COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
-
COLUMN/コラム2013.10.30
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年11月】銀輪次郎
悪者のように描かれながらも、NASA(アメリカ航空宇宙局)協力の下で作られた本作。よくある宇宙ものSF作品かと思いながら物語に引き込まれていると、物語は終盤、いつのまにかにアクション映画と化します。SFとしてもサスペンスとしてもアクションとしても秀逸なこの作品。臭いものには蓋をしろ的なお話から、乗組員達の葛藤、そして彼らの生き残りを賭けた戦いへ・・・と脚本が素晴らしい。序盤の政府&NASA幹部の隠蔽工作のお話も、現実にありえそうなところにまとめているところが上手い。見る価値に値する作品でこれはオススメです。 ©ITV plc (Granada International)
-
COLUMN/コラム2013.10.30
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年11月】にしこ
「グレイズ・アナトミー」のMr.マクドリーミー、パトリック・デンプシー主演のラブコメディ。大学時代に出会った、トムとハンナ。それからもうずっと一番の親友として10年を過ごしてきた。「誰といるよりも楽しい」「一番わかりあえる」そんな二人の関係は、ハンナの6週間の海外出張で転機を迎える。「ハンナがいないとこんなに人生が空しい」トムがそう気づいた時、なんと出張先でハンナは運命の人に出会ってしまい…超近距離に居た相手を愛していた事に気づく瞬間を、コミカルに、ちょっと格好悪く演じるパトリック・デンプシーのチャーミングさと、決して超美形!というわけではないのに目が離せない魅力のミシェル・モナハン。二人の好相性が作品をより素敵にしています。 Copyright © 2008 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC. All Rights Reserved.
-
COLUMN/コラム2013.10.30
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年11月】うず潮
車で道を急ぐ男が、目の前を走るタンクローリーを追い越したのが運のつき!スピルバーグがスター監督へと駆け上がるきっかけとなった名作!訳もわからずタンクローリーに追い回される男の恐怖を、スピルバーグがスリリングに描いております。車の運転経験があるなら絶対にわかるリアル感は、さすがスピルバーグ!さらにタンクローリーのドライバーさんの顔を一切映さず得体の知れない恐怖を煽りに煽ります。ドライバーさんの顔を想像しながら見るのもおつかも。ザ・シネマでは、この続編となる『続・激突!/カージャック』11月に放送!あわせてご覧ください! ©1971 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
-
COLUMN/コラム2013.10.27
2013年11月のシネマ・ソムリエ
■11月2日『秋のソナタ[HDデジタルリマスター版]』 大女優I・バーグマン、最後の映画出演作となった人間ドラマ。母国スウェーデンに戻り、巨匠I・ベルイマンとの撮影中の激しい議論の末に完成させた入魂作である。 ノルウェーの田園地帯の牧師館に暮らす中年女性が、国際的なピアニストの母親と7年ぶりに対面。自由奔放な母親と、抑圧されて育った娘の心の断絶が描かれていく。ベルイマンの厳密な演出のもと、バーグマンともうひとりの名女優L・ウルマンが壮絶な演技合戦を披露。母娘が感情を剥き出しにするクライマックスは息をのむ迫力だ。 ■11月9日『夏の夜は三たび微笑む[HDデジタルリマスター版]』 ある夏の日、郊外の別荘に集まった男女が織りなす群像劇。恋愛絡みの問題を抱えた登場人物たちの珍騒動を、軽妙洒脱なタッチで綴るロマンティック・コメディである。「第七の封印」「野いちご」で世界的な名声を確立したI・ベルイマン監督が、その直前に発表した珠玉作。重厚な作風で名高い巨匠の機知に富んだ語り口に魅了される。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を連想させる物語と、北欧の風景が見事にマッチ。その牧歌的なムード漂う映像世界は、カンヌ国際映画祭で詩的ユーモア賞に輝いた。 ■11月16日『女はそれを待っている[HDデジタルリマスター版]』 I・ベルイマン監督は女性を主人公に据え、その内面を探求した映画を数多く遺したが、これもその1本。産科医院で同部屋になった女性3人の出産をめぐる物語である。不仲の夫との子を流産したセシリア、自分を捨てた恋人との子を身ごもったヨルディス、初めての妊娠に胸躍らせるスチーナ。不安や希望が錯綜する3人の思いを描く。皮肉な運命をたどる3人の葛藤を、ドキュメンタリーのようにリアルに描出。出産、すなわち生命の誕生という神秘に直面した女性たちへの畏敬の念も感じられる一作だ。 ■11月30日『バタフライ・エフェクト』 カオス理論のひとつである“バタフライ効果”を題材にしたサスペンス映画。先読みを許さない独創的かつスピーディなプロットが好評を博し、2本の続編が製作された。 幼少期の記憶が一部欠落したまま成長した大学生エヴァン。当時の日記を利用して過去に舞い戻った彼は、愛する幼なじみの女の子を悲惨な運命から救い出そうとする。主人公が過去に戻り、運命を変えようともがくたびに事態が悪化する展開が衝撃的。手に汗握るスリルに加え、人生の暗い一面や愛の切なさを描いたドラマも心に残る。 『秋のソナタ[HDデジタルリマスター版]』©1978 AB Svensk Filmindustri 『夏の夜は三たび微笑む[HDデジタルリマスター版]』©1955 AB Svensk Filmindustri 『女はそれを待っている[HDデジタルリマスター版]』©1958 Folkets Hus och Parker. All Rights Reserved 『マイ・ブラザー』©2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved. 『バタフライ・エフェクト』© MMIV ALL RIGHTS RESEREVED
-
COLUMN/コラム2013.10.18
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド最終回【デザイナー編】
長年モードの世界に身を置かれ、その歴史を見てこられた田口淑子さんに再び解説して頂きます。映画本編の華麗なるファッションの世界のエッセンスがちりばめられた必読ガイドです!! ■ライフスタイルを提案するラルフ・ローレン ラルフ・ローレンのメンズコレクションはミラノで開催されていた。「アルマーニ」や「グッチ」、際立つラグジュアリーブランドが多いミラノメンズの中でも、ラルフ・ローレンの演出は異色だった。門扉をくぐったところからすでに会場の演出は始まっていて、日常とは違う空間が出現する。玄関まで点々とキャンドルが灯され、前庭には布製のソファが点在。黒服のギャルソンが、銀のトレーでウエルカムシャンパンをサービスしてくれる。部屋の壁にはいくつもの肖像写真が飾られ、いたるところが花でいっぱい。客席の椅子も、カーテンも、全てがニューイングランドスタイル。「ギャッツビーの邸宅ようだ」と、私と同じ感想をもった、取材するジャーナリストはきっと多かったことと思う。 「華麗なるギャッツビー」はジャズエイジのアメリカ、ロングアイランドが舞台。女たちのドレスは、ラッフルやフレアのある典型的なフェミニンタイプ。シフォンやデシンの薄い布地にはビーズやフリンジがあしらわれ、キャップ型ヘッドドレス、オーストリッチのストール、シームのある絹のストッキングと、どれもが装飾的でデカダンなスタイルだ。 そしてギャツビーの衣裳はラルフ・ローレンがデザインしている。この映画を観る時は、三つ揃いのスーツの、衿のVゾーンに注目してほしい。シャツ、ネクタイ、ジャケット、三つのアイテムの色の配分とデイテールの遊び心の表現が、着る人によって微妙な違いを見せているのだ。この時代のスーツは今も古くなっていないどころか、アメリカントラッドのお手本の最高峰として、おしゃれ好きな男たちにとっては必見の、永遠の映画なのである。ジュエリーはカルティエが担当した。今年、ミウッチャ・プラダがレディス、ブルックス ブラザーズがメンズ、ジュエリーをティファニーが担当したリメーク版が公開されて話題になった。2つの作品を比較してみると、映画の制作年度である1974年当時と2012年の、それぞれの時代性が、‘20年代のファッションに、複層的に投影されているのがわかってきて興味深い。 ■アートとモードを融合させた石岡瑛子 「ドラキュラ」は石岡瑛子が衣装と美術を担当。冒頭の15世紀、まだ吸血鬼になる前のトランシルバニアの王ドラキュラが戦で装着する甲冑は、流線型の造形が未来的。衣裳というよりはもはやアート作品と言えるだろう。やがて舞台は400年後、19世紀末のロンドンに移る。ウイノナ・ライダー演ずる、ドラキュラが恋したミナのドレスは、いかにも貞淑な良家の子女風の控えめな色とデザイン。男たちの服装も時代考証にほぼ忠実に、フロックコートやシルクハットを再現している。石岡瑛子ならではのアート性を遺憾なく発揮したのが、ミナの友人ルーシーの「死のウエディングドレス」だ。純白のレースの、エリザベスカラーと、長くトレーンを引くヘッドドレスのボリューム感が息をのむほど美しく、「ドラキュラ」が1992年度のアカデミー賞、衣裳デザイン賞を受賞したのも大いにうなづける。 ■女優の衣装を革新した人、イデス・ヘッド 「泥棒成金」のグレース・ケリーの衣装デザインはイデス・ヘッド。彼女は「裏窓」以来の、ヒッチコックのお気に入りで常連スタッフ。オードリー・ヘプバーンの「ローマの休日」や、サブリナパンツが今も若い女性の定番ボトムスになっている、「麗しのサブリナ」の衣裳も彼女の手による。グレース・ケリーのクールビューティを最大限に引き出す、ゴテゴテと飾り立てない衣裳のシンプルさは、当時革命的だったろうと思う。イデスの写真を見ると、もし彼女が今生きていたらコムデギャルソンやヨウジヤマモトの前衛的なクリエーションに共感したに違いないと思わせる、知的で職人的な雰囲気の人だ。 ■トム・フォードの完璧な美学 トム・フォードの初監督作品、「シングルマン」。トムの経歴をたどると、1990年「グッチ」のデザイナーに就任。どちらかというとコンサバティブなハイクラスのマダム御用達だったブランドを、一躍世界のラグジュアリーファッションの筆頭ブランドに変革した立役者だ。その後、自分のブランド「トム・フォード」を設立し、ビジネスの規模を拡大するのが第一のテーマではなく、トム自身の美学のもと、真のラグジュアリーとは何かを追求し続けている。 「シングルマン」でコリン・ファース演ずる大学教授ジョージの隙のないワードローブ。スーツ、シャツ、ナイトガウン。アクセサリーでは、左手小指の指輪、靴、ブリーフケース、眼鏡。全てがトム・フォードならでは完成度だ。トムが自分のブランドで目指していることは、この映画で彼が表現したかったこととぴったりと重なっている。ジョージが着る何気ない白いシャツが、なぜこれほど存在感を持ち、ジョージの個性を表現し、視覚的な美しさを讃えているのか、その答えを映画を見ながら一考してみていただきたい。「シングルマン」はここ数年の映画の中で、最もファッション性が高く表現された作品と言えるだろう。 ■ ■ ■ 【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】 10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします! ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 コラムで予習、映画本編で答え合わせ!!映画を教科書にして、ご自身の着こなしに取り入れてみてはいかがでしょうか?■
-
COLUMN/コラム2013.10.11
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイドその2【年代別編】
第2弾は「映画で知る1920年代-1980年代」と題し、特集作品に登場するファッションの時代背景を取り上げます。解説して下さるのは、モード誌「ミスターハイファッション」、「ハイファッション」の編集長を務められ、現在もモード界の第一線で活躍される田口淑子さんです。特集作品を既にご覧になった事がある方もない方も、読んで頂いた後に本編を確認したくなること請け合いの必読コラムです!! ファッションも、音楽も、建築物もそれぞれ時代を映す鏡。だが一つの時代を総合的に再現できるのは映像にしかない力だ。私は例えば、小津や成瀬の映画を時々ふっと見たくなるのだが、熱心に筋書きを追うより、ゆったりした気分でスクリーンの中の昭和30年代が見たいというのが本音で、日比谷や銀座、月島の景色や風俗に、今は消えてしまった当時の姿を見て、ちょっとした感慨に浸るのだ。名作と言われる映画を、そんな方角から見てみるのも一興だろうと思う。 ■『華麗なるギャツビー(1974)』 『華麗なるギャツビー(1974)』は二つの世界大戦の狭間、世界恐慌の1920年代が舞台。アメリカでは禁酒法が施行され、法の網の目を潜って、一代で莫大な財をなすギャツビーのような謎めいた人物が大勢いたのだろう。パーティシーンでは、女はチャールストンルック、男はタキシードで華やかさを競っている。彼らは、享楽的で贅沢な暮らしをしていてもどこか地に足がついていない。内面的な充足のないゆがみ。そんな悲哀感がこの映画には通底している。ロバート・レッドフォードが演ずるギャッツビーの眼はいつも何かを隠蔽しているように見える。あの冷たい眼が、自分の暮らしが虚像であることの不安を象徴しているように思えてならない。 ■『英国王のスピーチ』 『英国王のスピーチ』(30年代が舞台)は、エリザベス女王の父君、ヨーク公ことジョージ6世が王位を継承するまでの物語。ギャッツビーの邸宅の真新しい華麗さとは真逆な、英国人特有の価値観が全編に現れている。 先祖代々伝わる家具やタピストリーや銀器を、骨董品としてしまい込むのではなく日々の生活に活用していて、一見するとここが大英帝国の宮殿?と怪訝になるほど質素で堅実だ。だが映画が進むにつれて、古い箱形のソファーや、色あせた絨毯がとても美しい価値のあるものに思えてくる。ほぼ同じ時代を描いた「華麗なるギャッツビー」と、比較して見てみることを是非お勧めしたい。ところでヨーク公の兄君、この映画では複葉機に乗って颯爽と登場するウインザー公は、メンズ誌で「あなたが最もダンディだと思う歴史上の人物は?」とアンケートする時、今でも日本のデザイナーから真っ先に名前が挙がるファッションアイコンである。(ほかにケーリー・グラント、ジャン・コクトー、ハンフリー・ボガード、白洲次郎らの名前が上位に挙がる)シンプソン夫人と一緒の、アーガイルのセーターにニッカーボッカのゴルフウエアや、パーティでのタキシード姿が、モデルよりもはるかに格好よくて、アーカイブで借りた写真を何度も繰り返し掲載してきた。 ■『サタデー・ナイト・フィーバー』 『サタデー・ナイト・フィーバー』は70年代のニューヨーク、ブルックリンが舞台。この映画の見所は、一大ブームを起こしたダンスシーンのほかに、19歳のトニーとその仲間たちの丹念でリアルな生活感の描写だ。ジョンの部屋の壁にはアル・パチーノとファラ・フォーセットとロッキーとブルース・リーのポスター。毎朝時間をかけて髪を決めるドライヤーがアップで写る。ディスコに繰り出す時に彼らが着ているアクリルのチープなシャツとごわごわした革ジャン。4センチヒールのカットブーツ。裾広がりのパンタロン。圧巻はコンテストの衣裳の、いかにも“吊るし”の白いスーツと黒のシャツの盛装だ。ここは70年代当時、貧しくてよそ者には危険な黒人と移民の街。当時の靴屋や洋品店のショーウインドーがわびしくも時代を感じさせて懐かしい。「川を一つはさんで、こことマンハッタンは全てが違うのよ」という、ジョンのダンスのパートナー、ステファニーの向上心に溢れる台詞が印象的だ。ブルックリンは、1990年代頃から、若いアーチストやファッションデザイナーが移り住んで、アトリエやブティックやギャラリーが並び、今ではニューヨークで最もおしゃれなエリアの一つになった。そんな街の歴史と変遷を知るのにも、映画ほどふさわしいメディアはない。 ■ ■ ■ 【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】は最終回「デザイナー編」へと続きます。次回の更新は10月16日を予定しております。最終回も、ファッションのプロである田口淑子さんに引き続き、映画とファッションの「深い関係」を解説していただきます。乞うご期待下さい! そして、10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします!ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 ぜひ映画本編でも、数々のファッションをお楽しみ下さいませ!■
-
COLUMN/コラム2013.10.01
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイドその1
年に一度の映画界最大の式典といえばアカデミー賞授賞式。その年最高の映画が決まるとともに、その時を代表するセレブ達のトップが決まる授賞式でもある祭典でもある。そこで注目したいのは、そのときどきを刻む衣装。授賞式当日のセレブ達のきらびやかなドレスもそうだけど、最優秀衣装デザイン賞を受賞した作品は、有名デザイナーがデザインした衣装がズラリ。 たとえば、古くは1956年の『泥棒成金』は、『ローマの休日』などの衣装デザインを担当したハリウッド映画衣裳デザインの第一人者であったイデス・ヘッドが担当(彼女は衣装デザイン賞を8回も受賞している)。衣装をポイントにして映画を観ると、その時代のトレンドや、描かれた時代の再解釈、そしてデザイナーの本気が見えてくる。 忘れられないのが、1977年の大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』のような作品。この映画で出てきた衣装は70年代アメリカの若者達のトレンドが浮き彫りになったことでも知られる。これは当時の流行のメインではなく、サブカルチャーの中で流行ったものだけど、それが後にメインになり、そして廃れ、また近年のヒップホップシーンにおいて再解釈されていることを考えると、その影響力は計り知れないことがわかるだろう。 同様の作品としては2006年のノミネート作『ドリームガールズ』も60年代アメリカのR&B界のファッションシーンが映し出されているが、これまた流行は一巡して、今観ても新しい衣装に見えるから不思議。また、時代ものの映画はストーリーもさることながら、コスプレならではの華麗な衣装から観た方が、よほど親しみやすいというもの。 オリビア・ハッセー・ブームを巻き起こした1968年の受賞作『ロミオとジュリエット』なんて、衣装の魅力がジュリエットの可憐な美しさを引き立ててるし、2010年のノミネート作『英国王のスピーチ』も今ほどオープンではなかった戦前の英国王室の荘厳さを、宮殿や社交界のシーンで実感できる。 そういった中でも特筆すべきは、石岡瑛子にオスカーをもたらした1992年の『ドラキュラ』は必見作。以後の彼女が手がけた「ザ・セル」やこちらもアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされた「白雪姫と鏡の女王」にも観られる、西洋のゴシック様式と日本の着物や甲冑からモチーフを得たデザインの原点ともいえる衣装の数々が目にできるのだから。 そして忘れてはならないのは、有名デザイナーたちによる衣装! 今年リメイク版が公開された1974年の受賞作『華麗なるギャツビー』は、ラルフ・ローレンが衣装デザインを担当。1920年代アメリカン上流社会を舞台にしたこの作品は、いかに上流社会の人々の優雅さを表現するかで、我々がよく知るラルフ・ローレンが貢献していたというだけで、興味がわくところ(ちなみにリメイク版はブルックス・ブラザーズとプラダが担当した)。 有名デザイナーが担当してオスカーを得た作品でいえば、当時既にファッション界のカリスマであったエマニュエル・ウンガロが担当した1980年の『グロリア』あたりもチェックを。 また、受賞こそ逃したが、元グッチ、イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターで現代ファッション界を代表するトム・フォードが監督と衣装デザインを担当した2009年の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーのセンスで描かれた映画だけに、おしゃれ好きの人のマスト・リスト。「これが衣装デザイン賞を逃すなんて、どうかしてるよアカデミー! だって、トム・フォードだよ?」と、授賞式当時は現地マスコミの間でもヤジが飛んだほど。彼が常に提案しているトラッドとセクシーの見事な融合を、一編の映像にまとめた希有な作品だ。映画に詳しくない人も、たくさんは観ていないという人も、衣装から観ると映画、そしてアカデミー賞が楽しく見えてくる。ちょっと視点を変えてみてはいかが?■ ■ ■【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】は最終回「デザイナー編」へと続きます。次回の更新は10月16日を予定しております。最終回も、ファッションのプロである田口淑子さんに引き続き、映画とファッションの「深い関係」を解説していただきます。乞うご期待下さい!そして、10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします! ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 ぜひ映画本編でも、数々のファッションをお楽しみ下さいませ!■
-
COLUMN/コラム2013.09.29
2013年10月のシネマ・ソムリエ
■10月5日『ある結婚の風景[HDデジタルリマスター版]』 研究者のヨハンと弁護士のマリアンヌは、結婚10年目を迎えた夫婦。順風満帆だった彼らの関係にヒビが入り、激しい口論を繰り返したのちに離婚へと至る過程を描く。巨匠I・ベルイマン監督が手がけた5時間のTVシリーズを、劇場向けに再編集した人間ドラマ。ひと組の夫婦の関係性に焦点を絞り、愛の本質を見つめ直した野心作だ。全6章構成のドラマの大半は夫婦の対話シーンで占められる。彼らの感情がすれ違い、エゴをぶつけ合う様は圧巻の迫力で、このうえなくリアルで濃密な心理劇となった。 ■10月12日『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』 十字軍の遠征からスウェーデンに帰還した騎士が、疫病や魔女狩りで荒廃した祖国の現実を目の当たりにする。そんな騎士の行く手には不気味な死神が現れるのだった。中世ヨーロッパに死神を出現させ、信仰や人生の意味といった根源的なテーマを問いかける異色作。I・ベルイマン監督のファンに熱狂的に支持されている寓話である。幻想的なイメージと哲学的な思索に富んだ映像世界は、巨匠のフィルモグラフィの中でも異彩を放つ。“死神とのチェス”や“死の舞踏”などの名場面も鮮烈な印象を残す。 ■10月19日『ベティ・ブルー / 愛と劇場の日々[HDデジタルリマスター版]』 海辺のバンガロー暮らしの青年ゾルグと、風変わりなまでに野性的な少女ベティ。仏のJ=J・ベネックス監督が2人の激しくも切ない純愛を綴ったラブ・ストーリー。 当時新人のB・ダル演じるベティは、恋愛映画史上希にみる激情のヒロイン。その一途な愛情表現には異様な凄みがみなぎり、世界的なセンセーションを巻き起こした。ベネックスが斬新な色彩感覚を発揮した映像世界を、監督自身の監修によるHDリマスター版で放映。情熱的な恋人たちが思いがけない運命をたどるラストも衝撃的だ。 ■10月26日『ブラインドネス』 ブラジルのF・メイレレス監督による異色サスペンス。ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説「白の闇」を原作に、人間を失明させる奇病が蔓延した終末世界を描く。 視力を失った人々は政府によって隔離され、収容所に押し込められる。やがて権力闘争やパニックが勃発する密室内の人間模様を、息づまる緊迫感をこめて映し出す。国際色豊かなキャストが結集し、日本からは伊勢谷友介と木村佳乃が夫婦役で参加。かすかな希望を感じさせながらも、謎めいた余韻を残すエンディングに注目を。 『ある結婚の風景[HDデジタルリマスター版]』©1973 AB Svensk Filmindustri 『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』© 1957 AB Svensk Filmindustri 『ベティ・ブルー/愛と激情の日々[HDデジタルリマスター版]』©Cargo Films / Gaumont All Rights Reserved. 『ブラインドネス』(c)2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures
-
COLUMN/コラム2013.09.28
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年10月】銀輪次郎
スウェーデンの国営放送で放映されたイングマール・ベルイマンのミニTVシリーズ(6話)を再編集し映画化した本作。結婚10年を迎えた幸せな夫婦に突如として訪れる夫婦の危機とその後の人生を描く。夫婦の会話を中心に物語は進むが、話の展開は秀逸。怒涛の会話劇でありながらも、決して冗長なところはなく、観る者に愛の不確かさや脆さを気付かせる作品となっています。そしてもう一つの見所ポイントは、所々に映るハイセンスなスウェーデン家具やキッチン用品たち。どれもよさげな感じのものが多くて、とても1970年代の作品とは思えません。ザ・シネマでは10月、11月にスウェーデンが生んだ巨匠ベルイマンの特集放送「ディレクターズ・ファイル 2ヶ月連続 北欧の巨匠 イングマール・ベルイマン」も併せて放送しますのでこちらもお見逃しなく! ©1973 AB Svensk Filmindustri
-
COLUMN/コラム2013.09.28
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年10月】招きネコ
ハードボイルド小説の代名詞、レイモンド・チャンドラー原作の傑作ミステリーの映画化作品。主人公のフィリップ・マーロウを演じるのは、ロバート・ミッチャム。マーロウと言えば、ボギーことハンフリー・ボガートが有名ですが、この作品でミッチャムが作り出したマーロウ像はそのちょっとくたびれた感が、映画のけだるい、ミステリアスな雰囲気にマッチして魅力的です。でも、ハードボイルド映画には欠かせないファム・ファタール(悪女=運命の女)役のシャーロット・ランプリングの魅力がこの映画が大ヒットした最大の理由かもしれません。彼女の、殺人光線のような妖しい眼差しにはたぶん、どんな男性もあらがえないでしょう。彼女に秒殺されて、転落していく、ひどい目に合う哀れな男性キャストたちに同情しきりです。だまされるのもしょうがないと思わせる女性の魅力。久しぶりに見ましたが、こんな女優さんは他には思い当たらない。また、彼女が着ているファッションがとてもステキなんです。1940年代のヴィンテージなんですが、クラシカルなんだけど、華があってセクシーで。こんな洋服は自分では着られないけど、憧れます。この映画では、こういったファッションや美術セットがとても凝っていて1940年代の空気を見事に再現していますが、大物プロデューサー「アルマゲドン]や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジェリー・ブラッカイマーが若き日に手がけていたことも今回クレジットで知りました。チョット彼の株があがりました。 © Copyright ITV plc (Granada International)