方もできる。まるで『エクソシスト』(73年)や『オーメン』(76年)などの大好きなジャンル系映画のテイストを盛り込んだともいえるだろう。 3作目では、冒頭のみPOV構成だったが、途中から通常の演出に切りかわり、広い会場で離れ離れになってしまった新郎新婦の“逢いたい”というそれぞれの熱い想いが、感染者らを次々と駆逐する。特に純白の花嫁衣裳をまとった新婦クララが、チェーンソーで長いドレスの裾を切り落とし、感染者を次々と斬り刻みながら、白いドレスを鮮血で染めあげてゆく姿が美しかった。1~3は物語に関連性をもたせながらも、一作毎に異なる要素を盛り込んでいた。しかし3作目では、1、2作目のヒロインのアンヘラは出てこないし、舞台は違うし、前2作との雰囲気があまりに異なっていた。 でもタイトルのRECは、録画や記録の意味。1作目では、TV局の取材側が尋常ならざる渦中に陥り、撮影しなくてはならないという、アンヘラとカメラマンの半ば本能や使命みたいな気持ちが感じられた。2作目ではアパート内部に潜入した特殊部隊員らの小型携行カメラをはじめ、アパート外部の報道カメラや携帯電話のカメラなど、それぞれ異なる意図で撮影されたPOVで構成されていた。いまや動画カメラの氾濫により、誰もがいつ何どき、撮影する側や撮影される側になるとも限らない、異常な社会を感じさせる。 そして3作目では、おそらく人生で最も輝いているだろう“結婚と結婚披露宴”の幸せそうな主役(新郎新婦)を記録する(映す)ことで、その後の展開のみならず、前2作との違いが浮き彫りになってくる。そこに面白味があるし、3作目の物語の深みであろう。バラゲロ単独監督のシリーズ4作目もあるが、まずは1~3作目のそれぞれの魅力を堪能して欲しい。■ ©2007 CASTELAO PRODUCTIONS, S.A.
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COLUMN/コラム2015.02.28
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年3月】にしこ
非常に宗教色の強い映画ですが、難しい事はありません。人の優しさや、幼い子の無垢な魂が全編を通して感じられるスペインの傑作映画です。19世紀前半のスペイン、ある修道院の前に赤ん坊が捨てられておりました。修道士たちは、里親を懸命に探しますが納得のいく里親は見つけられず…それならばという事で、自分たちで赤ん坊を育てる事にします。12人の修道士たちは、その男の子に「マルセリーノ」という名前をつけてそれはそれは大事に育てます。男の子は12人の優しい修道士たちの愛を一身に受け、やんちゃで悪戯好きの男の子に成長。修道士たちもそのかわいい悪戯に優しいまなざしを向けていました。1つだけ、優しい修道士たちが厳しくマルセリーノに言いつけていた事がありました。「屋根裏部屋には決して入ってはいけない」という事です。好奇心旺盛なマルセリーノは気になって仕方がない…ある日、マルセリーノは言いつけを破って…とにかく、マルセリーノのかわいいこと、かわいいこと(涙)。公開当時、修道士たちがマルセリーノ事を歌った劇中曲「マルセリーノの唄」が大ヒットしたとの事ですが、それも納得です。この1曲に、12人のお父さんたち(修道士)がいかにマルセリーノを慈しみ、かわいがっているか、マルセリーノのかわいらしさが詰まっています。「マルセリーノがわいい!!!!!!!」と叫ばずにはいられないこの名曲、お聞き逃しなく!!マルセリーノ、マルセリーノ言い過ぎですが、全編通して本当に美しい映画です。ぜひ一人でも多くの方にご覧頂きたいと思っております!! ©1955, CHAMARTIN PRODUCCIONES CIN.CA
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COLUMN/コラム2015.02.17
美しく切なく残る余韻にひたれる、すごくシニカルなファンタジー・コメディ〜『チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』
原作のタイトルにもなっている「鶏のプラム煮」は主人公ナセル・アリの大好物であり、主人公に死ぬのを諦めさせようと、妻が料理するエピソードがある。 主人公の自殺しようとする男ナセル・アリに、『キングス&クイーン』(2004年)『ニュンヘン』(2005年)『潜水服は蝶の夢を見る』(2007年)『00'7/慰めの報酬』(2008年)のフランス人俳優マチュー・アマルリック。妻ファランギースに、『ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女』(1990年)『パルプ・フィクション』(1994年)のポルトガル人女優マリア・デ・メデイロス。主人公のかつての恋人イラーヌに、『ワールド・イズ・ライズ』(2008年)『彼女が消えた浜辺』(2009年)の、ピアニストとしても活躍するパリ在住のイラン人女優ゴルシフテ・ファラハニが扮している。 物語はこうだ。天才的音楽家・ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は、愛用のバイオリンを壊されたことをきっかけに自殺を決意。自室にこもって静かに最期の瞬間を待つ8日間、ナセルは思い通りにならなかった過去の人生を振り返るのだ。空っぽな音だと師匠に叱られた修業時代。音楽家として絶大な人気を得た黄金時代。妻ファランキースとの誤った結婚。怖くて愛しい母パルヴィーンの死。大好きなソフィア・ローレンと鶏肉のプラム煮。そして今も胸を引き裂くのは、イラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)との叶わなかった恋。やがて明かされる、奇跡の音色の秘密とは? いろんな死に方を考えるが、すべての方法が怖くなって踏み切れず、自室のこもり、食事も摂らず、ただ寝ることにするのが何ともコミカルだ。 そして思い返す過去の人生。弟アブティと何かと比較された少年時代、美しい女性イラーヌと大恋愛するも、女性の父親の反対に遭って別れてしまったこと、バイオリン修行で世界を20年間放浪したあと、母親パルヴィーンの強い勧めでいまの妻ファランギースと結婚したことなどがおもしろおかしく描かれていく。原作がコミックだけに、すごくファンタジー色が強く、ちょっと変わったサトラピ=パルノー・タッチになっている。フランス映画独特の影絵のような雰囲気もいい。 どちらかというと、エリック・ロメール監督の『獅子座』(1958年)のような既視感(デ・ジャ・ヴ)のあるフランス映画あたりの教訓話で、実に笑うに笑えない男の話だ。彼は子育てはさぼり、楽器店の主人には因縁を付け、妻には逆切れするとんでもない男。だが、話が進むにつれ、主人公の心情が少しずつわかるようになり、ストーリーにもどんどん引き込まれていく。そして何より、幻想的な映像がすべてを優しく包んでいて、愛おしい。 これをハッピーエンドと言わずにいられない。主人公は大切なバイオリンを妻に壊されて、絶望して死ぬのだけれど、見方によっては、彼はけっして不幸ではないのだ。若き日に出会った美しい人との別れなくして、彼の音楽家としての覚醒はなかったのだ。切ない別れだからこそ、一生に一度きりの恋を胸に秘めて生きられたのだ。嫉妬のあまり、彼のバイオリンをひったくって壊してしまった妻も、報われない恋を夫に対して抱いていたのではないのか? 壊れたバイオリンの代わりを探す主人公は、街で孫を連れたイラーヌと再会する。彼女は、ナセル・アリのことを知らないと冷たくあしらう。それを悲嘆する主人公はいよいよ自殺するけれど、実のところ彼女はまだナセル・アリを愛していて、彼の葬儀をひっそりと見つめている最後がすごく心に残る。 イラーヌとの恋の別れの引き換えに、音楽の道をきわめたナセル・アリ。彼が奇跡の音色を奏でられるのは、奏でることでイラーヌの存在を身近に感じることができたからだ。 この映画は、イスラム教で死を司る天使アズラエルの視線で描かれる。ファンタジー色が強いのも、そのせいだ。このストーリーにすごい説得性を持たせるのが、ナセル・アリのかつての恋人イラーヌの息を飲むような美しさだ。彼が一生をかけて愛し続けたこと、また彼が晩年に再会するけれど、彼女の記憶にすら残っていなかった虚しさが、彼の自殺の引き金になったこと、そのすべてが完全に納得できてしまう。 主人公がバイオリニストで、随所に流れるバイオリンの名曲が、切ない物語を心により刻みつけるのもいい(音楽はオリヴィエ・ベルネ)。 仏独などの合作映画であり、母パルヴィーンはイザベラ・ロッセリーニ、娘リリはキアラ・マストロヤンニなど、国際色豊かなキャストが集まっているのもミソだ。 前半はやや退屈だが、ラスト15分に怒濤の感動が襲うので、サトラピ=パルノー・タッチの独創的映像をじっくりと観てほしい。 結局、人間は絶望と希望を繰り返す生き物なのだ。そうした教訓を含ませながら美しく切なく残る余韻にひたれる、すごくシニカルなコメディである。■ ©Copyright 2011Celluloid Dreams Productions - TheManipulators – uFilm Studio 37 - Le Pacte – Arte France Cinéma – ZDF/ Arte - Lorette Productions– Film(s)
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COLUMN/コラム2014.06.29
2014年7月のシネマ・ソムリエ
■7月6日『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』 第二次世界大戦中のドイツで反ナチ運動を行ったミュンヘンの学生組織バラそのメンバーが当局に逮捕され、国家反逆罪で処刑されるまでを描く実録ドラマだ。 主人公は唯一の女性メンバーだったゾフィー・ショル。現存する尋問記録に基づき、彼女とゲシュタポの取調官との対話を再現した緊迫感みなぎるシークエンスが圧巻。 ベルリン国際映画祭で監督賞、女優賞を受賞。とりわけ迫りくる死の恐怖に震えながら、自らの良心と信念を貫き通すゾフィー役、ユリア・イェンチの演技が感動的だ。 ■7月13日『永遠のマリア・カラス』 1977年に53歳の若さで死去したマリア・カラス。この20世紀を代表する伝説のオペラ歌手の生誕80周年を記念し、彼女の謎めいた晩年の生き様に迫った人間ドラマだ。 かつての美声を失い、パリのアパルトマンで隠遁生活を送るカラス。旧知のプロモーターから新作映画の企画を持ち込まれた彼女のアーティストしての葛藤を描き出す。 事実に創作を織り交ぜて本作を完成させたF・ゼフィレッリ監督は、生前のカラスと親交があったオペラ演出家でもある。仏の名女優F・アルダンの入魂演技も見ものだ。 ■7月20日『ダウト〜あるカトリック学校で〜』 トニー賞とピュリッツァー賞に輝いた傑作舞台劇の映画化。カトリック学校を舞台に、具体的証拠のない“罪”をめぐって疑う者と疑われる者の闘いを描く心理劇である。 進歩的な思想を持つ神父が、学校内で黒人生徒に性的虐待を加えたとの疑惑が浮上。新米のシスターからその報告を受けた女性校長は、神父を厳しく問い質していく。 校長役のM・ストリープを中心とする主要キャスト4人全員がアカデミー賞候補に。人間の信念や弱さなどを多面的に体現した迫真のアンサンブルから目が離せない。 ■7月27日『リトル・ダンサー』 労働者階級の家庭で育った11歳の少年がバレエの虜になり、本格的にダンサーをめざしていく。サッチャー政権下の1980年代、炭鉱町を舞台にしたサクセスストーリーだ。 主人公ビリーがチュチュ姿の女の子たちに囲まれてレッスンを受けるシーンの微笑ましさ! 頑固な父親との対立と和解のエピソードも涙を誘う良質なドラマである。 『めぐりあう時間たち』のS・ダルドリー監督のデビュー作。T・レックスやザ・ジャムの曲に乗せ、ビリーがストリートで身を躍らせるダンス・シーンがすばらしい。 『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』©Jürgen Olczyk 『永遠のマリア・カラス』©2002 Medusa Film ‐ Cattleya ‐ Film and General Productions ‐ Galfin ‐ Alquimia Cinema ‐ MediaPro Pictures ‐ 『ダウト ?あるカトリック学校で?』© 2008 Miramax 『リトル・ダンサー』© Tiger Aspect Pictures Ltd. 2000 © 2000 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2014.06.03
映画の中のリゾートガイド
■『マンマ・ミーア!』 『マンマ・ミーア!』は、伝説のポップグループABBAの大ヒットナンバーでつづられた、最高にハートフルなミュージカル映画!結婚式を目前に控えた20歳の娘・ソフィと、メリル・ストリープ演じる母親のドナ、そして父親を名乗る3人の男性が繰り広げる騒動を描いた作品です。 舞台は、ギリシャの架空の小島・カロカイリ島。撮影の多くはエーゲ海に浮かぶ美しいリゾート地・スコペロス島で行われました。澄み切った海と白い砂、松やオリーブの木にいだかれたこの美しい島は、隠れ家的なリゾートとして、世界中の人々に愛されている場所。ソフィや婚約者のスカイたちが砂浜で激しく踊るシーン、ドナの親友・ターニャと島の若者のダンスシーンなど、美しい海辺の場面が撮られたのは、島の西側にあるカスタニビーチ。透明な海に浮かぶ印象的な桟橋は、撮影時に特別に作られたということです。ギリシャの青い空と海、そしてさんさんと降り注ぐ明るい太陽の下で繰り広げられる名シーンの数々は、見ているだけでハッピーな気分になれること請け合いです! ※『マンマ・ミーア!』桟橋シーン ※スコペロス島の風景 ▼「スコペロス島」プチ情報スコペロス島は、エーゲ海北西部のスポラデス諸島にあるギリシャの島。スコペロスはギリシャ語で「岩」の意味だが、肥沃な土地で緑も多く、アーモンドの産地として知られている。島内には350もの教会が点在している。 ▼アクセス方法日本からは、ヨーロッパの都市を経由してアテネへ向かい、国内線でスキアトス島へ。スキアトス島からスコペロス島へは船で1時間。(ほかに、ヨーロッパの都市からスキアトス島への直行便もある)ギリシャ中央に位置する港町・ヴォロスからスコペロス島へは船で2時間ほど。 ■『食べて、祈って、恋をして』 『食べて、祈って、恋をして』は、ジャーナリストとして活躍するヒロインが、離婚と失恋の後に、自分を見つめ直すために出かけた旅の日々を描いた作品です。 おいしい料理を堪能したイタリア、ヨガと瞑想に励んだインド…そしてジュリア・ロバーツ演じる主人公のリズが旅の最後に訪れたのが、「神々の島」と呼ばれるインドネシアのバリ島。彼女が過ごしたのが、バリ島の文化の中心地でもある山あいのリゾート地・ウブドです。ウブドでは稲作が盛んで、あちこちで青々とした美しいライステラス(棚田)を見ることができます。さらにはジュリアが颯爽と自転車で通り抜けるヤシの林、野生の猿が200匹も生息するという自然保護区「モンキーフォレスト」など、あふれる豊かな自然が人々を癒してくれるんです。パワフルなウブドの生活を肌で感じたければ、村のランドマーク、お土産や雑貨が揃う「パサール・ウブド」もはずせません! 見ているだけでリゾート地・バリ島の空気を満喫出来る、オススメの一本です! ※『食べて、祈って、恋をして』美しいライステラスシーン ※バリ島 ▼「ウブド」プチ情報ウブドは、バリ島中部にある古くからのリゾート地であり、バリ文化の中心地。ガムラン、バリ舞踊、バリ絵画、木彫り、石彫り、銀細工など、あらゆるバリの芸能・芸術を堪能出来る。豊かな自然でも知られ、素朴な田園風景や渓谷も大きな魅力。 ▼アクセス方法日本からはバリ島・デンパサール国際空港へ。空港から車で1時間。南部のリゾートエリアのクタまで車で1時間。さらにヌサドゥアから車で1時間半。 ■『黒いオルフェ』 『黒いオルフェ』は、ギリシャ神話の悲劇「オルフェウス伝説」を、現代のブラジルによみがえらせ、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた名作です。舞台は、今年2014年、サッカーワールドカップが開催される情熱の街・ブラジルのリオデジャネイロ。作品では、この地で行われる世界最大の真夏の祭典・リオのカーニバルを軸での出来事が描かれています。 カーニバルは世界各地で行われていますが、その中でリオのカーニバルはもっとも熱狂的といわれています。年に一回、2月から3月上旬、土曜日から火曜日にかけての4日間にわたって繰り広げられるこのカーニバルには、世界中から観光客が押し寄せます。お目当ては、ほかでは体験できないダイナミックな音楽とリズム、そして華やかな衣装であふれるパレード!この作品では、随所に実際のカーニバルの映像が使われ、サンバのリズムに合わせて歌い、踊る人々の熱気がスクリーンから伝わってきます。地球の裏側で行われる華麗なカーニバルの気分を楽しむにはもってこいの映画です。 ※『黒いオルフェ』リオのカーニバルシーン ※リオのカーニバル ▼「リオデジャネイロ」プチ情報リオ・デ・ジャネイロは、サン・パウロに次ぐブラジル第二の都市。華やかなカーニバル、ビーチリゾート、世界三大美港のひとつと言われるグアナバラ湾の景観などで知られる観光地。2014年のサッカーワールドカップ、2016年の夏季オリンピックの開催地にも選ばれた。 ▼アクセス方法日本からはアメリカやカナダ、ヨーロッパの都市を経由してリオデジャネイロ国際空港へ。所要時間は25〜30時間ほど。 ■『マレーナ』 『マレーナ』は、第二次大戦中のシチリア島を舞台に、悲劇的な運命をたどる女性・マレーナの生き様を、彼女に恋する少年の目を通して描いた人間ドラマです。撮影の多くが行われたのは、地中海のリゾート・シチリア島にあるシラクーサ。美しいリゾート地として知られると同時に、3000年以上の歴史を持つ古都の魅力も持ち合わせています。随所に見られるギリシャ・ローマ時代の遺跡の多くは、2005年、世界遺産にも登録されました。シラクーサは、大きな橋をはさんで、新市街と旧市街のオルティージャに分かれています。オルティージャは、町の発祥の地といわれ、石造りの建物が立ち並ぶ風情あふれる場所です。オルティージャの中心にあるのが、街のシンボル・ドゥオーモ広場です。バロック様式の荘厳なドゥオーモが見下ろすこの広場は、少年がモニカ・ベルッチ演じるマレーナの思い出を心に刻み付ける印象的な場所として登場します。ゆったりとした時間が流れるロマンチックなリゾート・シラクーサを、作品を通じて味わってみては? ※『マレーナ』のワンシーン ※シラクーサ ドゥオーモ広場 ▼「シラクーサ」プチ情報シラクーサは、イタリアのシチリア島南東部に位置する都市。古代ギリシャ時代にアテネと共に繁栄を誇ったと言われ、数学者アルキメデスの生地でもある。太宰治の『走れメロス』の舞台としても知られる。ギリシャ・ローマ時代の遺跡が数多く残り、世界遺産にも認定された。 ▼アクセス方法日本からはローマ、ミラノ経由でシチリア島のカターニャ空港へ。空港からシラクーサへはバスで1時間20分ほど。 ■『フレンチ・キス(1995)』 『フレンチ・キス(1995)』は、旅先で恋に落ちた婚約者を追いかけて、フランスをめぐるアメリカ人女性を描いたロマンチック・コメディです。メグ・ライアン演じる主人公・ケイトが、詐欺師のリュックと一緒に婚約者を追いかけた先は、南仏のカンヌ。国際映画祭が開催される街としても世界的に知られています。カンヌをふくむ地中海に面した一帯は「コート・ダジュール」=「紺碧海岸」と呼ばれ、その名の通り、紺碧の海に明るい太陽がふりそそぐ、ヨーロッパ随一のリゾート地!ケイトが大騒動を巻き起こすのが、カンヌの中心にそびえ立つセレブ御用達の豪華なリゾートホテル、インターコンチネンタル・カールトン・カンヌ。映画祭の開催期間中は著名な映画人がこぞって宿泊するとか。美しい建物とビーチ。その明るく開放的な空間が、ケイトとリュックの距離を急速に縮める大きな役割を果たしていると言えそうです。恋も実る憧れのリゾート、コート・ダジュール。あなたもぜひ一度、映画で体験してください。 ※『フレンチ・キス(1995)』様子を伺うメグ・ライアン ※コート・ダジュール ▼「カンヌ」プチ情報カンヌは、フランス南東部の地中海に面する都市のひとつ。もともとは小さな漁港だったが、今ではヨーロッパ有数のリゾート地として知られる。毎年5月のカンヌ国際映画祭の開催地として世界的に有名。 ▼アクセス方法日本からは、ヨーロッパの都市を経由してニース・コート・ダジュール国際空港へ。空港からカンヌへは車で1時間程度。 ■『太陽がいっぱい』 『太陽がいっぱい』は、アラン・ドロン演じる貧しい青年・トムが大富豪の放蕩息子・フィリップをねたんで犯罪を計画、彼になりすまして財産を奪おうと画策するサスペンス映画です。フィリップが住むというモンジベロは架空の町。撮影の多くは、ナポリ湾に浮かぶイスキア島で行われました。イスキア島は、青い海と輝く太陽、そしてリラックスを求める人々でにぎわう大人気のリゾート地です。この島に来たらはずせないのが、地中海の豊かな自然を満喫できるクルージング!トムとフィリップもヨットで美しい海へと繰り出しますが、眩しく明るい陽光と、その下で行われる恐ろしい犯罪が、見事な対比を生み出しています。魚市場の場面は、「ナポリを見て死ね」と言われるほど風光明媚な港町・ナポリで撮影されています。人々の活気と彩りに満ちた市場で、アラン・ドロンの持つ影と、憂いを帯びた美しさが際立つ名シーンが生まれました。スリリングな犯罪と一緒に味わう地中海の明るい大自然、いつもとひと味違うリゾート体験ができるのでは? ※『太陽がいっぱい』ヨットのワンシーン ※イスキア島 ▼「イスキア島」プチ情報イスキア島は、イタリア・ナポリ湾内で一番大きな島。火山活動で出来た島で、別名「緑の島」と呼ばれるほど自然が豊か。至る所にわく温泉でのんびりできるほか、ビーチも楽しめる人気のリゾート地。 ▼アクセス方法日本からは、ローマやミラノ経由でナポリ・カポディキーノ空港へ。ナポリ港からイスキア島へは高速船で50分ほど。 『マンマ・ミーア!』© 2008 Universal Studios. All Rights Reserved.『食べて、祈って、恋をして』© 2010 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.『黒いオルフェ』ORFEU NEGRO ©1959 Dispat Film. All Rights Reserved.『マレーナ』© 2000 Medusa Film spa—Roma『フレンチ・キス(1995)』FRENCH KISS ©1995 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved『太陽がいっぱい』© ROBERT ET RAYMOND HAKIM PRO. / Plaza Production International / Comstock Group
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COLUMN/コラム2014.05.01
【未DVD化】80年代アイドル、クリスティ・マクニコルの好演が光る、舞台原作の未DVD化作品
系列的には先行するジョディ・フォスターと同じボーイッシュ系に属するクリスティが、日本でブレイクスルーするきっかけになったのは『リトル・ダーリング』(80)。同系列のトップアイドルだったテイタム・オニールがタイプキャストを嫌ってスルーした不良娘役を振られたクリスティは、少女たちが集まるサマー・キャンプで終始お嬢様然として振る舞う相手役のテイタムを、皮肉にも、完全喰い。外見はタバコが手放せない不良少女が、内側には女の子らしい繊細さを隠し持つ捻れたキャラクターは、以来、彼女の持ち役になり、翌81年に出演した『泣かないで』でも物語の"緩和剤"として大いに効果を発揮している。 まず、これがDVD未リリースなんて意外。1980年代にブロードウェーとハリウッドの架け橋であり続けた人気劇作家、ニール・サイモンが、当時の妻で女優のマーシャ・メイソンを主役に、自身のヒット舞台劇を脚色した演劇ファンにも映画ファンにとってもフレンドリーな一作なのに、なぜ? まあ、その理由はさておき、サイモンによるオリジナルの舞台劇『The Gingerbread Lady』は、彼が往年の大女優、ジュディ・ガーランドにインスパイアされて書き綴った、女優としての才能に恵まれながら自滅的な生活を続けるダメな母親の再生劇。舞台では『レッズ』(81)でアカデミー賞に輝いたモーリーン・ステープルトンが演じてトニー賞を獲ったこの役を、映画では演技派の代名詞でもあったメイソンが演じて4度目のオスカー候補になっている。それは、彼女がサイモン脚色による作品でオスカー候補になった3本目で最後の作品。映画はサイモンの舞台的な展開力が秀逸で、冒頭から字幕では追い切れないスピードで練り上げられた台詞が次々と連打される。 アルコール依存症のリハビリ施設で6年間の禁欲生活に耐え抜いたメイソン演じるヒロイン、ジョージアに、いよいよ退院の日が訪れる。彼女を迎えにやって来るのはショーン・ハケット演じる親友のトビーだ。セレブライフをエンジョイする有閑マダムのトビーは、舞台女優として活躍するジョージアの良き理解者である。そして、ニューヨークにあるジョージアのアパートでウェルカムディナーを作って待機しているのは、同じく親友の舞台俳優、ジミー。ジェームズ・ココが若干粘つく台詞回しで演じるジミーは、食材を運んできたデリバリーボーイに指摘されるほど、誰が見ても分かり易い中年のゲイである。こうして、アルコール依存から一応生還したジョージアと、実は彼女と同レベルの深刻なメイク依存(厚塗りしていないと不安で仕方がない)のトビーにゲイのジミーが加わり、自虐的で辛辣な会話の場が久々にセッティングされる。堰を切ったようにきついジョークを飛ばし合う女2人に対して、ジミーが「あんたたちの会話はセックスの次に面白いわ」と言い放ったり、二重顎をさすりながら「オードリー・ヘプバーンの首が欲しい」と呟いたり、サイモンの舞台的な、ある意味一発ギャグ的な台詞は一旦収録して再生したいほど。聞き逃すのはもったいない。登場人物が散々喋り倒した挙げ句、ドアの外へ消えて行く演出も、舞台的でそつがない。 ところが、そんな雰囲気が一変する。そこら中に充満する演技過多なムードが、クリスティ・マクニコル演じるジョージアの一人娘、ポリーが画面に現れた途端、映画的なそれにシフトする。ポリーはすでにジョージアと離婚している父親の下に引き取られた身ながら、許可を得て1年限定で母娘水入らずの生活を送るべく退院を心待ちにしていたのだ。自分の弱さが原因で手放すことになった娘に対する罪悪感と、今更一緒には住めないという拒絶感から二の足を踏むジョージアをすべて理解した上で受け止めようとするポリーの成熟度を、クリスティは佇まいだけで体現。他の大人たち同様、ポリーの台詞も少なくはないのだが、クリスティは脚本の行間を表情やニュアンスで埋めていく。彼女の抑制された演技は、やがて、様々なトラブルが重なって再び酒に手を出してしまうジョージアを思いっきり詰るシーンで逆方向に振れる。目に一杯涙を溜めて「もうママの事情なんてたくさん!」と言い放つ場面は、クリスティと一緒にわがままな母親に耐えてきた観客の心まで、一緒に解き放ってくれるのだ。 『リトル・ダーリング』の前にTVドラマ『ファミリー/愛の肖像』(1979年4月から東京12チャンネル・現テレビ東京で放映)で5人家族の個性的な次女、レティシアを演じた経験上、クリスティはアンサンブルで映える演技というものを若くして会得していたのかも知れない。サイモンのキャスティングがそれを見込んでのことだったかどうかは不明だが、『泣かないで』に於けるクリスティの演技は気丈さと繊細さを併せ持った、やはり彼女ならではの個性に裏打ちされたものだ。なのに、アカデミー会員は1982年のアカデミー主演女優賞候補にメイソンを、助演女優賞候補にショーン・ハケットを、助演男優賞候補にジェームズ・ココ(ラジー賞も同時受賞)を選んだものの、クリスティだけは候補の枠外へと押しやった。オスカーは分かり易い熱演がお好みなのだ。代わりに、クリスティは同年のヤング・アーティスト・アワードをちゃっかり受賞しているけれど。 劇中には他にもチェックポイントが幾つかある。ジョージアとポリーがショッピングに出かけるシーンで2人をナンパしてくる大学生の片割れは、『フットルース』(84)でメジャーになる前のケヴィン・ベーコン。台詞の中にウッディ・アレンの『マンハッタン』(79)や、ブロードウェーでロングラン公演6年目に差し掛かった『コーラスライン』が出てくるところは、いかにも時代である。また、ジョージアと元恋人の劇作家、デヴィッドが再会するレストラン、JOE ALLENは、物語のニューヨーク西46番街にあるステーキが美味しい老舗レストラン。一般客に混じって公演後に夕食をとる舞台関係者たちの姿を度々見かける有名店だ。 さて、その後のクリスティはどうなったか? 『泣かないで』の後、デニス・クエイド扮する兄とアメリカを旅する『さよならジョージア』(81)、社会派サスペンス『ホワイト・ドッグ』(81)、荒唐無稽な海賊映画『パイレーツ・ムービー』(82)、純愛映画『クリスティ・マクニコルの白いロマンス』(84)と、立て続けに主演作が公開されたがどれも評価はイマイチで、やがて、1998年のTVドラマを最後に芸能界から身を引いてしまう。彼女が久しぶりに脚光を浴びたのは2012年のこと。当時49歳のクリスティはゲイであることをカミングアウトしたのだ。本人はその理由を「同性愛であるがために差別される子供たちを自分がカミングアウトすることで助けたい」と説明。その潔さ、実直さは、かつて女優として確立したイメージと何ら変わらないことを証明してみせた。そんな彼女の今を知った上で観ると『泣かないで』のポリー役は否が応でも味わいが深くなる。■ 1981 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2014.03.31
映画の中のパリガイド
■『パリの恋人』 パリでファッションモデルになった女性の恋物語をオードリー・ヘプバーン主演で描くミュージカルロマンス。カルーゼル凱旋門、ルーブル美術館など名所を紹介するシーンは、当時のパリの雰囲気が味わえます。そして、ジバンシィの衣装に身を包んだオードリーが美しい!パリという舞台が、彼女の魅力をさらに引き出しています。また、パリの北・シャンティイ近くにあるシャトー・レーヌ・ブランシュをバックに、アステアとヘプバーンがダンスナンバー”He Loves and She Loves”を踊るシーンは、要チェックです。 ※『パリの恋人』ルーブル美術館でのワンシーン ※ルーブル美術館の夜景 ■『麗しのサブリナ』 大富豪の兄弟と美しく変身した女性が繰り広げるオードリー・ヘプバーン主演のラブロマンス。ヘプバーン演じる主人公のサブリナは失恋のキズを癒すため、パリの有名な料理学校へ留学します。その舞台となったのが、100年以上にわたりフランス料理の伝統と技術を世界中に伝えている料理学校「ル・コルドン・ブルー」です。この留学を終え、洗練された女性に成長したヘプバーンの姿は、思わず見とれてしまいますのでご注意を! ■『赤い風車』 パリのキャバレーで夜ごと踊り子たちを描き続ける画家アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレックの過酷な運命を描いた伝記映画。舞台となったギャバレー「ムーラン・ルージュ」は、フランス語で「赤い風車」という意味で、赤い風車が印象的な実在するお店です。このキャバレーはパリで万国博覧会が開かれ、パリが世界の文化の中心となった1889年にモンマルトルで誕生しました。創業から100年以上たった今も営業を続けています。夜な夜な繰り広げられているフレンチ・カンカンなどの華麗なショーを、映画を通して是非お楽しみください! ※『赤い風車』ムーランルージュでのショーシーン ※『ムーラン・ルージュ』の赤い風車 ■『死刑台のエレベーター』 完全犯罪をくわだてた不倫関係にあるカップルが、欲望の果てに運命を狂わせていくサスペンス映画。殺人を犯した後にエレベーターに閉じ込められてしまった彼を探して、夜のシャンゼリゼ通りをジャンヌ・モロー演じる人妻・フロランスがさまよい歩きます。凱旋門からコンコルド広場へとのびる大通りとして美しい景観で有名ですが、そんなシャンゼリゼ通りの華やかさと対照的なフロランスの姿は、彼女の心の内を浮かび上がらせた名シーンです。 ※ジャンヌ・モロー演じる人妻・フロランス ※シャンゼリゼ通り ■『フレンチ・キス』 フランス美人と恋仲になってしまった婚約者を奪い返すべく、パリを訪れたアメリカ人女性を描いた、メグ・ライアン主演のロマンティック・コメディ。パリに着いた主人公が婚約者に会うために訪れたのが、シャンゼリゼ通りにある「ホテル・ジョルジュ・サンク」。この名の由来は、1928年の創業当時、フランスと良好な関係にあったイギリスの国王・ジョージ5世からとったそうです。現在は「フォーシーズンズホテル・ジョルジュ・サンク・パリ」と名前を変え、パリを訪れる誰もが一度は訪れたい憧れの豪華ホテルのひとつです。映画を通して、この豪華ホテルを訪れてみては? ※『フレンチ・キス』ホテルで途方に暮れるメグ・ライアン 『パリの恋人』TM & COPYRIGHT © 2014 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.『麗しのサブリナ』TM & Copyright © 2014 by Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.『赤い風車』©ITV plc (Granada International)『死刑台のエレベーター』© 1958 Nouvelles Editions de Films『フレンチ・キス』FRENCH KISS ©1995 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2014.03.30
2014年4月のシネマ・ソムリエ
■4月5日『ダウンタウン物語』 登場するすべてのキャラクターを、平均12歳の子役たちが演じたミュージカル風のギャング・コメディ。名匠A・パーカーの軽妙な語り口が光る劇場デビュー作である。 禁酒法時代のニューヨークの雰囲気を本格的なセットで再現。才人、ポール・ウィリアムズ作曲による歌とダンス、パイ弾を放つマシンガンなどの小道具も楽しい! キャストで圧倒的な存在感を放ったのは撮影時13歳のJ・フォスター。にぎやかな抗争劇のさなか、主人公バグジー・マローンが出入りする酒場の歌姫を妖艶に演じた。 ■4月12日『バンテッドQ』 鬼才テリー・ギリアムのイマジネーションが炸裂するファンタジー。孤独な11歳の英国人少年が自宅の寝室に突如現れた6人の小人に導かれ、時空を超えた冒険に旅立つ。 ナポレオン、海坊主、悪魔らのキャラクターが次々と登場し、奇想天外な逸話が脈絡なく展開。その理屈を超越した馬力とスラップスティックなギャグに引き込まれる。 英国流のブラックな味わいの作風は、ハリウッド製ファンタジーとは異質の面白さ!アガメムノン王ともうひと役を演じるS・コネリーの出演シーンもお見逃しなく。 ■4月19日『サン★ロレンツォの夜』 ドイツ軍占領下のトスカーナ地方を舞台にした戦争ドラマ。イタリアのタヴィアーニ兄弟が幼少期の体験を基に撮った、カンヌ国際映画祭・審査員特別賞受賞作である。 物語の背景となるのは、1944年にサン・ミニアートの大聖堂で起こった虐殺事件の史実。ドイツ軍が街を爆破して撤退を図るなか、危険を感じた市民の脱出劇が展開する。 幼い純真な少女の視点をとり入れた映像世界には、素朴なユーモアや魅惑的な詩情が漂う。戦時下の痛切な悲劇を寓話へと結実させ、胸に染み入る感動を呼ぶ一作だ。 ■4月26日『バーティ』 鳥をこよなく愛し、空を飛ぶことに憧れる風変わりな青年バーディとその親友アル。共にベトナム戦争で心身に傷を負って帰還した若者たちの友情を描く感動作である。 1970?80年代に量産された“ベトナム後遺症”ものの1本だが、青春映画としてのみずみずしさは絶品。デビュー間もない主演俳優2人のナイーブな演技も好感度高し! 多彩なジャンルの傑作を放ったA・パーカー監督が鮮烈なイメージを創出。裸のバーディを“籠の中の鳥”に重ねた場面や、鳥の眼差しを表現した空撮シーンが印象深い。 『ダウンタウン物語』© National Film Trustee Co Ltd 1976 『バンデットQ』© Handmade Film Partnership 1981 『サン★ロレンツォの夜』©1983 RAIUNO/Ager Cinematografica Srl. Licensed by SACIS-Rome-Itary.All Right Reserves 『バーディ』© 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2013.09.29
2013年10月のシネマ・ソムリエ
■10月5日『ある結婚の風景[HDデジタルリマスター版]』 研究者のヨハンと弁護士のマリアンヌは、結婚10年目を迎えた夫婦。順風満帆だった彼らの関係にヒビが入り、激しい口論を繰り返したのちに離婚へと至る過程を描く。巨匠I・ベルイマン監督が手がけた5時間のTVシリーズを、劇場向けに再編集した人間ドラマ。ひと組の夫婦の関係性に焦点を絞り、愛の本質を見つめ直した野心作だ。全6章構成のドラマの大半は夫婦の対話シーンで占められる。彼らの感情がすれ違い、エゴをぶつけ合う様は圧巻の迫力で、このうえなくリアルで濃密な心理劇となった。 ■10月12日『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』 十字軍の遠征からスウェーデンに帰還した騎士が、疫病や魔女狩りで荒廃した祖国の現実を目の当たりにする。そんな騎士の行く手には不気味な死神が現れるのだった。中世ヨーロッパに死神を出現させ、信仰や人生の意味といった根源的なテーマを問いかける異色作。I・ベルイマン監督のファンに熱狂的に支持されている寓話である。幻想的なイメージと哲学的な思索に富んだ映像世界は、巨匠のフィルモグラフィの中でも異彩を放つ。“死神とのチェス”や“死の舞踏”などの名場面も鮮烈な印象を残す。 ■10月19日『ベティ・ブルー / 愛と劇場の日々[HDデジタルリマスター版]』 海辺のバンガロー暮らしの青年ゾルグと、風変わりなまでに野性的な少女ベティ。仏のJ=J・ベネックス監督が2人の激しくも切ない純愛を綴ったラブ・ストーリー。 当時新人のB・ダル演じるベティは、恋愛映画史上希にみる激情のヒロイン。その一途な愛情表現には異様な凄みがみなぎり、世界的なセンセーションを巻き起こした。ベネックスが斬新な色彩感覚を発揮した映像世界を、監督自身の監修によるHDリマスター版で放映。情熱的な恋人たちが思いがけない運命をたどるラストも衝撃的だ。 ■10月26日『ブラインドネス』 ブラジルのF・メイレレス監督による異色サスペンス。ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説「白の闇」を原作に、人間を失明させる奇病が蔓延した終末世界を描く。 視力を失った人々は政府によって隔離され、収容所に押し込められる。やがて権力闘争やパニックが勃発する密室内の人間模様を、息づまる緊迫感をこめて映し出す。国際色豊かなキャストが結集し、日本からは伊勢谷友介と木村佳乃が夫婦役で参加。かすかな希望を感じさせながらも、謎めいた余韻を残すエンディングに注目を。 『ある結婚の風景[HDデジタルリマスター版]』©1973 AB Svensk Filmindustri 『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』© 1957 AB Svensk Filmindustri 『ベティ・ブルー/愛と激情の日々[HDデジタルリマスター版]』©Cargo Films / Gaumont All Rights Reserved. 『ブラインドネス』(c)2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures
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COLUMN/コラム2013.09.28
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年10月】銀輪次郎
スウェーデンの国営放送で放映されたイングマール・ベルイマンのミニTVシリーズ(6話)を再編集し映画化した本作。結婚10年を迎えた幸せな夫婦に突如として訪れる夫婦の危機とその後の人生を描く。夫婦の会話を中心に物語は進むが、話の展開は秀逸。怒涛の会話劇でありながらも、決して冗長なところはなく、観る者に愛の不確かさや脆さを気付かせる作品となっています。そしてもう一つの見所ポイントは、所々に映るハイセンスなスウェーデン家具やキッチン用品たち。どれもよさげな感じのものが多くて、とても1970年代の作品とは思えません。ザ・シネマでは10月、11月にスウェーデンが生んだ巨匠ベルイマンの特集放送「ディレクターズ・ファイル 2ヶ月連続 北欧の巨匠 イングマール・ベルイマン」も併せて放送しますのでこちらもお見逃しなく! ©1973 AB Svensk Filmindustri